アスベストの事前調査が不要な場合とは?調査対象外のケースを解説

アスベストの事前調査とは、建築物の解体や改修工事を行う前に、その建築物等にアスベスト含有建材が使われているかどうかを調査することです。

アスベスト粉塵飛散の対策をしないまま工事を行った場合、労働者や周辺住民等に重大な健康被害をもたらすおそれがあるため、アスベストの事前調査は原則として全ての建築物等で行わなければなりません。

事前調査を実施しなかった場合や不十分な調査しか実施しなかった場合には、行政指導や罰則が科されることもあります。

しかし、例外的なケースではありますが、「アスベストが飛散するおそれがない」工事を行う場合は、事前調査を省略することができます。

この記事では、アスベストの事前調査が不要な場合をケースごとに分けて詳しく解説をしていきます。

アスベストの事前調査とは?

アスベストの事前調査とは、建築物の解体や改修工事を行う前に、その建築物等にアスベスト含有建材が使われているかどうかを調査することです。

アスベストは、かつては様々な建材に使用されていましたが、健康被害を引き起こすことが判明したため、現在は使用が禁止されています。

しかし、過去に建てられた建築物には、依然としてアスベスト含有建材が残ったままになっています。

アスベスト含有建材が含まれた建築物等の解体や改修工事を行うと、アスベスト粉塵が飛散し、作業員や周辺住民が吸い込む可能性があります。

アスベスト粉塵は非常に細かい粒子のため、吸い込むと長期間体内に滞留し、肺がんや中皮腫(ちゅうひしゅ)などの深刻な健康被害を引き起こします。

事前調査は、こうした健康被害を防ぐために非常に重要な制度です。

日本では、2021年に事前調査が義務化され、2023年には有資格者による事前調査が義務化されています。

 

 

アスベストの事前調査が不要な場合とは?

アスベストの事前調査は、労働者や周辺住民の健康被害を防止するという目的で行われるもののため、原則として全ての建築物等において実施する必要があります。

日本では、2021年に事前調査の実施が義務化され、2023年には有資格者による調査が義務化されています。

ただし、アスベスト粉塵が飛散するおそれがない工事や改修等を行う場合には、労働者や周辺住民に健康被害をもたらす危険性がないため、事前調査を行う必要はありません。

 

事前調査は原則すべての建築物において必要

アスベスト粉塵飛散の対策をしないまま工事を行った場合、労働者や周辺住民等に重大な健康被害をもたらすおそれがあるため、アスベストの事前調査は原則として全ての建築物等で行わなければなりません。

2021年4月1日からは、建築物等の解体工事等を行う際には、アスベスト含有建材を事前に調査することが義務化されています。

また、2023年には「建築物石綿含有建材調査者」等の資格を有している者による調査を行うことが義務化されました。

事前調査の対象となるのは、建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事全般です。

 

アスベストの調査義務の例外となる工事

アスベストの事前調査は、原則として全ての建築物等について行う必要がありますが、アスベスト粉塵が飛散する危険性がない場合には、例外的に事前調査を行わなくても問題ありません。

事前調査を行う必要がない工事の例としては、以下の通りです。

アスベスト事前調査を行う必要がない工事の例

詳しく説明をしていきます。

 

素材にアスベスト含有がないと明らかな場合

建築物の素材にアスベスト含有がないと明らかな場合、アスベスト粉塵が飛散するリスクがないため、事前調査は不要となります。

アスベスト含有がないことが明らかな素材とは、木材、金属、石、ガラス等です。

これらの素材のみで構成されている建物の解体や改修工事の場合、アスベストの事前調査は不要となります。

 

極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業を行う場合

建材にほとんど損傷を与えず、アスベストの飛散リスクがないと判断される軽微な作業のみを行う場合も、事前調査は不要となります。

具体例としては、釘抜きや釘打ち、カーテンレール等の取り付け等の作業が挙げられます。

ただし、電動工具を使用する場合は、たとえ軽微な作業であっても事前調査が必要となることがありますので、注意しましょう。

 

手作業等で簡単に取り外せる作業のみを行う場合

作業の対象物にアスベストが含まれていないことが明らかで、簡単に取り外すことができる作業のみを行う場合も、アスベストの飛散リスクがないと考えられるため、事前調査は不要となります。

具体例としては、畳や電球の取り付け・取り外しなどの作業が挙げられます。

この場合も、電動工具等を使用する場合には、事前調査が必要となるケースがありますので、注意が必要です。

 

新たな材料を追加する作業のみを行う場合

既存の建材を傷つけずに新しい材料を追加する作業のみを行う場合は、アスベストが飛散するリスクがないため、事前調査は不要となります。

具体例としては、塗装やタイル貼り等が挙げられます。

ただし、既存の材料を剥がしたり、傷つけたりする可能性がある場合には、事前調査が必要となります。

 

2006年9月1日以降に着工された建築物の場合

2006年(平成18年)9月1日以降は、アスベストの製造・使用が禁止されています。

そのため、この日付以降に着工されたことが設計図書等で確認できる場合は、現地での目視調査を省略することができます。

ただし、設計図書等に記載がない場合や、増改築が繰り返されている場合は、調査が必要となる場合があります。

 

アスベストの報告義務の例外となる工事

アスベストの事前調査義務がある建築物等については、原則として報告義務も課されています。

しかし、工事の規模が小さい場合には、例外的に報告の義務が免除されています。

報告を行わなくてもよい工事は、以下の通りです。

建築物の解体工事 床面積の合計が80㎡未満の建造物
建築物の改修工事 請負代金の額が税込100万円未満の工事
工作物の解体・改修工事 アスベストが使用されているおそれが高いものとして環境大臣が定めるもので、請負代金の額が税込100万円未満の工事
船舶の解体・改修工事 鋼鉄製かつ総トン数20トン未満の船舶 鋼鉄製でない船舶

ただし、この場合でも事前調査の結果をまとめた結果報告書の作成と保管は必要となりますので、注意しましょう。

 

 

アスベストの事前調査をしないとどうなる?

アスベストの事前調査を行わなかった場合や、事前調査を行ったが内容が不十分であった場合には、「行政指導」を受けたり、「罰則」を科されるおそれがあります。

 

行政指導

アスベストの事前調査や調査結果の報告は法令によって義務化されています。

これらの規定に従わなかった場合、行政から事業者へ直接的な指導が行われることとなります。

指導の内容としては、調査の実施や調査のやり直し等が挙げられます。

繰り返し不十分な調査の実施をするなど、不適切な事業者であると行政に判断された場合、改善されるまで、工事そのものを請け負わないよう指導されるおそれもあります。

 

罰則

アスベストの事前調査は、大気汚染防止法によって実施が義務付けられています。

調査を怠った場合、30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

 

 

アスベスト調査の義務化についてのQ&A

アスベスト調査の義務化に関するご質問にお答えします。

アスベスト調査が不要な築年数は?

日本では、2006年(平成18年)9月1日以降はアスベストの製造・使用が禁止されています。

そのため、2024年(令和6年)時点で、築年数17年以下(着工日が2007年以降)の建築物等については、設計図書等で着工年等が確認できる場合には、目視での調査は不要となります。

築年数18年(着工日が2006年代)の建築物等については、着工日が9月1日以前か以降かで取り扱いが変わりますので、注意しましょう。

9月1日以降に着工された建物については、設計図書等で着工日が確認できる場合には、目視での調査は不要です。

築年数19年以上(着工日が2005年以前)の建築物等については、原則としてアスベストの事前調査が必要となります。

 

コンクリートはアスベスト調査が不要ですか?

純粋なコンクリート(セメント、砂、砂利、水のみで構成されているもの)にはアスベストは含まれていないため、原則としてアスベスト調査は不要です。

ただし、コンクリートの表面に塗られた仕上げ材(吹き付け材、塗料など)にアスベストが含まれている可能性があり、これらの仕上げ材については調査が必要となる場合があります。

また、アスベストが含まれたセメント製品(アスベストセメント板など)がコンクリートと共に使用されている場合があり、この場合にも調査が必要となります。

 

 

まとめ

アスベストの事前調査は、労働者や周辺住民等の健康を守るために必要不可欠な制度です。

そのため、事前調査を行わなかった場合や、調査は行ったが内容が不十分と行政に判断された場合は、行政指導や罰則の対象となるおそれがあります。

行政指導や罰則を避けるためには、事前調査が必要なケースか否かを適切に判断することが重要です。

基本的には、工事等の内容が「アスベスト粉塵飛散の危険性があるかどうか」という基準で判断することとなりますが、使用する工具等によっては、事前調査が必要となるケースがありますので、検討は慎重に行いましょう。

当法律事務所には、アスベストを原因とする法的問題を解決することに注力する弁護士が在籍しており、アスベスト問題で悩んでいる被害者の方を強力にサポートしています。

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