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アスベストの給付金は、申請してからおおよそ3ヶ月〜1年程度の審査期間を経て、支給されるケースが一般的です。
ただし、実際の支給時期は、準備に要する時間や救済制度、個人の手続きの進行状況などによって異なりますので、1年以上の期間を要する場合もあります。
本記事では、アスベストによる健康被害に対する給付金の種類や、受給までの流れ、そして「いつもらえるのか」という疑問について詳しく解説をしていきます。
また、受給をスムーズに進めるためのポイントや注意点についても解説を行います。
本記事が、アスベストによる被害者の方が迅速に給付金を受け取るための一助となれば幸いです。
目次
アスベストの給付金はいつもらえる?
給付金が実際に支給されるまでの期間としては、おおよそ3ヶ月〜1年程度かかることが多いです。
ただし、給付金が実際に支給されるまでの期間は、救済制度や個人の手続きの進行状況などによって、大きく異なる場合があります。
アスベストの給付金には3つの種類がある
アスベストによる健康被害に対する給付金制度は、被害者の状況や職歴等によって以下の3つに分かれています。
- 建設アスベスト給付金
- アスベスト健康被害救済給付金
- 労災による給付金
建設アスベスト給付金の受給時期と流れ
建設アスベスト給付金は、建設現場でアスベストにばく露し、アスベストによる健康被害を受けた方に支給されるお金です。
給付金の額は病状等によって異なりますが、最大で1300万円を受給することができます。
受給時期
建設アスベスト給付金は、申請してからおおよそ6ヶ月〜1年程度で支給されるケースが一般的です。
しかし、中には給付金の支払いまでに1年以上の期間を要する場合もあります。
労災支給決定等情報提供サービスを利用することで、給付金を早めに受け取ることができるケースもありますので、利用できる方は積極的に活用しましょう。
建築アスベスト給付金はなぜ遅い?
建築アスベスト給付金は、アスベスト健康被害救済給付金や労災による給付金にくらべて、支給が遅い傾向にあります。
建築アスベスト給付金は、厚生労働大臣の認定決定があった日の翌月末に支給されるのが一般的です。
この厚生労働大臣の認定決定に先立ち、「特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会」での審査が行われます。
この審査は、月に1度しか行われない上、審査件数も1度の審査で150件程度となっています。
そのため、なかなか審査が進まないという事情があります。
また、建築アスベスト給付金は、2022年1月19日にスタートしたばかりの新しい制度です。
2024年現在は、制度ができたばかりの頃に比べると申請件数は減少していますが、まだまだ申請する方は多く、審査に時間がかかっているといえます。
受給までの流れ
建築アスベスト給付金を申請してから、実際に給付金が支払われるまでの流れは、以下の通りです。
-
- ① 給付金の申請手続きを行う
- ② 厚生労働省が請求の受付、審査を行う
- ③ 特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会が審査を行う
- ④ 特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会が厚生労働省に審査結果を通知
- ⑤ 厚生労働省による認定
- ⑥ 厚生労働省から請求者および独立行政法人労働者健康安全機構に認定結果を通知
- ⑦ 独立行政法人労働者健康安全機構から給付金が支給される
アスベスト健康被害救済給付の時期と流れ
アスベスト健康被害救済給付金は、アスベストによる健康被害を受けているものの、労災保険の対象とならない方に対して支給されるお金です。
受け取ることができるお金については、被害者の方の状況によって異なります。
受給時期
アスベスト健康被害救済給付金は、申請してからおおよそ3ヵ月〜半年程度で支給されるケースが一般的です。
今回ご紹介する救済制度の中では、1番支給要件が緩やかなことから、比較的早く給付金を受け取ることができるケースが多いです。
受給までの流れ
アスベスト健康被害救済給付金を申請してから、実際に給付金が支払われるまでの流れは、以下の通りです。
- ① アスベスト健康被害救済給付金の申請手続きを行う
- ② 環境再生保全機構による申請書類の確認が行われる
- ③ 環境再生保全機構が環境大臣に対し、医学的事項に関する判定依頼を行う
- ④ 環境大臣が中央環境審議会に対し、意見を求める
- ⑤ 中央環境審査会が環境大臣に対し、意見を提出する
- ⑥ 環境大臣が環境再生保全機構に医学的事項の結果の通知を行う
- ⑦ 独立行政法人労働者健康安全機構から給付金が支給される
労災による給付の時期と流れ
労災保険による給付金は、労働中にアスベストにさらされたことが原因で、アスベストによる健康被害が生じたと認定された場合に支給されるお金です。
受け取ることができるお金については、被害者の方の状況によって異なります。
受給時期
労災による給付金は、申請してからおおよそ3ヵ月〜半年程度で支給されるケースが一般的です。
ただし、過去に勤めていた会社が既に倒産している場合などは、調査に時間がかかるため、給付金の支給までにさらに時間がかかることがあります。
受給までの流れ
労災の申請をしてから、実際に給付金が支払われるまでの流れは、以下の通りです。
- ① 給付金の申請手続きを行う
- ② 厚生労働省が請求の受付、審査を行う
- ③ 特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会が審査を行う
- ④ 特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会が厚生労働省に審査結果を通知
- ⑤ 厚生労働省による認定
- ⑥ 厚生労働省から請求者および独立行政法人労働者健康安全機構に認定結果を通知
- ⑦ 独立行政法人労働者健康安全機構から給付金が支給される
- ① 会社の証明がある請求書を労働基準監督署に提出する
(会社の証明がもらえない場合は、その事情を書いた書面を請求書と一緒に提出する) - ② 労働基準監督署が病院に対し、必要に応じて意見書等の作成を依頼する
- ③ 労働基準監督署による書面審査および調査
- ④ 労働基準監督署より支払決定通知が送付される
- ⑤ 労働基準監督署から補償給付金が支払われる
給付金の支給が遅いことによるデメリット
建設アスベスト給付金の請求中に請求者が亡くなった場合、その請求は無効となってしまいます。
遺族がいる場合でも、改めて請求手続きが必要となり、遺族がいない場合には、誰も給付金を受け取ることができなくなってしまいます。
特に、中皮腫や肺がんといったがんを患っている場合には、診断から1年以内に命を落とすケースも珍しくありません。
そのため、給付金の審査に1年以上かかると、申請者の死亡により申請が無効になるリスクが高まります。
実際に、特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会による1度の審査で最大5件程度の申請が無効となっています。
アスベストの給付を早く受け取る5つのポイント
アスベストの給付金を迅速に受け取るためには、以下の5つのポイントに注意しましょう。
これらのポイントに注意して申請を進めることで、スムーズに手続きを進めて、アスベスト給付金を迅速に受け取ることができます。
専門医による診断を受ける
アスベストによる健康被害で給付金を早く受け取るためには、専門医による正確な診断が非常に重要です。
給付金申請の際には、医師による診断書や意見書を必ず提出しなければなりません。
アスベストによる健康被害の専門医であれば、診断書等を作成することにも慣れていますので、不足のない書類を提出することができ、結果としてアスベストの給付を早く受け取ることに繋がります。
近隣に労災病院のアスベスト疾患センターがある場合は、こちらを受診するのがおすすめです。
アスベスト疾患センターの一覧は、以下のサイトにてご確認ください。
参考:独立行政法人 労働者健康安全機構| アスベスト疾患センター一覧
申請書の作成を慎重に行う
アスベストの給付金を早く受け取るためには、申請書の作成を慎重に行うことも非常に重要です。
申請書に記載する内容が不正確であったり、不足している情報があると、書類の訂正を求められたり、審査が滞ったりして、給付金の支給が遅れる原因になります。
そのため、自分で申請書を作成する場合は、慎重に行いましょう。
必要書類に不足がないようにする
アスベストの給付金を早く受け取るためには、必要書類を全て欠かさず収集し、提出することも非常に重要です。
アスベストの給付金申請には、多くの書類が必要になります。
必要書類を全て集めるのは大変ではありますが、これらの書類が不足していた場合、追加の資料提出が求められるため、その分だけ審査が遅延し、結果として給付金を受け取るまでに時間がかかってしまうことになります。
そのため、申請の際には、必要な書類をすべて揃え、漏れがないようにすることが大切です。
複数の制度を同時に申請する
アスベストの給付金を迅速に受け取るためには、複数の制度を同時に申請することが効果的です。
アスベストによる健康被害に対する給付金制度は複数存在し、被害者の状況によっては、同時に申請できる場合があります。
複数の制度を同時に申請することで、審査にかかる時間を無駄にせず、受け取るべき給付金を迅速に受給することができます。
アスベストにくわしい弁護士へ相談する
これまでご説明したとおり、給付金をなるべく早く受け取るためには、不備のない申請書類や必要書類の提出が必須です。
また、そもそもどの制度を利用できるのかを検討する際にも、アスベストの救済制度について詳しく知っている必要があります。
アスベストに詳しい弁護士であれば、適切な救済制度の選択や、不備のない書類の提出を迅速に行うことができます。
アスベストの給付金を早く受け取りたいという方は、ぜひアスベスト問題に詳しい弁護士に相談してください。
アスベストの給付時期についてのQ&A
アスベストの給付時期についてのご質問にお答えします。
アスベストの給付金はなぜ遅いのですか?
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アスベストの救済制度では、被害者が本当にアスベストによる健康被害を受けているか、そしてどの程度の被害かを慎重に審査する必要があります。
また、労災や建築アスベスト給付金の場合、仕事中にアスベストにばく露したかどうかを審査する必要もあります。
アスベストによる健康被害は、アスベストばく露から数十年後に発症することから、数十年前の業務内容や労働環境を調査する必要があり、調査にも時間を要します。
これらの理由のため、審査には時間がかかることが一般的です。
まとめ
本記事では、主な給付金制度や受給時期、申請の流れについて詳しく解説を行いました。
給付金の受給時期は、申請から約3ヶ月〜1年後であることが一般的ですが、場合によっては、さらに長い期間を要することもあります。
給付金を受給する前に申請者の方が亡くなってしまった場合には、遺族の方が再度1から申請を行わなければなりません。
そうすると、審査も初めからとなってしまうため、長期間給付金が受け取れないということになってしまいます。
なるべく早く給付金を受け取り、このようなリスクを減らすためには、適切な救済制度を選択した上で、不備のない書類を提出することが重要です。
そのためには、アスベスト問題に詳しい弁護士に依頼をすることが近道となります。
弁護士法人デイライト法律事務所では、人身障害部に所属する弁護士が「事故被害者に平穏な生活を取り戻す」をモットーとして、アスベストを含む労災問題について取り組んでおり、被害者の方に法的なサポートを行っています。
また、アスベストによる健康被害に関するご相談については、初回相談料および着手金ともに頂戴しておりません。
アスベストによる健康被害にお悩みの方は、些細なことでも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。