石綿とは?アスベストに強い弁護士がわかりやすく解説

石綿とは、「せきめん」または「いしわた」と読み、自然界に存在する繊維状の鉱物のことです。

安価で加工しやすい上、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性などの優れた性質を有していることから、かつては建材等に多く使用されていました。

しかし、石綿が体内に入ることで、肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすことが判明し、現在は使用が禁止されています。

石綿が体内に入ってから健康被害を引き起こすまでには長期間かかるため、石綿による健康被害に悩まされる人が近年増加しています。

石綿被害の救済制度には、様々なものがあり、自分がどの救済を受けることができるのかを判断することが難しい場合もあります。

この記事では、石綿についてや石綿被害を受けた場合の相談窓口等について、ご説明していきます。

石綿とは?

石綿とは、自然界に存在する繊維状の鉱物のことで、かつては安価で加工しやすく、耐熱性等に優れることから、「奇跡の鉱物」として様々な用途に使用されていました。

しかし、石綿は、その繊維が非常に細かいために、一度肺に入ると自然に排出されにくく、長期間体内に残留してしまうことから、石綿を吸い込むと、肺に炎症が起こり、やがて肺がんなどの深刻な病気を発症するおそれがあります。

そのため、現在は建材等に使用することが禁止されています。

 

石綿の意味

石綿は、自然界に存在する繊維状の鉱物です。

具体的には、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)などの種類があり、それぞれ異なる物理的特性を持っています。

非常に細かい繊維状の構造を持ち、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性に優れています。

このため、建材や工業製品、自動車部品などさまざまな用途で使用されてきました。

しかし、石綿の粉塵を吸い込むことで、肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになり、現在ではその使用が厳しく規制されています。

 

石綿の読み方

石綿は、「せきめん」または「いしわた」と読みます。

カタカナで表記される際には「アスベスト」と呼ばれます。

 

石綿とアスベストとの違い

石綿とアスベストは同じ物質を指します。

石綿は日本語での呼び方であり、アスベストはオランダ語での呼び方です。

どちらも同じ鉱物を指し、特に違いはありません。

 

なぜ石綿が危険なのか?

石綿が危険と言われる理由は、主にその非常に小さな繊維状の構造と、体内に侵入した際の反応にあります。

石綿の繊維は、非常に細く、軽く、鋭利な針のような形状をしています。

このため、一度肺に入ると、自然に排出されにくく、長期間体内に残留してしまいます。

肺に蓄積された石綿繊維は、体内の免疫細胞を刺激し、炎症を引き起こします。

この炎症が慢性化すると、肺組織が硬くなり呼吸が困難になる「石綿肺(せきめんはい)」や、悪性腫瘍である「中皮腫(ちゅうひしゅ)」などの深刻な病気につながる可能性があります。

また、石綿による健康被害は、曝露(ばくろ)から発症までに長い潜伏期間があります。

場合によっては数十年後に発症することもあり、健康診断などで早期発見が難しいケースもあります。

 

 

石綿の種類

石綿には、「クリソタイル」「クロシドライト」「アモサイト」「アクチノライト」「アンソフィライト」「トレモライト」の6種類に分類され、それぞれ異なる特徴を有しています。

種類 特徴 主な用途
クリソタイル
(白石綿)
柔軟性が高く、耐熱性に優れる
最も多く使用されている
建材、自動車のブレーキライニングなど
クロシドライト
(青石綿)
繊維が細かく、酸やアルカリに対する耐性や耐熱性に優れる 断熱材、防音材など
アモサイト
(茶石綿)
熱伝導率が低く、耐酸性に優れる 建築物の吹き付け材、保温材など
アクチノライト 強度が高く、耐熱性に優れる 建材、断熱材など
アンソフィライト 耐熱性や絶縁性に優れる あまり実用化されていない
トレモライト 耐熱性がある 断熱材、耐火材料

世界中で最も多く使用されたクリソタイル(白石綿)は、かつては他の石綿に比べて安全とされていました。

しかし、現在はすべての石綿が健康に悪影響を及ぼすことがわかっています。

 

 

石綿が使われている箇所

石綿は、「建築材料」「自動車部品」「工業製品」「船舶の部品」「鉄道車両の部品」など、幅広く使用されていました。

建築材料 断熱材…天井、壁、床下の断熱材として使用
屋根材…石綿スレート屋根材や石綿セメント瓦など
壁材…石綿含有のセメント板、モルタル、コンクリートなど
天井材…石綿含有の天井板や天井パネル
床材…石綿含有のビニル床タイルやリノリウム
自動車部品 ブレーキパッド、クラッチディスク、ガスケットなど
工業製品 ガスケットやパッキング材、断熱手袋や防護服など
船舶の部品 船舶のボイラーやエンジンルームの断熱材など
鉄道車両の部品 鉄道車両の断熱材や防音材など

 

 

石綿の事前調査とは?

石綿の事前調査とは、建築物や構造物を解体したり、改修したりする前に、その建物内に石綿が含まれているかどうかを調べることです。

工事中の石綿飛散を防止し、作業者や周辺住民の健康被害を予防するために実施されます。

日本では、2023年10月1日以降に着工する工事からは、厚生労働大臣が定める講習を修了した者(建築物石綿含有建材調査者など)による調査の実施が義務化されており、これに違反した場合は罰則を科されるおそれがあります。

 

 

石綿に関連する専門家

石綿に関連する専門家には、様々な種類があります。

一例ですが、石綿に関連する専門家としては、以下のような人がいます。

石綿に関連する専門家

 

石綿含有建材調査者

建築物石綿含有建材調査者とは、建物解体や改修工事を行う前に、その建物に石綿が含まれているかどうかを調査する資格を持った専門家です。

2023年10月1日からは、建築物の解体や改修を行う際に、この資格を持つ者による事前調査が義務付けられました。※

建築物石綿含有建材調査者は、以下の3つに分類されます。

  • 一般建築物石綿含有建材調査者
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者
  • 特定建築物石綿含有建材調査者

一戸建て等石綿含有建材調査者は、一戸建て住宅および共同住宅の内部についてのみ調査を行うことができます。

一般建築物石綿含有建材調査者と特定建築物石綿含有建材調査者は、全ての建築物の調査を行うことができます。

ただし、特定建築物石綿含有建材調査者になるためには、一般建築物石綿含有建材調査者の講習内容に加えて、実地研修や口述試験も必要となります。

そのため、今後は調査できる範囲が資格によって変わる可能性があります。

建築物石綿含有建材調査者になるためには、建築物石綿含有建材調査者講習を受講し、修了試験に合格する必要があります。

※日本アスベスト調査診断協会に登録している者についても有資格者と「同等以上の能力を有する者」として調査をすることができます。

 

工作物石綿事前調査者

工作物石綿事前調査者とは、建築物以外の工作物(橋梁、トンネル、ダムなど)の解体や改修工事を行う前に、その工作物に石綿が含まれているかどうかを調査する資格を持った専門家です。

2026年1月1日から、工作物の解体や改修工事を行う際には、工作物石綿事前調査者による事前調査を実施することが義務化されます。

工作物石綿事前調査者になるためには、工作物石綿事前調査者講習を受講し、修了試験に合格する必要があります。

 

石綿作業主任者

石綿作業主任者は、石綿を取り扱う作業現場において、作業の安全性を確保し、作業員を指導・監督するための資格を持った専門家です。

石綿を取り扱う作業を行う際には、必ず石綿作業主任者を選任しなければなりません(労働安全衛生法施行令6条23号)。

石綿作業主任者になるためには、石綿作業主任者技能講習を受講し、修了試験に合格する必要があります。

参考:労働安全衛生法施行令|e−GOV法令検索

 

石綿取扱作業従事者

石綿取扱作業従事者は、建築物や工作物の解体・改修作業において、石綿を取り扱う作業に従事する資格を持った専門家です。

石綿を取り扱う作業は、「安全又は衛生のための特別の教育を受けた人」しか行うことができません。

石綿取扱作業従事者になるためには、石綿取扱い作業従事者特別教育を受講する必要があります。

 

弁護士

弁護士は、石綿による被害を受けた方を法的にサポートすることができる専門家です。

石綿による健康被害を受けた方が給付金等のお金を受け取るにあたっては、以下の5つの方法があります。

  • アスベスト訴訟(工場型)
  • 建設アスベスト給付金
  • 労災保険給付
  • 石綿健康被害救済制度
  • 会社に対する損害賠償請求

これらの方法は、それぞれ対象者や請求方法が異なるため、一般の方がどの方法を用いるべきなのかを判断することは難しい場合もあります。

さらに、訴訟で請求をする場合には、裁判所に提出する書面の作成など、複雑な作業を行う必要があり、そのような作業に慣れている弁護士に依頼をした方が確実にお金を受け取ることができるケースが多々あります。

そのため、法律のエキスパートである弁護士も石綿に関連する専門家といえます。

 

 

石綿被害の相談窓口

石綿被害の相談窓口は、どの救済制度を利用するつもりかによって異なります。

具体的には、以下の相談窓口があります。

相談窓口 利用する救済制度
労働基準監督署 労災補償の対象となる方
独立行政法人 環境再生保全機構 労災補償の対象とならない方
アスベストに強い弁護士 救済制度全般

労災補償の対象になるかどうかを自分で判断することが難しい場合には、救済制度全般について相談することができる「アスベストに強い弁護士」に相談することをおすすめします。

 

労働基準監督署

石綿にさらされる業務に従事した労働者等が石綿を吸入することが原因で発生する疾病にかかった場合は、「労働者災害補償保険制度(労災保険制度)」の対象となります。

労災保険制度の対象となる方については、最寄りの労働基準監督署が相談窓口となっています。

また、労災保険相談ダイヤルに電話をかけて相談をすることもできます。

労災保険相談ダイヤルは、平日8:30〜17:15まで受け付けています。

労災保険相談ダイヤルの電話番号は、0570-006031です。

参考:建設アスベストに関するご案内相談窓口を開設しました|厚生労働省

 

独立行政法人 環境再生保全機構

労災補償の対象とならない方については、「独立行政法人 環境再生保全機構」が相談窓口となっています。

労災補償の対象とならない方とは、「石綿取り扱い工場の近隣に居住していた方」「石綿取り扱いエ場で働く人の作業着を洗濯していた方」「労災補償の対象であったが請求期間を過ぎてしまったために補償を受けられなくなった方」などの方が挙げられます。

環境再生保全機構では、石綿救済相談ダイヤルが設けられています。

石綿救済相談ダイヤルは、平日10:00〜17:00まで受け付けています。

石綿救済相談ダイヤルの電話番号は、0120-389-931です。

参考:アスベスト(石綿)健康被害の救済|独立行政法人 環境再生保全機

 

アスベストに強い弁護士

石綿被害に関する相談窓口には、アスベストに強い弁護士も挙げられます。

石綿被害を受けた場合に相談できる窓口は複数ありますが、労災補償の対象となるかどうかによって相談窓口が変わります。

アスベストに強い弁護士であれば、石綿被害の救済制度全般について知識があるため、全ての救済制度について検討をした上で、適切なアドバイスをすることができます。

石綿被害で困っているが、どこに相談したらいいかわからないという方については、ぜひアスベストに強い弁護士に相談してください。


 

まとめ

石綿は健康被害を引き起こすまでに長期間かかるため、健康被害が判明したときには石綿を吸い込んでしまった原因がわからないことも多々あります。

石綿を取り扱う業務に従事していたことがはっきりしている方については、基本的には労災補償の対象になると考えられますが、請求期間を過ぎてしまい、労災補償の対象とならない場合もあります。

そのため、請求期間の起算日などについてもしっかりと確認をする必要があります。

石綿被害にあってしまったという方は、確実に救済制度による救済を受けるためにも、1人で悩まず弁護士に相談してください。

弁護士法人デイライト法律事務所には、石綿被害に注力する弁護士が在籍しています。

電話、メール、オンラインでのご相談も対応しておりますので、お困りの方はぜひ1度当事務所までお問い合わせください。

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