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胸膜プラークとは、肺を包む胸膜にできる良性疾患であり、過去にアスベストを含む環境にばく露した人々に発生することが知られています。
健康診断や胸部CT検査で「胸膜プラーク」を指摘された方の中には、その診断に戸惑いや不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
胸膜プラークはアスベストにさらされたことが原因で発症する病変のため、胸膜プラークの診断を受けた場合には、過去のアスベストばく露歴を確認し、必要に応じた検査や給付金申請を行うことが重要です。
この記事では、胸膜プラークとはどのようなものか、アスベストとの関連、治療法について詳しく解説し、さらに、アスベストによる健康被害を受けた方が活用できる給付金制度などについても解説を行います。
適切な情報を知ることで不安を軽減し、給付金などの手続きに役立てていただければと思います。
目次
胸膜プラークとは?
胸膜プラーク(胸膜肥厚斑:きょうまくひこうはん)とは、肺を包む胸膜に石灰化した硬い板状の組織が形成された状態のことです。
胸膜プラークは、がん等の悪性の疾患ではなく、良性の病変であるため、直接的に命に関わることはありません。
通常は自覚症状がないため、定期健康診断などで胸部X線やCTスキャンを行った際に診断される方が多いという特徴があります。
アスベストばく露によってのみ発生すると考えられているため、過去のアスベストばく露を示す重要な指標とされています。
通常は、アスベストばく露から15〜30年の潜伏期間を経て、発生します。
胸膜プラークとびまん性胸膜肥厚との違い
胸膜プラークとびまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)は、どちらもアスベストばく露が原因で生じる胸膜の変化ですが、症状などに大きな違いがあります。
胸膜プラークは、胸膜の特定の部位に石灰化した硬い板状のものができている状態のことを指します。
肺機能に大きな影響を与えないため、他の疾患の検査中に偶然発見されることが多いという特徴があります。
これに対し、びまん性胸膜肥厚は、胸膜が広範囲にわたって肥大化する病気です。
進行すると、呼吸機能の低下を引き起こし、息切れや胸痛などの症状が現れるという特徴があります。
詳しくは、以下の表をご覧ください。
胸膜プラーク | びまん性胸膜肥厚 | |
---|---|---|
病変 | 胸膜表面の限られた部分に発生 | 胸膜全体に発生 |
肺機能への影響 | 原則影響なし | 肺機能低下の可能性あり |
症状 | 原則無症状 | 呼吸困難、胸痛など |
治療の必要性 | 通常は経過観察のみ | 症状がある場合は治療が必要 |
給付金 | 原則対象外 | 給付金の対象となる場合がある |
胸膜プラークはアスベストが原因?
胸膜プラークの発生原因は、ほぼ100%アスベストへのばく露であると考えられています。
胸膜プラークは、アスベスト繊維が胸膜に侵入し、炎症などを引き起こした結果、胸膜に石灰化した硬い斑点が形成されることで発生します。
そのため、日本では、胸膜プラークの存在はアスベストばく露の重要な指標として広く認識されています。
アスベストとは?
アスベストは、天然に産出する繊維状の鉱物で、以下のような優れた特性があることから、過去に建材等として広く使用されてきました。
アスベストの特性
- 耐熱性
- 耐火性
- 絶縁性
- 耐薬品性
- 耐摩耗性
- 防音性
しかし、アスベストを吸い込むと、「胸膜プラーク」「石綿肺(せきめんはい)」「肺がん」「中皮腫(ちゅうひしゅ)」「びまん性胸膜肥厚」といった健康被害が生じることが判明し、現在は使用が禁止されています。
近年では、1970年代から1990年代にかけて建設現場や工場でアスベストを扱った方々が、胸膜プラークや他のアスベスト関連疾患の発症を診断されるケースが増加しています。
胸膜プラークの症状とは?
胸膜プラークは、一般的に自覚症状をほとんど伴わない良性の変化です。
胸膜プラークそのものは、通常、肺機能に影響を与えないため、呼吸困難や咳などの呼吸器症状を引き起こすことはありません。
まれに、以下の様な症状が出る場合があります。
- 胸部の違和感
- 軽度の胸痛
胸膜プラークの治療法とは?
胸膜プラークは、基本的に良性の病変であり、それ自体が直接的な健康被害をもたらすことはほとんどありません。
そのため、胸膜プラークに対する特別な治療は通常必要ありません。
しかし、胸膜プラークができているということは、過去にアスベストにさらされたことがあるということです。
そのため、他のアスベスト関連疾患を早期に発見するためにも、適切な管理と経過観察が欠かせません。
検診で胸膜プラークを指摘された方へ
胸膜プラークは、特に自覚症状がないため、定期的な健康診断や検診で初めて発見されることが多いものです。
胸膜プラークが見つかると、「アスベストばく露による健康被害の可能性」や「将来の健康リスク」に対する不安を抱える方も少なくありません。
そんな方のために、胸膜プラークが指摘された場合にどのような対応を取るべきかについて、詳しく解説を行います。
専門医の診断を受ける
胸膜プラークが検診で指摘された場合、まずは専門医による適切な診断を受けることが重要です。
専門医による診断を受けることで、他のアスベスト関連疾患や他の合併症等を発症していないかどうかを確認することができます。
胸膜プラークの診断と管理に適した専門医を選ぶ際は、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 呼吸器専門医療機関または職業病専門医療機関であること
- アスベスト関連疾患の診断と管理に関する十分な経験があること
- 最新の診断技術や治療法に精通していること
- 定期的に検査を受ける
胸膜プラークが発見された場合、特に症状がない場合でも、定期的に検査を受けることが重要です。
胸膜プラーク自体は良性の病変のため、すぐに治療が必要となることは少ないものの、他のアスベスト関連疾患を予防・管理するためには定期的な経過観察が欠かせないからです。
一般的には、年に一度の定期検診が推奨されていますが、アスベストばく露の程度や他のリスク要因によっては、より頻繁に検査を受ける必要があることもあります。
定期健診の頻度等については、医師と相談の上、決定してください。
過去のアスベストばく露歴を確認する
胸膜プラークが発見された場合、過去のアスベストばく露歴を確認しましょう。
アスベストばく露は、胸膜プラークをはじめ、さまざまなアスベスト関連疾患の原因となります。
そのため、アスベストにどの程度さらされたかを把握することが、今後の治療方針や給付金申請の手続きにおいて非常に重要となります。
アスベストのばく露歴を確認する方法には、以下のようなものがあります。
- 学生時代のアルバイトを含む全ての職歴を年代順に確認する
- 幼少期からの居住地や学校の所在地を確認する
- 家族や配偶者のアスベスト関連作業歴を確認する
- アスベスト関連給付金を受け取る
胸膜プラークは病気ではないため、胸膜プラークがあるだけでは、残念ながらアスベスト関連給付金を受け取ることはできません。
しかし、胸膜プラークに加えて、他のアスベスト関連疾患も発症している場合には、アスベスト関連給付金を受け取ることができる可能性があります。
合わせて読みたい
建築アスベスト給付金
建築アスベスト給付金は、建設作業に従事していたことが原因で、以下のアスベスト関連疾患を発症した方を対象とした給付金制度です。
- 中皮腫
- 肺がん
- 石綿肺(じん肺管理区分管理2~4)
- 良性石綿胸水
- 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
建築アスベスト給付金では、最大で1300万円の給付金が支給されます。
労災保険による補償給付金
仕事中に会社の指示のもとで行った業務によって病気になった場合、その病気は「業務上疾病」とみなされ、労災保険の対象となります。
そのため、仕事中にアスベストにさらされたことが原因で、以下のアスベスト関連疾患を発症した方は、労災保険による補償を受けることができる可能性があります。
- 石綿肺(じん肺管理区分管理2~4)
- 中皮腫
- 肺がん
- 良性石綿胸水
- 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
労災保険の対象である場合、療養補償給付や休業補償給付などを受け取ることができます。
石綿健康被害救済給付金
石綿健康被害救済制度は、労災保険等での補償を受けられない方を救済するための制度です。
そのため、「職業上のアスベストばく露以外で健康被害を受けた方」や「仕事でアスベストを扱っていたが、労災認定の要件を満たせない方」であっても、以下のアスベスト関連疾患を発症しているのであれば、給付金を受け取ることができます。
- 中皮腫
- 肺がん
- 著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺
- 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
石綿健康被害救済給付金の対象者である場合、医療費や療養手当などを受け取ることができます。
工場型アスベスト訴訟
局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、労働者として、石綿粉じんにばく露する作業に従事したことが原因で、以下のアスベスト関連疾患を発症した場合は、裁判手続きを通じて国との間で和解を行うことで、一定の賠償金を受け取ることができる可能性があります。
- 石綿肺(じん肺管理区分管理2~4)
- 中皮腫
- 肺がん
- びまん性胸膜肥厚
工場型アスベスト訴訟では、最大で1300万円を国から受け取ることができます。
企業に対する損害賠償請求
企業に対する損害賠償請求とは、アスベストによる健康被害を被った労働者が一定の企業に対して、損害を賠償するよう求める請求のことです。
企業から賠償金を受け取ることができる可能性が高いのは、建築アスベスト給付金や工場型アスベスト訴訟の救済対象の方です。
しかし、その他にも製造業や運送業、吹付石綿のある設備内で事務作業に従事していた方などについても、企業の責任が認められることがあります。
企業に対する請求では、他の救済制度に比べて自己判断することが非常に難しいという特徴がありますので、企業に対する損害賠償請求を行う際は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
アスベストに詳しい弁護士に相談する
胸膜プラークが検診で指摘された場合、その原因としてアスベストばく露の可能性が考えられます。
胸膜プラーク自体は良性の状態のため、すぐに重大な健康リスクを引き起こすことは少ないものの、アスベストばく露歴があると、将来的に中皮腫や肺がんといった深刻な疾患を発症するリスクが高まることが知られています。
仮に中皮腫や肺がんといったアスベスト関連疾患も発症している場合、アスベスト関連給付金を受け取ることができる可能性があります。
しかし、アスベストによる健康被害は、通常長い潜伏期間を経て発覚するため、被害を受けた方が何十年も前の職場や生活環境でアスベストにばく露していたことを証明する必要があります。
また、アスベスト関連給付金には複数の制度が存在し、それぞれ申請方法や受け取るための条件が異なります。
アスベストに詳しい弁護士に相談することで、これらの法的手続きに関するアドバイスを受けることができ、適切な給付金を受け取るためのサポートを受けることができます。
そのため、アスベスト関連疾患を発症している場合には、アスベストに詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
胸膜プラークについてのQ&A
胸膜プラークについて、よくあるご質問にお答えします。
胸膜プラークは胸部CTでわかりますか?
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その他、胸部エックス線写真や胸腔鏡検査でも診断することができます。
胸膜プラークは悪性化しますか?
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胸膜プラークは、胸膜表面にアスベストが原因で形成される線維性の組織であり、通常は無症状で進行もしないためです。
しかし、胸膜プラークがあるということは、過去にアスベストへばく露した経験がある可能性が高いことを示しています。
このため、胸膜プラークがある方は、将来的にアスベスト関連疾患(特に肺がんや中皮腫)を発症するリスクが一般的に高いとされていますので、定期的に健康診断を受けることが大切です。
まとめ
胸膜プラークは、過去のアスベストばく露が原因で発生することが多い良性の疾患です。
近年では、かつてアスベストにさらされる仕事で働いていた方々を中心に、健康診断やCT検査で胸膜プラークが診断されることが増加しています。
胸膜プラークは一般的には無症状で深刻な健康被害をもたらすものではないものの、さらなる健康被害のリスクを考慮し、定期的な経過観察を受けることが非常に重要です。
また、早い段階からアスベストばく露に起因する病歴や職歴を確認し、労災補償や救済給付金の申請を検討することをおすすめします。
その際には、手続きをスムーズに進めるためにも、ぜひアスベストに詳しい弁護士に相談してください。
弁護士法人デイライト法律事務所では、アスベストに注力する弁護士が在籍しています。
遠方等の理由で事務所にお越しいただくことが難しいという場合でも、電話、メール、オンライン等を活用し、ご相談いただくことが可能です。
アスベストの健康被害でお困りの方は、ぜひお気軽に当事務所までお問い合わせください。