
アスベストで発症する病気とは、悪性中皮腫(あくせいちゅうひしゅ)、アスベスト肺(石綿肺)、肺がん、びまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)良性石綿胸水(りょうせいせきめんきょうすい)があります。
アスベストの体内での潜伏期間は非常に長いため、目に見える症状が出てくるのは20〜40年以上経過してからということもあります。
そのため、自分では気付かない間にアスベストが体を蝕んでいたということがあり、アスベストは非常に厄介な存在です。
この記事では、アスベストで発症する病気について、詳しく解説していきます。
最後まで読んでいただくことで、アスベストで発症する病気について押さえておくべき重要なポイントを理解できますので、ぜひ参考になさってください。
目次
アスベストで発症する5つの病気
アスベストによる健康被害とは
アスベストは非常に細い(髪の毛の5000分の1程度の細さ)繊維状の鉱物です。
アスベスト繊維は非常に小さく尖った形をしているため、体に吸い込んだ場合、肺の奥深くまで入り込んで、自然には排出されにくい性質があります。
また、アスベストは水や酸に溶けにくく、体内で分解されにくい物質です。
そのため、肺の中に長期間とどまって、慢性的な刺激を与え続けます。
アスベストの繊維が長期間にわたって肺に刺激を与え続けることで、炎症が引き起こされたり、細胞が傷つけられたりします。
こうして、肺の組織の線維化や、肺細胞などのがん化が引き起こされると考えられているのです。
アスベスト肺(石綿肺)
アスベスト肺(石綿肺)とは、肺が線維のようになる肺線維症(じん肺)という病気の一つとされています。
石綿にさらされることが原因となって発症した肺線維症(はいせんいしょう)を特にアスベスト肺(石綿肺)といいます。
アスベスト肺(石綿肺)の症状は、肺の中の線維組織が増殖し、瘢痕化(はんこんか)していくことによって徐々に現れてきます。
発症して初期の症状は、軽い息切れや、運動能力に支障が生じることが多いです。
症状が進行した場合、次第に呼吸することが難しくなっていき、約15%のアスベスト肺の患者については、息切れが激しくなり、呼吸不全となります。
アスベストと肺(石綿肺)について、詳しくは以下をご覧ください。
アスベストの症状について、詳しくは以下のサイトもご覧ください。
肺がん
肺がんとは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞ががん化したものです。
肺がんの主たる症状は、風邪など一般的な呼吸器の病気にみられる咳や痰(たん)、発熱、動悸、胸の痛み(胸痛)、息苦しさ(呼吸困難)などがあります。
肺がんの症状については、肺がん以外の呼吸器の病気と区別しにくいことがあるため、注意が必要です。
悪性中皮腫(あくせいちゅうひしゅ)
悪性中皮腫とは、肺を取り囲む胸膜や腹部臓器を囲む腹膜等にできる悪性の腫瘍のことです。
悪性中皮腫の症状としては、胸の痛み、咳せき、大量の胸水によって困難が困難になり、胸が圧迫されるような症状があります。
また、原因が分からない発熱や体重が減ることもありますが、どの症状についても、悪性胸膜中皮腫のみで生じる特徴的な症状ではないため、早期発見が難しいといえます。
びまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)
びまん性胸膜肥厚とは、肺を包む膜が固くなることで発症する病気です。
びまん性胸膜肥厚の主な症状について、初めの頃は無症状か軽度の呼吸困難にとどまることが多いです。
もっとも、症状が進行するにつれて、呼吸困難や何度も繰り返し胸の痛みを発症することがあり、肺炎といった病気に感染することがあります。
良性石綿胸水
良性石綿胸水とは、肺の外側と肋骨の内側などを包む膜に炎症が生じ、胸水が溜まる病気です。
良性石綿胸水は、半数近くは自覚症状が無いため、健康診断を受けてはじめて判明することがあります。
自覚症状としては、胸の痛み、発熱、呼吸がしづらくなるといっ症状がでてきます。
アスベストで発症する病気の症状
アスベストの症状の主な症状や潜伏期間については、下表のようになります。
病名 | 潜伏期間の目安 | 主な症状 |
---|---|---|
アスベスト肺 (石綿肺) |
15~20年 | ◯初期症状
◯慢性気管支炎がある喫煙者の場合
◯症状が進行した場合
|
肺がん | 15~40年 |
|
悪性中皮腫 (あくせいちゅうひしゅ) |
20~50年 |
|
びまん性胸膜肥厚 (びまんせいきょうまくひこう) |
30~40年 |
|
良性石綿胸水 | 10〜40年以上 |
|
アスベスト肺(石綿肺)の症状
アスベスト肺の初期症状としては、運動能力の低下、軽い息切れが生じます。
症状が進行していくと、呼吸困難、重度の息切れ、呼吸不全などの症状が生じます。
肺がんの症状
主な症状としては、風邪など一般的な呼吸器の病気にみられる、咳や痰(たん)、発熱、動悸、胸の痛み(胸痛)、息苦しさ(呼吸困難)などで、肺がん以外の呼吸器の病気と区別しにくいことがあります。
もっとも、肺がんが生成された場所や大きさによっては、ほとんど症状が出ない場合もあります。
悪性中皮腫の症状
悪性中皮腫の症状としては、胸の痛み、咳せき、大量の胸水により呼吸がしづらくなったり、胸に圧迫感が生じることが挙げられます。
また、原因がわからない発熱や体重が減ることもありますが、どの症状についても、悪性胸膜中皮腫だけに見られる症状ではないので早期発見することは難しいです。
びまん性胸膜肥厚の症状
びまん性胸膜肥厚の主な症状について、初めの頃は軽度の呼吸困難にとどまることが多いですが、症状が進行するにつれて、呼吸困難や反復性の胸痛を発症し、肺炎などの呼吸器の感染を繰り返すことがあります。
また、びまん性胸膜肥厚は後述する良性石綿胸水の後遺症として生じることが多いとされています。
良性石綿胸水の症状
良性石綿胸水は、半数近くが自覚症状ありません。
自覚症状がある場合は、胸の痛み、発熱、呼吸がしづらなくなるといった症状があります。
初期症状はある?
アスベストの初期症状としては、以下のような症状があります。
- 息切れが以前よりひどくなった
- 咳や痰の回数が増えた
- 痰の色が変化したり、血が混じったりする
- 激しい動悸がする
- 風邪の症状が長引いてなかなか治らない
- 微熱が続いている
- 高熱が出た
- 横になると息が苦しい
- 食欲が減退したり、急に体重が落ちたりした
- やたらに眠い
参考:石綿にばく露する業務に従事していた労働者の方へ|厚生労働省
アスベストの病気の検査はどこでできる?
アスベストの相談窓口としては、保健所、各都道府県の産業保健総合支援センター、労災病院、専門の病院などがあります。
また、アスベスト疾患センターでアスベストの病気について、詳しい検査、治療等を受けることができます。
参考:アスベスト疾患センター一覧|独立行政法人労働者健康安全機構
アスベストで病気になったときの保障とは?
建設アスベスト給付金制度を利用する(建設型)
建設アスベスト給付金制度とは、石綿にさらされる建設業務に従事していたことにより、石綿関連疾病(石綿肺、肺がん、悪性中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水)を患った労働者、一人親方、中小事業主(家族従事者等を含む)を対象として、条件を満たす場合に給付金を支給する制度です。
この給付金は、石綿関連疾病になった旨の医師の診断日、もしくは石綿肺に係るじん肺管理区分の決定日(石綿関連疾病により死亡したときは、死亡日)から20年以内に請求する必要があるため、請求期限に注意しましょう。
建設アスベスト給付金について、詳しくは以下をご覧ください。
国に対するアスベスト訴訟で和解手続を利用する(工場型)
国に対するアスベスト訴訟の和解手続とは、昭和 33 年 5 月 26 日から昭和 46 年 4 月 28 日までの間に、石綿を扱う工場において石綿に晒される作業に従事し、その結果、アスベストによる健康被害を被った方を対象に、国に対する訴訟手続の中で和解を行うというものです。
この手続きを行うには、証拠を集めた後に訴訟を提起し、判例をベースとして定められている和解要件の主張・立証を行います。
そして、和解要件について主張・立証ができた場合に、国が裁判上の和解に応じアスベスト訴訟は終了します。
和解手続を進める前提として、請求の期間内に訴訟の提起を行う必要があります。
アスベスト訴訟について、詳しくは以下をご覧ください。
労災の申請をする
石綿(アスベスト)にばく露された環境で働いていたことが原因となり、中皮腫や肺がんなど、アスベストによる疾患を発症した場合には、労災保険給付または特別遺族給付金が支給される場合があります。
なお、労災の申請ができる条件としては、労災保険に加入していること必要がありまる。
個人事業主の場合、労災保険に特別加入してたことが条件となります。
労災の請求については、給付内容によって請求期限があるため注意が必要です。
アスベストと労災について、詳しくは以下をご覧ください。
石綿健康被害救済制度による給付を請求する
石綿健康被害救済制度とは、アスベスト(石綿)により健康を害した人を早期に救済するために、アスベストによる健康被害を受けた方およびそのご遺族に対し医療費等の給付を支給する制度です。
この制度の対象となるのは、労災保険給付の対象とならなかった人です。
給付内容は、医療費や遺族への遺族給付を支給する「救済給付」、消滅時効(一定期間の経過により請求できなくなる)によって、労災保険から支給を受けられなくなった労働者の遺族のための「特別遺族給付金」があります。
石綿健康被害救済制度 について、詳しくは以下をご覧ください。
会社に対して損害賠償を請求する
アスベスト(石綿)を吸い込んでしまうような環境で労働者に仕事をさせていた会社に対して責任追及することが考えられます。
もっとも、会社に責任追及する場合には、それなりの証拠を揃える必要があります。
また、会社が誠実に交渉に応じてくれればいいですが、不誠実な対応を取られる可能性も否定できません。
したがって、まずはアスベストの救済制度や労災保険などを利用することを検討されたほうがいいでしょう。
会社に対して責任追及を検討する場合には、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
アスベストと裁判について、詳しくは以下をご覧ください。
アスベストで病気になった場合に弁護士に相談するメリット
アスベストで病気になった場合に弁護士に相談するメリットは以下のとおりです。
救済手続きの対象となるか見通しを聞ける
すでに説明したとおり、アスベストの救済手続きは複数あります。
自分がどの救済手続きを利用できる可能性があるのか自分で調べるのは大変です。
弁護士に相談することで、どの救済手続きを利用できる可能性があるのか、どの程度の金額を得ることができるのかといった点の説明を聞くことができます。
救済手続きに必要な書類や方法を教えてもらえる
救済手続きを受けるにあたっては、様々な書類を提出しなければなりません。
必要な書類を調べることは大変ですが、弁護士に相談することで必要な書類について整理して説明してもらえます。
相談して依頼する場合には救済手続きのサポートを受けられる
アスベスト問題について、弁護士に相談して依頼する場合には、必要書類の収集や、資料の取りまとめ、申請を弁護士に対応してもらうことができます。
また、申請に関する事柄で疑問や不安があれば、その都度、弁護士に相談して解消することができます。
まとめ
- アスベストで発症する5つの病気として、肺がん、悪性中皮腫、アスベスト肺(石綿肺)、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水がある。
- アスベストは潜伏期間が非常に長く、40年以上経過してから発症することがある。
- アスベストの相談窓口として、保健所、各都道府県の産業保健総合支援センター、労災病院、アスベスト関連の病気に詳しい各種病院がある。
- アスベスト被害者の救済方法については、①建設アスベスト給付金、②アスベスト訴訟の和解手続、③労災請求、④石綿健康被害救済制度、⑤会社に対する損害賠償請求がある。
当事務所では、第三者によって生命・身体・健康を害された被害者を救済することに注力する人身傷害部を設置しています。
アスベスト問題については、ご相談から事件処理まですべて人身障害部に所属する弁護士が対応していますので、ご安心してご相談ください。
また、当事務所では、面談での相談はもちろん、電話相談、オンラインでの相談も行っており、全国対応しています。
アスベストに関する相談は、初回無料で対応していますので、お気軽にお問い合わせください。