B型肝炎ウィルスの感染経路は、感染している母親からの胎児感染や性行為による感染があります。
日本では約100人に1人の方がB型肝炎キャリアであると推定されており、普通に日常生活を過ごすだけでも、B型肝炎ウイルスに感染してしまうおそれがあります。
このページでは、B型肝炎ウイルスに感染してしまう経路について詳しく解説をしていきます。
B型肝炎ウイルスの感染経路についてご興味のある方は、参考にしていただければ幸いです。
B型肝炎とは?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスが原因で肝臓に炎症がおきてしまう病気のことです。
B型肝炎は、「急性肝炎」と「慢性肝炎」の2つに分けられます。
「急性肝炎」を発症した場合は、数週間程度の期間を経て自然に治癒することが一般的です。
この場合、一次的な感染のみで回復するため、B型肝炎ウイルスのキャリアとなることはほとんどありません。
これに対し、「慢性肝炎」を発症する場合というのは、感染時から約6ヵ月以上が経過してもB型肝炎ウイルスを体内から排除できなかった場合に限られます。
この場合には、約一生涯にわたり、B型肝炎ウイルスを体内に保有するキャリアとなってしまいます。
日本においては、約100人に1人の方がB型肝炎ウイルスのキャリアであると考えられています。
B型肝炎の感染経路は?
B型肝炎の感染経路には、「垂直感染」と「水平感染」の2種類があります。
- 「垂直感染」とは、B型肝炎ウイルスに感染している母親から出生時に感染することです。
- 「水平感染」とは、母子感染以外の感染のことを指します。
B型肝炎の感染の仕組み
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスに持続感染している人(B型肝炎キャリア)の血液や体液(唾液・精液・膣分泌液など)を介して感染します。
B型肝炎キャリアの方の血液や体液にはB型肝炎ウイルスが含まれていますので、これらが傷口、粘膜から体内に入ることでB型肝炎ウイルスに感染してしまうのです。
垂直感染とは?
垂直感染とは、ウイルスが親から子どもに直接感染してしまう感染様式のことです。
直接の感染のみを指しますので、親から子どもへの感染といっても、父親から子どもに感染した場合は、垂直感染とはいいません。
垂直感染とは、母親から子どもへの感染(母子感染)のみを指します。
母子感染は、妊娠中の「胎内感染」、出産時の「産道感染」、出生後の「経母乳感染」の3つのタイミングで起こる可能性があります。
しかし、B型肝炎ウイルスの場合は、出産時の「産道感染」以外はほとんど感染の可能性はないといわれています。
水平感染とは?
水平感染とは、感染源から周囲にどんどん感染が広がっていってしまう感染様式のことです。
水平感染は、「接触感染」、「飛沫感染」、「空気感染」、「媒介物感染」の4つに分類されます。
B型肝炎ウイルスは、感染者の血液や体液といった媒介物を介して感染しますので、水平感染の中でも「媒介物感染」をするウイルスです。
キスはB型肝炎の感染経路となる?
キスはB型肝炎の感染経路となる可能性があります。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液を介して感染します。
いわゆる「バードキス」と呼ばれる唇同士を軽く触れ合わせる程度のキスであれば、他人の血液や唾液が口内(粘膜)から体内に入ってしまう可能性は低いため、B型肝炎ウイルスに感染するリスクはほとんどありません。
しかし、「ディープキス」と呼ばれるお互いの舌を口内に差し入れるようなキスの場合は、他人の血液や唾液を体内に入れてしまうこととなるため、B型肝炎ウイルスに感染するリスクがあります。
B型肝炎ウイルスは体液よりも血液中に多く含まれていますので、歯肉炎・口内炎・虫歯などが原因で口内に出血がある場合には、より感染リスクが高まりますので注意が必要です。
性行為はB型肝炎の感染経路となる?
性行為によってB型肝炎ウイルスに感染してしまうリスクは非常に高いです。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液を介して感染します。
性行為では他人の唾液・精液・膣分泌液といった体液に接触する機会が多い上に、これらの体液には血液が微量に含まれることが多々あります。
昨今では、成人がB型肝炎ウイルスに感染する経路として最も多いものは性行為との報告もあります。
性行為は、B型肝炎ウイルスの感染リスクが非常に高いと言わざるを得ません。
B型肝炎ウイルスが性行為で感染する確率や予防法について、より詳細に知りたい方は、以下の記事も合わせてご参照ください。
お風呂はB型肝炎の感染経路となる?
お風呂はB型肝炎の感染経路とはならないといわれています。
B型肝炎ウイルスの感染が成立するためには、一定量以上のウイルスが体内に入る必要があります。
公衆浴場などでは、湯船を介して他人の血液や体液に触れる機会が0とはいえません。
しかし、お風呂の場合は血液や体液が混じったとしても、お湯で薄められるので、仮にB型肝炎キャリアの方と同じ湯船を使用したとしても、感染が成立するほどの量のウイルスが体内に入ることはありません。
そのため、通常の利用方法でお風呂を利用している場合には、B型肝炎ウイルスに感染する可能性はないといえます。
B型肝炎ウイルスがお風呂で感染する確率や予防法について、より詳細に知りたい方は、以下の記事も合わせてご参照ください。
トイレはB型肝炎の感染経路となる?
トイレはB型肝炎の感染経路とはなりません。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液を介して感染します。
しかし、尿や便といった排泄物を介しての感染リスクはありません。
そのため、通常の利用方法でトイレを利用している場合には、B型肝炎ウイルスに感染する可能性はないといえます。
スポーツはB型肝炎の感染経路となる?
スポーツがB型肝炎ウイルスの感染経路となる可能性は低いといわれています。
しかし、スポーツの中でも、体の激しい接触や出血を伴うスポーツの場合には、感染例が報告されています。
例えば、ラグビーや相撲、レスリング、格闘技などは体の激しい接触を伴う上に、出血の可能性がありますので、他のスポーツに比べると感染のリスクが生じてしまいます。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液が体内に入ることが原因で感染します。
そのため、体の激しい接触や出血を伴うスポーツをする場合には、他人の血液や体液が自らの傷口、粘膜に接触しないよう対処することが必要です。
遊びはB型肝炎の感染経路となる?
遊びの中でB型肝炎ウイルスに感染する可能性は低いといわれています。
しかし、遊びの中でも、保育園や幼稚園といった場所で集団生活を送る子ども同士の遊びでの感染例は報告されています。
幼い子ども同士の遊びでは、転んで傷を作るなど、出血を伴う場合があります。
幼い子どもは、衛生観念が未熟なこともあり、他人の血液に触れることに対する嫌悪感等が大人よりも薄いことがよくあります。
そのため、他人の血液や体液を体内に入れてしまう確率が高く、B型肝炎ウイルスに感染してしまうことがあるのです。
傷口ができてしまったらよく消毒して絆創膏を貼る、他人の血液には触らないということを徹底することが必要です。
血液に触ってしまった場合は?
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液を介して感染します。
中でも、血液にはB型肝炎ウイルスの量が多く含まれており、感染リスクは非常に高いです。
血液に触ってしまった部分に傷口などがある場合には、感染の危険があります。
他人の血液に触ってしまった場合には、すぐに血液を入念に洗い流した上で消毒しましょう。
また、医療機関でB型肝炎免疫グロブリン製剤を注射することで感染リスクを下げることができます。
B型肝炎ウイルスに対するワクチン接種をしていない場合には、B型肝炎免疫グロブリン製剤の注射に加えて、ワクチンの接種も行いましょう。
B型肝炎は経口感染するの?
B型肝炎ウイルスが経口感染することはほとんどありません。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液を介して感染します。
B型肝炎ウイルスの感染が成立するためには、一定量以上のウイルスが体内に入る必要があります。
確かにB型肝炎キャリアの唾液にもウイルスが含まれていますが、食器の使いまわしや食べ物のシェアなどの行為で付着する唾液の量は微量であり、感染が成立するほどのウイルスは含まれていません。
そのため、回し飲みや食べ物のシェアなどの行為にとどまる場合には、B型肝炎ウイルスに感染する可能性はありません。
ただし、唇や口内から出血がある場合には、血液によって感染のリスクがありますので、注意が必要です。
B型肝炎は空気感染するの?
B型肝炎ウイルスは空気感染することはありません。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液を介して感染します。
くしゃみ・せき・呼気などによって、空気中には様々な人の唾液などが含まれています。
しかし、B型肝炎ウイルスは、風邪やインフルエンザといった一般的な感染症と比べると感染力はそこまで強くありません。
空気中に含まれる程度のウイルス量であれば、B型肝炎ウイルスに感染してしまうリスクはないといえます。
B型肝炎は感染経路が不明なことも
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液を介して感染しますが、人の身体の外でも、少なくとも7日間は生存するとの報告があります。
そのため、B型肝炎キャリアの血液や体液に気付かないうちに接触してしまい、感染してしまうという可能性があります。
このような感染の場合、本人には全く心当たりがなく、感染に気付かないままになってしまうというリスクがあります。
B型肝炎の症状
B型肝炎の症状としては、以下のような症状があります。
急性肝炎の症状 |
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慢性肝炎の症状 |
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慢性肝炎となった場合には、さらに肝硬変、かん癌に進行する可能性もありますので、定期的に医療機関を受診する必要があります。
B型肝炎の症状について、詳しくは以下のページをご覧ください。
B型肝炎が疑われる場合
B型肝炎ウイルスに感染しているかも?と思った時にとるべき5ステップについて解説をします。
過去にB型肝炎ウイルスに感染するリスクの高い行為をしてしまったという方は、ぜひ参考にしてください。
B型肝炎の検査を受ける
B型肝炎ウイルスに感染しているかも?と思ったら、まずは検査を受けましょう。
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査を受けることで確かめることができます。
B型肝炎の検査は、地方自治体が実施しているウイルス検査、職場の健康診断、妊婦健康診査(妊婦健診)、手術前検査、任意の医療機関で受けることができます。
B型肝炎検査について、より詳細に知りたい方は、以下の記事も合わせてご参照ください。
専門医を受診する
B型肝炎検査で、B型肝炎ウイルスに感染していることがわかったら、なるべく早く専門医(肝疾患診療連携拠点病院)を受診しましょう。
肝臓は自覚症状が出にくい臓器ですので、自覚症状が現れるまで対処をしなかった場合、肝硬変や肝臓がんといった重篤な病気に進行する可能性があります。
医療費の助成を申請する
B型肝炎ウイルスに感染している方は、お住いの自治体から医療費の助成を受けられる場合があります。
詳細な対象者は自治体によって異なりますが、B型肝炎ウイルスの「検査費用」や「治療費」が助成の対象とされています。
お金に余裕がなくて検査や治療が受けられないということがないように、助成もうまく利用しましょう。
医療費の助成について、より詳細に知りたい方は、以下の記事も合わせてご参照ください。
B型肝炎給付金の申請を検討する
B型肝炎給付金は、過去に実施された集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに感染してしまった方に対して、国から支払われるお金です。
B型肝炎給付金の額は病状などによって異なりますが、50万円〜3600万円を受け取ることができる可能性があります。
ただし、B型肝炎給付金を受け取るためには、国を相手に裁判をしなければいけません。
また、この裁判は2027年(令和9年)3月31日までに行う必要があります。
B型肝炎給付金について、より詳細に知りたい方は、以下の記事も合わせてご参照ください。
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弁護士法人デイライト法律事務所では、そんな方のために無料で診断できるシミュレーターをご用意しております。
ご興味のある方は、以下のシミュレーターで無料で診断してみてください。
B型肝炎に詳しい弁護士へ相談する
B型肝炎給付金をもらうためには、大きく分けて3つの手順を踏まなければなりません。
⑵国に裁判を起こす
⑶社会保険診療報酬支払基金に給付金を請求する
中でも、必要書類の収集は自分がB型肝炎給付金の対象となるのかを判断するためにも、国にB型肝炎給付金の対象者であると認めてもらうためにも重要です。
自分でこれら3つの手順を踏むことが難しいと思われた場合には、弁護士に相談することをオススメします。
B型肝炎訴訟をする際にどんな弁護士に相談すればよいかについて、より詳細に知りたい方は、以下の記事も合わせてご参照ください。
B型肝炎の感染予防のポイント
B型肝炎ワクチンを接種する
B型肝炎のワクチンは安全性と有効性に優れており、WHO(世界保健機関)でも推奨されています。
40歳までにワクチンを接種することで、約95%の方が抗体を獲得していると報告されています。
不特定多数との性交渉を避ける
B型肝炎ウィルスは、精液や膣分泌液に含まれているため、性交渉によって感染の可能性があります。
出血や粘膜の損傷をともなう性行為は感染の危険性が高いと考えられています。
したがって、不特定多数との性交渉を避けることで感染の機会を減らすことができます。
また、性交渉の場合には、コンドームを使用することで、感染のリスクを軽減することができます。
まとめ
この記事では、B型肝炎ウイルスの感染経路について複数パターンに分けて解説をしました。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液や体液が体内に入ることで感染します。
感染には一定量以上のウイルスが体内に入る必要がありますので、お風呂やトイレ、食器の使いまわしなどの日常生活に伴う行為では感染リスクはほとんどありません。
しかし、ディープキスや性行為、激しい体の接触や出血リスクのあるスポーツといった行為には、感染リスクが伴います。
自分がB型肝炎ウイルスに感染しているかも?と思った方がいましたら、すぐにB型肝炎の検査を受けることをオススメします。
B型肝炎ウイルスに感染していることがわかった場合には、医療費の助成や給付金の申請などを検討しつつ、適切な医療を受けることが必要です。
助成や給付金の対象かわからない、受け取りの手続きについて相談したいなどの悩み事がある方は、1度弁護士にご相談ください。
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