B型肝炎の給付金をもらった人の割合は、提訴者(裁判をした人)に占める割合では約78.1%にものぼります(令和5年1月31日時点)。
しかし、国が推計している受給対象者に占める割合で考えると、約21.4%の方しかB型肝炎の給付金を受け取っていません。
想定される受給対象者全体で考えると、まだまだ多くの方が給付金を受け取ることができていないという現状があります。
B型肝炎給付金は最小50万円〜最大3600万円を受け取ることができる可能性がある制度です。
B型肝炎給付金の対象者ではないと勘違いしたまま給付金を受け取らずにいるのは、あまりにももったいない金額だと思いませんか?
この記事では、B型肝炎給付金の金額や支給条件について、わかりやすく解説をしていきます。
B型肝炎給付金の対象者かも?と少しでも思われている場合には、ぜひ参考にしてください。
B型肝炎給付金をもらった人の割合
B型肝炎給付金をもらった人の割合は、提訴者に占める割合では約78.1%にものぼります。
これに対し、受給対象者全体に占める割合では、約21.4%にしか過ぎません。
実際の数字から詳しく説明をしていきます。
B型肝炎給付金を受け取るために国を相手に訴訟を起こした人の数と和解が成立した人の数が法務省により発表されています。
法務省の発表によると、令和5年1月31日時点で、国に対して訴訟を起こした人の数は、10万9518名です。
その中で、国と和解が成立した人は8万5616名と報告されています。
つまり、国に対してB型肝炎訴訟を提起した人のうち、約78.1%の方が国との間で和解を成立させているのです。
和解が成立した場合、基本的には給付金の受け取りまでスムーズに行われます。
そのため、B型肝炎訴訟を提起した方のうち、約78.1%に近い方が給付金を受け取っていると考えられます。
また、残りの約22%の方についても、現在裁判で争っている方が一定数含まれており、全ての方が請求を認められなかったというわけではありません。
B型肝炎給付金の受給率は、提訴者に占める割合としては高いと感じる方が多いのではないでしょうか。
このデータから、しっかりと訴訟の準備をすることで、多くの方が給付金を受け取ることができると言えます。
参考:B型肝炎訴訟|法務省
受給対象者全体に占める割合
現在、日本国内では約110〜140万人のB型肝炎患者が存在すると推計されています。
このうち、昭和23年から昭和63年までの間に受けた集団予防接種等の際に、注射器が連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方は、最大で40万人以上いると考えられています。
国がB型肝炎給付金の受給者対象者であると考えている人数が約40万人であるのに対し、実際に国との間で和解が成立した方は、令和5年1月31日時点では8万5616名しかいません。
つまり、国がB型肝炎給付金の受給者対象者であると考えている約40万人のうち、約21.4%の方しか実際に給付金を受け取ることができていないのです。
国は、推計よりもはるかに少ない人数の方しかB型肝炎給付金を受給していないという現状を鑑み、平成28年と令和3年に給付金の請求期間を延長する法改正を行っています(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律)。
参考:平成28年度改正 特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律
参考:令和3年度改正 特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律
このことからも、実際にB型肝炎給付金を受け取っている人がいかに少ないかがわかると思います。
なぜこのような事態が起こっているのかというと、1番の要因は、自らが受給者であるということに気づいていない方が多すぎるということです。
そもそも、B型肝炎ウイルスに感染していたとしても、肝炎などの症状が出ておらず、自らが感染者であるという自覚がない方も多数いると考えられます。
参考:厚生労働省
B型肝炎給付金をもらった人の声
実際にB型肝炎給付金の支給を受けた当事務所の解決事例や、B型肝炎給付金をもらった人のブログをご紹介します。
手続きの流れなどについて心情とともに詳しく記載されているので、B型肝炎訴訟を提起する場合の参考にしてください。
慢性肝炎で1250万円の給付金の支給を受けた事例
40代男性のAさんは、B型肝炎ウィルスが原因で慢性肝炎を発症しました。
Aさんは、自分もB型肝炎給付金の対象になるのではないかと思い、デイライト法律事務所に相談に来られ、そのままご依頼されることになりました。
Aさんのご両親のB型肝炎ウィルスの検査など訴訟提起に向けて準備し、訴訟提起して最終的に和解に至るまで約2年5ヶ月の時間がかかりました。
弁護士は、Aさんとご両親の状況を確認し、必要となる検査、資料を一覧にまとめました。
必要な検査をAさん、ご両親に受けてもらうとともに、弁護士は必要となる医療記録を収集を行いました。
弁護士は、こうした資料をまとめ訴訟提起をしています。
第1回の裁判期日において、国側から具体的な回答(和解できるか、追加資料が必要か等)をするには、約11ヶ月程度かかると説明されました。
その後は、2〜3ヶ月に1回、裁判期日が開かれ、約11ヶ月が経過した頃に、国側から追加の資料の提出を求められましたので、弁護士において資料を収集し、追加で提出しています。
提出後、国側から和解の上申が出され、次の裁判期日で和解は成立となりました。
和解成立後、社会保険診療報酬支払基金に給付金の請求をして、約1ヶ月後に無事着金しました。
最後に、弁護士は、Aさんに弁護士費用の説明等の事件終了の報告を行い、給付金をAさんの口座に振込をして弁護士のサポートは終了となります。
このように、B型肝炎の給付金の請求は数年かかるため、ご自身が対象になるのでは?と思われたら、お早めに相談されることをお勧めします。
B型肝炎訴訟の記録 B型肝炎の治療・新薬・研究などの関連情報もチェック ウルトラコウちゃんブログ
アメーバブログでブログを開設されている「ウルトラコウちゃん」さんは、B型肝炎訴訟の体験談を詳細に書き残しています。
ウルトラコウちゃんさんは、平成30年7月に弁護士にB型肝炎訴訟について相談し、令和元年12月に国との間で和解が成立しています。
そして、令和2年2月には給付金1250万円を受給したと報告しています。
弁護士への相談から約1年8ヵ月で給付金を受け取っているため、スムーズに訴訟の準備等が行われたことが伺えます。
平成30年8月 法律事務所でB型肝炎訴訟委任契約
平成30年10月 B型肝炎訴訟を提訴
平成30年12月 第1回期日
令和元年7月 法律事務所にて収集した書類を裁判所へ提出
令和元年11月 和解の意思確認
令和元年12月 和解の成立
令和2年2月 給付金受け取り
参考:B型肝炎訴訟の記録 B型肝炎の治療・新薬・研究などの関連情報もチェック ウルトラコウちゃんブログ
B型肝炎訴訟の和解までの記録
アメーバブログでブログを開設されている「松島かもめ」さんは、B型肝炎キャリアから慢性肝炎に進行したことをきっかけとして、B型肝炎訴訟を提起しました。
松島かもめさんは、法律事務所選びから和解の成立、給付金の振込までを体験談として丁寧に書き記しています。
松島かもめさんは、令和2年6月から法律事務所を探し始め、令和5年6月に国との間で和解が成立しています。
そして、令和5年8月には給付金を受給しています。
金額については記載されていませんが、慢性肝炎の発覚をきっかけとして、B型肝炎訴訟を提訴されているので、おそらく1250万円を受給したと考えられます。
法律事務所の決定から給付金の受け取りまでに約3年2ヵ月かかった原因としては、2度追加資料を提出していることにあると思われます。
追加資料の検討に時間がかかるため、何度も追加資料を提出することになると訴訟が長引く傾向にあります。
令和2年6月 法律事務所でB型肝炎訴訟委任契約
令和3年1月 B型肝炎訴訟を提訴
令和3年4月 第1回期日
令和4年1月 追加資料①を裁判所へ提出
令和4年9月 追加資料②を裁判所へ提出
令和5年6月 和解の成立
令和5年8月 給付金受け取り
B型肝炎給付金をもらえる条件
B型肝炎給付金をもらえる条件は、国が要求している要件を全て充足することです。
国が求める要件は、①B型肝炎の一次感染者、②B型肝炎の二次感染者、③B型肝炎の三次感染者、④これらの方のご遺族(相続人)のどの立場でB型肝炎給付金を請求するかによって異なります。
一次感染者 | 集団予防接種等を受けたことでB型肝炎ウイルスに感染した方 |
二次感染者 | 一次感染者の親からの感染 |
三次感染者 | 二次感染者の親からの感染 |
これらの方のご遺族 | ※感染者本人が給付金を受給しなかった場合のみ請求可能 |
一次感染者の要件
国に一次感染者であると認めてもらうための条件は、以下の通りです。
- B型肝炎ウイルスに持続感染している
- 満7歳となる誕生日の前日までに集団予防接種等を受けている
- 集団予防接種等における注射器の連続使用があった
- 母子感染でない
- その他集団予防接種等以外の感染原因がない
この条件の1つでも証明できなかった場合には、給付金を受け取ることはできませんので、慎重に立証を行う必要があります。
二次感染者の要件
国に二次感染者であると認めてもらうための条件は、以下の通りです。
- 二次感染者本人がB型肝炎ウイルスに持続感染している
- 母親(父親)が一次感染者の要件をすべて満たしている
- 母子(父子)感染した
この条件の1つでも証明できなかった場合には、給付金を受け取ることはできませんので、慎重に立証を行う必要があります。
三次感染者の要件
国に三次感染者であると認めてもらうための条件は、以下の通りです。
- 三次感染者本人がB型肝炎ウイルスに持続感染している
- 母親(父親)が二次感染者の要件をすべて満たしている
- 母子(父子)感染した
この条件の1つでも証明できなかった場合には、給付金を受け取ることはできませんので、慎重に立証を行う必要があります。
B型肝炎給付金についての知恵袋的Q&A
B型肝炎給付金について、相談者の方からよく尋ねられる質問についてお答えします。
B型肝炎給付金をもらえない人はどんな人?
- 一過性の感染
- 生年月日が対象期間外
- 集団予防接種等を受けたのが満7歳の誕生日以降
- 集団予防接種等以外の原因による感染
- 給付金の対象者でない母親または父親からの母子(父子)感染
一過性の感染
B型肝炎給付金は、B型肝炎ウイルスに持続感染している方の救済を目的として支払われるお金です。
そのため、過去に集団予防接種等でB型肝炎ウイルスに感染した場合や、一次感染者または二次感染者の親から感染した場合であっても、一次的な感染で治癒した場合には、B型肝炎給付金を受け取ることはできません。
生年月日が対象期間外
B型肝炎給付金は、1941(昭和16)年7月2日〜1988(昭和63)年1月27日までに生まれた方を対象としています。
この期間外に生まれた方については、一次感染者の要件を満たしません。
なお、1988年以降に生まれた方については、二次感染者、三次感染者の可能性がありますので、親が一次または二次感染者であるかを確認する必要があります。
集団予防接種等を受けたのが満7歳の誕生日以降
B型肝炎ウイルスは、免疫機能の発達が不十分な幼少期に感染した場合、ほとんどの方が持続感染に移行します。
B型肝炎給付金は、国の行為が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方を対象に支払われるお金です。
満7歳の誕生日より後に集団予防接種等を受けた方の場合、免疫の関係から、国の行為によってB型肝炎ウイルスに持続感染したと考えるのは困難なため、このような方は給付金の対象外とされています。
集団予防接種等以外の原因による感染
B型肝炎給付金は、集団予防接種等時の注射器の使いまわしという国の行為によって、B型肝炎ウイルスに持続感染した方に支払われるお金です。
そのため、集団予防接種等以外の原因による感染の場合には、給付金の対象外とされています。
給付金の対象者でない親からの感染
B型肝炎給付金は、あくまで国の行為に起因するB型肝炎ウイルスの持続感染に対して支払われるお金です。
そのため、親が給付金の対象でない場合には、母子(父子)感染したとしても、子どもも受給条件を満たさないことになります。
B型肝炎給付金はどれくらいで振り込まれる?
ただし、追加の資料提出を何度も求められた場合などでは、2年以上の時間がかかることも少なくありません。
B型肝炎訴訟の大まかな流れとしては、以下の通りです。
- ① 訴訟の準備
- ② B型肝炎訴訟の提起
- ③ 和解成立
- ④ 社会保険診療報酬支払基金に給付金の支払いを請求
- ⑤ 給付金の支払い
訴訟の準備 〜 B型肝炎訴訟の提起までにかかる時間
訴訟の準備 〜 B型肝炎訴訟の提起までにかかる時間は、平均すると約3〜5ヵ月程度かかるケースが多いです。
訴訟の準備段階では、裁判所に提出するための証拠(戸籍・カルテ等)を集めるのに特に時間がかかります。
証拠収集の他には、裁判所に提出するための訴状などを作成することになります。
B型肝炎訴訟の提起 〜 和解成立までにかかる時間
B型肝炎訴訟の提起〜和解成立までにかかる時間は、平均すると約1年〜1年6ヵ月程度かかるケースが多いです。
訴訟を提起した後は、主に国が証拠資料の精査を行います。
国が証拠を精査している中で、足りない資料などがあれば、追加で提出するよう求められることがあります。
和解成立 〜 社会保険診療報酬支払基金に給付金の支払いを請求までにかかる時間
和解成立〜社会保険診療報酬支払基金に給付金の支払いを請求までにかかる時間は、平均すると約2ヵ月程度かかるケースが多いです。
和解が成立した場合、裁判所が「和解調書」を作成します。
和解調書が作成されたら、住民票などの必要書類とともに、社会保険診療報酬支払基金に給付金の支払いを請求します。
社会保険診療報酬支払基金に給付金の支払いを請求 〜 給付金の支払いまでにかかる時間
社会保険診療報酬支払基金に給付金の支払いを請求〜給付金の支払いまでにかかる時間は、平均すると約1ヵ月半程度かかるケースが多いです。
社会保険診療報酬支払基金に給付金の支払いを請求したあとは、特にすべき手続きはありませんので、給付金が支払われるまで待機するだけで問題ありません。
まとめ
B型肝炎の給付金を貰った人の割合は、提訴者に占める割合では約78.1%にものぼります(令和5年1月31日時点)。
つまり、しっかりと訴訟準備をした場合、多くの方が給付金を受け取ることができているのです。
しかし、国が推計している受給対象者に占める割合で考えると、約21.4%の方しかB型肝炎の給付金を受給できていません。
推計される受給対象者全体で考えると、まだまだ多くの方が給付金を受け取ることができていないのです。
B型肝炎給付金は、最小でも50万円、最大では3600万円ものお金を受け取ることができる制度です。
確かに、訴訟の準備には時間と手間がかかります。
しかし、給付金を受け取ることで、将来かかる医療費などを心配せずに適切な医療を受けることができます。
受給対象者の可能性があるにもかかわらず、約29万人の方が提訴すらしていない現状を重く受け止め、国も請求期間を延長する法改正を2回行っています。
B型肝炎給付金の受給対象者であるかは、専門的な観点から判断する必要があるため、自己判断する際には相当の注意を払わなければなりません。
もしB型肝炎給付金の受給対象者かも?と思ったら、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人デイライト法律事務所では、B型肝炎訴訟に関する相談料と着手金はいただいておりません。
遠方等の理由で事務所に来所いただくことが難しい方には、電話等を利用したオンラインでの相談も受け付けています。
B型肝炎訴訟についてお困りのことがある方は、お気軽にお問い合わせください。