ハンコ注射の跡がない理由としては、「個人の体質による反応の違い」「BCGの接種方法が適切でなかった」「接種箇所が自分では目視しにくい場所」などが考えられます。
ハンコ注射とは、BCG(結核)ワクチンの接種方法の1種です。
B型肝炎給付金を受け取るための受給要件の中には、「(一次感染者が)満7歳の誕生日前日までに集団予防接種またはツベルクリン反応検査を受けていること」という要件があります。
この要件を満たしていることを証明するにあたっては、母子手帳・予防接種台帳・接種痕(ハンコ注射の跡など)が非常に重要な証拠となります。
特に、母子手帳や予防接種台帳がない方の場合、ハンコ注射の跡などの接種痕を証拠として提出することになるため、接種痕の有無はとても大切です。
この記事では、ハンコ注射の跡がない理由について解説を行います。
ハンコ注射の跡がない場合の対処法についても解説していますので、B型肝炎給付金を請求しようと考えているのに、母子手帳・予防接種台帳・接種痕のいずれもないため、請求できないのではないか?と思っている方は、ぜひ参考にしてください。
ハンコ注射とは?
ハンコ注射とは、BCG(結核)ワクチンの接種方法のことです。
現在行われているBCGの予防接種では、9つの針が3×3に等間隔で固定されている特殊な接種器が用いられています。
スタンプのような管針を使い、皮膚に押し付けるように接種を行うことから、現在のBCGワクチンは「ハンコ注射」や「スタンプ注射」と呼ばれています。
BCGとは?
BCGは、牛型結核菌を弱毒化させて作られた生ワクチンで、結核予防のために接種されます。
BCGの接種は、現在は「経皮法」(けいひほう)であるハンコ注射で行われていますが、昭和42年(1967年)3月までは「皮内法」(ひないほう)で行われていました。
皮内法とは、注射器で上腕部の皮内に注射して接種する方法です。
皮内法でBCGを接種した場合、5〜20mm程度の大きさの目立つ瘢痕(はんこん)が残るケースが多かったため、昭和42年以降は現在のハンコ注射に切り替えられました。
種痘とは?
種痘(しゅとう)とは、天然痘予防のために行われていた予防接種のことです。
種痘の接種は、「乱刺法」と「切皮法」で行われていました。
乱刺法(らんしほう)は、上腕部に痘苗(とうびょう)を塗った後、乱刺針で直径3〜5mmの円内を強く押すように無数の小切れ目を入れる方法です。
切皮法は、上腕部に痘苗を塗った後、種痘針でメス状の切れ込み(通常は十字に5mm程度)を入れ、そこに痘苗をすり込む方法です。
いずれの方法も、5〜20mm程度の大きさの目立つ瘢痕(はんこん)が残ることが多いです。
種痘には重篤な副作用(脳炎、全身性種痘疹など)のリスクがあり、安全性に課題があったため、昭和51年(1976年)には予防接種法が改正され、日本では接種義務がなくなりました。
その後、昭和55年(1980年)には天然痘ウイルスの根絶をWHOが宣言し、法律的にも種痘は廃止されています。
ハンコ注射の跡がないのはどうして?
ハンコ注射の跡がない理由としては、以下のような理由が考えられます。
個人の体質による反応の違い
BCGを接種した場合、通常は接種後10日前後から接種部位が発赤し、硬結(膨れ)が現れ始めます。
接種後2〜3週間頃になると、接種部位が更に発赤・硬結し、時に化膿する(膿む)こともあります。
接種後1〜2か月頃が最も反応が強く、接種部位に痂皮(かさぶた)ができます。
その後、徐々に症状は治まり、最終的に小さな瘢痕が残ります。
しかし、BCG接種後の反応には個人差があるため、このような経過をたどらないケースもあります。
また、正常に免疫を獲得していたとしても、接種部位に瘢痕が残らないことがあります。
BCGの接種方法が適切でなかった
以下のようにBCGの接種方法に問題があった場合、免疫反応がうまく働かず、接種痕が残らないことがあります。
- 管針を皮膚に対して垂直に十分押し付けられなかった
- ワクチン液の量が少なかった
- 使用した管針の先端が鈍かった
- 管針を押し付ける回数(圧刺数)が少なかった
接種箇所が自分では目視しにくい場所
BCGは、左腕の上腕外側の中央部に接種されていることが一般的です。
しかし、中には肩に近い部分など、自分では目視しにくい場所に接種されているケースもあります。
このような場所に接種痕がある場合、自分には接種痕がないと勘違いしてしまうことがあります。
ハンコ注射の跡とB型肝炎給付金の関係
B型肝炎給付金を受け取るためには、一定の受給要件を満たす必要があります。
受給要件の中には、「(一次感染者が)満7歳の誕生日前日までに集団予防接種またはツベルクリン反応検査を受けていること」というものがあります。
これを証明するにあたっては、母子手帳、予防接種台帳、接種痕(ハンコ注射の跡など)が非常に重要な証拠となります。
母子手帳や予防接種台帳から集団予防接種等を受けたことを証明できる方は問題ありませんが、このような証拠がない方の場合には、ハンコ注射の跡がとても大切なのです。
B型肝炎給付金とは?
B型肝炎給付金は、昭和23年(1948年)7月1日から昭和63年(1988年)1月27日までの間に集団予防接種等を受けた際に、注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した方や、その方から母子感染・父子感染した方等に対して、国から支給される給付金です。
現在、B型肝炎給付金の対象者とされている方は、以下のいずれかにあてはまる方に限られます。
一次感染者 | 集団予防接種等を受けた際に、注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した方 |
二次感染者 | 一次感染者の方から母子または父子感染した方 |
三次感染者 | 二次感染者の方から母子または父子感染した方 |
相続人(ご遺族) | 一次〜三次感染者の方の相続人 ※感染者本人が給付金を受け取っていない場合に限られます |
B型肝炎給付金の対象者の場合、最小50万円〜最大3600万円を国から受け取ることができます。※
※受け取ることができる金額は、病状や発症してからの経過年数等によって異なります。
B型肝炎給付金を受ける要件
B型肝炎給付金を受ける要件は、一次感染者・二次感染者・三次感染者・相続人のどの立場から請求するかによって異なります。
【一次感染者】
- 昭和16年(1941年)7月2日から昭和63年(1988年)1月27日までの間に生まれていること
- 満7歳の誕生日前日までに集団予防接種またはツベルクリン反応検査を受けていること
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 集団予防接種等以外の感染経路がないこと
【二次感染者】
- 親が一次感染者の要件を全て満たすこと
- 本人がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 母子感染または父子感染によって感染したこと
【三次感染者】
- 親が二次感染者の要件を全て満たすこと
- 本人がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 二次感染者の親から母子感染または父子感染によって感染したこと
【相続人】
- 感染者本人が亡くなられた場合、その相続人であること
ハンコ注射の跡がないとどうなる?
B型肝炎給付金を受け取るための要件の1つに「満7歳の誕生日前日までに集団予防接種またはツベルクリン反応検査を受けていること」というものがあります。
集団予防接種等を受けたことを証明する手段として、母子手帳・予防接種台帳・接種痕(ハンコ注射の跡など)のいずれかが重要な証拠となります。
母子手帳や予防接種台帳がある方は、これらから集団予防接種等を受けたことを証明できるため、ハンコ注射の跡がなくても問題ありません。
しかし、母子手帳や予防接種台帳がない方の場合は、集団予防接種等を受けたことを証明するために、ハンコ注射の跡などの接種痕があることを証拠として提出する必要があります。
母子手帳や予防接種台帳がなく、ハンコ注射の跡もない場合、集団予防接種を受けた事実を証明する重要な証拠が欠けてしまうため、B型肝炎給付金の請求が困難になる可能性があります。
医師に接種痕意見書を作成してもらう
母子手帳や予防接種台帳がなく、ハンコ注射の跡などの接種痕も確認できないという方の場合は、医師に接種痕意見書を作成してもらうことをおすすめします。
ハンコ注射の跡は、その残り方に個人差があります。
また、適切な接種方法でなかったために、接種痕がもともと薄い場合もあります。
他にも、接種箇所が肩に近い場所など、自分では目視しにくい場所ということも考えられます。
いずれの場合であっても、医師であれば接種痕を確認できる場合がありますので、接種痕意見書を作成してもらいましょう。
受診する医療機関は、かかりつけの病院や皮膚科が良いでしょう。
参考様式:接種痕意見書|厚生労働省
ハンコ注射跡についてのQ&A
ハンコ注射の跡についてよくあるご質問にお答えします。
ハンコ注射の跡はいつ消える?
また、体質やBCGの接種方法等によって、接種してすぐの頃からハンコ注射の跡が薄い方もいます。
なぜハンコ注射は廃止されたのですか?
ハンコ注射(BCG)が廃止された理由としては、「再接種の医学的効果が明らかではないこと」「BCG接種を繰り返すことによって、結核に罹患したときの診断が困難になっていたこと」「諸外国でBCG再接種を廃止する国が多くなったこと」などが挙げられます。
昔は小学生1年生や中学校1・2年生の時にツベルクリン反応検査を行い、陰性だった人には追加でハンコ注射が行われていました。
しかし、この制度は2003年(平成15年)に廃止されています。
現在、ハンコ注射は生後5ヵ月〜8ヵ月未満の乳幼児期に1度のみ接種されています。
まとめ
B型肝炎給付金を受け取るための受給要件の中には、「満7歳の誕生日前日までに集団予防接種またはツベルクリン反応検査を受けていること」というものがあります。
集団予防接種等を受けたことを証明するためには、母子手帳・予防接種台帳・接種痕(ハンコ注射の跡など)のいずれかが重要な証拠となります。
そのため、母子手帳や予防接種台帳がない場合には、接種痕を証拠として提出する必要があります。
ハンコ注射の跡がない理由としては、「個人の体質による反応の違い」「BCGの接種方法が適切でなかった」「接種箇所が自分では目視しにくい場所」などが考えられます。
ハンコ注射の跡がないと自分では思っている場合であっても、医師であれば接種痕が確認できることがあります。
確かに集団予防接種等を受けた記憶があるのに、接種痕が確認できないという場合には、接種痕が確認できないからといって諦めてしまわずに、ぜひ医療機関を受診することを検討してください。
B型肝炎給付金の対象者であれば、最大で3600万円を国から受け取ることができます。
本当はB型肝炎給付金の対象者であるのに、自分では接種痕が確認できないからといって、請求を諦めてしまうのは非常にもったいないと思いませんか?
当事務所にはB型肝炎問題に注力する弁護士がおり、被害者やそのご遺族を強力にサポートしております。
接種痕が確認できないという方についても、経験に基づき証拠収集の方法などをアドバイスいたします。
遠方の方にはLINEやZoomなどによるオンライン相談等にも柔軟に対応しておりますので、B型肝炎に関しては、当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。