HBc抗体は、B型肝炎ウイルスのコア(中心部分)を構成する「HBc抗原」に対抗するために体内で作られる抗体です。
HBc抗体には「IgM-HBc抗体」と「IgG-HBc抗体」の2種類があります。
IgM-HBc抗体が陽性の場合、直近(約1年以内)にB型肝炎ウイルスに感染したということを示しています。
IgG-HBc抗体が陽性の場合、過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがあるということを示しています。
IgM-HBc抗体とIgG-HBc抗体のどちらが陽性であるかによって、また、その数値によって、現在体の中でB型肝炎ウイルスがどういう状態にあるかがわかります。
この記事では、HBc抗体の検査結果の見方に加えて、検査の数値からどういうことがわかるのかについて、詳しく解説を行います。
HBc抗体とは?
HBc抗体には「IgM-HBc抗体」と「IgG-HBc抗体」の2種類がありますが、いずれもB型肝炎ウイルスの一部を構成する「HBc抗原」に対抗するために体内で作られる抗体です。
HBc抗原とは、B型肝炎ウイルスのコア(中心部分)を構成するタンパク質の一種であり、ウイルスの遺伝子(DNA)を包み込んでいます。
HBc抗体は、HBc抗原を攻撃して、体内から排除するために作られます。
HBc抗体が体内に存在しているかどうかは、医療機関で血液検査をすることで簡単に調べることができます。
IgM-HBc抗体とIgG-HBc抗体は、B型肝炎ウイルスに感染してから、体内で作られるまでの期間が異なっています。
そのため、いずれの抗体が陽性かによって、現在のB型肝炎ウイルスの状態を知ることができます。
HBc抗体が陽性だとどうなる?
HBc抗体は、B型肝炎ウイルスの一部を構成する「HBc抗原」に対抗するために体内で作られる抗体です。
HBc抗体には「IgM-HBc抗体」と「IgG-HBc抗体」の2種類があります。
これらのうち、どちらの抗体が陽性反応を示しているかによって、B型肝炎ウイルスに感染してからの期間等を判断することができます。
IgM-HBc抗体は、B型肝炎ウイルスに感染したばかりの時に作られる抗体です。
B型肝炎ウイルスに感染後、約1 〜 3ヵ月頃にピークに達し、その後は徐々に減少していきます。
つまり、IgM-HBc抗体が陽性の場合は、最近B型肝炎ウイルスに感染したということがわかります。
これに対し、IgM-HBc抗体が陰性の場合は、直近のB型肝炎ウイルスの感染はないということがわかります。
IgG-HBc抗体は、IgM-HBc抗体が作られた後に生成される抗体です。
B型肝炎ウイルスが治癒した後も、生涯にわたって血中に残り続けます。
つまり、IgG-HBc抗体が陽性の場合は、過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがあるということがわかります。
これに対し、IgG-HBc抗体が陰性の場合は、過去に1度もB型肝炎ウイルスに感染したことがないということがわかります。
陽性 | 陰性 | |
IgM-HBc抗体 | 最近B型肝炎ウイルスに感染した | 直近の感染なし |
IgG-HBc抗体 | B型肝炎ウイルスの感染歴あり | 過去1度も感染したことがない |
HBc抗体の高力価の意味
IgM-HBc抗体は、B型肝炎ウイルスに感染したばかりの頃に作られる抗体です。
この抗体が陽性かつ高力価(10.0 s/co以上※)の場合、急性肝炎や劇症肝炎を発症している可能性があります。
IgG-HBc抗体は、B型肝炎ウイルスに感染してしばらく経ってから作られる抗体です。
この抗体が陽性かつ高力価(10.0 s/co以上※)の場合、B型肝炎ウイルスに持続感染している可能性があります。
※いずれもCLIA法による検査の場合
HBc抗体の陽性はうつる?
HBc抗体は、B型肝炎ウイルスを攻撃して排除するために体内で作られるタンパク質であり、HBc抗体そのものは感染性を持っていないため、他人にうつることはありません。
しかし、HBc抗体が陽性だということは、現在B型肝炎ウイルスに感染しているか、過去に感染したことがあるということです。
IgM-HBc抗体は、B型肝炎ウイルスの感染初期に作られる抗体です。
IgM-HBc抗体が陽性である場合は、今まさにB型肝炎ウイルスに感染しているということであるため、B型肝炎ウイルスを他人にうつしてしまう可能性があります。
これに対し、IgG-HBc抗体は、過去に1度でもB型肝炎ウイルスに感染したことがあると、現在は治癒していたとしても、陽性になります。
そのため、IgG-HBc抗体が陽性の場合には、「HBs抗原」などの他の検査を行い、現在は体内からB型肝炎ウイルスが排除されているかどうかを確認する必要があります。
HBc抗体が陽性となる原因
HBc抗体が陽性となる原因は、B型肝炎ウイルスに感染したことです。
ウイルスに感染すると、体はウイルスを排除したり、ウイルスに対抗するために抗体というものを作り出します。
HBc抗体は、B型肝炎ウイルスの一部を構成する「HBc抗原」に対抗するために体内で作られる抗体です。
なお、B型肝炎ウイルスのワクチンを接種した場合には、HBc抗体は陽性とはなりません。
つまり、HBc抗体が陽性となるのは、B型肝炎ウイルスに感染した場合に限られます。
検査結果の数値の見方 〜 高いとどうなる?
IgM-HBc抗体とIgG-HBcの検査数値は、検査手法によって異なります。
この記事では、CLIA法による検査であることを前提として、見方等について解説をします。
HBc抗体の基準値
IgM-HBc抗体は、1.0 s/co未満であれば陰性、1.0 s/co以上であれば陽性とされます。
IgM-HBc抗体が陽性かつ高力価(10.0 s/co以上)の場合、急性肝炎や劇症肝炎を発症している可能性があります。
IgG-HBc抗体についても、1.0 s/co未満であれば陰性、1.0 s/co以上であれば陽性とされます。
IgG-HBcが陽性かつ高力価(10.0 s/co以上)の場合、B型肝炎ウイルスに持続感染している可能性があります。
HBc抗体とHBs抗体の違い
「HBc抗体」と「HBs抗体」は、どちらもB型肝炎ウイルスに対する抗体ですが、それぞれ対応する抗原に対する免疫反応を示し、果たす役割が異なっています。
HBc抗体は、「HBc抗原」というB型肝炎ウイルスのコア(中心部分)を構成する抗原に対応して作られる抗体です。
HBc抗原を攻撃することで、体内からウイルスを排除しようとする役割があります。
HBs抗体は、「HBs抗原」というB型肝炎ウイルスの外殻(外側部分)を構成する抗原に対応して作られる抗体です。
HBs抗体は、HBs抗原が体内に入ったことを感知すると、HBs抗原にくっついて増殖を妨げて、体がB型肝炎ウイルスに感染しないようにする役割があります。
つまり、HBc抗体がウイルスを攻撃・排除する働きをしているのに対し、HBs抗体はウイルスの感染を防ぐ働きをしているということです。
B型肝炎とは?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することで発症する肝臓の病気です。
B型肝炎は、感染者の血液等を介して感染します。
成人が感染した場合は、一過性の感染で治癒することが多く、あまり恐れる病気ではありません。
しかし、乳幼児や免疫機能が低下している方が感染した場合、B型肝炎ウイルスが一生涯体内に存在する「キャリア」となる確率が高く、慢性肝炎・肝硬変・肝がん等の重篤な病気に進行する恐れがあるため、注意が必要です。
一部の方については、B型肝炎給付金を受け取ることができる可能性があるため、詳しく解説をしていきます。
B型肝炎の意味
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することで発症する肝臓の病気です。
B型肝炎ウイルスに感染すると、ウイルスが肝臓で増殖します。
ウイルスが肝臓で増殖をする過程で、肝臓には炎症が起こります。
ウイルスに感染して間もない時期に発症する肝炎を「急性肝炎」といいます。
成人が感染した場合、急性肝炎のみで治癒することが多いですが、乳幼児期や免疫機能が低下している時期に感染した場合、肝炎が長引くことが多々あります。
肝炎が約6ヵ月以上継続している場合には、「慢性肝炎」と診断されます。
B型肝炎の症状
B型肝炎は、初期段階では目立った症状が出ないケースがほとんどです。
肝炎の状態が悪化すると、「全身倦怠感」「食欲不振」「嘔吐」「腹痛」「発熱」「黄疸」などの症状が現れます。
肝臓は自覚症状が現れにくい臓器のため、症状が出る頃にはかなり病気が進行していることもあります。
B型肝炎の感染経路
B型肝炎は、感染者の血液や体液が体内に入ることで感染します。
乳幼児の感染の場合、最も多い感染経路は「母子感染」です。
B型肝炎ウイルスの場合、母子感染の中でも、出産時の感染リスクが最も高いと言われています。
成人の感染の場合、最も多い感染経路は「性行為」です。
また、医療従事者等の普段から他人の血液や体液に触れる機会が多い職業の方の場合、針刺し事故などが原因で感染することもあります。
B型肝炎給付金とは
B型肝炎給付金とは、一定の要件を満たす方に対して、国から支払われるお金のことです。
給付金を受け取ることができる人は、簡単に言うと、「昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までの間に国が実施していた集団予防接種等が原因で、B型肝炎ウイルスに持続感染した人」です。
集団予防接種等を直接受けた方は、もちろん給付金の対象者となります。
また、集団予防接種等を直接受けてB型肝炎ウイルスに持続感染した母親や父親がおり、家庭内で感染したという方も給付金の対象者となります。
これらの方が給付金を受け取らずに死亡された場合、ご遺族の方が給付金を受け取ることができます。
給付金を受け取るためには、2027年(令和9年)3月31日までに国に対して裁判を起こす必要があるという点には注意が必要です。
HBc抗体についてのQ&A
HBc抗体に関連するご質問について解説をしていきます。
HBe抗体陽性とはどういう意味ですか?
HBe抗体陽性とは、肝炎が沈静化し、他人への感染リスクが低くなっている状態を意味します。
HBe抗体は、B型肝炎ウイルスのコアの一部分を構成する「HBe抗原」に対応して作られる抗体です。
HBe抗原は、ウイルスが増える過程で作られるタンパク質であり、感染力の指標として用いられています。
HBe抗体は、HBe抗原が存在する場合には検出されず、HBe抗原の分泌が停止した場合にのみ陽性となります。
つまり、HBe抗体が陽性の場合、B型肝炎ウイルスの増殖が低下しており、感染力が低下しているということです。
まとめ
HBc抗体は、B型肝炎ウイルスに対抗するために体内で作られる抗体です。
HBc抗体は、ワクチン接種では陽性とならないため、陽性の結果が出るということは、B型肝炎ウイルスに感染したことがあるということです。
B型肝炎ウイルスに感染していたとしても、なかなか自覚症状が出ない方が多いため、家族も含めて詳しく検査を行うことをおすすめします。
一定の条件を満たす方の場合、B型肝炎給付金を国から受け取ることができます。
B型肝炎給付金をもらうためには、2027年(令和9年)3月31日までに国に対して裁判を起こす必要があります。
確実にB型肝炎給付金をもらいたいという方は、B型肝炎訴訟に精通した専門家のサポートを受けながら、スムーズに手続きを行うことをオススメします。
当事務所には、B型肝炎問題に注力している弁護士が在籍しており、B型肝炎キャリアの方やそのご遺族を強力にサポートしています。
遠方の方にはLINEやZoomなどによるオンライン相談等にも柔軟に対応しておりますので、B型肝炎に関しては、当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。