B型肝炎の抗体とは、B型肝炎ウイルスに対抗するために、免疫反応によって体内で作られる「HBs抗体」「HBc抗体(IgM-HBc抗体、IgG-HBc抗体)」「HBe抗体」のことです。
B型肝炎の抗体があるかについては、「ウイルスマーカー検査」で簡単に調べることができます。
B型肝炎の抗体検査を自費で行った場合は、おおよそ1項目ごとに2000円 〜 5000円程度かかります。
この記事では、B型肝炎の抗体について詳しく解説をしていきます。
目次
B型肝炎の抗体とは?
B型肝炎の抗体とは、B型肝炎ウイルスに対抗するために、免疫反応によって体内で作られる特殊なたんぱく質のことです。
B型肝炎の抗体には、「HBs抗体」「HBc抗体(IgM-HBc抗体、IgG-HBc抗体)」「HBe抗体」の3種類があります。
B型肝炎の抗体を検査することで、B型肝炎ウイルスの感染状態や過去の感染歴、免疫の状態等を調べることができます。
B型肝炎の抗体の種類とわかること
B型肝炎の抗体には、「HBs抗体」「HBc抗体(IgM-HBc抗体、IgG-HBc抗体)」「HBe抗体」の3種類があります。
これらの抗体には、出現する時期や役割に違いがあるため、どの抗体が陽性かによってB型肝炎ウイルスの現在の感染状態や過去の感染歴、免疫の状態等を判別することができます。
HBs抗体は、B型肝炎ウイルスの表面を覆っているHBs抗原に対する抗体です。
B型肝炎ウイルスの表面にくっついて感染を防ぐ役割があり、およそ生涯にわたり陽性のままです。
HBc抗体は、B型肝炎ウイルスのコア部分にあるHBc抗原に対する抗体で、「IgM-HBc抗体」と「IgG-HBc抗体」の2型に分類されます。
B型肝炎ウイルスを攻撃して、体内から排除する役割があります。
IgM-HBc抗体は、B型肝炎ウイルスに感染した初期段階でのみ陽性となります。
IgG-HBc抗体は、IgM-HBc抗体に少し遅れて出現し、ほぼ生涯にわたって血中に存在し続けます。
HBe抗体は、B型肝炎ウイルスのコア部分にあるHBe抗原に対する抗体です。
B型肝炎ウイルス(HBe抗原)の活動量が低下し、感染力が弱まると陽性になるという特徴があります。
抗体 | 陽性結果からわかること | ||
---|---|---|---|
HBs抗体 | ①B型肝炎ウイルスの感染歴があるが現在は治癒して免疫ができている ②B型肝炎ワクチンの接種によって免疫ができている |
||
HBc抗体 | IgM-HBc抗体 | ①最近B型肝炎ウイルスに感染した(陽性かつ高値) ②慢性肝炎が悪化している(陽性かつ低値) |
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IgG-HBc抗体 | ①B型肝炎ウイルスに持続感染している(陽性かつ高値) ②過去にB型肝炎ウイルスに感染していた(陽性かつ低値) |
||
HBe抗体 | B型肝炎ウイルスの増殖力が低下し、感染力が弱まっている |
B型肝炎の抗体と抗原との違い
B型肝炎の抗体と抗原は名前が似ているため混同されることがよくありますが、全く異なる物質です。
「抗原」とは、ウイルスや細菌などの病原体の成分であり、免疫反応を引き起こす物質のことです。
「抗体」とは、体内の免疫システムが異物(抗原)に対して反応し、作り出す特殊なたんぱく質のことです。
つまり、B型肝炎の抗原とはB型肝炎ウイルスそのものであり、B型肝炎の抗体はウイルス(抗原)と戦うために体内で作られる物質という大きな違いがあります。
B型肝炎の抗体価とは?
B型肝炎の抗体価とは、血液中に存在するB型肝炎ウイルスに対する抗体の量を示す数値です。
抗体価が高いほど、その抗体が多く存在していることを意味します。
例えば、HBs抗体価が高い場合は、過去のB型肝炎ウイルス感染からの回復やワクチン接種によって免疫が獲得できていることがわかります。
B型肝炎の抗体の検査方法
B型肝炎の抗体は、「ウイルスマーカー検査」で検査をすることができます。
人の体内にウイルス(抗原)が入ると、感染を防いだり、ウイルスを排除したりするために、体は抗体を作り出します。
このような抗原や抗体のことをウイルスマーカーといいます。
B型肝炎のウイルスマーカー検査は、通常の採血による血液検査で行います。
B型肝炎の検査結果の数値の見方
B型肝炎のウイルスマーカーは、「抗原」「抗体」「ゲノム」の3種類に分類されます。
測定方法としては、「化学発光免疫測定法(CLIA法)」「放射免疫測定法(RIA法)」「酵素免疫測定法(EIA法)」「イムノクロマト法」「凝集法」などがあります。
これらの測定方法の中でも、最も抗原等の検出感度が高いCLIA法がよく用いられています。
以下の数値は、CLIA法を用いた場合の数値となっていますので、他の測定方法で検査をした方は、医師に見方を確認してください。
ウイルスマーカー | 数値の見方 | ||
---|---|---|---|
HBs抗体 | 10.0IU/ml未満=陰性 10.0IU/ml以上=陽性 |
||
HBc抗体 | IgM-HBc抗体 | 1.0 s/co未満=陰性 1.0 s/co以上=陽性 |
|
IgG-HBc抗体 | 1.0 s/co未満=陰性 1.0 s/co以上=陽性 |
||
HBe抗体 | HBe抗体の「阻害率」が50%未満=陰性 HBe抗体の「阻害率」が50%以上=陽性 |
B型肝炎の抗体についての費用
B型肝炎の抗体に関してかかる費用には、「検査費用」と「抗体獲得のためのワクチン接種費用」があります。
検査費用としては、平均すると1項目ごとに2000円 〜 5000円程度かかる医療機関が多いようです。
ワクチンの接種費用は、定期接種で接種する場合には費用は不要ですが、自費で接種する場合には1万5000円 〜 2万4000円ほどかかります。
費用について詳しく見ていきましょう。
検査費用はいくら?
B型肝炎の抗体に関する検査費用は、健康保険等による控除がなかった場合、1項目ごとに2000円 〜 5000円程度かかることが多いようです。
ただし、会社で実施されている健康診断や人間ドックなどの機会にオプションとしてB型肝炎の抗体検査を追加する場合は、これよりも安い金額で検査を受けることができます。
また、任意の医療機関で検査を受ける場合でも、一度の採血で複数の検査項目を検査するなどの場合には、1項目当たりの金額は割安となることがあります。
抗体をつけるワクチンはいくら?
定期接種でB型肝炎ウイルスのワクチンを接種する場合は、公費で接種費用がまかなわれていますので、無料で接種することができます。
ただし、B型肝炎ウイルスのワクチンを定期接種で接種することができるのは、0歳児に限られています。
B型肝炎ウイルスのワクチンを任意で接種する場合には、1回あたり約5000 〜 8000円の金額で接種することができます。
B型肝炎ウイルスのワクチンは3回接種する必要がありますので、合計で1万5000円 〜 2万4000円ほどの金額がかかります。
B型肝炎の抗体があると言われたら
B型肝炎の抗体があると言われたら、「HBs抗体」「HBc抗体(IgM-HBc抗体、IgG-HBc抗体)」「HBe抗体」のうち、どの抗体が陽性なのかを確認する必要があります。
HBs抗体以外の抗体には、B型肝炎ウイルスの感染を防ぐ効果はありませんので、注意が必要です。
抗体が陽性の場合、B型肝炎はうつる?
B型肝炎の抗体には「HBs抗体」「HBc抗体(IgM-HBc抗体、IgG-HBc抗体)」「HBe抗体」の3種類があります。
どの抗体が陽性かによって、B型肝炎ウイルスに感染する確率が変わります。
HBs抗体が陽性の場合は、B型肝炎ウイルスに対する免疫ができてるということなので、感染する確率はほとんどありません。
しかし、HBc抗体やHBe抗体が陽性の場合は、これらの抗体にはB型肝炎ウイルスの感染を防ぐ効果はないため、感染してしまう可能性があります。
看護師はB型肝炎の抗体が陽性?
看護師はB型肝炎のHBs抗体が陽性である確率が高いといえます。
多くの医療機関では、看護師を含む医療従事者に対してB型肝炎ワクチンの接種を推奨しており、義務付けている場合もあります。
また、ワクチンを接種していない人であっても、針刺し事故等が原因でB型肝炎ウイルスに1度感染し、その後治癒して抗体を獲得している場合もあります。
そのため、看護師はB型肝炎の抗体を獲得している人が多いのです。
B型肝炎が疑われる場合
B型肝炎に感染しているかも?と思ったら、まずは検査を受けてください。
早期に確認することで、周囲の人にB型肝炎ウイルスを感染させるリスクを減らすことができます。
また、B型肝炎ウイルスに持続感染していることがわかったら、B型肝炎給付金の受給ができるかを確認しましょう。
B型肝炎給付金の対象者であれば、最大で3600万円を受給することができます。
B型肝炎給付金のことでわからないことがある場合には、自己判断せずに弁護士に相談することをおすすめします。
B型肝炎の検査を受ける
B型肝炎ウイルスに感染しているかも、と思ったら、まずは検査を受けましょう。
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査で簡単に確認することができます。
対象者の方であれば、地方自治体が実施している「健康増進事業による肝炎ウイルス検査」と「特定感染症検査等事業による肝炎ウイルス検査」などの制度を利用して、無料で検査を受けることができます。
対象者でない場合も、任意の医療機関で検査を受けることができます。
身近な方に感染させないためにも、まずは検査を受けることが大切です。
B型肝炎の給付金を申請する
検査の結果、B型肝炎ウイルスに持続感染していることが確認できたら、B型肝炎給付金の申請を検討しましょう。
B型肝炎給付金は、最大で3600万円を受給できる可能性があります。
ただし、給付金を受け取るためには、2027年3月31日までに、国に対して裁判を起こす必要があるため、注意が必要です。
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こちらのページから、給付金をいくら貰うことができるのかを無料で診断することができます。
3つの質問に答えるだけで簡単に診断できますので、ぜひご活用ください。
B型肝炎に詳しい弁護士へ相談
B型肝炎給付金を受け取るためには、国に対して裁判を起こす必要があります。
そもそも、自分に給付金を受け取る資格があるのか?を判断するにあたっては、専門的な判断が必要になります。
しかも、国に対する裁判は2027年3月31日までにする必要があり、資料の準備などの時間も考えると、あまり時間的猶予はありません。
1人で抱え込んでしまい、結局給付金を受け取れなかったとなる前に、B型肝炎に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
B型肝炎の抗体についてのQ&A
B型肝炎の抗体に関するご質問にお答えします。
B型肝炎の抗体は、いつ消えますか?
例えば、B型肝炎の感染予防に役立つHBs抗体をワクチンで獲得した場合、多くの方は10年以上抗体が持続します。
しかし、数年で抗体が消えてしまう人もいるため、定期的なチェックが必要です。
B型肝炎の抗体がつかない理由とは?
特に、高齢者の場合には免疫機能が低下しているため、ワクチンを接種しても抗体がつきにくいということがあります。
まとめ
B型肝炎の抗体とは、B型肝炎ウイルスに対抗するために、免疫反応によって体内で作られる「HBs抗体」「HBc抗体(IgM-HBc抗体、IgG-HBc抗体)」「HBe抗体」のことです。
これらの抗体には、それぞれ異なった役割があるため、どの抗体が陽性であるかを確認することが大切です。
HBs抗体が陽性の場合は、一般的にはB型肝炎はすでに治癒しており、再度感染することはほとんどないといえます。
しかし、HBc抗体やHBe抗体が陽性の場合は、現在もB型肝炎ウイルスに感染している状態かもしれません。
B型肝炎ウイルスに持続感染している方については、B型肝炎給付金を受け取ることができる可能性があります。
弁護士法人デイライト法律事務所では、B型肝炎に注力する弁護士が多数在籍しております。
オンラインでのご相談にも対応しており、全国対応していますので、お困りの方はぜひ1度お問い合わせください。