B型肝炎訴訟のデメリット|解決法もあわせて解説

B型肝炎訴訟とは

B型肝炎訴訟とは、過去に国の施策として行われた集団予防接種等をきっかけとしてB型肝炎に感染した方が、B型肝炎給付金を受給するために、国を相手に提起する訴訟のことです。

 

B型肝炎訴訟の流れ

B型肝炎訴訟を提起して給付金を受給するための一連の流れは、次のとおりです。

資料の収集などの準備を始めてからB型肝炎給付金を受け取るまでには、スムーズにいって1年6ヶ月程度は要します。

B型肝炎訴訟の流れ

①資料(証拠)の収集

B型肝炎給付金の対象者にあたることを証明するために、さまざまな資料(証拠)を収集します。

②訴訟提起

訴状や証拠の一覧などの必要書類を作成して、訴訟を提起します。

③国との交渉(和解要件の確認)

訴訟の中で、国側は、和解の要件を満たしているか(必要な証拠資料がそろっているか等)を確認します。

証拠資料が不足していれば、追加で提出を求められます。

④和解成立

必要な証拠資料がそろっており、和解の要件を満たしていることが確認できた場合には、国との間で和解が成立し、裁判所が和解調書を作成します。

⑤社会保険診療報酬支払基金に給付金の請求

社会保険診療報酬支払基金に対し、支払請求書や住民票などの必要書類と一緒に和解調書を提出します。

 

B型肝炎訴訟をご自身で行う場合のデメリット

B型肝炎訴訟をご自身で行う場合、上で説明したような一連の手続きをすべて自力で行う必要があり、この場合、次のようなデメリットがあります。

資料の収集に時間がかかる

B型肝炎給付金の対象者にあたることを証明するためには、さまざまな資料(証拠)をご自身で収集する必要があり、膨大な時間と労力がかかります。

また、B型肝炎給付金の対象者は、(ア)一次感染者(ご自身が集団予防接種により感染した方)、(イ)二次感染者(一次感染者から母子感染等により感染した方)、(ウ)これらの方の相続人に分かれており、どの類型に該当するかによって収集すべき資料が異なります。

そもそもご自身がB型肝炎給付金の対象者に該当するかどうかの判断に迷うことも少なくありません。

必要に応じて、次のような資料を集める必要があります。

  1. ① ご自身で用意するもの:母子健康手帳(コピー)、陳述書、幼稚園・小学校の卒園・卒業証明書など
  2. ② 市区町村に依頼するもの:住民票、戸籍謄本または除籍謄本、戸籍の附票、予防接種台帳、証明書など
  3. ③ 医療機関に依頼するもの:各種血液検査結果、診断書、医療記録、接種痕意見書など

B型肝炎訴訟では、特に③の医療機関に依頼する資料が重要な役割を果たすため、これらの証拠を不足なく提出することが大切です。

訴訟の中で資料不足が判明した場合には追加での資料提出が求められるため、さらに追加資料の収集と確認に時間がかかることになります。

そのような事態を避けるためには、訴訟の提起前に、B型肝炎に関する医学的な知識をふまえつつ、法的な主張を支える証拠として十分かを精査することが大切です。

しかし、医療や法律に関する知識・経験がない場合には、かなり難しい側面があります。

 

訴状等の作成が必要

訴訟を提起するためには、訴状や証拠の一覧を作成して裁判所に提出する必要があります。

訴状には、どのような請求を行うのかという「請求の趣旨」や、その請求についての法的な根拠を示す「請求の原因」といったものを記載しなければなりません。

上記の主張にあわせて、これらを支える証拠を提出する必要があり、どの証拠がどの主張に対応するのかを一覧化して示すこと(証拠の一覧)も求められます。

また、訴状については原本(正本)のほかにそのコピー(副本)1通を、証拠についてはコピー2通を用意する必要があります。

1通は裁判所提出用、もう1通は被告用です(証拠の原本はご自身で保管します)。

提出する証拠(資料)は数百枚に及ぶこともあるため、訴状等の作成には一定の法律知識が必要となるだけでなく、膨大な時間と労力がかかります。

 

裁判所に出頭することが必要

訴訟を提起したら、毎回の期日に合わせて裁判所に出頭する必要があります。

裁判は平日の日中(午前10時頃から正午頃まで、午後1時頃から午後5時頃まで)に行われるため、会社員の方は必要に応じて休暇を取得するなど、日程調整をしなくてはなりません。

 

デメリットの解決法

弁護士に依頼することで、上記のデメリットをすべて解決することができます。

①資料の収集

資料(証拠)の収集については、本人でなければ取得できないものを除いて、弁護士が本人の代わりに医療機関や市区町村等に請求することが可能です。

また、B型肝炎訴訟に精通している弁護士であれば、依頼者の方がB型肝炎給付金の対象者に該当するのか、どのような資料を準備する必要があるのか、といったことを的確に判断し、効率的に資料を収集することができます。

弁護士に依頼する場合、時間と労力を節約することができるだけでなく、収集する必要のない資料を入手するために余分な手数料を支払ってしまった、などといったことも防ぐことができます。

②訴状等の作成

訴状等の作成は、まさに弁護士が専門とするところです。

弁護士に任せることで、法律知識や法的手続きに関する不安を取り除くことができます。

また、弁護士は訴訟の提起前に、専門的な知見と経験に基づいて主張や証拠を精査するため、裁判所から書類の追加や修正を求められて訴訟が長期化するといった事態を避けることができます。

③裁判所への出席

裁判への出席も弁護士が代理で行いますので、依頼者の方は基本的に裁判に出席する必要がありません。

 

 

B型肝炎訴訟をご自身で行う場合のメリット

最低限の費用で行える

B型肝炎訴訟をご自身で行う場合、弁護士費用がかからないため、最低限の費用で行うことができます。

B型肝炎訴訟にかかる弁護士費用は、弁護士事務所によって異なりますが、国から支給された給付金の15%前後とする事務所が多いようです。

和解が成立して給付金の支給を受けることができる場合、国から「訴訟手当金」として、給付金の4%に相当する金額が支給されますが、残りの金額(給付金の11%前後)は自己負担となります。

例えば、和解が成立して2,500万円の給付金を受け取り、弁護士費用が給付金の15%である場合、給付金から差し引かれる弁護士費用は375万円、国から支給される訴訟手当金(給付金額の4%)は100万円となりますので、手元に残る金額は2,225万円です。

「どれだけ時間と労力がかかっても弁護士費用を節約したい」、「自分で訴訟を行うことによって訴訟手続きや法律に関する知識を身につけたい」という方は、ご自身で行うことも一案です。

B型肝炎訴訟をご自身で行う場合には、厚生労働省が公表している以下の資料を参考にしましょう。

参考:B型肝炎訴訟の手引き ご自身での提訴を考えている方へ(説明編)

参考:B型肝炎訴訟の手引き ご自身での提訴を考えている方へ (提出編)

 

 

よくある質問

集団予防接種での感染を証明できる書類がない場合、訴訟できない?

集団予防接種での感染を直接証明することができる資料として、母子健康手帳や市区町村の予防接種台帳などがあります。

しかし、これらの資料が残っていないことも少なくありません。

その場合、これらの代わりとなる書類を提出することにより、訴訟をすることができます。

具体的には、①母子健康手帳を提出できない理由を書いた陳述書、②集団予防接種を受けた場所や時期などを書いた陳述書(本人または親が作成)、③予防接種をした傷跡が確認できるという内容の医師の意見書、④1941(昭和16)年7月2日から1988(昭和63)年1月27日までの間に生まれ、日本国内に居住していたことが確認できる住民票又は戸籍の附票のコピーなどです。

これらの書類は、集団予防接種を受けたことを直接証明することはできませんが、すべてを合わせることによって、間接的に集団予防接種を受けたことを証明することができる資料(証拠)です。

 

給付金が支給されなければ、費用倒れになってしまう?

B型肝炎訴訟を提起するにあたっては、証拠を収集するための費用や訴訟にかかる費用(印紙代、弁護士費用など)などがかかります。

印紙代は訴訟で請求する金額によって異なり、請求額が2,500万円の場合には9万5,000円、請求額が600万円の場合には3万4,000円です。

弁護士費用については、和解が成立し、給付金が受け取れた場合にのみ弁護士費用を請求する「成功報酬型」の方式をとる弁護士事務所もあります。

成功報酬型の場合、給付金が支給されなければ弁護士費用も発生しません。

デイライト法律事務所でも成功報酬型を採用しています(相談料も無料)。

この場合でも、給付金が支給されないときは、弁護士費用以外の費用(血液検査の費用、各種証明書の発行にかかる費用、診断書の発行にかかる費用、訴訟にかかる印紙代等)については、残念ながら費用倒れとなってしまいます。

もっとも、B型肝炎訴訟に精通した弁護士に事前に相談することで、費用倒れになる結果を事前に防ぐことができます。

弁護士の意見を聞いた結果、給付金が支給される可能性が低い場合には「訴訟を提起しない」という判断をすることができるからです。

なお、和解が成立した場合には、「訴訟手当金」として、訴訟にかかった弁護士費用の一部(給付金額の4%)や検査にかかった費用が支給されます。

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弁護士費用

 

まだ、症状がない(無症候性キャリア)場合、訴訟できない?

まだ症状がなくても、集団予防接種等をきっかけとしてB型肝炎ウイルスに持続感染している場合(無症候性キャリア)、B型肝炎訴訟を提起することができます。

B型肝炎給付金には請求の期限があり、また、「除斥期間」という一定の期間内に訴訟を提起しなければ、もらえる金額が大幅に減ってしまいます。

そのため、むしろ無症候性キャリアの段階で、できるだけ早く訴訟を提起することをおすすめします。

無症候性キャリアとして和解が成立し、一度給付金を受け取った後に慢性肝炎等を発症したときは、新たに発生した病状に応じて、追加で給付金をもらうことができます(追加給付金)。

 

 

まとめ

  • B型肝炎訴訟とは、B型肝炎給付金を受給するために国を相手に提起する訴訟のことです。
  • B型肝炎給付金を受け取るためには、①資料(証拠)の収集→②訴訟提起→③国との交渉(和解要件の確認)→④和解成立→⑤社会保険診療報酬支払基金に給付金の請求、といった一連の手続きを行う必要があります。
  • B型肝炎訴訟をご自身で行う場合、上記の手続きをすべて自力で行う必要があることから、(ア)さまざまな資料(証拠)を収集するための時間と労力がかかる、(イ)訴状や証拠一覧を作成する必要があり、時間と労力がかかるだけでなく法的な知識も必要となる、(ウ)裁判所に出頭する必要があるため日程調整が大変、などのデメリットがあります。
  • B型肝炎訴訟を弁護士に依頼する場合、弁護士が本人に代わって証拠の収集や訴状の作成、裁判所への出頭などを行うため、上記のデメリットをすべて解決することができます。
  • B型肝炎訴訟をご自身で行う場合には、弁護士費用がかからないため、最低限の費用で行うことができるというメリットがあります。
  • B型肝炎給付金には請求の期限があるほか、一定の期間を過ぎると支給される金額が大幅に減ってしまうなどの時間制限があるため、訴訟をご自身で行うかどうかの検討にあたっては、資料の収集や訴状等の作成にかかる時間の観点を含めて検討しましょう。
  • 弁護士事務所によっては、B型肝炎給付金が支給された場合にのみ弁護士報酬が発生する成功報酬型の方式をとっている事務所もあります。
  • 「そもそもB型肝炎給付金の対象者にあたるかどうかもわからない」という方は、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
  • B型肝炎訴訟で和解が成立した場合には「訴訟手当金」が支給され、弁護士費用の一部にあてることができます。

 

 

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