B型肝炎キャリアとは、B型肝炎ウイルスに感染してから6ヶ月以上経過してもB型肝炎ウイルスを体内に持っている状態の方のことです。
この記事では、B型肝炎ウイルスの感染経路や、感染した場合の治療法などについて解説をしていきます。
B型肝炎キャリアの感染経路などについてご興味のある方は、ぜひご一読ください。
B型肝炎キャリアとは
B型肝炎キャリアとは、B型肝炎ウイルスに感染してから、おおよそ6ヶ月以上経ってもB型肝炎ウイルスを体内に持っている状態の方を指します。
B型肝炎ウイルスに感染した場合、感染の持続期間によって、一次的な感染(一過性感染)と持続的な感染(持続感染)に分けられます。
つまり、B型肝炎キャリアとは、B型肝炎に持続感染している方のことです。
B型肝炎とは?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することで発症してしまう肝臓の炎症です。
B型肝炎は、「急性肝炎」と「慢性肝炎」に分けられます。
急性肝炎と慢性肝炎の違いについては、以下の表にまとめましたので、参考にしてください。
急性肝炎 | 慢性肝炎 | |
---|---|---|
症状 |
|
初期
進行後
|
回復期間 | 数週間程度 | 治癒しない ※治療によって症状を抑えることは可能 |
B型肝炎の芸能人や著名人
芸能人では、歌手の石川ひとみさんがB型肝炎に感染していることを発表しています。
石川ひとみさんは、母子感染によってB型肝炎に感染し、B型肝炎キャリアになってしまったようです。
1987年にB型肝炎を発症し、その当時は偏見などで辛い思いもされたようですが、2024年現在も元気にご活躍されています。
参考:石川ひとみ 母子感染でB型肝炎発症 偏見、誤解を受けた日々|SponichiAnnex
B型肝炎キャリアとなる原因
B型肝炎キャリアになる原因は、B型肝炎ウイルスに感染してしまうことです。
ここからは、感染経路などについて解説をしていきます。
B型肝炎はうつる?感染経路は?
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスに感染している方(B型肝炎キャリア)の血液・唾液・精液・膣分泌液などの体液を介して感染します。
中でも、特に感染リスクが高いのはB型肝炎キャリアの血液です。
唾液・精液・膣分泌液などの体液は、血液にくらべると感染リスクは下がります。
しかし、感染リスクが0というわけではないので、きちんと感染対策をすることが大切です。
性交渉でもB型肝炎に感染するリスクがある
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液・唾液・精液・膣分泌液などの体液が体内に入ることで感染します。
そのため、性交渉の際にB型肝炎ウイルスに感染している方の血液・唾液・精液・膣分泌液などが体内に入ってしまった場合、自らもB型肝炎ウイルスに感染する可能性があります。
B型肝炎ウイルスに感染しないためには、B型肝炎ワクチンの接種やコンドームの適切な使用が重要です。
B型肝炎ワクチンについてもっと詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご覧ください。
B型肝炎キャリアの感染力は強い?
B型肝炎キャリアの感染力は、強いと言われています。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの血液・唾液・精液・膣分泌液などの体液によって感染します。
B型肝炎ウイルスは、人の体外でも少なくとも7日間は生存する(感染力を残している)ことがわかっています。
そのうえ、B型肝炎ウイルスはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に比べ、50〜100倍も感染力が強いのです。
B型肝炎ウイルスに感染しない・させないためには、B型肝炎ワクチンの接種が重要です。
B型肝炎キャリアはどのような経過をたどるの?
成人がB型肝炎ウイルスに感染した場合、そのうち約70-80%の方は、自らの免疫の働きによってB型肝炎ウイルスを体内から排除します。
この場合、基本的には自覚症状は現れません(不顕性感染)。
B型肝炎ウイルスに感染した成人の中でも、約20-30%の方は急性肝炎を発症してしまいますが、多くの方は一過性感染となり、その後治癒します。
ただし、急性肝炎を発症した方のうち、約1%の方は急性肝炎から劇症肝炎を発症することがあります。
劇症肝炎を発症した場合には、死亡リスクが非常に高いため注意が必要です。
これに対し、出産時や乳幼児期、免疫がうまく機能していない時(透析患者、免疫抑制剤を使用している方など)にB型肝炎に感染すると、免疫機能がうまく働かないために、体がB型肝炎ウイルスを異物と判断できず、B型肝炎ウイルスを排除できないことが多くあります。
出産時や乳幼児期にB型肝炎に感染した方では、約90%の方がB型肝炎ウイルスを体内から排除できず、症状のないまま体内にウイルスを持ち続けてしまいます(無症候性キャリア)。
そして、B型肝炎の無症候性キャリアのうち、約10‐15%の方が慢性肝炎を発症し、年率約2%の割合で肝硬変、さらに年率約1.2‐8.1%の割合で肝臓がんを発症するリスクがあります。
B型肝炎キャリアの寿命
B型肝炎のキャリアになってしまった場合の寿命は、発症する病気によって大きく異なるため、一概に言うことはできません。
しかし、B型肝炎のキャリアが発症する可能性のある病気としては、劇症肝炎・肝硬変・肝臓がんが特に死亡リスクが高く、注意が必要です。
それぞれの病気の特徴と死亡率については、以下の表にまとめましたので、参考にしてください。
病名 | 症状 | 死亡率 |
---|---|---|
劇症肝炎 | 肝臓の機能が急激に低下する
|
約70% |
肝硬変 | ||
①代償性肝硬変 | 肝機能があまり低下しておらず、ほとんど症状が出ない | 5年後死亡率 = 約20% |
②非代償性肝硬変 | 肝機能が低下している
以下のいずれかの症状が出ている
|
5年後死亡率 = 約50% |
肝臓がん |
|
5年後死亡率 = 約64% |
B型肝炎キャリアの寿命についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
B型肝炎キャリアの対処法
B型肝炎ウイルスに感染してB型肝炎キャリアになってしまった場合、少なくとも以下4点の対処法を行うことをオススメします。
ここからは、B型肝炎キャリアになってしまった方がとるべき対処法について解説をしていきます。
専門の医療機関を受診する
B型肝炎の無症候性キャリアのうち、約10‐15%の方が慢性肝炎を発症し、年率約2%の割合で肝硬変、さらに年率約1.2‐8.1%の割合で肝臓がんを発症するリスクがあります。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれていることからもわかるとおり、不調をきたしていたとしても、なかなか症状が現れません。
自覚症状が現れる頃には、かなり病気が進行していたということも多々あります。
そのため、B型肝炎キャリアと診断された場合、自覚症状がなかったとしても、定期的に専門の医療機関を受診し、血液検査や画像検査(超音波検査やCT検査、MRI検査など)を受けた上で、医師の診断を受けることが大切です。
都道府県に対して助成金を申請する
国や都道府県は、肝炎の重症化予防を目的とした「肝炎総合対策」を推進しています。
肝炎総合対策では、専門医療機関の受診を促進するための取り組みが行われています。
対策の中では、肝炎を重症化させないために、検査費用や医療費の助成が実施されています。
助成の内容や受給の条件については、お住いの都道府県によって異なる可能性がありますので、ご自身が受給対象となるかなどを詳しく知りたい方は、各都道府県の窓口に問い合わせてみてください。
検査費用の助成について
肝炎ウイルス検査を受けて陽性と診断された方に対して、都道府県は①初回精密検査費用や②定期検査費用の助成を行っています。
初回精密検査費用とは、肝炎ウイルス検査で陽性と診断された方が、より詳細な検査を受けるときにかかる費用のことです。
定期検査費用とは、肝炎ウイルスに感染していることが原因で慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんを患っている方が、定期検査を受けるときにかかる費用のことです。
詳細につきましては、以下の表にまとめましたので、参考にしてください。
初回精密検査費用 | 定期検査費用 | |
---|---|---|
対象者 | 1年以内に肝炎ウイルス検査で陽性と診断された方 | 肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんと診断されている方 (治療後の経過観察を含む) |
助成条件 | 自治体による受診状況等の定期的な確認(フォローアップ)に同意 |
|
助成対象検査 |
※医師が必要と判断したものに限る |
※医師が必要と判断したものに限る |
助成金額 | 初回の精密検査にかかった金額 | 定期検査にかかった金額(自己負担限度額の金額を控除した額) |
助成回数 | 1回 | 年2回(初回精密検査費用を含む) |
医療費の助成について
B型肝炎が原因で肝炎、重度肝硬変(非代償性肝硬変)、肝臓がんになってしまった方に対して、都道府県は医療費の助成を行っています。
B型肝炎を原因とする慢性肝炎を患っている場合、B型ウイルス性肝炎治療のためのインターフェロン治療と核酸アナログ製剤治療について助成が行われています。
B型肝炎を原因とする重度肝硬変、肝臓がんを患っている場合、これらの治療について助成が行われています。
医療費助成の詳細につきましては、以下の表にまとめましたので、参考にしてください。
肝炎 | 肝臓がん・重度肝硬変 | |
---|---|---|
助成対象者 | B型肝炎による慢性肝炎と診断されている方 | B型肝炎による肝臓がん、重度肝硬変と診断されている方 |
助成条件 | B型肝炎による慢性肝炎を治療するためにインターフェロン治療、核酸アナログ製剤治療をした |
|
助成対象治療 |
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|
助成金額 | 保険診療の費用のうち、自己負担額(収入に応じて、月額1万円または2万円)を超える金額 | 自己負担額(月額1万円)を超える金額 |
備考 |
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助成を受けられるのは、治療3ヵ月目から
※治療を開始して1〜2ヶ月目の医療費については助成なし |
B型肝炎給付金の申請を検討する
B型肝炎の給付金とは、過去に行われた集団予防接種やツベルクリン反応検査の際に、注射器の使いまわしがされたことが原因でB型肝炎に持続感染した患者本人(B型肝炎キャリアの方)やその遺族に支給される給付金のことです。
受け取ることができる給付金の額については、病状などに応じて50万円から3600万円と定められています。
これは、前述の検査費用や医療費とは別に貰うことができます。
ただし、B型肝炎給付金をもらうためには、2027年(令和9年)3月31日までに国を相手に裁判を起こす必要があります。
B型肝炎給付金について、もっと詳しく知りたい方は以下の記事も合わせてご覧ください。
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B型肝炎に詳しい弁護士へ相談
B型肝炎給付金は、①一次感染者、②二次感染者、③三次感染者、④これらの方の遺族(相続人)が国から受け取ることのできるお金です。
一次感染者とは、過去に集団予防接種等が行われた際に注射器の使いまわしがされたことによって、B型肝炎ウイルスに感染してしまった方のことです。
二次感染者とは、一次感染者の母親や父親から母子(父子)感染してしまった方のことです。
三次感染者とは、二次感染者の母親や父親から母子(父子)感染してしまった方のことです。
国からB型肝炎給付金を受け取るためには、ご自身がこれらの感染者(またはその遺族)であることを国に証明しなければなりません。
そのため、B型肝炎給付金を受け取るためには、まず必要な書類を集めた上で、2027年(令和9年)3月31日までに国へ裁判を起こす必要があります。
また、裁判の中で国にB型肝炎給付金の対象者と認められ、和解が成立したあと、社会保険診療報酬支払基金という所に対して、給付金の支払を請求する必要もあります。
もちろん、ご自身でこれらの手続き全てを行うこともできます。
しかし、これまでこのような手続きをしたことがない方には、これらの作業は複雑で難しいことが多々あると思います。
国に対する裁判は2027年(令和9年)3月31日までにする必要がありますので、書類の収集に時間をかけすぎてしまうと、間に合わなくなってしまうおそれがあります。
書類の収集や裁判提起などの手続きに慣れている弁護士であれば、このような手続きも迅速に行うことができます。
給付金を受け取りたいという方は、ぜひ1度弁護士に相談することをオススメします。
B型肝炎キャリアについてのQ&A
ここからは、B型肝炎キャリアについてよくあるご質問についてお答えしていきます。
B型肝炎キャリアは疲れやすいですか?
しかし、慢性肝炎を発症した場合には、疲れやすい、だるい、食欲がないといった症状が現れることがあります。
慢性肝炎はB型肝炎キャリアのうち、約10-15%の方が発症してしまうものです。
定期的に検査を受け、慢性肝炎を発症した場合には、適切な治療を受けることで疲れやすさといった症状をなるべく抑えることができます。
B型肝炎キャリアは飲酒できますか?
飲酒は、肝臓の機能を低下させてしまいます。
B型肝炎キャリアの方は、例え無症候性キャリアの方であっても、肝炎や肝硬変、肝臓がんを発症するリスクを抱えています。
肝炎を発症した場合、飲酒の習慣がある方は、飲酒の習慣のない方に比べて、症状が悪化しやすいことがわかっています。
そのため、B型肝炎キャリアの方は、禁酒することをオススメします。
まとめ
この記事では、B型肝炎キャリアの感染経路、B型肝炎キャリアになってしまった時の対処法などについて解説をしました。
B型肝炎ウイルスは、B型肝炎キャリアの方の血液・唾液・精液・膣分泌液などの体液を介して感染します。
B型肝炎キャリアにならないためには、B型肝炎ワクチンの接種など適切な感染対策が必要です。
現在、B型肝炎キャリアだという方の場合には、肝硬変・肝臓がん・劇症肝炎など死亡リスクが高い病気を発症してしまう可能性があることをきちんと理解しておくことが必要です。
そして、このような病気を発症させないためには、専門の医療機関への継続的な受診をオススメします。
受診や治療にはお金がかかり、気軽に受診できないという方もいるかもしれません。
ですが、B型肝炎キャリアの方には、国や都道府県から検査費用、医療費に対して助成が行われています。
また、一定の条件を充たす方の場合、B型肝炎給付金を国から受け取ることができます。
しかし、現実問題として、ご自身がB型肝炎給付金の対象者であるかの判断をするための資料収集や裁判提起の手続きは、これまでこのような手続きをしたことがない方には難しいものになっています。
その上、B型肝炎給付金をもらうために必要な国に対する裁判提起は、2027年(令和9年)3月31日までに行わなければなりません。
そのため、B型肝炎給付金をもらうために必要な手続きに精通した専門家のサポートを受けながら、スムーズに手続きを行うことをオススメします。
当事務所には、B型肝炎問題に注力している弁護士が在籍しており、B型肝炎キャリアの方やそのご遺族を強力にサポートしています。
遠方の方にはLINEやZoomなどによるオンライン相談等にも柔軟に対応しておりますので、B型肝炎に関しては、当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。
B型肝炎キャリアの方やB型肝炎キャリアになってしまった場合の対処法などについて関心のある方にとって、参考となれば幸いです。