B型肝炎の検査とは、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうか等を調べる検査で、HBs抗原検査、HBc抗体検査などがあります。
B型肝炎ウイルスに感染しているかの検査は、地方自治体が実施しているウイルス検査、妊婦健康診査(妊婦健診)、手術前検査に加えて、任意の医療機関でも受けることができます。
B型肝炎の検査は、「血液検査」で行うこととなります。
B型肝炎の検査方法や無料検査の実施場所について詳しく解説をしていきますので、ご興味のある方はぜひご一読ください。
目次
B型肝炎の検査とは?
B型肝炎の検査とは、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうか等を調べる検査で、HBs抗原検査、HBc抗体検査などがあります。
B型肝炎ウイルスは、感染していたとしても、病状が進行するまでは自覚症状が出ないことが多い病気です。
そのため、感染していることに気づきにくいという特徴があります。
しかも厄介なことに、感染していることに気づかないまま治療をせずに放置してしまうと、慢性化するおそれもあります。
B型肝炎が慢性化した場合、慢性肝炎から肝硬変や肝がんといった死亡リスクの高い病気に進行することがあります。
B型肝炎ウイルスに感染しているかについては、「血液検査」を行わなければ正確な診断ができません。
B型肝炎とは?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することで発症する肝臓の病気です。
B型肝炎ウイルスは、一過性の感染で終わる場合と、継続的に感染状態が続く場合(持続感染)があります。
B型肝炎ウイルスに持続感染している場合であっても、約90%の人は無症状のまま生涯を終えることができます(無症候性キャリア)。
しかし、10%〜15%の人は慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行してしまう可能性があります。
日本では、約110万人〜140万人(約100人に1人)の方がB型肝炎ウイルスに持続感染していると推定されています。
B型肝炎の検査の方法について
B型肝炎ウイルスを正確に診断できる検査方法は、血液検査しかありません。
肝臓に関する病気を診断するための血液検査は、「ウイルスマーカー検査」「肝機能検査」「腫瘍マーカー検査」の3つに大別されます。
この3つの中で、B型肝炎ウイルスの感染を調べるために用いられる検査は「ウイルスマーカー検査」です。
B型肝炎の検査の種類
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、ウイルスマーカー検査で検査を行います。
そして、B型肝炎ウイルスの感染を判断するウイルスマーカー検査は、「抗原検査」「抗体検査」「ゲノム検査」に分けられます。
それぞれの詳細については、下記の表をご覧ください。
検査の種類 | 陽性の検査結果からわかることなど |
---|---|
抗原検査 | |
HBs抗原 | B型肝炎ウイルスに感染している |
HBe抗原 | 肝臓でB型肝炎ウイルスが活発に増殖している B型肝炎ウイルスの感染力が強い |
HBc抗原 | ※検出が難しく、一般的には診断に用いられない |
抗体検査 | |
HBs抗体 | 過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがあり、現在は免疫ができている (B型肝炎ワクチンを接種して免疫ができた場合も陽性となる) |
HBe抗体 | B型肝炎ウイルスの増殖力が低下している B型肝炎ウイルスの感染力が弱い |
IgM-HBc抗体 | ⑴陽性で高値の場合 急性肝炎や劇症肝炎を発症している可能性 ⑵陽性で低値の場合 キャリアの方の急性憎悪期の可能性 |
IgG-HBc抗体 | ⑴陽性で高値の場合 B型肝炎ウイルスに持続感染している ⑵陽性で低値の場合 過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがある |
ゲノム検査 | |
HBV-DNA | B型肝炎ウイルスに感染している 検出量によって感染力の強さがわかる |
HBVジェノタイプ/サブジェノタイプ | 遺伝子型によって薬の効き目などが異なるため、治療方針の選択を定めるために検査を行う |
B型肝炎ウイルスの感染を検査する場合、まず血液中に「HBs抗原」が存在するかをチェックします(抗原検査)。
「HBs抗原」とは、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するたんぱく質の1つのことです。
HBs抗原が血液中から検出された場合は、B型肝炎ウイルスに感染していると診断されます。
ただし、B型肝炎ウイルスに感染していたとしても、感染から約3ヵ月程度経過していない場合には、血中のHBs抗原が少ないため、陽性と判断されないことがあります。
HBs抗原検査を行ってから検査結果が出るまでには、数日から一週間程度かかることが一般的です。
HBs抗原検査で陽性と診断されてしまったら、より詳細な検査を専門の医療機関で受診しましょう。
ウイルスマーカー検査の種類について、より詳しく知りたいという方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
抗原検査の結果について〜数値や見方〜
B型肝炎ウイルスに感染している場合、「HBs抗原」「HBe抗原」「HBc抗原」という3種類の抗原の数値が高くなります。
抗原とは、B型肝炎ウイルスを構成するたんぱく質のことです。
つまり、抗原検査では、体内にウイルスが存在しているかどうかを検査しているのです。
「HBc抗原」は通常の検査方法では検出が難しいため、一般にB型肝炎ウイルスの抗原検査で用いられるのは、「HBs抗原」「HBe抗原」の検査です。
これらの抗原検査で陽性と判断される基準値は、以下の表をご覧ください。
HBs抗原 | CLIA法による検査の場合 0.05IU/ml未満=陰性 0.05IU/ml以上=陽性 |
---|---|
HBe抗原 | CLIA法による検査の場合 1.0 s/co未満=陰性 1.0 s/co以上=陽性 |
※検査方法によって基準値は異なりますので、詳しくはかかりつけ医にお尋ねください。
抗原検査の結果について、より詳しく知りたいという方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
抗体検査の結果について〜数値や見方〜
B型肝炎ウイルスに感染すると、これに対抗するために体内で「抗体」というものが作られます。
B型肝炎ウイルスに対抗するために体内で作られる抗体として主なものは、「HBs抗体」「HBe抗体」「HBc抗体(IgM型、IgG型の2種類)」があります。
抗体はウイルスに感染してから体内で作られるまでに少し時間がかかります。
B型肝炎の場合、感染から約3ヵ月程度は陽性とならない場合がありますので、注意が必要です。
これらの抗体検査で陽性と判断される基準値は、以下の表をご覧ください。
HBs抗体 | CLIA法による検査の場合 10.0IU/ml未満=陰性 10.0IU/ml以上=陽性 |
---|---|
HBe抗体 | CLIA法による検査の場合 HBe抗体の「阻害率」が50%未満=陰性 HBe抗体の「阻害率」が50%以上=陽性 |
IgM-HBc抗体 | CLIA法による検査の場合 1.0 s/co未満=陰性 1.0 s/co以上=陽性⑴10.0 s/co以上=高値 ⑵1.0 s/co以上だが10.0 s/co未満=低値 |
IgG-HBc抗体 | CLIA法による検査の場合 1.0 s/co未満=陰性 1.0 s/co以上=陽性 ⑴10.0 s/co以上=高値 |
※検査方法によって基準値は異なりますので、詳しくはかかりつけ医にお尋ねください。
抗体検査の結果について、より詳しく知りたいという方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
B型肝炎の検査はどこで受けられる?
B型肝炎ウイルスに感染しているかの検査は、様々な場所で受けることができます。
例えば、地方自治体が実施しているウイルス検査、職場の健康診断や人間ドック、妊婦健康診査(妊婦健診)、手術前検査に加えて、任意の医療機関などでも受けることができます。
地方自治体が実施するウイルス検査
各都道府県や市町村等の地方自治体は、国民の肝炎慢性化の防止を目的として、無料で受けられる肝炎ウイルス検査を実施しています。
各地方自治体が実施する肝炎ウイルス検査には、「健康増進事業による肝炎ウイルス検査」と「特定感染症検査等事業による肝炎ウイルス検査」があります。
多くの場合、いずれの検査においても、対象者は無料で検査を受けることができます。
それぞれの実施主体や実施場所、対象者については以下の表をご覧ください。
実施主体 | 実施場所 | 対象者 | |
---|---|---|---|
健康増進事業による肝炎ウイルス検査 | 市町村 |
|
40歳以上の方 ※過去に肝炎ウイルス検査を1回も受けたことがない方のみ |
特定感染症検査等事業による肝炎ウイルス検査 |
|
|
各自治体により異なる ※過去に肝炎ウイルス検査を1回も受けたことがない方のみ |
実際の取り扱いは各自治体で異なりますので、お住いの自治体にお問い合わせください。
職場が実施する健康診断
会社に勤めている場合、会社が実施している定期健康診断でもB型肝炎の検査を受けられることがあります。
ただし、肝機能に関する必須検査項目はGOT、GPT及びγ‐GTPのみであるため、B型肝炎に関するウイルスマーカー検査は検査項目に入っていないこともありえます。
しかし、定期健康診断の検査項目に入っていない場合であっても、オプション検査として追加できることが多々あります。
検査を受けたいという方は、医療機関で相談してみると良いでしょう。
妊婦健康診査(妊婦健診)
B型肝炎ウイルスは母子感染で感染することがわかっています。
そのため、妊婦の方については、母子感染防止のために、妊婦健診でB型肝炎に感染していないかが検査されることが一般的です。
手術前検査
B型肝炎ウイルスは感染者の血液や体液が体内に入ることで感染します。
手術の際には当然出血を伴いますので、医療従事者を守るために、患者がB型肝炎ウイルスに感染していないかを事前に検査することが一般的です。
任意の医療機関
B型肝炎ウイルスの検査は、ほとんどの医療機関で受けることができます。
全身の倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などの肝炎を疑わせる症状がある場合には、なるべく早い段階でかかりつけ医などの医療機関を受診することをオススメします。
B型肝炎の検査にかかる費用とは?
B型肝炎の検査を受ける場合、どこで検査を受けるかによって費用が異なります。
血液検査にかかる費用の目安としては、以下の表を参考にしてください。
検査項目 | 自己負担額(保険適用なし) |
---|---|
HBs抗原検査 |
|
HBs抗体検査 HBe抗原検査 HBe抗体検査 HBc抗体検査 |
各2000円 〜 5000円程度 |
HBV-DNA検査 | 3000円 〜 5000円程度 |
HBVジェノタイプ検査 | 5000円 〜 1万円程度 |
HBVサブジェノタイプ検査 | 1万5000円 〜 2万円程度 |
B型肝炎の検査を無料で受けられる?
対象者に限られますが、各地方自治体が実施する「健康増進事業による肝炎ウイルス検査」や「特定感染症検査等事業による肝炎ウイルス検査」でB型肝炎の検査を受ける場合には、無料で受けることができます。
対象者や実施場所などの詳細は各自治体によって異なりますので、お住いの自治体にお問い合わせください。
B型肝炎が疑われる場合
B型肝炎の検査を受けて、その結果感染が疑われる場合には、少なくとも以下の対処法をとることをオススメします。
専門医を受診する
HBs抗原検査で陽性と診断された場合、ほぼ間違いなくB型肝炎ウイルスに感染していることになります。
B型肝炎ウイルスに感染していても、自覚症状がすぐに現れるとは限りません。
むしろ、肝臓は「沈黙の臓器」といわれており、自覚症状が現れる頃には病気がかなり進行していることが少なくありません。
そのため、自覚症状が現れていない場合でも、すぐに肝臓の専門医(肝疾患診療連携拠点病院)を受診することが肝心です。
医療費の助成を申請する
HBs抗原検査で陽性と診断された方は、医療費の助成を受けることができる可能性があります。
検査費用については、初回精密検査や定期検査に関する費用が助成の対象とされています。
治療費については、インターフェロン治療や核酸アナログ製剤治療に関する費用が助成の対象とされています。
医療費の助成について、もっと詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
B型肝炎の給付金を申請する
過去に国が実施していた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった方の場合には、国からB型肝炎給付金を受け取ることができる可能性があります。
B型肝炎給付金で貰うことができるお金は、病状等によって50万円から3600万円と定められています。
B型肝炎給付金を国から貰うためには、国を相手に訴訟を提起しなければなりません。
裁判の中で、国にB型肝炎給付金の受給対象者であると認めてもらう必要があるのです。
B型肝炎給付金の請求には期限があり、2027年(令和9年)3月31日までに裁判を起こす必要があります。
給付金を受け取りたいという方は、なるべく早く裁判を起こすための準備を始めた方が良いでしょう。
B型肝炎給付金について、もっと詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
給付金をいくらもらえる?無料で診断!
具体的にいくら給付金を貰うことができるのかについては、以下のシミュレーターを使って無料で診断することができます。
自分がいくら給付金を貰うことができるのか気になるという方は、ぜひご活用ください。
B型肝炎に詳しい弁護士へ相談
B型肝炎給付金を受け取るためには、以下の3つのステップをこなす必要があります。
- ① 自分が給付金の対象者となるかを判断
- ② 国に裁判を起こし、裁判の中で自分が給付金の対象者であると認めてもらう
- ③ 社会保険診療報酬支払基金に給付金の支払いを請求する
これらのステップをこなすためには、多くの資料を集める必要があります。
また、裁判を起こすためには作成しなければならない書類もあります。
当然、これら全てを専門家に頼らずに行うこともできます。
しかし、請求を行うための時間的制限もありますので、判断や手続きに迷った場合には、専門家に相談することをオススメします。
B型肝炎給付金を請求するための弁護士の選び方について、もっと詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
B型肝炎の検査についてのQ&A
B型肝炎の検査について、よくあるご質問にお答えします。
B型肝炎は検査したほうが良いですか?
そのうえ、一部の方は感染後自然治癒せず、一生B型肝炎ウイルスを体内に持ったままになってしまいます(B型肝炎キャリア)。
B型肝炎が慢性化してしまうと、肝硬変や肝がんといった死亡リスクの高い病気に進行するおそれがあります。
また、B型肝炎は感染者の血液や体液等で感染する性質があります。
つまり、ご自身がB型肝炎のキャリアであることを知らないままだと、日常生活の中で自らの大切な方に感染させてしまうリスクがあるのです。
B型肝炎ウイルスに感染しているかを検査することは、ご自身や大切な方の健康を守るためにとても重要だといえます。
まとめ
B型肝炎ウイルスに感染しているかを診断するための検査方法や検査場所について解説をしてきました。
B型肝炎ウイルスの感染を診断するためには、血液検査を受けるしかありません。
血液検査は様々な場所で受けることができますが、無料で受けたいという方は、各都道府県や市町村等が実施する「健康増進事業による肝炎ウイルス検査」や「特定感染症検査等事業による肝炎ウイルス検査」を利用することをオススメします。
ただし、対象者は限られますので、詳しくはお住いの自治体にお問い合わせください。
B型肝炎の検査では、血液中に「HBs抗原」が存在しているかをチェックします。
血液中にHBs抗原が存在している(陽性である)と診断された場合には、専門の医療機関(肝疾患診療連携拠点病院)を受診することが重要です。
また、医療費の助成金やB型肝炎給付金といったお金を国や自治体から受け取れる可能性がありますので、ご自分が対象者かどうかの判断に迷った方は、ぜひ1度弁護士に相談してみてください。
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