B型肝炎は健康診断ではわからない場合がほとんどです。
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査で「HBs抗原」の数値を検査して診断されます。
会社で行われる「一般健康診断」で実施される必須検査項目には、HBs抗原の検査は含まれていません。
そのため、健康診断のオプションでHBs抗原の検査が追加できれば、B型肝炎が陽性であるかどうかを調べることができます。
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べたい場合には、基本的には自分で検査を受ける必要があります。
この記事では、会社で行われる健康診断とはどのようなものなのかに加えて、健康診断以外の場でB型肝炎ウイルスの感染を検査したい場合に行われる検査の種類と費用について、解説をしていきます。
B型肝炎は健康診断でわかる?
B型肝炎は、健康診断ではわからない場合がほとんどです。
B型肝炎の原因となるB型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査で「HBs抗原」の数値を確認することでのみ診断することができます。
一般的な健康診断では、HBs抗原の検査は行われませんので、B型肝炎は健康診断ではわからないことが多いと言えます。
ただし、HBs抗原の検査がオプションで追加できる場合などには、健康診断の中でB型肝炎がわかる場合もあります。
健康診断とは?
健康診断とは、体の状態を検査することで、病気の予防や早期発見・早期治療を行うために実施される全身検査です。
健康診断には、大きく分けて「一般健康診断」と「特定健康診査」の2種類があります。
また、健康診断と混同されやすいものとしては、「検診」や「人間ドック」があります。
それぞれ、以下のような特徴があります。
対象者 | 実施義務の有無 | 実施義務者 | |
---|---|---|---|
一般健康診断 | 労働者 | あり | 事業者(会社) |
特定健康診査 | 医療保険の加入者で40〜74歳の方 | あり | 保険者(市町村や健康保険組合など) |
検診 | 個人 | なし | × |
人間ドック | 個人 | なし | × |
一般健康診断とは
一般健康診断とは、病気の予防・早期発見・早期治療を目的として行われる全身の健康状態の検査のことです。
労働安全衛生法66条第1項において、会社は、労働者に対して、1年に1度必ず健康診断を受診させなければならないと定められています。
そのため、会社に勤めている方は、1年に1度必ず受診していると思います。
一般健康診断で行われる検査については、労働安全衛生規則44条で細かく定められています。
一般健康診断で実施される検査の必須項目としては、以下の通りです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(HDLコレステロール、LDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖又はHbA1c)
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
※一部、医師の判断により検査の省略が許されているものも記載しています。
参考:労働安全衛生法
参考:労働安全衛生規則
特定健康診査とは
特定健康診査とは、医療保険に加入している方のうち、40〜74歳の方を対象に行われるメタボリックシンドロームに着目した健康診査のことです。
高齢者の医療の確保に関する法律20条において、保険者は、被保険者(保険に加入している方)に対して、特定健康診査を受診させなければならないと定められています。
特定健康診査で行われる検査については、特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準で細かく定められています。
特定健康診査で実施される検査の必須項目としては、以下の通りです。
- 服薬歴、喫煙歴等
- 身長、体重、BMI、腹囲の検査
- 理学的検査(身体診察)
- 血圧測定
- 脂質検査(血清トリグリセライド、HDLコレステロール、LDLコレステロール)
- 血糖検査(空腹時血糖又はHbA1c)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
検診とは
検診とは、特定の病気を発見するために行う検査のことです。
健康診断は、全身の健康チェックをして、全般的な病気の予防・発見を行う目的で行われますので、ある病気に特化して検査を行う検診とは目的が異なります。
検診の中でメジャーなものとしては、「がん検診」が挙げられます。
検診は、受診させる法的義務がありませんので、個人が自分の判断で受診するかどうかを決めることが出来る点が健康診断とは異なります。
人間ドックとは
人間ドックとは、病気の予防・早期発見・早期治療を目的として行われる全身の健康状態の検査のことです。
この点は一般健康診断と変わりません。
人間ドックと一般健康診断の違いは、検査項目の多様さと受診させる義務の有無です。
人間ドックは、一般健康診断とは異なり受診させる法的義務はありません。
あくまで、個人の判断で受診するかどうかを決める点が一般健康診断とは異なります。
また、一般健康診断の場合、実施される検査項目は10程度です。
これに対し、人間ドックの場合は検査項目は50〜100項目となることが一般的であり、一般健康診断で行われる検査項目に加えて、様々な検査を行うことができます。
また、検査項目を自由に決めることができますので、ある特定の病気に特化した検査を受診するなど、受診の自由度が高いという点も挙げられます。
B型肝炎は会社の健康診断ではわからない!?
B型肝炎は、会社の健康診断ではわからない場合がほとんどです。
会社の健康診断では、肝機能に関する検査が行われていますので、これでB型肝炎ウイルスの感染がわかるのでは?と疑問に感じる方もいるかもしれません。
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査で「HBs抗原」の有無を検査して診断されます。
会社の健康診断で行われる肝機能に関する検査では、「GOT」「GPT」「γ-GTP」の数値の検査しか行われません。
つまり、これらの検査では、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかはわからないのです。
ただし、会社によっては検査項目を希望により増やすことができる場合があります。
増やすことができる検査項目は会社によって異なりますので、B型肝炎の検査ができるかどうかが気になるという方は、会社に問い合わせてみてください。
会社の健康診断の内容
会社の健康診断は、正式には一般健康診断といいます。
会社には、雇用している労働者に対して、年に1度健康診断を受けさせなければならない法的義務が課されています(労働安全衛生法66条第1項)。
会社で実施される健康診断は、上記の一般健康診断と同じ内容です。
B型肝炎の検査方法と費用の相場
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べたい場合は、血液検査で検査を行うことになります。
検査費用については、どのような項目の検査を行うかによって無料〜2万円程度と大きく異なります。
検査方法と費用の相場について解説をしていきます。
B型肝炎の検査方法
B型肝炎の検査は、血液検査の中でも「ウイルスマーカー検査」と呼ばれる手法で検査を行います。
B型肝炎ウイルスの感染を判断するウイルスマーカー検査は、さらに「抗原検査」「抗体検査」「ゲノム検査」の3つに分けられます。
抗原検査では、HBs抗原またはHBe抗原の数値が検査されます。
抗体検査では、HBs抗体・HBe抗体・IgM-HBc抗体・IgG-HBc抗体の数値が検査されます。
ゲノム検査では、HBV-DNA・HBVジェノタイプ・HBVサブジェノタイプの数値が検査されます。
詳細については、以下の表をご覧ください。
検査の種類 | 陽性の検査結果からわかることなど | |
---|---|---|
抗原検査 | ||
HBs抗原 | B型肝炎ウイルスに感染している | |
HBe抗原 | 肝臓でB型肝炎ウイルスが活発に増殖している B型肝炎ウイルスの感染力が強い |
|
HBc抗原 | ※検出が難しく、一般的には診断に用いられない | |
抗体検査 | ||
HBs抗体 | B型肝炎ウイルスの免疫ができている (過去の感染、ワクチン接種による免疫獲得) |
|
HBe抗体 | B型肝炎ウイルスの増殖力が低下している B型肝炎ウイルスの感染力が弱い |
|
IgM-HBc抗体 | ⑴陽性で高値の場合 急性肝炎や劇症肝炎を発症しているおそれ ⑵陽性で低値の場合 キャリアの方の急性憎悪期のおそれ |
|
IgG-HBc抗体 | ⑴陽性で高値の場合 B型肝炎ウイルスに持続感染している ⑵陽性で低値の場合 過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがある |
|
ゲノム検査 | ||
HBV-DNA | B型肝炎ウイルスに感染している 検出量によって感染力の強さがわかる |
|
HBVジェノタイプ サブジェノタイプ |
治療方針を決定するために検査を行う ※ジェノタイプによって効果のある薬などが異なるため |
B型肝炎の検査にかかる費用
B型肝炎の血液検査でかかる費用の相場をまとめました。
検査項目 | 自己負担額(保険適用なし) |
---|---|
HBs抗原検査 |
地方自治体の検査:無料 |
HBe抗原検査 HBs抗体検査 HBe抗体検査 IgM-HBc抗体 IgG-HBc抗体 |
それぞれ2000円〜5000円程度 |
HBV-DNA検査 | 3000円〜5000円程度 |
HBVジェノタイプ検査 | 5000円〜1万円程度 |
HBVサブジェノタイプ検査 | 1万5000円〜2万円程度 |
B型肝炎と健康診断についてのQ&A
B型肝炎と健康診断について、よくある質問にお答えします。
B型肝炎は普通の血液検査でわかる?
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査で「HBs抗原」の数値を確認して診断します。
この血液検査は、通常の採血方法で採取された血液で検査を行います。
そのため、B型肝炎は普通の血液検査で調べることができます。
B型肝炎だとわかるきっかけは?
- 他の病気で手術をすることになった時
- 妊娠した時
- 献血をした時
- 副作用のある薬を服用する必要があるとき
- 会社の健康診断で肝臓機能の低下が診断されたとき
B型肝炎は発症したとしても自覚症状が現れるまでに時間がかかるケースが多く、肝炎を原因とする体調不良とは異なる原因がきっかけで発覚する方が多いようです。
他の病気で手術をすることになった時
病気や怪我で手術することになった場合、医療関係者に対する感染症対策を実施するために、一般的な感染症の「手術前検査(術前感染症検査)」が行われます。
手術前検査では、B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・HIV・梅毒血清反応の検査が行われます。
そのため、手術前検査で初めてB型肝炎ウイルスの感染が判明する場合があります。
妊娠した時
妊娠した場合には、赤ちゃんや医療関係者に対する感染症対策を実施するために、妊婦健康診査(妊婦健診)が行われます。
妊婦検診では、B型肝炎ウイルスの感染を調べる検査が必須とされています。
そのため、妊婦検診で初めてB型肝炎ウイルスの感染が判明する場合があります。
献血をした時
日本赤十字社では、輸血用血液製剤の安全性を確保するために、献血された血液について感染症の検査を行っています。
日本赤十字社では、以下の感染症について検査を行っています。
- 梅毒トレポネーマ検査
- B型肝炎ウイルス検査
- C型肝炎ウイルス検査
- エイズウイルス検査
- ヒトT細胞白血病ウイルス-1型検査
- ヒトパルボウイルスB19検査
そのため、献血で初めてB型肝炎ウイルスの感染が判明する場合があります。
なお、検査結果を受け取りたいという場合には、献血申込書の記入時に希望する必要がありますので、注意してください。
※検査目的の献血は絶対に行わないでください。
副作用のある薬を服用する必要があるとき
膠原病やリウマチ性疾患、がんなどに対して用いられる薬の一部には、B型肝炎ウイルスを活性化させる副作用があるものがあります。
そのため、これらの薬剤を使用する場合には、医師の判断でB型肝炎ウイルスに関する検査が行われることが一般的です。
この検査がきっかけで、B型肝炎ウイルスの感染が判明する場合があります。
会社の健康診断などで肝臓機能の低下が診断されたとき
会社の健康診断では、「GOT」「GPT」「γ-GTP」という肝機能に関する数値の検査が行われます。
これらの数値から肝機能に異常が認められる場合には、原因を特定するために他の検査が行われることが一般的です。
数値から肝機能障害が起こっていることが考えられる場合、想定される原因としては、B型・C型肝炎ウイルスによる肝炎、アルコール性肝障害、薬物性肝障害、自己免疫性肝障害など多様なものが考えられます。
肝機能障害の原因を特定するために様々な検査が行われますので、この検査をきっかけにB型肝炎ウイルスの感染が判明する場合があります。
まとめ
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、一般的に行われている健康診断ではわからない場合が多いです。
会社で実施される健康診断では、B型肝炎ウイルスに関する検査項目は通常含まれていません。
そのため、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを検査したい場合には、基本的には自ら積極的に検査の機会を設ける必要があります。
HBs抗原の検査であれば、お住いの自治体で無料で受けられる場合がありますので、気になる方はお住いの自治体にお問い合わせください。
HBs抗原が陽性だった場合には、他の抗原・抗体・ゲノム検査が必要になる場合もありますので、医療機関への受診と医師の判断に従うことが重要です。
過去の連続予防接種によりB型肝炎に感染した場合には、国に対して給付金を請求できる可能性があります。
当事務所では、B型肝炎問題に注力する弁護士が給付金請求の対応を行っていますので、B型肝炎についてお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
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