肝硬変のステージは、チャイルド・ピュー分類という分類手法を用いて、三段階に分けられており、グレードAでは無症状が多く、グレードBでは食欲不振、全身の倦怠感、体重減少、黄疸、くも状血管腫、腹水、浮腫、肝性脳症、門脈圧亢進症等の症状が生じ、グレードCでは、著しい食欲不振、高度の全身倦怠感、体重減少、高度の黄疸、難治性の腹水、下腿浮腫、肝性脳症(昏睡をともなう)、食道静脈瘤、門脈圧亢進症、低アルブミン血症、凝固障害等の症状が生じます。
肝硬変の初期段階は「代償性肝硬変」とも呼ばれ、症状が出ない方がほとんどです。
しかし、肝硬変が進行し、「非代償性肝硬変」と呼ばれる状態になると、「黄疸」「くも状血管腫」「腹水」「肝性脳症」「食道静脈瘤」などの症状や合併症が現れてきます。
肝硬変は根治が難しい病気ですが、生活習慣の改善や合併症の治療などによって、進行を遅らせることができる病気でもあります。
金銭的な負担が理由で継続的に治療を受けることが難しいという場合は、助成金の利用やB型肝炎給付金の受給を検討してみましょう。
この記事では、肝硬変のステージ別の症状や、肝硬変と診断されたときに検討したい事項について解説を行います。
肝硬変のステージ別の症状
肝硬変のステージは、チャイルド・ピュー分類によって、グレードA・B・Cの三段階に分類されます。
チャイルド・ピュー分類におけるグレードAは「代償性肝硬変」の段階であり、重篤な症状が現れることはほとんどありません。
しかし、肝硬変のステージが進み、グレードBやCになると「非代償性肝硬変」とも呼ばれ、様々な症状や合併症が現れてきます。
肝硬変の分類について
肝硬変のステージは、チャイルド・ピュー分類によって、グレードA・B・Cの三段階に分類されます。
チャイルド・ピュー分類とは、「肝性脳症」「腹水」「アルブミン(g/dL)」「ビリルビン(mg/dL)」「プロトロンビン活性値(%)」の5つの項目の検査結果をそれぞれ点数化し、合計点数から肝硬変のステージを分類するものです。
5項目の検査結果と点数の関係については、以下の表をご覧ください。
1点 | 2点 | 3点 | |
---|---|---|---|
肝性脳症 | なし | 1〜2 軽度 |
3〜4 時々昏睡する |
腹水 | なし | 軽度 コントロール可能 |
中等度以上 コントロール困難 |
アルブミン(g/dL) | 3.5超 | 2.8以上3.5以下 | 2.8未満 |
ビリルビン(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0以上3.0以下 | 3.0超 |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40以上70以下 | 40未満 |
これら5項目の合計点数が何点かによって、肝硬変のステージが分類されることになります。
合計点数と肝硬変のステージの分類、肝硬変がどの程度進行しているかの関係については、以下の表をご覧ください。
グレードA | 5〜6点 | 代償性肝硬変(軽度の肝硬変) 肝臓の一部が線維化しているが、残りの健常な肝細胞が代わりに機能を果たすことで、肝臓の機能が維持されている状態 |
グレードB | 7〜9点 | 非代償性肝硬変(中度の肝硬変) 肝臓の線維化が進行し、肝臓の機能を十分に維持できなくなったことにより、軽度の症状や合併症が現れる状態 |
グレードC | 10〜15点 | 非代償性肝硬変(重度の肝硬変) 肝臓の線維化が進行し、もはや肝臓の機能が維持できなくなったことにより、重篤な症状や合併症が現れる状態 |
参考:肝硬変|国立研究開発法人国立国際医療研究センター 肝炎情報センター
肝硬変の軽度の症状
チャイルド・ピュー分類でグレードAに分類された場合、軽度の肝硬変を発症しているということになります。
軽度の肝硬変の場合、肝臓の線維化(肝臓の一部が固くなり、縮んでいる状態)は一部あるものの、大部分の肝臓は正常な状態です。
そのため、肝臓の機能もほぼ維持されており、自覚症状がない場合がほとんどです。
ただし、稀に以下のような症状が出る場合があります。
- 食欲不振
- 全身の倦怠感
肝硬変の中度の症状
チャイルド・ピュー分類でグレードBに分類された場合、中度の肝硬変を発症しているということになります。
中度の肝硬変の場合、肝臓の線維化が進行しており、肝臓の機能を維持することが難しい状態です。
そのため、以下のような症状や合併症が現れます。
- 食欲不振
- 全身の倦怠感
- 体重減少
- 黄疸
- くも状血管腫
- 腹水
- 浮腫
- 肝性脳症
- 門脈圧亢進症
肝硬変の末期の症状
チャイルド・ピュー分類でグレードCに分類された場合、重度の肝硬変を発症しているということになります。
重度の肝硬変の場合、肝臓の大部分が線維化し、肝臓の機能が著しく低下している状態です。
そのため、以下のような重篤な症状や合併症が現れます。
- 著しい食欲不振
- 高度の全身倦怠感
- 体重減少
- 高度の黄疸
- 難治性の腹水
- 下腿浮腫
- 肝性脳症(昏睡をともなう)
- 食道静脈瘤
- 門脈圧亢進症
- 低アルブミン血症
- 凝固障害
肝硬変と告げられた方へ
肝硬変と告げられた今、とても動揺していることと思います。
今の医療では、肝硬変そのものを治療する方法としては肝移植しかありません。
しかし、生活習慣の改善や合併症の治療を行うことで、寿命を延ばすことが十分期待できる病気でもあります。
肝硬変の診断を受けた方にぜひ検討してほしいことを、法律の専門家である弁護士として、3つご紹介します。
助成金の受給
肝硬変の原因は、「ウイルス性」「自己免疫性」「アルコール性」など様々です。
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが原因で肝硬変を発症した方の場合は、国や都道府県から医療費について助成を受けることができる可能性があります。
助成の対象者の場合、月額1万円〜2万円の自己負担額でB型肝炎の治療のための「インターフェロン治療」や「核酸アナログ製剤治療」を受けることができます。※
ウイルス性の肝硬変の場合、ウイルスの治療をすることで肝機能の改善が十分期待できますので、助成を利用して治療を受けることをおすすめします。
助成を受けるための要件などは自治体によって異なりますので、詳しくはお住いの自治体に問い合わせてみてください。
※世帯の所得額によって自己負担額が変わります。
B型肝炎給付金
B型肝炎ウイルスが原因で肝硬変を発症した方の場合、国から300万円〜3600万円の給付金を受け取ることができる可能性があります。
B型肝炎給付金を受け取ることができる方は、「国が実施していた集団予防接種※が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方」です。
心当たりのある方は、今後の生活のためにも、B型肝炎給付金を受給することを検討してみてください。
ただし、B型肝炎給付金を受け取るためには、2027年(令和9年)3月31日までに国を相手に訴訟を起こす必要がありますので、時間的制約がある点に注意が必要です。
※1948年(昭和23年)7月1日〜1988年(昭和63年)1月27日に実施された集団予防接種のことを指します。
遺言書の検討
肝硬変と診断されたこの機会に、遺言書の作成を検討してみることもおすすめです。
人が自分の死後に効力を発生させる目的で、あらかじめ書き残しておく意思表示のことを「遺言」といい、「遺言書」はその遺言が記された書面のことを言います。
遺言書は、満15歳に達した人であれば、原則として誰でも作成することができます。
遺言書を作成するメリットとしては、自分がいなくなったあとの親族間の紛争を防止できる点や、遺族に想いを伝えることができる点が挙げられます。
遺言書は生きている限りいつでも書き直すことが可能なものですから、今の気持ちを踏まえて、どのような内容にするかを検討されてください。
肝硬変のステージについてのQ&A
肝硬変のステージについて、よくあるご質問にお答えします。
肝硬変の進行を遅らせるためにはどうしたらいいですか?
- 原因疾患の治療
- 合併症の予防と管理
- 生活習慣の改善
肝硬変にはウイルス性やアルコール性などの原因があります。
ウイルス性の場合には、肝硬変の原因となっているウイルスを治療しましょう。
アルコール性の場合、肝硬変の進行を遅らせるためには、断酒することが非常に重要です。
また、肝硬変が非代償性肝硬変にまで進行すると、様々な合併症が現れます。
合併症の中には、食道静脈瘤や腹水、肝性脳症といった命にかかわる合併症もあります。
これらの合併症を適切にコントロールし、体にダメージを与えないようにすることも大切です。
加えて、ウイルス性の肝硬変の場合であっても、飲酒が肝臓にダメージを与えることに変わりはありませんので、飲酒量のコントロールは非常に重要です。
その他、栄養バランスの整った食事や適度な運動習慣などの生活習慣の改善も行いましょう。
肝硬変になるまでにはどれくらいの期間がかかりますか?
そもそも、肝硬変とは、なんらかの原因によって肝臓に長期間炎症が起き、この炎症を修復するときにできる「線維(コラーゲン)」が増加して肝臓全体に拡がった状態のことを指します。
つまり、肝臓に慢性的な炎症が起きた段階で、生活習慣の改善を行うなどの適切な治療をすることで、肝硬変になるまでの期間を延ばすことができると言えます。
まとめ
肝硬変のステージは、グレードA・B・Cの三段階に分類されます。
グレードAは「代償性肝硬変」とも呼ばれ、症状が出ない方がほとんどです。
しかし、肝硬変が進行してグレードB・Cになり、「非代償性肝硬変」と呼ばれる状態になると、「黄疸」「くも状血管腫」「腹水」「肝性脳症」「食道静脈瘤」などの症状や合併症が現れます。
肝硬変は根治が難しい病気ですが、生活習慣の改善や合併症の治療などによって、進行を遅らせることができる病気でもあります。
特に、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスといったウイルス性の肝硬変の場合、ウイルスの治療をすることで、肝臓の機能を回復することが十分期待できます。
また、B型肝炎ウイルスが原因で肝硬変になってしまった方の場合は、国から300万円〜3600万円の給付金を受け取ることができる可能性があります。
今後の生活を安心して送るためにも、ぜひB型肝炎給付金の受給を検討されてください。
弁護士法人デイライト法律事務所では、B型肝炎訴訟に精通した弁護士が多数在籍しており、お困りの方を強力にサポートする体制が整っております。
遠方にお住まいの方や体調の関係で事務所に来所することが難しい方のために、電話やメールなどを利用したオンラインでの相談も承っております。
B型肝炎訴訟でお困りの方は、ぜひ1度お気軽にお問い合わせください。