HBs抗原とは?HBs抗体との違いや陽性時の数値の見方

「HBs抗原」とは、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するタンパク質の一つです。

HBs抗原に名前がよく似ているものとして、「HBs抗体」というものがあります。

HBs抗原とHBs抗体は名前が似ているため、混同されることが多い印象です。

しかし、HBs抗体は、HBs抗原に対応する「中和抗体」です。

中和抗体とは、抗原(ウイルス)にくっつくことで、ウイルスの活動を妨げる働きをする抗体のことです。

HBs抗体が体内に存在している場合、B型肝炎ウイルスに対する免疫ができているということです。

これに対し、HBs抗原が体内に存在している場合は、B型肝炎ウイルスに今まさに感染しているということを示します

B型肝炎ウイルスが原因で慢性肝炎等の肝臓の病気を発症している場合には、B型肝炎給付金を受け取ることができる可能性があります。

この記事では、「HBs抗原」と「HBs抗体」の違いや検査数値の見方、B型肝炎給付金について解説を行います。

HBs抗原とは?

HBs抗原とは

「HBs抗原」とは、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するタンパク質の一つです。

HBs抗原が陽性ということは、体内にHBs抗原が存在している(=B型肝炎ウイルスに感染している)ということです。

HBs抗原が体内に存在しているかどうかは、血液検査で調べることができます。

 

 

HBs抗原の陽性とは〜検査結果の数値の見方

先述のとおり、HBs抗原が陽性の場合、B型肝炎ウイルスに感染していることを示します。

CLIA法による検査の場合、HBs抗原が0.05IU/ml未満であれば陰性、0.05IU/ml以上であれば陽性とされます。※

※検査手法によって、陽性と判断される数値(基準)は異なります。

 

 

HBs抗体とは?

「HBs抗体」とは、HBs抗原にくっつくことで、B型肝炎ウイルスに感染することを妨げる働きをします。

このような働きをする抗体のことを「中和抗体」と言います。

HBs抗体が陽性ということは、かつてB型肝炎ウイルスに感染したことがあるが、現在は治癒しており、B型肝炎ウイルスに対する免疫ができているということです。

また、B型肝炎ウイルスのワクチンを接種しており、B型肝炎ウイルスに対する免疫ができている場合にも、HBs抗体は陽性となります。

 

HBs抗体の陽性とは〜検査結果の数値の見方

先述のとおり、HBs抗体が陽性の場合、B型肝炎ウイルスに対する免疫を獲得しているということを示します。

CLIA法による検査の場合、HBs抗体が10.0IU/ml未満であれば陰性、10.0IU/ml以上であれば陽性とされます。※

※検査手法によって、陽性と判断される数値(基準)は異なります。

 

 

HBs抗原とHBs抗体との違い

HBs抗原とHBs抗体との違い

HBs抗原は、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するタンパク質の一つです。

これに対し、HBs抗体は、B型肝炎ウイルスの感染を防御する中和抗体です。

つまり、HBs抗原がB型肝炎ウイルスそのものであるのに対し、HBs抗体は、B型肝炎ウイルス(HBs抗原)が体内に入ったことをきっかけとして、このウイルスに対抗するために体内で作られる抗体であるということです。

名前が似ているので混同しがちですが、HBs抗原とHBs抗体はまったくの別物なのです。

 

 

B型肝炎とは?

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスが原因で起こる肝臓の炎症です。

B型肝炎ウイルスに感染した場合、肝臓に炎症が生じます。

炎症が慢性化した場合、肝硬変や肝がんに進行するおそれがあります。

 

B型肝炎の意味

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスの感染によって引き起こされる肝臓の病気です。

成人が感染した場合、多くは無症状もしくは軽微な急性肝炎の発症のみで自然に治癒し、B型肝炎ウイルスに対する免疫を獲得するケースがほとんどです。

しかし、幼児や特定の病気の患者など、免疫機能がうまく発達(機能)していない方が感染した場合には、肝炎が慢性化することがあります

 

B型肝炎の症状

B型肝炎の症状は、発症している病気が「急性肝炎」「劇症肝炎」「慢性肝炎」のいずれかによって異なります

発症している病気が急性肝炎の場合は、以下のような比較的軽微な症状が出現し、その後自然に治癒するケースがほとんどです。

急性肝炎
  • 微熱程度の発熱
  • 食欲不振
  • 全身倦怠感
  • 悪心
  • 嘔吐
  • 右季肋部痛(肝臓周辺の痛み)
  • 上腹部膨満感
  • 黄疸など

ただし、約1%の割合で劇症肝炎を発症する場合があります。

劇症肝炎を発症した場合、急激に肝臓の機能が低下することにより、以下のような命に関わる症状が出現します。

劇症肝炎
  • 肝性脳症
  • 意識障害
  • 見当識障害
  • 興奮、せん妄状態
  • 黄疸
  • 出血傾向
  • 腹水
  • 低血糖
  • 高アンモニア血症
  • 腎不全
  • 肺水腫
  • 心不全など

慢性肝炎を発症した場合は以下のような症状が現れますが、初期段階では自覚症状が出ないことも多いので、注意が必要です。

慢性肝炎
  • 全身倦怠感
  • 食欲不振
  • 悪心
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 上腹部痛
  • 黄疸
  • 腹水
  • 浮腫
  • 吐血
  • 掻痒感(非常に強い痒み)など

 

B型肝炎の感染経路

B型肝炎ウイルスは、感染者の血液や体液(傷口浸出液、精液、膣分泌液、唾液等)が傷口、粘膜に付着することで感染します。

具体的には、以下のようなケースでの感染が確認されています。

  • 出産時の母子感染
  • 性行為による感染
  • 使い回しの注射器や輸血による感染
  • 刺青やピアスなどの皮膚穿刺による感染
  • 歯ブラシや剃刀などの生活用品の共用による感染
  • 医療従事者の針刺し事故による感染
  • 臓器移植による感染
  • 激しい身体接触を伴うスポーツによる感染

ただし、B型肝炎ウイルスが感染するためには、ある程度の量のウイルスが必要です。

そのため、職場・公衆トイレ・銭湯といった場所で日常生活を送る分には感染リスクはほとんどありませんので、神経質になりすぎる必要はありません。

 

B型肝炎の治療

B型肝炎の治療は、「急性肝炎」「劇症肝炎」「慢性肝炎」のいずれを発症しているかによって異なります。

急性肝炎の場合は、自らの免疫機能でウイルスを排除することが期待できますので、積極的に治療をせず、安静にするよう指示されることが一般的です。

これに対し、劇症肝炎や慢性肝炎の場合には、以下のような治療が行われます。

劇症肝炎の治療
  • 核酸アナログ療法
  • 肝庇護療法(肝細胞の破壊を抑え、慢性肝炎から肝硬変への進展を遅らせる)
  • 血液浄化療法(血漿交換や血液透析により、血中の有害物質を除去)
  • 人工肝補助システム(肝臓の機能を一時的に代行する)
  • 意識障害に対する治療など
慢性肝炎の治療
  • 核酸アナログ療法
  • インターフェロン療法
  • 肝庇護療法
  • 症状に応じた対症療法など
  • 意識障害に対する治療など

 

医療費の助成を受けられる?

B型肝炎ウイルスが原因で肝炎等の病気を発症した場合、治療について国や都道府県から助成を受けられる可能性があります

助成の対象となる治療等の範囲については、以下のように定められています。

  • 初診料
  • 再診料
  • 検査料
  • 入院料等
  • インターフェロン治療にかかる医療費
  • 核酸アナログ製剤治療にかかる医療費
  • インターフェロン治療による副作用の治療

助成の額については、世帯の市町村民税の課税年額によって異なります。

世帯の市町村民税の課税年額 自己負担額の上限(月額)
世帯全員の市町村民税の課税年額が23万5000円以上 2万円
世帯全員の市町村民税の課税年額が23万5000円未満 1万円

助成を受けたいという方は、お住いの自治体の保健所の窓口に必要書類を提出する必要があります。

 

B型肝炎は完治する?

B型肝炎の完治可能性は、「急性肝炎」と「慢性肝炎」では大きく異なります。

急性肝炎の場合、ほとんどの場合が自然経過でウイルスを体内から排除することができます

これに対し、慢性肝炎の場合は、現在の医療では体内からウイルスを完全排除することができないとされています。

そのため、慢性肝炎の状態から肝硬変や肝がんへと進行しないように定期的な受診等を行うことが重要です。

 

B型肝炎給付金はいくらもらえる?

B型肝炎給付金は、最小50万円〜最大3600万円を受け取ることができる可能性があります。

死亡、 肝がん、重度の肝硬変 発症後20年を経過していない 3600万円
発症後20年を経過している 900万円
軽度の肝硬変 発症後20年を経過していない 2500万円
20年が経過し現に治療を受けている等 600万円
発症後20年を経過した上記以外の方 300万円
慢性肝炎 発症後20年を経過していない 1250万円
20年が経過し現に治療を受けている等 300万円
発症後20年を経過した上記以外の方 150万円
無症候性キャリア 発症後20年を経過していない 600万円
発症後20年を経過している 50万円+定期検査費用等

 

B型肝炎給付金を受け取るまでにかかる時間は?

B型肝炎給付金を受け取るためには、まず国に対して裁判を起こす必要があります(B型肝炎訴訟)

B型肝炎訴訟は、だいたい2〜3ヵ月に1度の頻度で期日が開かれます。

期日というのは、裁判の審理(事実関係や法律関係を取り調べて明らかにする手続き)を行う日時のことです。

期日が開かれないことには審理が進みませんので、かなりゆっくりとしたスピードで審理が進んでいきます。

そのため、B型肝炎給付金の受け取りまでには、平均すると約1年6ヵ月から2年ほどかかるケースが多いです。

 

 

HBs抗原についてのQ&A

HBs抗原についてのご質問にお答えします。

HBs抗体PHAとは何ですか?

HBs抗体PHAとは、HBs抗原に対する抗体を測定する検査方法の一つです。

PHAは「Passive Hemagglutination Assay」の略で、受身赤血球凝集反応を利用した方法です。

具体的には、カモの赤血球にHBs抗原を結合させた「感作赤血球」を作製し、これに検査の対象となる血清サンプルを混ぜて反応を見ます。

操作が比較的簡便で、短時間での判定が可能な点が特徴ですが、現在は自動化が可能なCLIA法を使用するケースが増加しています。

 

HBe抗原陰性だとどういう意味ですか?

HBe抗原が陰性ということは、一般的には、B型肝炎ウイルスの増殖力が弱まっている状態とされています。

HBe抗原とは、B型肝炎ウイルスのウイルスコア粒子の一部を構成するタンパク質の一つです。

HBe抗原は、B型肝炎ウイルスが肝細胞内で増殖する際に過剰に生み出され、血中に放出されるという特徴を持っています。

そのため、血中にHBe抗原が多量に含まれている状態(HBe抗原が陽性の状態)の時は、それだけB型肝炎ウイルスの活動が活発であり、肝細胞内で増殖していることを示します。

HBe抗原が陰性の時は、これとは逆で、B型肝炎ウイルスの活動が抑えられており、肝炎が沈静化していることを示します。

 

HBc抗原とHBs抗原の違いは何ですか?

HBc抗原とHBs抗原の違いは、B型肝炎ウイルスのどの部分に由来する抗原かという点にあります。

HBc抗原は、B型肝炎ウイルスのウイルスコア粒子の一部を構成するタンパク質の一つです。

これに対し、HBs抗原は、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するタンパク質の一つです。

HBs抗原は、B型肝炎ウイルスに感染している場合、血液中に多く含まれるため、感染の有無を検査する際に最も重要な指標として用いられます。

これに対し、HBc抗原は血中に出にくいという特性があるため、通常血液検査の対象とはされません。

 

 

まとめ

「HBs抗原」と「HBs抗体」は名前が似ているため、混同されがちです。

しかし、HBs抗原がウイルスそのものであるのに対し、HBs抗体はウイルスの活動を妨げるために体内で作られるものであり、両者は大きく異なります。

HBs抗原が陽性ということは、血液中にB型肝炎ウイルスが存在している(=B型肝炎ウイルスに感染している)ということを示します。

過去に行われた集団予防接種等の際の注射器の連続使用が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方の場合、B型肝炎給付金を受け取ることができる可能性があります。

B型肝炎給付金は最大で3600万円を国から受け取ることができる制度ですが、給付金を受け取るためには、国に対して裁判を起こす必要があります

通常、B型肝炎給付金を受け取るためには、スムーズに進行したとしても約1年半〜2年程度の時間がかかります。

なるべく早く給付金を受け取りたいという方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弊所では、B型肝炎給付金に関する相談には料金をいただいておりません。

また、電話・メール・ZOOMといったオンライン相談も実施しています。

周囲の方に知られたくないという場合でも、秘密は必ず厳守いたします。

お困りの方は、ぜひ1度弁護士法人デイライト法律事務所までご相談ください。

 

 

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