道路標識が見えない場所で交通違反をしたらどうなる?
進入禁止の道路標識がほとんど見えない場所で、道路標識に違反したとして取り締まりを受けました。
道路標識が見えなくても違反になるのでしょうか。
道路標識は見やすいように設置することが求められています
ほとんどの道路標識は、走行中の運転手が一般的な注意を払っていれば、絶対に見落とすはずがないような状態で設置されています。
道路標識が交通規制を示すものである以上当然といえば当然なのですが、道路標識を設置する際は、「歩行者、車両または路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のもの」を設置することが求められているからです(道路交通法施行令1条の2第1項)。
反対に、走行中の車が前方からきちんと認識できるような状態で設置されていなければ、この道路交通法施行令に違反していることになります。
道路標識の状況によっては違反とならないこともあります
走行中に道路標識を見落としてしまった場合、警察官は交通違反として取り締まりを行おうとしますが、道路標識の状況によっては交通違反として扱われないこともあるのです。
まず、主観的に道路標識が見えにくいと感じただけ、あるいはそんなところに道路標識があるなんて知らなかったというだけの場合は、残念ながらそのような主張が認められることはありませんので、交通違反となってしまいます。
なぜならば、多くの法律や規制がある中で、その法律や規制を知らなかった場合には違反の責任を免れるということが認められてしまうと、社会の秩序が成り立たないと考えるのが法学上は一般的だからです。
これに対して、短期間の間に多くの者が同様の違反行為で取り締まられているような場合、そのような場所における道路標識の見落としは、道路標識の設置自体に問題がある可能性が否定できません。
道路標識が客観的にみても見えにくいように設置されている場合、すなわち道路交通法施行令1条の2第1項に違反しているような場合はどうでしょうか。
判例によると、道路標識は、いかなる車両のいかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置するべきであり、このような方法で設置されていない場合には適法かつ有効な規制がなされているものとはいえないから、道路交通法違反の罪にはあたらないと判断しています(最高裁判所昭和43年12月17日判決要旨)。
このような判例に照らすと、道路交通法施行令1条の2第1項に違反するような道路標識に違反したとしても、交通違反とは取り扱われないということになります。
具体的には、街路樹が生い茂っていて道路標識を覆い隠していた場合であったり、走行中の車からほんの一瞬しか見えないような位置に道路標識が設置されていたりという場合が考えられるでしょう。
今回の件でも、進入禁止の道路標識がほとんど見えないような形で設置されていたことが客観的に明らかになれば、交通違反とは取り扱われない事案である可能性があります。
違反を争うためにはどうすればいいか
道路標識に違反したとして警察に呼び止められた場合、軽微な違反であれば、その場で交通反則通告制度により交通反則金の納付を求めてきます。
交通反則通告制度とは、一定の交通反則金を納付することで、その違反行為については公訴を提起しないこととする制度であり、一般的には軽微な違反で前科がつくことを避けられるありがたい制度です。
しかしながら、交通反則金を納めてしまうと、それで行政上及び刑事上の手続きが全て終了してしまうため、その後交通違反を争うためには都道府県を相手にとって交通違反の取り消しを求める訴訟を提起しなければならなくなります。
そのため、道路標識が見やすいように設置されていなかったと主張する場合には、交通反則金を納めてはいけません。
警察官や検察官の取り調べや起訴後の裁判において、通行中の道路から見た道路標識の状況を詳しく説明することが必要となります。
もっとも、道路標識の有効性を無闇に争うことは、運転者にとって不利益になる可能性があります。
刑事裁判において道路標識による規制の有効性を争ったものの道路標識が有効であると判断された場合、軽微な交通違反であっても、罰金刑が言い渡されることになります。
交通反則金と刑事裁判における罰金刑は性質が異なり、罰金刑であっても前科となってしまいます。
このように、安易に交通反則金を納付しないという判断をすることにはリスクもありますから、交通違反で取り締まりを受ける際に交通反則金を支払うか否かは、慎重に検討する必要があることは忘れないでください。
その他のよくある相談Q&A
お悩み別解決方法
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか