刑務所の生活とは?【刑事弁護士が明かす受刑者の実態】
自分や身近な方が刑務所に収容される可能性がある方にとって、刑務所の中の生活は未知の世界であり、とても不安に思われることでしょう。
刑務所の中での生活は、一定の娯楽は認められているものの、生活を大幅に制限されることから、過酷な環境といえるでしょう。
このコラムでは、弁護士が元受刑者から聞いた体験談を元に、刑務所の中の生活についてお伝えしたいと思います。
1日のスケジュール
刑務所ごとに運用が異なる部分もありますが、基本的には以下のようなスケジュールです。
刑務所内の意外な楽しみ
刑務所内の生活は、地獄、つらい、というのがイメージとしてあるかと思います。
何度も刑務所に服役していた元受刑者によると、土日祝日は、朝から布団を敷いて寝ていてもよく、TVで放映されたことがあるような映画やDVDの映画鑑賞もすることができるようです。
漫画も読むことが許されていますし、囲碁や将棋、俳句、詩吟等のクラブも存在すると聞いています。
また、誕生月が同じ受刑者は、全体でまとめてお祝いがされます。
昔は、誕生月の受刑者には、それなりに大きなケーキが出ていたようですが、年々ケーキは小さくなってきているそうです。
お正月には簡単なおせち料理と1000円程度のお菓子が配られます。
受刑者は刑務作業で得られる作業報奨金が僅かですので、このようなお菓子を配られる機会はとてもありがたいようです。
刑務作業について
法務省によると、刑務作業は、懲役刑の内容であるとともに、受刑者に規則正しい勤労生活を行わせることにより、その心身の健康を維持し、勤労意欲を養成し、規律ある生活態度及び共同生活における自己の役割・責任を自覚させるとともに、職業的知識及び技能を付与することにより、その社会復帰を促進することを目的としたものとされています。
受刑者は、日中の大半の時間をこの刑務作業に使うことになります。
常に刑務所の職員に監視されており、作業で気をぬくことはできません。
挨拶等も大きな声でやらなければ何度もやり直しをさせられることもあるようです。
お金の問題
その一方で、刑務作業によって得られる作業報奨金は月額平均4000円ほどです。
刑務所内での支出も0ではありませんので、出所した際に手元に数万円しか残らず、出所後は生活に苦しむということも起こり得ます。
改善指導について
1か月に2回、一般改善指導というものが行われます。
一般改善指導とは、全受刑者が共通して受ける義務があるものであり、犯罪の責任を自覚させると共に、社会生活に適応するために必要な知識や生活態度等を身につけるために必要な指導を行うものです。
福岡の場合は、第2、4週の金曜日に実施されるようです。
それとは別に、薬物依存離脱指導、暴力団離脱指導、交通安全指導、性犯罪再犯防止指導、被害者の視点を取り入れた教育といった各種の特別改善指導というものもあります。
これらの特別改善指導は、全ての指導を全ての受刑者が受けるわけではなく、受刑者の犯罪傾向に応じて指導が行われることになっています。
長期にわたって服役を繰り返している受刑者によると、以前と比べて、現在は刑務所内における教育、再犯防止に力が入れられているとのことです。
無駄な時間を過ごすのではなく、刑期を終えて社会に復帰するための活動がしっかりと行われるようになっています。
刑務所の性の問題
刑務所内では、異性との性行為は不可能です。
また、所内での性行為が発覚した厳しく罰せられるでしょう。
刑務所内での強姦については、隔離された環境での犯罪であることに加えて、囚人同士や看守との力関係等から被害者が通報しにくく、被害の実態が把握しにくいという状況です。
過去、刑務所内での強姦が発覚した場合は、大きく報道で取り上げられていますが、氷山の一角と考えられます。
刑務所でのいじめ問題
受刑者が他の受刑者や看守から性的な虐待をうけたり、いじめの被害に遭うことがあります。
公表されているデータによると、職員による受刑者への暴力、脅し、いじめを目撃したことがあるかという問いに対して、10.6パーセントが「ある」と回答しています。
また、受刑者どうしの暴力、暴力、脅し、いじめを目撃したことがあるかという問いに対して、67.7パーセントが「ある」と回答しています。
このデータからも、刑務所内でのいじめ等は相当な件数に上っており、深刻な問題であることがわかります。
刑務所内の揉め事について
刑務所の中での規則を破った場合には、懲罰が科されます。
懲罰を受けると、刑務所内で月に1回程度許されている嗜好品の購入が全くできなくなり、刑務所内での生活が更に味気ないものになってしまいます。
懲罰の中でも比較的重いものとしては、閉居罰というものがあります。
閉居罰とは、60日間以内の期間を定めて科される懲罰であり、懲罰房のドアに向かって、正座または胡座で、太ももの上に手を置き、背筋を伸ばした状態で8時から17時まで座り続けるものです。
中には、閉居罰が終了した後またすぐに問題を起こして再度閉居罰を言い渡される強者もいるようですが、態度が良好であれば、免罰といって2日〜5日間程度は閉居罰の期間が短縮されることもあるそうです。
刑務所内での揉め事もそれなりの頻度であるようで、受刑者同士の喧嘩の場合、軽い痣ができる程度の怪我であれば50日間の閉居罰となることが多いようです。
しかし、喧嘩が行きすぎて、鼻やあばら骨、歯などが折れてしまった場合には刑務所内での懲罰では済まなくなります。
各所長の判断によりますが、概ね骨折程度の傷害事件となれば、検察庁に事件送致がなされ、別途傷害罪等で刑罰を受けることになります。
どのような刑罰が科されるかは怪我の程度にもよりますが、およそ1年程度となることが多く、歯が一本折れた事案で懲役8月、安全靴であばら骨を折った事案で懲役1年2月の判決が言い渡された事案があるようです。
受刑者が刑務官に対して暴力を振るった場合、暴行罪や傷害罪に加えて、公務執行妨害罪も成立します。
この場合、1年以下の懲役刑となることはほぼないと聞きます。
なかには、刑務官が先に受刑者に対して暴行を加え、受刑者はそれに反抗したに過ぎないとして不起訴処分となった事案もあるようですが、受刑者の言い分が認められることはほとんどないとのことです。
このように、刑務所の中での生活は、一定の娯楽は認められているものの、生活を大幅に制限されることから、過酷な環境といえるでしょう。
重大な犯罪を犯したり、繰り返し犯罪を犯してしまうと、このような刑務所の生活を送らなければならなくなります。
くれぐれも犯罪には手を染めないようにしてください。
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