持続化給付金の申請代行業者にご注意を【コロナ詐欺】
不審な申請代行業者の出現
新型コロナウイルスの猛威が未だ沈静化の兆しを見せておらず、飲食店や観光業などを筆頭に、依然として多くの企業にとって極めて苦しい状況が続いております。
そして、ご承知のとおり、そのような経営難に陥った中小企業及び個人事業主への救済策として、持続化給付金の支給が進められています。
しかし、この持続化給付金に関し、給付申請を代行すると謳う業者が見られるようになっています。
こうした業者は、持続化給付金を少しでも多く受給できるように申請を行うなどと持ち掛けてくるケースが多いようです。
日頃の業務に奔走されている方々にとっては、面倒な申請手続を代わりにやってもらえること、及び申請代行業者への手数料を支払ったとしても、自分で申請するよりも手元に残る金額が大きくなる可能性があるということで、一見すると便利な存在であるようにも思われます。
しかし、申請代行業者により不正な給付申請がなされるケースが多発しているようです。
不正な給付申請にはどのような手口があるか
持続化給付金の受給要件
不正な給付申請について見ていく前に、まずは持続化給付金の受給要件を確認していきます。
法人の場合を例にしますと、持続化給付金を受給するにあたって求められる主な要件は、以下のとおりとなります。
- 新型コロナウイルス感染症の影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者
- 2019年以前から事業による事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思がある事業者
- 資本金の額又は出資の総額が10億円未満であるか、常時使用する従業員の数が2000人以下である事業者
これらの要件のうち、不正の温床となりつつあるのは1.の要件になります。
不正な受給申請の手口
まず、不正な受給申請として比較的よくみられるのが、売上の操作になります。
今年度当月分の売上の一部を翌月分の売上に計上し、前年比50%減少の外観を作出するなどの方法により、受給要件を充足したかのように見せかける手口です。
また、企業の社長が、法人として申請しつつ、他方で個人事業主若しくはフリーランスとしても申請するといった、いわゆる二重申請のケースも散見されているようです。
不正が発覚した場合のリスク
受給額以上の返還義務
上記のような不正な受給申請により持続化給付金の給付を受けた場合において、不正受給の事実が発覚した場合、不正に受給した金額に年3%の延滞金を加え、その合計額の20%を加えた額を返金しなければならなくなる可能性があります。
発覚のタイミングがいつになるかにも左右されますが、不正な申請により200万円の給付を受けた場合、不正が判明したとたん、最低でも240万円の返還義務を負うことになりますので(延滞金の額によってはさらに高額になります)、経営に深刻なダメージを与えることに直結してしまいます。
これは、自ら不正な受給申請を行った企業及び個人事業主はもちろんのこと、申請を業者に代行してもらった企業についても同様に支払わなければならないものです。
「不正な申請なんてするつもりはなかった」「申請代行業者が勝手にやったことであり、不正な申請をしていたとは知らなかった」などと主張したとしても、これが認められる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。
刑事処罰の可能性
さらに、申請代行業者が、虚偽の申請を行うのだろうということを認識しつつ依頼したような場合において、悪質性が高いと判断されてしまうと、詐欺罪(刑法246条1項)により刑事告発までされてしまう可能性も否定できません。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役であり、罰金刑が定められていないことも踏まえますと、起訴されてしまえば公判請求され、前科が残ってしまう可能性も高いと言えます。
詐欺罪に関しては、こちらをご覧ください。
経済産業省が、持続化給付金の不正受給に関する調査を始めたという報道もなされており、今後の調査で不正受給が発覚した企業につき、実名で公表されてしまう可能性もないとは言えません。
そのような事態になってしまうと、企業としての信用が地に落ちてしまうことにも繋がりかねず、これらのリスクは何としても回避すべきです。
まとめ
万一、申請代行業者に依頼した結果、不正を疑われてしまったような場合、あるいは、不正な申請をしてしまったというような場合は、捜査機関に自首した上、持続化給付金の窓口に連絡を行い、受給した給付金の返金手続きを進めていくべきです。
捜査機関に発覚するよりも先に自首を行うことで、逮捕・勾留のリスクを減らしつつ、迅速な被害回復を図るのが良いでしょう。
自首をご検討される場合は、弊所刑事事件チームがサポートさせていただきますので、お困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
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