器物損壊罪は故意ではなく過失の場合も成立する?【弁護士解説】
器物損壊罪の疑いで逮捕されました。
他人の所有物を壊してしまったことには間違いないのですが、故意に壊したわけではなく、うっかり壊してしまったのです。
前科をつけないためにどうしたらいいですか?
器物損壊罪は、故意の場合にのみ成立し、過失であれば処罰されません
うっかり他人の物を壊してしまったという場合、器物損壊罪で処罰されるのかというご質問ですが、結論としては処罰されることはありません。
刑法第38条1項において、
「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と定められているからです。
引用元:刑法|e-GOV法令検索
刑法は、わざと犯罪を行った者、つまり故意犯のみを処罰することを原則としています。
また、罪を犯す意思がないのに犯罪の構成要件に該当するような行為を行ってしまった者、つまり過失犯は「法律に特別の規定」がない限り処罰されないということになります。
「法律に特別の規定」がある場合として挙げられるのが、刑法第209条1項「過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金または科料に処する。」という過失傷害罪の規定です。
器物損壊罪には、過失犯を処罰することを定めた特別の規定はありませんので、うっかり人の物を壊してしまったという場合は、過失による器物損壊として、処罰されません。
虚偽自白をしないよう注意しましょう
うっかり壊してしまっただけなのに逮捕されたということで、納得がいかないという状況かと思います。
逮捕されたということは、捜査機関から見ると、あなたがわざと物を壊した疑いがあると考えられているということです。
どの部分がどの程度壊れているのか、どのような行為によって壊れてしまったのかといった事情を、目撃者の供述や防犯カメラ映像から判断し、それらの証拠と相反する供述をしているあなたに証拠隠滅のおそれがあると考えられたのでしょう。
警察は、基本的に有罪方向に傾く供述調書を作ろうとします。
取り調べにおいても様々な方法で「わざと壊した」という方向に強く誘導が入ることが予想されますが、本当にうっかり壊してしまっただけであれば、決して虚偽の自白調書を取られてはいけません。
一度出来上がった供述調書を後からひっくり返すことには相当な困難が伴い、ほとんどのケースでは供述調書どおりの認定がされると考えていてください。
示談の成立を目指しましょう
また、器物損壊罪で逮捕された場合、起訴されるまでの段階において最も重要なのは、「過失による器物損壊であることを証明すること」ではなく、「不起訴処分を獲得すること」です。
過失であることを証明することも、不起訴処分獲得に向けたひとつの手法ではありますが、より有効な手法があります。
それは、示談を成立させることです。
なぜ示談の成立が有効なのか
過失による器物損壊の場合、犯罪ではないのに示談交渉をするということに違和感を持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、このような場合でも示談はするべきです。
なぜなら、物を壊してしまっている以上、民事上は過失であっても損害賠償義務が生じており、その義務は果たす必要があるからです。
器物損壊罪は、個人の財産に対する犯罪ですから、民事上の賠償が完了しているという状況を作り出せば、仮に故意に物を壊していた場合でも、処罰する必要性は低くなります。
捜査機関が故意の有無について悩んでいる場合には、不起訴とする口実が出来ることになりますから、無罪判決のリスクを冒してまで起訴に踏み切るケースはほぼありません。
仮に起訴された場合
仮に起訴されてしまった場合、過失であることを示す証拠を豊富に裁判所に提出する必要があります。
起訴されてから証拠収集を始めても、間に合いません。
起訴前から、示談交渉を進めつつも、過失がないことを示す証拠の収集を抜かりなく行っておくことが重要なのです。
国選弁護人にここまでの弁護活動を期待することは困難ですから、刑事事件に注力する弁護士を選任することが重要となります。
示談を成立させるためには、刑事事件に注力する弁護士を選任することが重要となります。
まずは、刑事事件に注力する弁護士が在籍する当事務所へ、お気軽にご連絡ください。