傷害罪で不起訴を獲得するには?【弁護士が解説】
人を怪我させてしまい、今後の捜査が不安です
傷害罪で有罪を回避するにはどうすればいいですか?
不起訴となるにはどうすればいいですか?
当事務所の刑事専門部には、このようなご相談が多く寄せられています。
ここでは、当事務所の弁護士が実際の相談事例をもとに、傷害罪の不起訴のポイントについて解説いたします。
今後の捜査に不安を持たれている方は参考にされてください。
傷害罪とは
傷害とは、他人の身体の生理的機能に障害を生じさせることをいいます。
典型例は、人を殴って怪我をさせること等が挙げられます。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金と規定されています。
もし、怪我を負わせた人が亡くなってしまった場合、傷害致死罪が成立し、3年以上の有期懲役※となります。
※有期懲役の最大は20年
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(傷害致死)
第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。引用元:刑法|電子政府の総合窓口
起訴の可能性
では、傷害罪で起訴される確率はどの程度あるのでしょうか。
傷害罪の起訴は、犯行の悪質性、被害者の処罰感情の有無等によって決せられると考えられるため、一概には言えませんが、統計データが参考となります。
令和5年版の犯罪白書によりますと、傷害罪の起訴猶予率は全年齢の平均で61.9%と発表されています。
すなわち、傷害行為を行い被疑者となった者のうち、約38%程の者が起訴されていることがわかります。
引用元:令和5年版犯罪白書 第2節 処遇
起訴されないためのポイントとは?
では、起訴されないために、あなたにできることは何なのでしょうか。
起訴されるかどうかの判断要素は数多くありますが、①示談の成立の有無、②傷害結果の重大性、③犯行態様の悪質性、④同種前科前歴の有無、⑤反省の有無・程度等が挙げられます。
起訴の可能性の判断要素 | 内 容 |
---|---|
①示談の成立の有無 | 被害者と一定の金銭を支払うことを条件として、被害届を取り下げるなどの示談が成立しているか |
②傷害結果の重大性 | 被害者が怪我の程度は重症か、軽傷か |
③犯行態様の悪質性 | 凶器の有無、暴行の回数や程度、計画性の有無等 |
④同種前科前歴の有無 | 過去に傷害、暴行罪等で有罪判決を受けたり、逮捕されたりしていないか |
⑤反省の有無・程度等 | 素直に犯行を認めて謝罪の意思を示しているか、被害弁償を申し出ているか |
この中でも、多くの事件で起訴不起訴の分かれ目となったと考えられるのは、①示談の成立の有無でしょう。
傷害罪は、個人的法益(個人の権利や利益)に対する罪ですから、本人に許しをもらえれば、不起訴の可能性は大きく高まります。
被害者本人が厳重な処罰を望んでいないのであれば、検察官も起訴する必要性が弱まるからです。
また、示談が成立すれば、逮捕される可能性も低くなるでしょう。
現在、逮捕・勾留によって、身体拘束をされている場合も解放される可能性が出てきます。
長期の身体拘束や、有罪判決によって、会社に傷害の事実が知れ渡ったり、会社を解雇されたりする危険性は増大してしまいます。
したがって、一日でも早い示談の成立が極めて重要となります。
示談成功のためのポイント
では、どのようにすれば示談は成功するのでしょうか。
示談成功のための重要と思われる事項を解説します。
被害者の連絡先を知る
傷害罪の被害者と示談交渉を開始するためには、まず、相手方の連絡先(携帯番号等)を知る必要があります。
しかし、ほとんどの場合、容疑者ご本人が被害者の連絡先を知ることはできません。
捜査機関(検察官)は、容疑者ご本人に対し、被害者の連絡先はもちろん、一切の個人情報を開示しないからです。
そこで、弁護士に示談交渉を依頼し、連絡先の開示を求める必要があります。
すなわち、通常、弁護士は依頼を受けると、検察官に弁護人選任届を提出し、被害者の連絡先の開示を求めます。
この場合、一般的に検察官は、被害者に連絡をとって、連絡先の開示の可否について確認し、被害者が了承すれば、弁護士に電話番号等を伝えてくれます。
加害者本人には連絡先を開示したくなくても、守秘義務を負う弁護士であれば安心して開示しれてくる可能性があるのです。
このようにして、示談交渉を開始できます。
示談交渉のプロに任せる
容疑者ご本人が被害者と顔見知りの場合、ご自身で示談交渉を開始することも可能です。
しかし、以下の懸念点があるため、示談交渉が難航する可能性があります。
高額な賠償金を請求される
適正額(通常の裁判基準)を上回る高額な賠償金を請求される可能性があります。
また、傷害事件の賠償額の相場は、刑事専門の弁護士でなければ算定が困難と考えられます。
したがって、法外な金額を請求されていることに気づかないことも想定されます。
感情的になって話し合いとならない
傷害事件の被害者は、神経質になっている可能性があります。
冷静な話し合いができず、結局示談交渉がまとまらないケースがあります。
このようなことから、被害者との示談交渉は、刑事事件に精通した弁護士に任せるとよいでしょう。
刑事事件の経験が豊富な弁護士であれば、被害者の感情に配慮した交渉を行ってくれることから、示談成功の可能性が高まると考えられます。
弁護士に依頼するのはどのタイミングがいい?
示談交渉のタイミングは、一刻も早い方がよいでしょう。
一番よいのは、逮捕前です。
逮捕前に弁護士を選任し、被害者との示談交渉が成功すれば、逮捕を回避できる可能性が高まり、容疑者の方のご負担を軽減できます。
逮捕後であっても、起訴を回避するために、示談交渉を速やかに開始すべきです。
示談が難しい場合
相手方が示談に応じてくれない可能性もあります。
この場合も、不起訴の獲得のために、全力で弁護活動を行う必要があります。
例えば、上記の②傷害結果の重大性、③犯行態様の悪質性、④同種前科前歴の有無は、もはや起こってしまったことである以上、争いようがないと思われるかもしれません。
ですが、弁護士が第三者かつ専門家としての視点から、可能な限りあなたに有利となるような意見書を作成します。
意見に説得力を持たせるために証拠も豊富に収集し、併せて検察官に提出します。
結果が重大であっても、その結果はあなたの行為から通常生じることが予想される結果を著しく超えたものであること、犯行態様は検察官が想定するような悪質なものではなく、被害者の行為に触発された突発的、反射的な犯行であること、暴行回数も少なく、起訴するまでのものではないこと、被害者にも落ち度があること、同種前科が仮にあるとしても、前回と今回の行為態様、犯行にいたる経緯は全く異質であり、同じ犯行を繰り返す粗暴な人物という評価をすべきではないことなどを主張します。
ですが、反省することも忘れてはいけません。
様々な事情から暴行に及んだとしても、決して暴行という行為は許されるものではないのです。
反省するところは反省し、主張すべきことは主張する、その割り振りをしっかり行うことが重要です。
まとめ
以上、傷害罪の不起訴の獲得について、ポイントをくわしく解説しましたが、いかがだったでしょうか。
傷害罪のような被害者がいる犯罪では、示談交渉を早期にスタートすることが重要です。
示談交渉に関しては、経験豊富な刑事事件専門の弁護士に、できるだけ早い段階で任せることがポイントとなります。
そのため、まずは刑事事件専門の弁護士に相談されることを強くお勧めいたします。
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