盗撮罪とは?構成要件や刑罰を弁護士が徹底解説|法改正対応

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盗撮罪とは?構成要件や刑罰を弁護士が徹底解説|法改正対応

盗撮罪とは、撮影対象者の同意なく、撮影する行為によって成立する犯罪のことを言います。

盗撮の処罰根拠は2つあり、一つは撮影罪、もう一つは各都道府県の迷惑防止条例です。

撮影罪は2023年に新設された法律に規定された犯罪です。

この処罰根拠により、盗撮行為は逮捕される可能性があるのです。

近年、盗撮により検挙される件数が増加傾向にあります。

スマートフォンの普及やカメラの高性能化に伴い、安易な気持ちで盗撮に手を出してしまう人が後を絶たないようです。

このページでは、盗撮で逮捕されるのかどうか、また逮捕された場合にどのような流れで事件が進むのかといったことを弁護士がわかりやすく解説します。

盗撮について

盗撮罪

盗撮罪の定義

盗撮罪とは、撮影対象者の同意なく、撮影する行為によって成立する犯罪のことを言います。

 

盗撮の処罰根拠は2つ

盗撮の処罰根拠は2つあります。

一つは「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(略して「性的姿態撮影等処罰法」といいます。)の撮影罪という罪です。

撮影罪は、2023年6月23日に新設された新しい犯罪です。

参考:性的姿態撮影等処罰法|e-GOV法令検索

もう一つは、各都道府県の条例です。

この条例の名称は様々ですが、一般に「迷惑防止条例」などと呼ばれています。

この迷惑防止条例において、盗撮行為は犯罪であると規定されています。

 

新設された撮影罪はいつから施行されている?

新設された撮影罪は、2023年7月13日に施行されています。

ですので、同日以降に行われた盗撮行為については、撮影罪として処罰される可能性があります。

他方で、同日より前に行われた盗撮行為については、行為時点で存在していた条例が適用されることになります。

そのため、過去の盗撮行為が2023年7月13日以降に発覚した場合は、従来どおり都道府県ごとの迷惑行為防止条例による処罰の対象となります。

 

 

盗撮で逮捕されるのか?

逮捕される要件

逮捕については、法律上の要件が必要です。

まず、人を逮捕するには、容疑者が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が必要となります(刑訴法199条2項)。

では、盗撮は、どのような「罪」にあたるのでしょうか。

盗撮の処罰根拠は、上で述べたとおり、性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)と迷惑防止条例です。

以下、どのような盗撮行為が犯罪となるのかを撮影罪と迷惑防止条例違反に分けて解説します。

 

撮影罪の構成要件と具体例

撮影罪が成立するための構成要件(犯罪が成立するための条件)は、大きく分けると以下のとおりです(性的姿態等撮影処罰法2条1項1号から4号)。

引用元:性的姿態等撮影処罰法2条1項1号から4号

  1. ① 人の性的姿態を
  2. ② 禁止された方法により撮影すること
  3. ③ 撮影行為を行う「正当な理由」がないこと

以下、上の①〜③の構成要件について解説します。

 

①性的姿態とは?

性的姿態とは、具体的には次のものをいいます。

  • 性的な部位、すなわち、性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部
  • 人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を覆っている部分
  • わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態

 

②禁止された方法により撮影すること

具体的には下記のⅰ〜ⅳの方法です。

ⅰ 正当な理由がないのに、ひそかに撮影する行為

典型的なものとしては、次のような行為があります。

  • スマートフォンをスカートの中に差し向ける
  • 隠しカメラを使って撮影する
  • 撮影の対象者に気づかれないようひそかに撮影する

 

ⅱ 同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせ、又はその状態にあることを利用して撮影する行為

 

ⅲ 誤信をさせ、又は誤信をしていることを利用して撮影する行為

 

ⅳ 正当な理由がないのに、16歳未満の者を撮影する行為(13歳以上16歳未満の場合、行為者が5歳以上年長の者であるとき。)

 

③撮影行為を行う「正当な理由」がないこと

「ひそかに撮影する行為」(上記ⅰ)と「16歳未満の者に対する撮影行為」(上記ⅳ)については、撮影する「正当な理由がない」ことが要件となります。

【 ひそかに撮影する行為の「正当な理由」の例 】

  • 医療行為
    救急車で運ばれた意識不明の患者を医師がルールに従って撮影するケースなど容

【 16歳未満の者に対する撮影行為の「正当な理由」の例 】

  • 子供の成長の記録
    親が子どもの成長の記録として水遊びをしている姿を撮影するケース
  • 公共のイベント
    地域の行事として開催される子ども相撲の大会で撮影するケース内容

 

迷惑防止条例違反の構成要件と具体例

迷惑防止条例は、法律ではなく、各自治体が独自に制定するものです。

そのため、どのような盗撮を処罰するかという内容も自治体によって若干違いがあります。

したがって、迷惑防止条例に該当するか否かを正確に判断するためには、その盗撮行為が行われた都道府県の条例の規定を確認する必要があります

しかし、大雑把には同じような構成要件となっています。

下表は、各自治体が処罰している盗撮行為の標準的な考え方をまとめたものですので参考になさってください。

場所
  • 公共の場所(駅、路上、商業施設など)
  • 公共の乗り物(バス、電車など)
  • 通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(トイレや更衣室など)
  • 不特定又は多数の者が利用する場所(事務所、学校など)
対象
  • 通常衣服で隠されている下着又は身体(スカート内や、衣服を身につけていない姿)
行為
  • 撮影する
  • カメラを向ける
  • カメラを設置する

参考:東京都迷惑防止条例|警視庁

 

盗撮で逮捕されるケースとは?

盗撮で逮捕されるケース

 

盗撮は現行犯逮捕の場合が多い

逮捕の種類としては、犯行を現認されその場で逮捕される「現行犯逮捕」や、裁判官の発する逮捕状によって行う「通常逮捕」などがありますが、盗撮事件では現行犯で逮捕されるケースが多いです。

盗撮は駅や商業施設などの公共の場で犯行が行われることから、被害者や周囲の人に撮影の瞬間を目撃されて通報されるのが典型的な例です。

盗撮の手口は年々巧妙化しているものの、盗撮は常習化しやすい犯罪であり、犯行を重ねていれば、どこかの段階で必ず露見するタイミングが訪れるはずです。

安易な気持ちで手を出したがために、捕まるまでやめられないということにもなりかねませんので、十分気をつけていただきたいと思います。

 

盗撮で後日逮捕されるケースもある

盗撮は現行犯での検挙が多いですが、逮捕状により後日逮捕されることもあり得ます。

その場では逃走したものの防犯カメラの映像などから犯人として特定されてしまうケースや、職務質問や別件の捜査の際にスマートフォンなどに保存された画像を発見されて発覚するケースなどが考えられます。

また、勤務先の更衣室に撮影機器を仕掛けたような事例などでも、後日機器が見つかることで発覚することがあります。

 

盗撮の逮捕のニュース一覧

以下、実際に逮捕されてニュースになったケースの一部をご紹介します。

 

宝塚市の駅構内で盗撮しようとした疑いで私立高校教諭を逮捕

「宝塚市の駅の構内で、17歳の女性のスカートの中をスマートフォンで盗撮しようとした疑いで、私立高校の39歳の教諭が逮捕されました。」

引用元:2023年11月2日兵庫 NEWS WEB | NHK

 

小学校のトイレでスマホ盗撮をしようとした管理作業員を逮捕

「勤務している大阪市内の小学校のトイレにスマートフォンを設置して盗撮しようとしたとして、警察は、50代の管理作業員を逮捕しました。」

引用元:2023年11月3日関西 NEWS WEB | NHK

 

買い物中の女子高校生を盗撮した疑いで自衛官の男を逮捕

「仙台市内の商業施設で女子高校生のスカートの中を撮影したとして41歳の自衛官の男が逮捕されました。迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕されたのは陸上自衛隊仙台駐屯地所属の自衛官」です。

引用元:2023年11月3日TBS NEWS DIG | JNN

このように、盗撮の逮捕は全国で行われています。

 

盗撮で逮捕されている人数

昨年1年間の全国での盗撮の検挙件数は、5,700を超えており、過去最多となったことが警察庁から発表されています。

盗撮の検挙件数

参考:迷惑防止条例等違反に係る検挙状況の調査結果|警察庁

なお、「検挙」とは、警察や検察などの捜査機関が、犯罪の容疑者を特定し、刑事事件として処理することを意味することですので、「逮捕」とは異なります。

しかし、検挙件数の増加は、逮捕者の増加と比例すると考えられるため、膨大な数の逮捕者がいると想定されます。

 

 

盗撮で逮捕されないケース

盗撮で逮捕されないために、考えられることとしては次の2つの方法があります。

 

自首をする

可能な限り逮捕されないために、できることといえば、まず自首をすることが考えられます。

自ら進んで犯罪事実を申告することで、逮捕の必要性が低くなると考えられます。

なお、既に警察に犯行が発覚している場合は、厳密な意味での「自首」には該当しません(「出頭」となります。)。

しかし、証拠を任意に提出したり、嘘をつかずに真摯に対応することで、逮捕の可能性は低くなるでしょう。

なお、当事務所では、適切に自首や出頭を行い、処罰を減免するためのサポートを行っています。

 

示談交渉を行う

盗撮には被害者がいます。

このような犯罪においては、被害者と示談が成立すれば、逮捕する必要がなくなると考えられます。

また、捜査の必要性も無くなり、不起訴を獲得できる可能性が高くなります。

そのため、刑事事件に注力する弁護士を選任し、早期に示談することが重要となります。

 

当事務所の盗撮に関する解決事例

盗撮してしまい被害届を出されたMさんは、弁護士の示談で職や家族を失うことなく不起訴処分とすることができました。

詳しくは以下をご覧ください。

通勤時に盗撮を繰り返してしまうBさんは、弁護士による自主同行のサポートのもと、自主しました。

弁護士は被害者の方と示談交渉を行い、交渉は極めてスムーズに進み、無事に示談は成立し、不起訴処分を得ることが出来ました。

詳しくは以下をご覧ください。

 

盗撮で逮捕されなかった場合、その後どうなる?

逮捕されない場合でも、刑事事件(在宅事件)として捜査の対象となります。

この場合、通常、以下の流れとなります。

在宅事件の流れ

逮捕された場合と異なるのは、事情聴取です。

強制捜査ではなく、あくまで任意の形を取ります。

そのため、事情聴取の日程などはある程度調整することが可能です。

 

 

 

盗撮で逮捕された場合、その後どうなる?

盗撮で逮捕された場合の流れ

盗撮で逮捕された場合、次のような流れで事件は進行します。
逮捕後の流れ図

①逮捕

逮捕されると身柄が拘束され、48時間以内に検察庁に送検されます。

 

②送検

容疑者の送致を受けた検察官は、24時間以内に容疑者の勾留を請求するか判断します。

 

③勾留

勾留されると、10日間にわたって身柄の拘束が続きます。

また、10日間を上限に勾留延長される可能性があります(最大で20日間の拘束)。

 

④起訴

起訴とは刑事裁判にかけられることを意味します。起訴前の勾留は最長でも20日間でしたが、起訴された場合、保釈されない限り判決まで勾留が続くことになります。

 

⑤判決

 

有罪となったら刑罰は?

撮影罪に該当する場合

撮影罪については、法定刑が「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」となっています(性的姿態等撮影処罰法2条1項1号)。

引用元:性的姿態等撮影処罰法2条1項1号

 

迷惑防止条例違反の場合

撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)は法律ですので、全国一律の適用があります。

これに対し、迷惑防止条例は各都道府県ごとに定められており罰則も自治体ごとに多少異なります。

例えば、東京都や大阪府などは、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」(ただし、常習の場合は「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」)となっています(東京都迷惑防止条例第5条1項2号・同条例8条、大阪府迷惑防止条例第6条・同条例15条)。

東京都の条例はこちら

大阪府の条例はこちら

 

その他の犯罪が成立する可能性

盗撮行為については、上記のとおり、撮影罪又は迷惑防止条例違反により処罰されます。

盗撮の際に、住居に侵入したような場合、上記の他に、住居侵入罪が成立する可能性があります(刑法130条)。

この場合の法定刑は、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」となっています(同条)。

引用元:刑法|e-GOV法令検索

 

 

 

盗撮による逮捕への対処法

盗撮で逮捕された場合、「捜査機関」と「被害者」への2つの対応を考える必要があります。

 

捜査機関の取り調べに対して

取り調べに対しては、罪を認めるか、(無実の場合は)否認するか、あるいは何もしゃべらず黙秘するといった対応が考えられます。

否認する場合はもちろんのこと、罪を認める場合であっても、どのように供述したらよいか、供述によって不利益を受けるのではないかといったことがご心配なことと思います。

刑事事件の取り扱い経験が豊富な弁護士にご相談なさると、捜査への対応について的確な助言が得られるのみならず、その後の事件の流れや見通しについてもわかりやすく説明してもらえるでしょう。

 

被害者に対して

盗撮を犯した場合は、被害者に対して誠実に対応していく必要があります。

被害者への対応としては、既にご説明したとおり、示談交渉を進めることが重要です。

示談成立により被害が弁償され被害者の許しが得られているという事情を示すことができれば、必ずではないものの、不起訴処分となる可能性が高まります。

また、仮に起訴されたとしても、示談が成立していれば有利な事情として考慮され、執行猶予などの寛大な判決を得ることが期待できます。

このように、被害者のいる事件においては、示談が成立することは起訴の前後を問わず重要な意味を持つといえます。

ワンポイント:示談交渉は弁護士に依頼する

被害者の連絡先を入手して示談の交渉をするといったことを容疑者自身が行うことは、実質的に不可能に近いです。

なぜならば、警察は加害者本人に対して被害者の連絡先(氏名や電話番号など)を教えてくれないからです。

また、仮に被害者の連絡先がわかったとしても、被害者の心情として加害者本人と接触はしたくないはずです。

そのため、刑事事件においては、弁護士に示談交渉を依頼することをお勧めいたします。

弁護士に対してであれば、通常警察は被害者の連絡先を教えてくれます。

また、弁護士の中でも、刑事事件を得意とする弁護士であれば、被害者対応のような業務を日常的に取り扱っていますので、そのような弁護士に示談交渉を依頼されるとよいでしょう。

このように、弁護士に依頼することで、取り調べ対応と被害者対応の両面からサポートを受けることができるのです。

 

 

盗撮と逮捕についてのQ&A

盗撮は逮捕できますか?

盗撮は現行犯逮捕や防犯カメラの映像等により後日逮捕されることがあります

人を逮捕するには、法律上「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要性」がなければなりません(刑訴法199条2項)。

しかし、実務上、この要件は緩やかに運用されているため、盗撮であっても逮捕される可能性があります

 

盗撮で後日逮捕されるのは何ヶ月後?

後日逮捕の場合、犯行後すぐのケースもあれば、犯行から長期間が経ってからのケースもあり、事案によって異なります。

盗撮の時効は基本的に3年ですので、この間であれば理論的には逮捕、起訴される可能性があります

 

盗撮は通報されますか?

盗撮は通報される可能性があります。
被害者や目撃者がいる場合、その場で取り押さえられることもありますが、危害をおそれて警察へ通報される可能性が考えられます。

 

 

まとめ

このページでは、盗撮で逮捕されるケースや罰則について解説しました。

最後にもう一度、記事の要点を整理します。

  • 盗撮で逮捕されるのは、性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)と迷惑防止条例違反のほか、軽犯罪法違反や住居侵入罪により逮捕されることもある。
  • 自首や示談の成立により、逮捕の必要性がないとして逮捕をまぬがれることがある。
  • 盗撮の罰則としては、撮影罪の場合、法定刑が「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」、条例違反では自治体によって異なる。
  • 捜査対応と被害者対応のいずれについても、刑事事件を得意とする弁護士に依頼することで、一貫したサポートが受けられる。

当事務所は、刑事事件のご相談の予約に24時間対応しています。LINEなどのオンライン相談も活用していますので全国対応も可能ですので、まずはお気軽に当事務所までご相談ください。

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