傷害事件の示談金200万は過剰請求?示談金の相場はいくら?
人に傷害を負わせてしまいました。
200万円の示談金であれば被害届を取り下げてやると言われていますが、この金額は過剰請求ではないのでしょうか?
示談すれば罪を軽くできると思っているのですが、示談金の相場はいくらくらいでしょうか?
200万円という示談金額は、行為態様、被害状況、相手方のスタンスによって大きく変動します。
個々の事情によって適切な示談金の額は違います。
傷害罪とは
傷害とは、他人の身体の生理的機能を毀損することをいいます。
なお、傷害の結果、相手を死亡させと傷害致死罪が成立します。
傷害の典型例は、人を殴って眼窩底を骨折させること、ナイフで切りつけて切り傷をつけること等が挙げられます。
しかし、必ずしも有形力を行使する必要はありません。
例えば、毎日いたずら電話を繰り返してPTSD(心的外傷後ストレス障害)や睡眠障害を生じさせることによっても、傷害罪が成立します。
刑罰
法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
根拠条文 刑法第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
傷害罪の弁護方針についてはこちらのページを御覧ください。
暴行罪との違い
暴行とは、他人の身体に向けられた違法な有形力の行使をいいます。
人を叩く行為、石を投げつける行為などが挙げられます。
暴行罪が成立するのは、暴行された被害者が、怪我を負わなかった場合です。
怪我を負った場合には、暴行罪ではなく、傷害罪が成立します。
刑罰
暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金となっており、傷害と比べるとだいぶ軽いです。
根拠条文 刑法第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
暴行罪の弁護方針についてはこちらのページを御覧ください。
示談したほうがいい?
メリット①不起訴となる可能性がある
傷害罪や暴行罪は、示談が成立すれば、不起訴の可能性が大きく高まりますから、示談を成立させるメリットは大きいといえます。
すなわち、起訴するか不起訴とするかを決めるのは検察官です。
検察官は、犯罪の悪質性、結果の重大性など様々な事情を考慮して起訴すべきかを判断しています。
傷害罪の怪我の程度がさほど重大ではなく、かつ、示談が成立していれば、起訴の必要性がないと判断する可能性が高くなると思われます。
メリット②執行猶予や罪を軽くできる可能性がある
また、仮に起訴されたとしても、示談をしていれば、執行猶予がついたり、刑罰が軽くなる可能性があります。
示談をしている事自体が、容疑者にとって有利な情状となるからです。
メリット③民事上の問題を解決できる
さらに、仮に起訴されたとしても、示談をすれば、少なくとも民事上の損害賠償義務の問題は解決できます。
すなわち、刑事処分と民事上の責任は別問題です。
暴行を加えて、相手が怪我を負っていれば、不法行為(民法709条)が成立し、被害者から損害賠償請求される可能性があります。
示談は、通常、賠償額を合意して、それ以外には何らの賠償義務がないことを確定するものです。
したがって、もし、起訴されたとしても、示談しておけば、後から民事上の責任を追求される心配がなくなります。
示談金はどうやって決まる?
被害者の要求する示談金額と適正な金額の間で隔たりが大きく、示談交渉が長期化するケースも多く存在します。
それでは、示談金の額はどのように決められるのでしょうか。
まず示談金の額に大きく影響するのは、暴行罪に留まるのかそれとも傷害罪か、すなわち、傷害結果が生じたか否かです。
示談について詳しくはこちらからどうぞ。
相手方に傷害結果が生じていない暴行罪のケースでは、暴行によって相手方に恐怖を与えたこと、一時的に身体的苦痛を与えたことに対する謝罪・示談となります。
暴行を受けて心の傷が残ったという場合、PTSDのように診断が出るものは傷害罪として取り扱われますから、暴行罪の事例では損害として把握できるものが少なく、示談金の相場は比較的低額なものとなります。
一方、傷害罪であれば、暴行罪とは異なり、当然相手方は怪我をしていますので、治療費や入通院慰謝料も含めて支払う必要があります。
怪我の程度によっては長期の入通院が必要となり、その結果、示談金も高額になることがあります。
相手方が不当に通院期間を延ばそうとしてくるような場合は、病院の診断書ベースで示談金の算定を行うことになるでしょう。
後遺障害などが残ると、示談金は高額になる傾向です。
刑事処罰が決まるまでに後遺障害の有無が判明することはほぼありませんが、後遺障害が生じた場合の慰謝料についても先に請求しようとされる相手方もいます。
相手方が早期解決を求めているか否かも、示談金の額に影響することがありますが、やはりスタート地点としては行為態様や被害状況から考えられる額になるといえるでしょう。
あくまで、筆者の個人的な感覚ですが、数十万円というケースが多いと思われます。
相手方が怪我をしている場合は、通院がどれくらい必要になっているかという点によって額が多少変わりますが、軽く殴ったというだけであれば長期の通院とはならないことが多いと思われます。
傷害罪についての詳しい事例は、こちらからどうぞ。
どうやって進めるべきか?
示談交渉の中で、適正な金額の範囲内での解決を目指すことはもちろんですが、相手方が自分の求める額に固執し、交渉が長期化することもあり得ます。
固執した相手方の多くは、妥当な額の算定根拠をいくら説明したとしても説得に応じなくなってしまいますが、検察官は処分をいつまでも待ってくれるわけではありません。
そのため、検察官が処分を決定するためのタイムリミットが近付いてくると、相手方の希望金額にどこまで寄っていくかという判断をせざるを得ません。
相場を超えた額であったとしても絶対に示談を成立させるのか、それとも相場の範囲内でなければ示談はせずに刑事処罰を受け入れるかという決断は、最終的には被疑者本人が行う必要があります。
個々の事案によって示談が処分に与える影響度も異なり、前科がつくことによる不利益の程度も人によって様々ですから、それぞれの選択肢のメリットやデメリットをしっかりと把握したうえで決断をする必要があります。
たとえば、暴行罪・傷害罪の中でもよくある喧嘩のような事例であれば、示談が成立すれば不起訴となる可能性は大きく高まります。
そのため、示談を成立させることのメリットは大きく、特に前科がつくことで資格を失うような場合は歩み寄ることも考えるべきかもしれません。
他方、示談をしたとしても起訴は免れないようなケースでは、メリットは小さく、相手の要求額が相場からかけ離れている場合には供託等の次善の策を考えた方がいい場合もあるでしょう。
これ以外にも個別の事情に応じてどのようなメリット、デメリットが生じうるのかをきちんと把握したうえで決断をしなければなりません。
刑事事件においての示談のポイントは、こちらからどうぞ。
示談の注意点
注意点①適切な示談書を作成する
示談において、重要なのは、口頭の約束ではなく、きちんと書面を作成するということです。
また、示談書には、紛争の蒸し返しを防止するための条項(清算条項といいます。)や被害届の取り下げ、宥恕文言などを記載することがポイントとなります。
法的に有効で、かつ、不起訴や民事上の問題も解決できる内容となっていないと示談をする意味がなくなってしまいます。
示談書については、サンプルがダウンロード可能です。
もっとも、素人の方は参考程度にとどめ、示談書の作成は専門家にご依頼されることをお勧めいたします。
注意点②被害者の連絡先が不明
容疑者の方が警察に被害者の連絡先を照会しても、ほとんどの場合、拒否されるからです。
このような場合、示談交渉をご依頼された弁護士を通じて、連絡先を照会するとよいでしょう。
容疑者には連絡先を教えたくなくても、弁護士であれば教えてくれることが多いからです。
注意点③被害者が交渉に応じてくれない
傷害罪のようなケースでは、被害者は容疑者の方に恐怖心を抱いています。
そのため、示談を持ちかけても、交渉に応じてくれないことが予想されます。
このような場合、専門家に仲介してもらい、被害者と交渉してもらうとよいでしょう。
被害者が示談に応じてくれない場合について、詳しくはこちらからどうぞ。
まとめ
傷害罪や暴行罪は、被害者がいる犯罪であり、示談をした方が不起訴になったり、減刑できる可能性があります。
また、民事上の問題を解決できるというメリットがあります。
示談をするとき、重要なのは法的に有効な示談書を作成するということです。
そのため、できる限り、刑事事件に精通した弁護士にご相談されることをおすすめします。
また、相手の連絡先を調べたり、示談交渉するために、弁護士に依頼されることが必要となる場合もあります。
当事務所には、刑事事件に注力する弁護士が在籍しており、当該事件における示談相場をお伝えした上、示談すべきか否かの助言が可能です。
また、示談すべき場合、依頼者に代わって被害者との交渉が可能です。
傷害罪の事件でお困りの方は、まずはお気軽に、当事務所までご連絡ください。
ご相談の流れはこちらをご覧ください。