起訴後の取り調べや捜査が許される?【弁護士が解説】
起訴後、被告人本人の取り調べは差し控えられていますが、余罪については基本的に禁止されていません。
捜査・取調べについて
捜査は、公訴提起の前に行われるのが原則です。
しかし、公訴提起後の捜査が禁止されているわけではありません。
被告人の取調べ以外の捜査については、任意捜査のほか、強制捜査も許されています。
すなわち、差押・捜索・検証等の令状について、刑事訴訟法は時期の制限を設けていません(刑訴法218条)。
また、同法219条及び刑訴規則156条には、「被疑者又は被告人」として、起訴後も捜査官が令状請求をなし得ることが前提となっています。
これに対して、被告人の取調べについては、その当事者としての地位に鑑み、起訴にかかる事実については、取調べはなるべく差し控えられています。
参考裁判例
この裁判例は、検察官が公訴提起後に作成した被告人の供述調書の証拠能力が問題となった事案です。
最高裁は、以下のように判示しています。
判例 供述調書の証拠能力が問題となった裁判例
「刑訴197条は、捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる旨を規定しており、同条は捜査官の任意捜査について何ら制限をしていないから、同法198条の「被疑者」という文字にかかわりなく、起訴後においても、捜査官はその公訴を維持するために必要な取調を行うことができる。(中略)起訴後においては被告人の当事者たる地位にかんがみ、捜査官が当該公訴事実について被告人を取り調べることはなるべく避けなければならないところであるが、これによって直ちにその取調を違法とし、その取調の上作成された供述調書の証拠能力を否定すべきいわれはなく、また、勾留中の取調べであるのゆえをもって、直ちにその供述が強制されたものであるということもできない。」
【最決昭36.11.21】
起訴後、余罪についての取り調べは可能?
余罪取り調べとは、例えば、Aさんに対する性犯罪で起訴された被告人を、余罪であるBさんやCさんに対する性犯罪で取り調べることをいいます。
このような取り調べは、基本的には禁止されていませんが、無制限にできるわけではありません。
どのような場合に違法となるかについては、以下のような見解があります。
この見解では、余罪の取り調べが許されるのは、逮捕・勾留の基礎となった事実と実態的に密接な関係がある場合、同種余罪や軽微な余罪に限定されます。
取調受忍義務のないことが明瞭な純粋な任意捜査として行われる場合以外は、余罪取り調べは許されません。
令状主義を潜脱しているか否かは、逮捕・勾留の基礎となった事実(別件)と余罪(本件)の罪質及び態様の相違、法定刑の軽重、捜査の重点の置き方、別件と本件の関連性の有無・程度、別件についての身体拘束の必要性の程度、本件の取り調べ方法などを総合して判断します。
起訴後、被告人は防御活動のために弁護士との打ち合わせなどが必要となります。
そのため、起訴後の取り調べや捜査は、被告人のこのような当事者としての地位を尊重してなされるべきであって、いくら余罪とはいえ、被告人の防御活動に悪影響を与えるものは許されません。
違法・不当な捜査があった場合、弁護人である弁護士から抗議するなどして、捜査機関を牽制する必要があるでしょう。
まとめ
以上、起訴後の取り調べや捜査の問題について、解説しましたがいかがだったでしょうか。
起訴後、被告人本人の取り調べは差し控えられていますが、余罪については基本的に禁止されていません。
しかし、余罪であっても、違法・不当な捜査があった場合、毅然と抗議するなどして防御をする必要があります。
捜査機関の活動について、お困りのことがあれば、刑事事件に精通した弁護士にご相談されることをお勧めしています。
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