示談金をもらうのを拒否された場合、どうすべきですか?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

 

刑事事件被害者より示談金を拒否したいと言われた場合、弁護士を通じて供託するという方法が考えられます。

 

示談のメリット

被害者がいる犯罪において、示談をすることはとても重要です。

通常、刑事事件では、逮捕・勾留された後に起訴されるという流れです。

しかし、示談が成立するということは、被害者の処罰感情が喪失することを意味します。

被害届が取り下げられれば、検察官はあえて逮捕したり、起訴したりする必要性が減少します。

そのため、通常通り生活ができ、不起訴を獲得する可能性が出てきます。

 

 

被害者が示談金を拒否したい理由

しかし、被害者の方の中には、示談金を頑なに拒否する場合があります。

これは、被害者の感情が大きく影響しています。

財産的な損害だけであれば示談金を受け取ることが合理的です。

しかし、精神的な苦痛の場合、「お金では解決できない」と感じており、示談金の受け取りを拒否したいと思う方もいらっしゃいます。

被害者の中には、犯罪によって人生が狂ってしまう方もいます。

このような方々は、加害者に対する嫌悪感が強く、お金を受け取るよりも、加害者を徹底的に罰してほしいと望んでいるでしょう。

 

 

供託とは

供託とは、法務局に対して、お金を預けることを言います。

供託すると、民法上、賠償金を支払ったこと、と同じ効果が生じます。

被害者の方が示談金を受け取ってくれない場合、弁護士を通じて供託するなどの方法が考えられます。

犯罪被害者が弁済の受領を拒否している場合、犯罪者は弁護士を通じて示談金を供託することができます(民法494条)。

根拠条文
(供託)
第四百九十四条 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
二 債権者が弁済を受領することができないとき。
2 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。

引用元:民法|電子政府の総合窓口

供託の場合、法務局へ提出する書面として、犯罪被害者の受領拒否を示すものが必要となります。

これについては、刑事事件を依頼した弁護士に作成をお願いするといいでしょう。

 

 

現金書留で送る方法は?

その他には、弁護士を通じて示談金を現金書留で送るという方法もあります。

しかし、受け取らないと言っているのに、無理やり郵送するのは被害感情を害することになりますので、むしろ悪影響となるでしょう。

したがって、現金書留という方法はお勧めできません。

 

 

供託の方法

供託は、債務の履行地(被害者の住所地など)の供託所にしなければなりません。

なお、法律上の要件ではありませんが、供託する場合、弁護士を通じて、あらかじめ犯罪被害者に供託する意向であることを伝えるべきだと考えます。

また、供託後は、供託したことを伝え、受諾方法をアドバイスしてあげた方がよいでしょう。

 

 

供託のメリット

刑事裁判では、供託したことは、被告人に有利な情状となると考えます。

したがって、弁護士を通じて供託書の控えを裁判所に提出するとよいでしょう。

また、併せて、供託に至った経緯を報告書として提出するとよいと思います。

この際、弁護士としては、検察官の同意を得られやすいように客観的事実のみを記載するように工夫しましょう。

なお、供託した者は、犯罪被害者が受諾しない間は、いつでも供託金を取り戻すことが可能です。

そのため、理論的には、被告人に有利な判決が出た後に、供託金を取り戻すことも考えられます。

しかし、刑事裁判では、供託金の取り戻しは止めるべきです。

供託したのは、被告人の反省や被害者の被害を回復しようとする気持ちのでなされたものです。

その反省や被害回復の気持ちが有利な情状として評価されているのに、判決が出たからと言って安心して供託金を取り戻すのは不当です。

刑事事件の弁護士としては、供託する場合、被告人に「供託金を取り戻さない」と書面で誓約してもらい、供託すべきでしょう。

また、この誓約書についても、被告人に有利な情状証拠となるので、裁判所に提出し、被告人質問でその点を明らかにしておくとよいでしょう。

 

 

示談との違い

示談は、被害者自身が納得して示談金を受け取ることを条件として、処罰を求めないという合意です。

これに対して、供託は、被害者の意思ではなく、加害者がお金を預ける制度です。

したがって、示談のほうが供託よりも情状が良いと言えます。

すなわち、不起訴の可能性がより高まるのは示談の方です。

まずは示談交渉を行ってみて、相手が受け取ってくれない場合の次善の策として供託を検討すべきでしょう。

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まとめ

以上、相手が示談金を受け取ってくれない場合の対応について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

示談金を受け取ってくれない場合は、供託についても検討しましょう。

供託をする場合、その経緯等を捜査機関に説明し、アピールするとよいでしょう。

そのためには、刑事事件に強い弁護士に依頼し、進めてもらうと良いでしょう。

当事務所には、刑事事件を専門とするチームがあります。

まずは当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。

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