刑事裁判の控訴理由とは?【刑事に強い弁護士が解説!】
「控訴のやり方がわからない」
「控訴では何を主張すればいいですか?」
「控訴して1審を覆せますか?」
当事務所の刑事弁護チームには、このようなご相談がたくさん寄せられています。
控訴する場合は控訴期限があります。
手遅れになる前に、まずはお気軽にご相談ください。
控訴とは
控訴は、地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所がした第一審判決に対する上訴です(刑訴法372条)。
控訴の意義や控訴のメリットについてはこちらをごらんください。
控訴理由は、法によって限定されており、次のとおりに分類されます。
- ① 法令違反(刑訴法377条〜380条)
- ② 事実誤認(刑訴法382条
- ③ 量刑不当(刑訴法381条)
- ④ 再審事由・刑の廃止等(刑訴法383条)
なお、第一審後の事情を主張するためには、第一審で証拠調べ請求ができなかったことについてやむを得ない事情があることが必要です。
例えば、何ら示談交渉に取り組まずに実刑判決を受け、控訴の段階になって慌てて示談を申し入れたというようなケースでは、仮に示談が成立したとしても「やむを得ない事情」があるとは認められない可能性もあります。
それでは、以下で各控訴理由について詳しく解説していきます。
①法令違反(刑訴法377条〜380条)
【刑訴法377条所定の事由】
- 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと
- 法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと
- 審判の公開に関する規定に違反したこと
【刑訴法378条所定の事由】
- 不法に管轄又は管轄違を認めたこと
- 不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと
- 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと
- 判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること
【刑訴法379条所定の事由】
刑訴法377条及び378条以外の訴訟手続の法令違反があり、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかである場合
【刑訴法380条所定の事由】
法令の適用に誤りがあってその誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである場合
法令適用の誤りとは、証拠によって認定された事実に対する実体法の適用を誤ることをいいます。
②事実誤認(刑訴法382条)
事実誤認とは、証拠から実体法的事実を認定するに当たり、証拠の価値判断ないし取捨選択を誤り、あるいは証拠から認定事実を推理判断する過程において論理法則・経験則の当てはめを誤り、その結果として事実認定を誤ることをいいます。
ただし、控訴理由としては、事実認定を誤った結果、「判決に影響を及ぼすことが明らかである」ことが必要です。
たとえば、未必的な故意であると認定すべきであったにもかかわらず、確定的な故意があったという認定をした場合、どちらも構成要件として必要な故意に変わりはありません。
このような場合、事実認定を誤ったとしても犯罪の成立を認める有罪判決に影響はなく、犯情にも大きな差がなければ、「判決に影響を及ぼすことが明らかである」とはいえません。
そのため、事実誤認が疑われるとして、その誤りがどの程度判決に影響するのかも検討する必要があります。
なお、控訴審は事後審であるため、控訴審を担当する裁判官が独自に証拠から心証を取るわけではないという点にも注意する必要があります。
つまり、第一審の事実認定が、論理則や経験則に照らして不合理とまではいえない場合、控訴審を担当する裁判官の主観として異なる事実認定になる可能性があると考えていたとしても、第一審の事実認定が尊重されるということです。
③量刑不当(刑訴法381条)
量刑不当とは、宣告刑が具体的事案において重きに過ぎ、あるいは軽きにすぎる場合をいいます。
控訴理由としては、主刑、付加刑の不当のほか、刑の執行猶予及び保護観察の言渡しの有無、刑の免除の言渡し及び刑の執行免除の言渡しの有無、未決勾留日数の本計算入日数、罰金及び科料の換刑処分等の不当です。
なお、裁判員裁判においては、これまでの量刑傾向に反する判決が言い渡されることがあります。
このような場合にも量刑不当であるといえるでしょうか。
裁判員裁判の役割として、量刑傾向を変化させることも否定できません。
しかし、これまでの量刑傾向を視野に入れて判断がされることは、量刑判断の過程が適切なものであったということに繋がります。
そのため、これまでの量刑傾向を前提とするべきではない事情が存在することを、具体的かつ説得的に述べていないものについては、量刑不当の控訴理由が認められる可能性もあるといえます(最高裁判所平成26年7月24日付判決参照)。
④再審事由・刑の廃止等(刑訴法383条)
【刑訴法435条に当たる事由がある場合】
- 原判決の証拠となった証拠書類又は証拠物が確定判決により偽造又は変造であったことが証明されたとき
- 原判決の証拠となった証言、鑑定、通訳又は翻訳が確定判決により虚偽であったことが証明されたとき
- 有罪の言渡を受けた者を誣告した罪が確定判決により証明されたとき
但し、誣告により有罪の言渡を受けたときに限る - 原判決の証拠となった裁判が確定裁判により変更されたとき
- 特許権、実用新案権、意匠権又は商標権を害した罪により有罪の言渡をした事件について、その権利の無効の審決が確定したとき、又は無効の判決があつたとき
- 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき
- 原判決に関与した裁判官、原判決の証拠となつた証拠書類の作成に関与した裁判官又は原判決の証拠となつた書面を作成し若しくは供述をした検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が被告事件について職務に関する罪を犯したことが確定判決により証明されたとき
但し、原判決をする前に裁判官、検察官、検察事務官又は司法警察職員に対して公訴の提起があつた場合には、原判決をした裁判所がその事実を知らなかつたときに限る
【刑の廃止等】
刑の廃止、変更又は大赦があった場合
控訴を考えている方はぜひ弁護士に相談を
控訴は弁護人でなく、被告人個人が独立して申し立てることも可能です。
しかし、控訴を申し立てることが必ずしも被告人の利益にならない場合も存在します。
例えば、身体拘束を受けたまま、実刑判決を受けた場合、控訴が棄却されてしまうと、未決勾留日数は控訴を申し立てる前日までしか参入されません。
つまり、控訴が全く認められる可能性がないのに控訴を申し立てると、身体拘束をされる期間がかえって長くなる可能性があるのです。
ここまで見てきたように、控訴理由はその数が多く、一見するとどれかには該当するのではないかと思われるかもしれません。
しかしながら、控訴が認められる確率はおよそ10%ほどであり、認められる見込みがないのに控訴を申し立てると、上で述べたような不利益が生じる可能性が出てきます。
そのため、控訴を検討される際には、上記の控訴理由に該当する事情がどれほど見込めるか、専門家である弁護士の判断を仰ぐ必要があります。
控訴を考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。