控訴したらどうなる?【刑事に強い弁護士が解説!】
「裁判所の刑に納得がいきません」
「刑務所に入りたくありません」
「1審の判断を覆したいです」
当事務所の刑事弁護チームには、このようなご相談がたくさん寄せられています。
控訴する場合は控訴期限があります。
手遅れになる前に、まずはお気軽にご相談ください。
控訴とは
控訴とは、地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審の判決に対して行われる上訴のことをいいます(刑事訴訟法第372条)。
刑事事件の場合、第一審が地方裁判所で行われたか、簡易裁判所で行われたかを問わず、控訴審は高等裁判所が管轄となっています(裁判所法第16条1号)。
控訴審は、第一審の判決が裁判官の裁量の範囲を逸脱する等の間違いがないかどうかを事後的にチェックする役割を担っていると考えられています。
つまり、控訴審を担当する裁判官が一から心証を作って新しい判断を行うというものではないということです。
なお、いわゆる跳躍上告(刑事訴訟規則第254条)や高等裁判所が第一審として行った判決に対する上訴(刑事訴訟法405条)は、上告として処理されるため、控訴には含まれません。
控訴のメリット
控訴審は、事後審としての性格上、審理の結果、原判決を破棄すべき事由を発見した場合、事件を原判決に差し戻し、あるいは原裁判所と同等の他の裁判所に移送するのが原則です(刑訴法400条本文)。
しかし、現行法は、控訴審が取り調べた資料によって、直ちに判決をすることができると認めた場合は、判決をすることもできます(「自判」といいます。同条ただし書)。
また、この自判は、事後審の建前からすると例外ということいなりますが、原判決を破棄する場合、実務上は、自判が通例となっています。
仮に控訴審の判決が破棄自判となった場合は、控訴申し立て後の未決勾留日数は全部算入されるという処理がされることもあり(刑事訴訟法第495条2項)、実刑であるということが変わらずとも、控訴の大きなメリットといえます。
控訴は不利益に変更できない
刑事事件において、被告人が控訴を申し立てたにもかかわらず、原判決よりも不利益な刑の言い渡しが許されるとすれば、被告人は不利益な結果をおそれて控訴権の行使を差し控えることとなります。
そのため、控訴事件について、原判決の刑よりも重い刑を言い渡すことはできません(刑訴法402条)。
これを、「不利益変更禁止の原則」といいます。
不利益変更とはなにか?
何をもって不利益変更というのかについては、以下のような判例があります。
判例 最決昭和39年5月7日
「本城については、第一審、控訴審において言い渡された主文の刑を、刑名等の形式のみによらず、具体的に全体として総合的に観察し、控訴審の判決の刑が第一審の判決よりも実質上被告人に不利益であるか否かによって判断するべきである。」
この判例の判断基準をもとに様々な判決が出されており、次のような場合は不利益変更と考えられています。
- 懲役6月・執行猶予3年の刑を、禁錮3月の刑に変更した場合(最大判昭和26年8月1日)
- 罰金額は低くなったものの、罰金を完納出来ない場合の労役場留置の日数換算を、1日あたり500円から1日あたり250円と変更した場合(最判昭和33年9月30日)
他方、次のような場合は不利益変更ではないと考えられています。
- 禁錮10月の刑を懲役8月の刑に変更した場合(最決昭和43年11月14日)
- 懲役10月・執行猶予3年の刑を、懲役6月・執行猶予5年の刑に変更した場合(最判昭和28年12月25日)
- 自由刑(懲役刑や禁錮刑)から罰金刑へ変更した場合
なお、「刑」とは、主刑・付加刑だけでなく、執行猶予や保護観察、未決勾留日数の参入なども含まれますが、訴訟費用の負担は「刑」ではないとされています(最判昭和26年3月8日)。
刑の軽重を判断する基準
単に刑名等の形式のみならず、具体的に全体として総合的に観察し、控訴審の判決の刑が第一審の判決の刑よりも実質上被告人に不利益であるか否かによって判断すべきと解されています。
また、第一審の不定期刑と控訴審の定期刑を比較するときは、不定期刑の中間を標準とするのが判例です(最判昭32.9.20)。
控訴の期限
控訴の提起期間は14日です(刑訴法373条)。
公訴の提起期間は、裁判が告知された日から進行しますが、初日は参入されません(刑訴法358条、55条1項)。
また、期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは、これを期間に算入しません(刑訴法55条3項)。