家宅捜索とは?【条件や対応方法を弁護士が解説】

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弁護士の回答

家宅捜索とは、警察などの捜査機関が容疑者等の自宅を捜索することをいいます。

以下、家宅捜索がなされる場合や対応方法について、詳しく解説します。

 

家宅捜索とは?

家宅捜索とは、警察などの捜査機関が証拠収集等の目的で容疑者等の自宅を捜索することをいいます。

警察官が自宅に来る理由は、周囲で起きた事件の情報を集めるためであったり、定期的な見回りのためであったり、色々なものがあります。

これらの中で、当事務所への相談があるのは、家宅捜索のために警察官がやって来た場合の対応についてです。

家宅捜索について、刑事訴訟法は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付き差押え、捜索又は検証をすることができる。」(刑事訴訟法218条)と定めています。

引用元:刑事訴訟法|法令検索

つまり、家宅捜索を受けるという事は、「警察官は、あなたの家に何らかの犯罪の証拠を探しに来ている」ということなのです。

 

 

家宅捜索が行われる条件

ただし、この家宅捜索は、どんな時でも警察官が自由に出来るものではありません。

憲法35条1項は、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合(逮捕される場合)を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」としています。

引用元:憲法|法令検索

また、警察官が家宅捜索を始める場合、「差押状、記録命令付差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない」と規定されています(刑事訴訟法110条、同法222条1項)。

引用元:刑事訴訟法|法令検索

なお、実務上、捜索令状と差押令状を一括した「捜索差押許可状」が発布される場合が多いです。

つまり、家宅捜索は、その場で家に住んでいる人を逮捕する場合を除いて、警察官が捜索差押許可状を持っていなければ、出来ないということです。

そのため、逮捕の手続きを行うことなく、警察官が家の中を調べさせてほしいと言ってきた場合には、まずは捜索差押許可状を見せるように求めましょう。

家宅捜索はどこまでできる?

警察官が捜索差押許可状を持っている場合でも、無限定に捜索が許されるわけではありません。

上述のとおり、令状には「捜索する場所及び押収する物」の「明示」が義務付けられています。

したがって、捜索差押許可状に記載されていない場所や対象物以外の捜索・差押えについては、拒否することが可能です。

 

会社に家宅捜索できる?

捜索差押許可状に会社が明記されていれば、勤務先も家宅捜索の対象となります。

例えば、容疑者の方の自席や貸与されているパソコンなどが捜索の対象となることが想定されます。

 

本人不在の場合はどうなる?

必ずしもご本人が立ち会わなくても、家宅捜索は可能です。

すなわち、容疑者の自宅を捜索する場合、必ずしも「住居主」ではなく、同居人などの「代わるべき者」の立ち会いでも許されています。

また、これらの者の立ち会いができない場合は「隣人」または「地公公共団体の職員」の立ち会いでも捜索が可能です(刑事訴訟法題114条2項・第222条1項)。

刑事訴訟法

参考条文

第百十四条
公務所内で差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行をするときは、その長又はこれに代わるべき者に通知してその処分に立ち会わせなければならない。
② 前項の規定による場合を除いて、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内で差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行をするときは、住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者をこれに立ち会わせなければならない。これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。

引用元:刑事訴訟法|法令検索

したがって、本人や同居人がいない場合、警察は役場に連絡し、職員を派遣してもらって家宅捜索することが想定されます。

 

 

家宅捜索の前兆は?

家宅捜索は、事前に何の予告もなく、突然やってきます。

捜索があることが事前にわかってしまうと証拠隠滅などの可能性があります。そのため、事前の連絡などはないと考えたほうがよいでしょう。

しかし、家宅捜索の可能性を示唆する状況は考えられます。

上述のとおり、家宅捜索は令状の発布が条件となります。

裁判所が令状を発布する場合、相当の嫌疑が必要となります。

警察は令状を得るために一定の捜査を行って証拠を収集します。その過程で、容疑者やその関係者に事情聴取を求めたりすることがあります。

したがって、警察から事情聴取を受けている場合は家宅捜索の前兆となります。

 

 

家宅捜索時の対応

警察官が令状を持っていない場合

警察官が捜索差押許可状を持たないで家宅捜索に来る事はあまりないと思いますが、万が一、警察官が捜索差押令状を持っていない場合、それは任意捜査に過ぎませんから、家宅捜索に応じる義務は一切ありません。

令状がないときに家宅捜索を拒否することは、先に述べたように、憲法によって保障されている国民の権利です。

家宅捜索には応じないということを、はっきりと警察官に伝えましょう。

警察が勝手に家に入る場合

それでも警察官が諦めずに、自宅に押し入るような場合、その状況を写真や動画等で記録するという方法があります。

また、「弁護士を入れる」と伝え、警察官の名前を聞いておくとよいでしょう。

後々の裁判では、違法に収集された証拠として、証拠能力を争う弁護活動が考えられます。

 

警察官が令状を持っている場合

警察官が令状を持っている場合、家宅捜索に対して抵抗することは得策ではありません。

捜査家に住んでいる人が令状を見ないようにしたとしても、どれだけ暴れたとしても、警察官は強制的に家の中を探し回り、犯罪の証拠となる物を持って帰ることが出来てしまいます。

捜索差押令状を破ってしまった場合

公用文書毀棄罪(刑法258条)に該当します(仙台地裁平成27年7月14日判決)。

 

暴れて警察官に暴行を加えてしまった場合

公務執行妨害罪(刑法95条1項)に該当します。

その結果、その場で現行犯逮捕されてしまう可能性もあり、状況は悪化するだけです。

しかし、警察官が捜索差押えをすることが出来るのは、「令状に記載された場所、物」についてのみです(刑事訴訟法219条1項)。

家に住んでいる人は、家宅捜索に立ち会うことが出来ますので(刑事訴訟法114条1項および2項、同法222条1項)、捜索差押令状に書かれている内容をしっかりと見て、罪名を確認し、捜索差押令状に書いていない場所を探していないか、書いていない物を持って行こうとしていないかを見張っておきましょう。

また、警察官の行為が、捜索差押令状に書いてある範囲で行われたものかを後で確認しようと思っても、捜索差押令状の内容を後から入手することが難しい場合もあります。

そのため、家宅捜索の時に、警察官に捜索差押令状の内容を読み上げてもらって、それを録音しておくと、後々の対応に役立つことがあります。

なお、捜査上必要がないと判断された物については、捜査が続いていても返還されることになっていますから(刑事訴訟法123条)、警察官が持っていった物が全て事件終了時まで返ってこないということではありません。

 

 

家宅捜索を受けた後の対応

証拠が見つかった場合

証拠の内容にもよりますが、犯罪を立証し得る内容であれば、起訴される可能性が高くなると考えられます。

 

証拠なしの場合

家宅捜索の際に何も出なかったとしても、安心はできません。

警察官が家宅捜索にやってきたということは、警察から、あなた、もしくはあなたに近い人物が何らかの犯罪を行ったと疑われていると考えた方がよいでしょう。

それぞれのケースにもよりますが、その後の捜査で証拠を掴み、後々、逮捕・起訴される可能性は十分にあります。

 

示談の検討

証拠の有無に関わらず、犯罪を行ったという自覚があるのであれば、事実を自ら認めた上で、被害者がいれば早期に示談をし、謝罪すべきです。

被害者を救済できるだけでなく、示談が成功して被害届が取り下げられれば、起訴される可能性が低くなることが予想されます。

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捜査への協力

また、被害者がいない犯罪の場合、反省し、二度と犯罪を犯さないということを捜査機関に理解してもらうことが重要です。

そうすることで、逮捕・起訴されることなく、社会内で更生をする機会を得られる可能性を高めることが出来ます。

 

 

 

まとめ

以上、家宅捜索について、家宅捜索の条件、捜索時やその後の対応等について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

家宅捜索は令状に基づくものであり、令状が示されない場合は拒否すべきです。

また、令状に記載がない場所や対象についても同様に拒否できます。

家宅捜索において証拠が出る・出ないに関わらず、犯行を行ったという自覚があれば、罪を認めた上で、示談交渉等の弁護活動を行っていくことが重要です。

このように、家宅捜索を受けた場合には、あなたが置かれている状況を正しく分析し、なるべく早く対応策を考えていく必要がありますが、専門家の判断無しにこれらの活動を行う事は非常に困難です。

そのため刑事専門の弁護士に相談し、最適な弁護活動を受けることをお勧めします。

 

 

 


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