少年事件における家庭裁判所への対応【刑事弁護士が解説】
少年事件と家裁の関係
14歳以上20歳未満の未成年者が事件を起こしてしまった場合、どのように事件処理が進められていくのでしょうか。
未成年者が事件を起こした場合、捜査機関による捜査が進んだ後、原則として全ての事件が家庭裁判所に送られます。
これを「全件送致主義」といいます。
なぜ全件送致主義が採用されているかというと、少年法が理念として掲げている「少年の健全な育成」(少年法第1条)を実現するためです。
引用元:少年法|電子政府の総合窓口
少年事件に関しては、少年が行ってしまった非行の軽重のみならず、なぜ少年が非行に走ってしまったのかについても十分に調査を行い、処分を決定していきます。
これは、少年が今後二度と非行に走ることなく、健全に育っていくためには、非行の内容がどんなものであれ、非行に走ってしまった原因を早期に改善することが必要になるからです。
そのため、たとえ成人であれば不起訴になりうるような内容の事件であっても、少年の場合は一律に家庭裁判所に送致され、少年審判に繋がる可能性が高いといえます。
家裁調査官とは
家庭裁判所には、調査官と呼ばれる方々が所属しています。
調査官は、心理学、社会学、社会福祉学、教育学など、少年の今後を考えていく上で必要とされる専門的な知識を有しており、これらの分野に関する知識を総動員して、なぜ少年が非行に走ってしまったのか、少年が今後また非行に走ってしまう可能性がどれくらいあるか、それを防ぎ少年が更生していくためにどのような処遇とすべきか、などといった内容について、様々な角度から調査を行います。
少年事件の家裁調査の流れ
処分の決定にあたっては、家庭裁判所調査官が事件の記録を精査した上で、少年や保護者と面接を行い、非行に至った経緯や、生活状況、家庭環境等について話を聞き出します。
その上で、どうして非行に走ってしまったか、どうすれば二度と非行に走らずに済むかについて、少年や保護者と一緒に考えていくことになります。
事件の内容や、少年自身が抱える問題の深さなどにもよりますが、この調査には少なくとも1ヶ月程度を要することが多いといえます。
調査終了後の処分
調査が終了した後は、調査官が担当裁判官に対し、少年調査票を作成・提出します。
この調査票の中には、少年に対し、どのような処遇とするのが一番良いかについて、調査官の意見が記載されます。
また、調査官は、少年審判にも出席し、少年に質問をしたり、調査官としての意見を述べたりします。
裁判官は、少年調査票に記載された調査官の意見を参考にしつつ、審判の中での少年の受け答えなどを踏まえ、最終的な結論を決めることになります。
少年事件の場合、事件の内容が軽微なものであったとしても、少年自身が再び非行に走る可能性が高いと判断されたりすると、何らかの保護処分がなされる可能性があります。
少年事件の終わり方としては、以下の3パターンが想定されます。
- ① 審判不開始、不処分などにより、その後の監督等が不要と判断されるパターン
- ② 少年院送致や保護観察などをはじめとする保護処分、知事又は児童相談所長送致など、一定の監督が必要と判断されるパターン
- ③ 少年事件としての扱いではなく、成人と同様に刑事裁判を行うべきであるとする検察官送致(逆送)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
少年事件においては、審判を担当する裁判官や、家庭裁判所の調査官とも密に連携を取り、何をするのが少年にとって最善であるかを共に考えていく必要があります。
そのためには、付添人が率先して調査官との面談を行ったり、審判に至るまでの少年の努力を中間報告書の形にまとめ、調査官と情報共有を行ったりして、少年が自己の課題をどこまで認識し改善できているか、さらに少年の反省を深め、課題を解決していくにはどのような手段を取ったら良いか、といった点につき、議論を深めていくことが有用です。
最終的な処遇意見を述べる権限のある調査官に対し、少年自身の努力や変化を逐一伝えることで、調査官も少年が自分の力で更生できる可能性を認めるようになるかもしれません。
その結果、「少年院送致が相当」とするはずだった処遇意見が「保護観察が相当」という内容に変わったりすることもあり得ます。
少年事件に注力する弁護士を付添人として選任することにより、少年や調査官に対して積極的な働きかけを行い、少年自身が変わるきっかけをつかむ可能性を高めることができます。
それが、ひいては最終的な処分結果の軽減にもつながります。
お子様が少年審判を受けることになったなど、ご不安を抱えていらっしゃる方は、ぜひ一度少年事件に注力する弁護士にご相談ください。
少年事件のよくある相談Q&A
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか