痴漢で逮捕|手続の流れ・リスク・逮捕されないポイントを解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士

この記事でわかること

  • 痴漢で逮捕される条件
  • ご家族が痴漢で逮捕されたときにできること
  • 痴漢で逮捕されたときのリスク
  • 痴漢で逮捕された後の流れ
  • 痴漢で逮捕されないためにできること
  • 痴漢で逮捕された後、早期釈放のためにやるべきこと

痴漢はどのような犯罪?

「痴漢」と一括りに呼ばれますが、痴漢の中には色々な犯罪が含まれています。

衣服の上から臀部等を触ったようなケースでは、各都道府県の迷惑行為防止条例違反の罪に問われることになるでしょう。

この場合、主要な都市での法定刑は以下のように定められています。

都市 見出し
東京都 撮影した者:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
それ以外の盗撮:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
大阪府 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
愛知県 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
福岡県 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

また、衣服の中に手を入れて隠部を触る等、より悪質性の高いものについては、不同意わいせつ罪(刑法176条)に問われることになります

不同意わいせつ罪は、昔は親告罪として扱われていたため、被害者が刑事告訴をしなければ起訴できませんでしたが、現在は非親告罪となっています。

そのため、被害者が刑事告訴をしない場合でも起訴される可能性が残っています

不同意わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下とされており、罰金刑が存在しません。

懲役刑しか選択の余地がないということからも、極めて重い犯罪であるということがお分かり頂けるでしょう。

ここまでは説明のために簡単な例をあげましたが、同じような行為態様であっても、その痴漢がどちらの犯罪にあたるのかは個々の事例によって異なります。

特に不同意わいせつ罪に問われる可能性があるようであれば、各都道府県の迷惑行為防止条例違反の罪にとどまらないかを慎重に検討する必要があります。

たかが痴漢、と思わずにちゃんと弁護士に相談するようにしましょう。

 

 

痴漢で逮捕される条件

痴漢で逮捕される場合としては、現行犯逮捕と後日逮捕の2つが考えられます。

以下ではどのような場合にそれぞれの逮捕が行われるか、逮捕される確率はどれほどかについて解説していきます。

現行犯逮捕 後日逮捕
逮捕される時期 犯行中もしくは犯行直後 犯行後しばらく経ってから
必要なもの 特に無し 逮捕状
逮捕出来る人 誰でも可能 警察官など
その後の手続き 72時間以内の身体拘束の後、勾留もしくは釈放 72時間以内の身体拘束の後、勾留もしくは釈放

後日逮捕の場合

痴漢で後日逮捕されるという場合、逮捕の形式は通常逮捕ということになります。

通常逮捕を行うためには、裁判所が発行した逮捕状が必要になります。

逮捕状は警察が請求すれば必ず発行されるというものではなく、①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、②逮捕の必要性(逃亡や証拠隠滅の可能性が高いことなど)が認められる場合に限って発行されます。

痴漢で後日逮捕されるような事件というと、犯行が発覚してしまったものの逃走に成功したような場合や、被害者と顔見知りであるなど何らかの関係性が認められる場合が考えられます。

警察は、防犯カメラ映像を精査したり、目撃者の供述を集めたりと色々な手段を使って逃走した容疑者を特定しようとしますが、これらの捜査には時間がかかりますし、捜査が難航することもあります。

実際には痴漢で後日逮捕されるという事件はそう多くないように感じます。

被害者に気付かれたと思っていたものの、実際には発覚せずに済んでいたり、警察の捜査をもってしても容疑者を特定できるだけの証拠が集まらなかったり、理由はそれぞれなのでしょう。

しかしながら、後日逮捕の可能性が0というわけでもありませんから、逃げ切れば大丈夫という考えは決して持たないようにしてください。

現場から逃走できたとしても、数か月後に連絡が来るという可能性もありますから、場合によっては自首を検討するべきでしょう。

痴漢で後日逮捕された場合は、72時間以内の身体拘束中に勾留されるか否かが決定されます。

詳しい流れは、後ほど解説します。

痴漢の後日逮捕について、詳しくはこちらもご覧ください。

 

(準)現行犯逮捕の場合

現行犯逮捕とは、痴漢事件の当日に犯行現場で犯人を逮捕することをいいます。

痴漢で逮捕されてしまう場合のほとんどは現行犯逮捕です。

通常の逮捕は、裁判所から逮捕状をもらわなければ行うことが出来ませんが、現行犯逮捕には逮捕状は必要とされていません(刑事訴訟法第213条)。

参考:刑事訴訟法|e-Gov法令検索

現行犯逮捕は、明らかに犯人だということが認められる限られた場合のみに認められており、誤認逮捕の可能性が極めて低いからです。

また、現行犯逮捕は警察官以外の一般人でも行うことが可能です(刑事訴訟法213条)。

そのため、痴漢を目撃した人や、痴漢被害にあった本人が逮捕を行うことが出来ます。

ただし、現行犯逮捕を行なった後は、速やかに警察官に犯人の身柄を引き渡さなければなりません(刑事訴訟法215条1項)。

参考:刑事訴訟法|e-Gov法令検索

それでは、具体的にどのような場合に痴漢で現行犯逮捕をされてしまうかを解説します。

現行犯といえるのは、犯行中もしくは犯行直後であることが確認できる場合のみです(犯行直後の場合には準現行犯と呼びます。)。

犯行中にそのまま取り押さえられるような場合は、現行犯として想像しやすいでしょう。

それでは「犯行直後」とはどこまでのことを指すのか、言葉だけでは分かりにくいと思いますが、法律でしっかりと決まっています。

以下の4つのいずれかに該当し、かつ、犯罪を行い終わってから間もないと明らかに認められるときは、犯行直後として現行犯逮捕が認められています。

  1. ① 犯人として呼ばれて追われている場合
  2. ② 犯行に使った凶器等を所持しているとき
  3. ③ 身体か衣服に犯罪を行った明らかな痕跡があるとき
  4. ④ 呼び止められたのに逃走しようとするとき

参考:刑事訴訟法|e-Gov法令検索

以上の4つの場合のうち、痴漢の犯行直後として現行犯逮捕が行われるのは、①に該当する場合が多いでしょう。

例えば、被害者や目撃者から犯行を指摘され、容疑者が逃走している最中に、警備員等が身柄を取り押さえるといった場合です。

現行犯逮捕が行われた後の流れは、基本的に通常の逮捕(後日逮捕)と同じです。

詳しい流れは後ほど解説します。

 

痴漢で逮捕される確率

それでは痴漢で逮捕される確率はどの程度なのでしょうか。

犯罪白書には痴漢で逮捕される割合についての記載がなく、信頼できる統計情報はありません。

参考:令和5年版犯罪白書

そのため、あくまでも個々の事例に応じて逮捕の確率を判断する他ないといえます。

以下では、具体例をいくつか挙げて、逮捕の可能性がどの程度あるかを考えていきましょう。

 

①痴漢が発覚して現場から逃走してしまった場合

痴漢が発覚して現場からの逃走してしまった場合、現行犯逮捕が行われることはありませんが、一度逃走していることから、逃亡する可能性が高く逮捕すべきだと判断される可能性があります。

しかしながら、既に説明したとおり、痴漢で後日逮捕される確率は決して高いものではありません。

なお、現場からの逃走は、その最中に他の罪も重ねてしまうことになりかねませんので、お勧め出来ません。

 

②痴漢現場からの逃走に失敗し、被害者・目撃者に身柄を取り押さえられた場合

先ほど説明したとおり、現行犯逮捕は警察官以外の一般人でも行うことが出来ます。

そのため、痴漢の現場で逃走を試み、被害者や目撃者に身柄を取り押さえられた場合、その時点で現行犯逮捕が成立している可能性が極めて高いです。

痴漢現場からの逃走に失敗し、身柄を取り押さえられた場合に逮捕される確率は80〜90%程度はあるのではないでしょうか。

 

③身柄を取り押さえられることなく、警察に引き渡された場合

逮捕というのは、必ずしも身柄を取り押さえるという行為が必要になるわけではありません。

例えば、駅で痴漢をしたという場合に、目撃者から声をかけられ、駅員を呼ばれてそのまま駅員室に入り、警察に引き渡されたというような場合を想定しましょう。

このような場合でも①と同様に現行犯逮捕が成立していると評価される可能性はあります。

もっとも、裁判例によると、通常の逮捕よりは緩やかなものの、現行犯逮捕にも逮捕の必要性が求められています(大阪高等裁判所昭和60年12月18日判決、東京高等裁判所昭和41年1月27日判決)。

逃亡や証拠隠滅を行う可能性が低いと考えられる事案では、警察に身柄が引き渡された後、釈放されることもあるかもしれません。

ただし、釈放される場合には、身元引受人が必要となることがありますので、家族や職場に完全に隠し通すということは難しいでしょう。

身柄を取り押さえられることなく警察に引き渡された場合に逮捕される確率は、半々といったところでしょうか。

 

 

痴漢で逮捕された場合まずはどのような行動をすべき?

冤罪にかかわらず弁護士にすぐにご連絡を

冤罪である場合、ちゃんと調べてもらえれば自分の言い分が信じてもらえて、すぐに釈放されるはずだと考えられる方がいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、痴漢は冤罪が起きやすい事件類型ですので、誤った有罪判決を受ける可能性も否定できません。

また、最終的に刑事処罰を受けることは無かったとしても、犯行を否認しているから証拠を隠滅する可能性が高いとして、長期間の身体拘束を受けてしまうことも十分にありえます。

そのため、たとえ冤罪であったとしても、逮捕された場合にはすぐに弁護士に連絡し、適切な弁護活動を受けるべきです。

 

現行犯逮捕で警察に連行された場合

現行犯逮捕されてしまった場合、その場で電話等が出来ずに弁護士に連絡することが出来ない可能性もあります。

この場合、逮捕された本人が取りうる手段としては、日本弁護士連合会が運営している当番弁護士制度というものを利用することが考えられます。

当番弁護士制度とは、利用の申し入れを行えば、24時間以内に1度だけ弁護士が接見に来てアドバイスをしてくれるという制度です。

接見に来てくれる弁護士を選ぶことは出来ませんが、最低限のサポートは受けられるはずですから、万が一のときは警察に「当番弁護士制度を利用します。」と伝えるようにしましょう

しかし、当番弁護士制度はあくまでも一回きりの活動ですから、その後の継続的な弁護活動を受けるためには勾留という長期の身体拘束手続に入って国選弁護人がつくか、ご家族経由で弁護士に相談して依頼されるしかありません。

本人は、突然の出来事で当番弁護士制度を頼むことも忘れている可能性もありますから、ご家族が現行犯逮捕されたという連絡を受けた場合には、出来るだけ早く弁護士にご相談されることをお勧めします。

次の項目で詳しく解説するように、刑事事件を専門に扱う事務所の場合、接見を含めて強力にサポートしてくれる事務所もありますから、そのようなサービスを提供している法律事務所に相談されるとよいでしょう。

長期間の身体拘束を避けるための活動を行うために使える時間は限られていますから、速やかに相談することが身体拘束の早期解放に直結すると考えてください。

 

弁護士による接見を利用して被疑事実について相談する

逮捕された直後は、本人も混乱している中、目まぐるしく手続が進んでいきます。

犯行を認めている事件であれ、否認している事件であれ、何も分からないまま対応してしまうと刑事処分の決定に関して不利に働く可能性があります。

そのため、できるだけ早く弁護士に接見に来てもらい、被疑事実についてどのような対応をするべきなのかを相談されるべきです。

既に説明した当番弁護士制度も、一回限りの接見で被疑事実について相談することが出来るという制度です。

どのような弁護士が来るかは運任せになりますが、最低限のサポートは受けられます。

しかしながら、出来ることなら刑事事件をたくさん取り扱っている弁護士に相談したいと考えられる方も多いのではないでしょうか。

刑事事件を専門に扱う法律事務所の場合、初回接見サービスを実施している場合があります。

初回接見サービスとは、ご家族からのご依頼により、被疑者本人と一度だけ接見を行い、伝言や差し入れ、今後の対応についてのアドバイス等を行うサービスです。

通常、刑事事件をたくさん取り扱っている弁護士が接見に向かいますので、専門的な助言を受けることが期待できます。

また、被疑者本人が報告しても構わないと言われた範囲内で、ご家族に接見内容を報告しますので、ご家族の不安も少しは解消できるかと思われます。

 

 

痴漢で逮捕された場合にご家族ができること

迅速に弁護士に相談する

逮捕された場合、既に説明したように被疑者本人は当番弁護士制度を利用することくらいしか選択肢が残されていません。

しかしながら、当番弁護士はその場限りのサービスになりますから、勾留阻止に向けて動くためには基本的に不向きということになります。

このような被疑者本人の状況を変えることが出来るのは、外にいるご家族だけです。

被疑者の配偶者や直系親族(お父さんやお母さん)などであれば、被疑者の意向とは関係なく、弁護人を選任する権利を持っています(刑事訴訟法第30条2項)。

当番弁護士や国選弁護人は選ぶことが出来ませんが、私選弁護人であれば、ご家族自身が相談し、任せてもいいと思えた弁護士を選ぶことが出来ます。

大抵の方にとっては身内の人間が刑事事件を起こすということは初めての出来事でしょうから、被疑者本人もご家族も、大きな不安を抱えられることでしょう。

そのような中で、信頼して任せられる弁護人がいるかどうかということは、精神的にとても大事なことだと考えています。

ぜひ迅速に弁護士に相談して、信頼できる弁護士に依頼をされてください。

ご家族による弁護士の依頼について、詳しくはこちらもご覧ください。

 

未成年のお子様が痴漢事件で逮捕された場合

未成年には少年法の適用がありますから、成人と同様の刑事処罰を受けることはありません。

しかしながら、刑事処罰を受けないということと、逮捕されるかどうかということは関係がありません。

未成年であっても、事件の性質上、逮捕することが必要であれば逮捕されてしまいます。

この点は成人と何ら変わるところはありません。

痴漢事件であれば、現行犯逮捕されてしまうことが十分に考えられるでしょう。

未成年のお子様が痴漢事件を起こして逮捕されてしまった場合、未成年は成人と比べると精神的に未熟であることが多く、パニックに陥ってしまっていることも十分に考えられます。

そのため、この後どのような流れを辿ることになるのか、どうすれば早く身体拘束から解放される可能性が上がるのかといったアドバイスをしてあげるだけでなく、話をきちんと聞いてあげた上でご家族からの伝言等を伝えて落ち着かせてあげる必要があるでしょう。

また、罪を犯してしまったことが明らかな少年事件の場合、不起訴という概念は基本的にありません。

必ず家庭裁判所に送致され、その後審判を受けることになります。

審判には弁護士が付添人という形で関与しなくとも手続きが進みますが、今後の環境調整や被害者への示談といった活動を行うことで少しでも処分結果が軽く済む可能性があります。

審判の準備を早いうちから行うためにも、未成年のお子様が痴漢事件で逮捕された場合には必ず弁護士に相談されてください。

 

 

痴漢で逮捕された場合のリスク

職場を解雇される可能性がある

職場と全く無関係な場所での痴漢であれば、私生活上の非行を理由としての解雇が有効かどうかを争う余地がある場合もあるでしょうが、それでも解雇されてしまえば復帰するまでにかなりの労力が必要となります。

また、身体拘束を受けている期間が無断欠勤となることによって、そちらを理由として解雇されることも十分に考えられます。

前科がつくかどうかということと無関係に、逮捕されることによって職を失う危険性は十分に存在します。

 

報道される可能性がある

痴漢で逮捕された場合、警察から報道機関に対して情報提供を行うことが一般的です。

もちろん全ての事件が報道されているわけではありませんが、これは報道機関の側で報道価値の有無を選択しているからでしょう。

被疑者が公務員のような社会的地位の高い職業に就いている場合は、報道価値が高いと考えられ、大々的に報じられることもあり得ます。

逮捕されてしまった場合に報道を止めることはかなりの困難を伴いますから、報道されるリスクを回避するためには逮捕を避けることが一番です。

刑事事件が報道される場合について、詳しくはこちらもご覧ください。

 

 

痴漢で逮捕された後の流れ

逮捕後の流れは以下のとおりとなります。

起訴までに最長で23日間、警察署の留置施設に留め置かれる可能性があり、起訴後も保釈が認められなければ判決が出るまで留置施設や拘置所に留め置かれることになります。

①逮捕

逮捕に伴って、捜査機関による捜索差押えが行われ、その後警察署で取り調べを受けることとなります。

逮捕後48時間以内に検察官に送致しなければならないという決まりがあります。

そのため、捜査機関にとって最低限必要な供述調書しか作成する時間がありませんから、この時点の取り調べでは、事件のことについて簡単に聞かれる程度のものになることが多いです。

 

②検察官への送致(書類送検)

警察から検察官に事件が送致されたタイミングで、被疑者自身も検察庁へ連れて行かれます。

検察庁では弁解録取という手続きを受け、この手続きの後、検察官が勾留請求を行うか否かを判断します。

弁解録取はその名のとおり、逮捕された事件について、被疑者の言い分を簡単にまとめるだけの手続きであり、事件を認めるのか否認するのかといった程度のことしか書類上に残りません。

否認しているような事件では、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されて勾留請求がされることは想像がつくでしょうが、事件を認めていたとしても勾留請求を行う検察官も一定数存在します。

 

③勾留質問

検察官が勾留請求を行った場合、裁判所において勾留質問という手続きが取られます。

この手続きの中で、裁判官が勾留を認めてよいのかどうかを判断し、勾留請求を認める場合には次の勾留以下の項目に進み、勾留請求を却下すべきと判断された場合には釈放されることになります。

勾留の要件としては、

  1. ⅰ. 住居不定であること
  2. ⅱ. 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること
  3. ⅲ. 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること

上記のいずれかに該当し、かつ勾留の必要性が認められることが挙げられます(刑事訴訟法第60条1項)。

この時点で弁護人が選任されている場合、勾留質問の前に、裁判官に対して勾留請求を却下するよう働きかける意見書の提出等を行うことになります。

上記3つの各要件を満たさないことや、勾留の必要性がないこと(仕事への影響が大きいことや扶養家族がいることなど)を説得的に述べることで、裁判官も簡単に勾留を認めることは出来なくなります。

昔と比べると、勾留請求が却下される確率は上昇してきています。

痴漢事件の多くは、逮捕されたとしても勾留までは必要ないと考えられる事件ですから、適切な弁護活動を受けることが出来ていれば、ここで身体拘束に関する手続きが終了することも少なくありません。

 

④勾留

勾留請求が認められた場合、被疑者は10日間の身体拘束を受けることになります。

身体拘束を受ける場所としては、逮捕された警察署の留置場となることが一般的です。

この10日間の間で、何度も警察官の取り調べを受け、1・2回ほど検察官の取り調べも実施されます。

なお、勾留決定に異議がある場合は、勾留決定に対する準抗告や勾留取消請求という手続きによって他の裁判官に再度勾留に関する判断をしてもらうことが可能です。

被害者との示談が成立したり、元の裁判官の考えが明らかにおかしいと思われる場合であったりといった事情があれば、これらの手続きによって10日の経過を待たずに身体拘束から解放されることもあり得ます。

 

⑤勾留延長

勾留の10日間では起訴不起訴の判断が出来ない場合には、検察官が勾留の期間を延長するよう求めることがあります。

勾留の延長期間は最大10日間ですが、場合によっては5日間など、10日間よりも短い期間しか延長が認められないこともあります。

ただ、多くの事件では、捜査機関側が身体拘束期間を23日間と考えて当初から捜査のスケジュールを組んでいるのではないかと思われます。

そのため、実際には勾留延長請求がされる可能性は極めて高く、不適切な延長請求に対しては、勾留請求の際と同様に粘り強く戦わなければなりません。

 

⑥検察官による起訴不起訴の判断

身体拘束期間が満了するまでの間に、検察官は当該事件について起訴するかどうかを判断します。

起訴されてしまうと、略式手続による場合を除き、公開の法廷での審理を受けることになります。

不起訴となるのは、冤罪であることが明らかになった場合や、証拠が不十分である場合、被害者との示談が成立する等して起訴する必要がないと判断された場合などです。

痴漢を実際にやってしまった場合は、初犯であるか否か、どのような犯行態様かといった点ももちろん関係しますが、一番重視されるのは被害者との示談が成立しているかどうかです。

諦めずに交渉を行うことで不起訴の可能性が出てくるかもしれませんから、被害者との示談交渉は必ず行いましょう。

 

 

痴漢は現行犯以外逮捕は難しい?後日逮捕されるケースとは?

痴漢で逮捕される場合の大半は、現行犯逮捕です。

これは、現場で被害者や目撃者に犯行を現認され、警官に引き渡されるまでの一連の流れにおいて、既に私人による現行犯逮捕が行われており、逮捕の手続きに乗ってしまっているからではないかと思われます。

そうすると、痴漢で後日逮捕される可能性はどの程度あるのか、現行犯以外での逮捕は難しいといわれるが本当か、という疑問も出てくると思います。

たしかに痴漢の事件において、現行犯以外で逮捕される場合とそうでない場合の区別は難しいところですが、大まかな目安としてはやはり痴漢がどのような行為態様で行われたかという点や、取り調べに協力するか否かという点が重要であるように思えます。

痴漢の行為態様が不同意わいせつに及ぶようなものである場合は、その犯罪の重大性から逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれが認められるとして、後日逮捕される可能性が十分に考えられます

他方、行為態様が迷惑行為防止条例違反にとどまるような場合であれば、後日逮捕となる場合はあまり多くありません。

容疑者として特定された場合、まずは警察から任意で事情聴取を行いたいとの連絡がくることが多く、素直に事情聴取に応じていれば、逮捕を免れることができる可能性が高くなります。

事情聴取を拒否してしまうと、防犯カメラによる特定等により、それなりの証拠が捜査機関の手元にある状況ですので、逮捕の必要性があると判断されてしまう可能性は高くなってしまうでしょう。

後日逮捕を避けるためには、基本的に捜査機関の事情聴取には応じた方が良いということになるでしょう。

 

 

痴漢で逮捕されない場合とは?

同じ痴漢であっても逮捕される場合とそうでない場合があります。

捜査機関も全ての痴漢を逮捕していては収容施設が満員になってしまいますから、逮捕の必要性が低い事件では身元引受人を呼べば逮捕されずに済むこともあります。

以下では、どのような場合に痴漢で逮捕される可能性が低くなるかを考えていきます。

1. 不同意わいせつ罪にあたらないこと

まず、不同意わいせつ罪に該当するような悪質な痴漢の場合は、逮捕されないということはほぼあり得ないでしょう

なぜならば、犯罪の重大性が高ければ、それだけ犯人が逃げたり証拠隠滅を図ったりする可能性が高いと判断され、逮捕の必要性があると考えられるからです。

もちろん個別の事情によるところはありますが、一般論としては不同意わいせつ罪にあたる痴漢事例で、犯行が発覚したのに逮捕されないということは稀といえるでしょう。

そのため、一つ目の要素としては、各都道府県の迷惑行為防止条例違反の罪にとどまることが挙げられるのではないでしょうか。

 

2. 後日発覚し、捜査協力をしていること

次に、その場では痴漢行為が発覚しなかったような場合が挙げられます。

既に述べたとおり、痴漢事件で後日逮捕をされる可能性は0ではありませんが、その大半が現行犯逮捕です。

これは、痴漢の事件で通常逮捕の要件を満たしていないケースが多々あることが原因と考えられます。

取り調べに応じている限りでは、逃亡したり、証拠隠滅を図ったりといった行為に出る可能性が高いと評価できず、逮捕の必要性がないと思われるからです。

その場で痴漢が発覚しなかったような場合は、後日捜査機関から連絡が来た場合にしっかりと捜査協力を行っていくことで、逮捕を避けることが出来る可能性が上がるでしょう。

 

3. 誤認逮捕のおそれがある場合

被害者が自分に触れられている手等を捕まえていたり、目撃者が複数いたり、動画撮影による証拠が存在したりする場合には、誤認逮捕のおそれが少ないため、警察官も現行犯逮捕として扱いやすいでしょう。

しかしながら、被害者が離れたところから「この人痴漢です。」と指摘しているものの、本当にその人物が痴漢を行なった犯人なのかがはっきりとしない場合には、誤認逮捕のおそれがあるため、逮捕として扱われる可能性が低くなります。

 

 

痴漢で逮捕後に不起訴となるためのポイント

痴漢で逮捕されたとしても、まだ前科がつくと決まった訳ではありません。

逮捕後の活動次第では不起訴となる可能性も残されています。

検察官は様々な事情を考慮して刑事処分の内容を決めていきますが、その中でも一番大きな影響を与えていると思われるのは、被害者との示談です。

弊所で取り扱った事件の経験上、示談が成立していた場合には初犯であれば不起訴となる可能性がかなり高くなっています。

再犯の場合には示談が成立していても何らかの刑事罰を受ける可能性は否定できませんが、再発防止策への取り組みなどその他の事情も合わされば、不起訴となる可能性が残ることがあります。

一方で、示談が成立していなければ、初犯であっても略式手続による罰金刑を受けることはほぼ確実です。

不同意わいせつに当たる場合は、当然正式な裁判で懲役刑を求刑されます。

このように、痴漢で逮捕後に不起訴となるための1番のポイントは被害者との示談ということになります。

痴漢で不起訴となった事例について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

痴漢で逮捕されご不安な方へ|早期釈放のために弁護士ができること

痴漢で逮捕されてしまった場合、弁護士が出来ることとしては大きく分けて2つあります。

示談の成功に向けて尽力する

1つ目は、被害者との示談交渉を速やかに行い、可能な限り早く示談を成立させることです。

痴漢事件で長期の身体拘束を受けてしまう場合、おそらく被害者が身近な人物であり、被疑者本人が容易に働きかけを行えるというような事態が想定できます。

被害者への働きかけのリスクがあることを理由に勾留が認められてしまうような事件では、被害者との示談を成立させることで問題点を解消し、勾留が解ける可能性が出てきます。

示談交渉は迅速かつ被害者に寄り添った適切な弁護活動が重要となってきます。

そのため、痴漢で逮捕された場合には刑事事件を熱心に取り扱っている弁護士事務所に依頼をされるべきです。

 

勾留を阻止するために尽力する

2つ目は、検察官や裁判官に働きかけて勾留請求を阻止することです。

個別の事件に応じて、勾留の要件が満たされていないことを説得的に論じることで、検察官にそもそも勾留請求をしないという選択を取らせたり、裁判官に勾留請求を却下してもらったりすることが出来る場合があります。

もちろん全ての痴漢事件で勾留を阻止できるわけではありませんが、特に冤罪である場合には一刻も早く身体拘束を解く必要がありますから、必ず弁護士に相談の上、このような活動を行なってもらうべきです。

 

 

まとめ

痴漢で逮捕された場合の対応について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

逮捕されてしまうと、本人もご家族も頭の中が真っ白になってしまうことも多いでしょう。

人生で初めての出来事であるケースが大半ですから、仕方ありません。

そのようなときに、「少しでも早く刑事事件を熱心に取り扱っている弁護士に相談しなければ」と思い出してもらえれば幸いです。

 

 


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