酒を飲んで暴力をふるってしまった。罪に問われますか?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・3級ファイナンシャルプランナー

犯罪が成立する要件

犯罪が成立するためには、①構成要件に該当し、②違法で、③有責な行為であることが必要です。

お酒を飲みすぎて記憶がない場合、そもそも本当に暴行に及んだ犯人が相談者様なのかという①の問題と、実は相手が殴りかかってきたから反撃したに過ぎないのではないかという②の問題と、暴行時には病的酩酊状態にあって責任無能力だったのではないかという③の問題があります。

①構成要件に該当するかどうか

①の問題についてですが、相談者様はどのように逮捕されたのでしょうか。

現行犯逮捕されたという場合もあれば、後日、家に警察官が来て令状を見せられた上で逮捕されたという場合もあるでしょう。

いずれにせよ、「お酒を飲みすぎて覚えていない」という主張を続けるのみでは、裁判所や検察官、警察官は、相談者様は犯人でないとは考えません。

警察官は、あなたが犯人であるということを示す様々な証拠を手にしています。それは防犯カメラであったり目撃者の供述であったり、被害者の供述であったりします。

自分は犯人ではないという主張をするのであれば、主張に説得力を持たせるために記憶を呼び起こさなければなりません。

なお、犯人であることを争うつもりがない場合であっても、記憶を呼び起こす努力をすることは重要です。

「覚えてないけど、自分がやったんだと思います。反省します。」という態度では、反省しているとは周りに信じてもらえません。

自分が犯した犯罪行為から目を背けていると考えられてしまうでしょう。

②違法かどうか

②についても、記憶がない状態では、正当防衛の主張をしてもそれが通ることはほぼありません

通るとすれば、目撃者がそのような供述をしているようなケースでしょう。

③有責な行為であるかどうか

③についてですが、「記憶がない」ことと「責任能力がない」ことは、イコールではありません。

記憶がないというのは、現在の状態ですが、責任能力の判断基準は、犯行時です。

犯行時、しっかりと二本足で立ち、何らかの要因で殴ろうという気持ちを生じさせ、力強く被害者に暴行を加えたのであれば、その時には責任能力はあった。

現在記憶がないのは「単なる健忘症状」と見られてしまいます。

 

 

 

飲酒で記憶がない場合

では 、犯行がなされた時間は酒に酔っており 、当時の記憶がない中で疑いをかけられている場合 、どう対処すべきでしょうか。

こうした場合 、安易に 、「そのとおりで間違いありません」などの供述をしないよう注意が必要です

なぜなら 、①あなたが暴行した事実が真実ではない可能性 、②暴行をしたのは事実であるが正当防衛である可能性 、③暴行態様が真実を越えた悪質なものとなっている可能性があるからです。

これらの事実が存在する場合 、犯罪の成否に大きな影響を及ぼしうるため 、取調べにも慎重に対応する必要があります。

まずは 、捜査機関に対し 、「当時の記憶がない」ということをしっかりと伝える必要があります。

もっとも 、記憶がないと発言をし続けても 、刑事事件において有利にはならないケースが多いといえます。

あなたの記憶がない以上 、被害者の供述に信用性が認められることが多く 、また記憶がないと言い続ける供述態度から 、反省していないとみなされて重い刑罰を科されかねません。

また 、供述態度を被害者が知ってしまった場合 、被害者の怒りはさらに増大し 、示談を成立させることも困難になる可能性があります。

 

 

逮捕を回避するためには?

逮捕を回避するためには 、逃亡したり 、証拠隠滅を図ったりする可能性がないということを 、捜査機関に理解してもらう必要があります。

ですが 、取調べにおいて当時の記憶がないと供述していると 、真摯に取調べを受ける気がないとみなされ 、身体拘束を受けるリスクが増大する可能性があります。

もちろん 、記憶がないことについてまで安易に認めてしまうと 、後々になって不利な状況に追い込まれてしまうこともあり得ますので 、取調べでの供述には注意しなければなりません。

ですが 、「記憶がない」という供述を貫く場合でも 、取調べにはきちんと応じ 、関係者とは一切接触しないことを誓約することで 、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを伝えるようにしましょう。

万一身体拘束を受けてしまった場合 、刑事事件に注力する弁護士に早期に依頼をすることで 、早期の解放に向けて迅速に対応し 、早い段階での釈放を実現できる可能性があります。

まとめ

要するに、「記憶がない」という主張をすれば許されるのではないかという発想は、間違いです。

デメリットこそあれ、メリットは何ら認められません。本当に記憶がないこともあるでしょうが、可能な限り、記憶を呼び起こせるように努力しましょう。

当事務所では、事案の真相解明、そして依頼者様の更生のために、全力を尽くします。まずは当事務所にお気軽にご相談ください。


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