暴行事件の示談とは?【弁護士が解説】
暴行事件の示談とは、犯人(加害者)と被害者との間で行う和解をいいます。
加害者が被害者に対して一定の金銭(示談金)を支払い、その代わりに、被害者は加害者に対して他の請求権を放棄し、かつ、刑事処罰を求めないことを確約してもらいます。
暴行とは
行罪における「暴行」とは、人の身体に向けられた有形力の行使と定義されています。
すなわち、人に向けられていれば成立するため、物理的な接触は必ずしも必要ではありません。
なお、暴行の結果、相手方が怪我(生理機能の障害)をすれば、より重い傷害罪に該当します。
示談とは
示談とは、紛争当事者が一定の条件で和解することをいいます。
暴行の事案においては、暴行の犯人(加害者)と被害者の方との間で、加害者が被害者に対して一定の金銭を支払い、被害者の方は加害者に対して他の請求権を放棄し、当事者間の紛争を解決するというイメージです。
暴行の慰謝料の相場
暴行は、傷害罪と比べると、怪我がない分、比較的軽微な犯罪です。
すなわち、傷害罪の場合は、相手に後遺症が残る場合があり、逸失利益などの損害も加わって賠償額が高額化することがあります。
しかし、暴行罪の場合は、相手の精神的苦痛、すなわち、慰謝料の額のみが問題となることがほとんどのため、示談金も傷害罪の場合ほどは高額化しません。
通常の場合、数十万円程度が相場と思われます。
もっとも、示談は被害者の同意がなければ成立しません。
したがって、被害者から相場を上回る額を請求され、かつ、加害者が早期解決を希望するのであれば、100万円を超える示談となるケースも想定されます。
一般的に次のような状況があれば、暴行罪の示談金の増減要素となります。
暴行事件の示談におけるメリット
加害者側のメリット
不起訴の可能性が高い
暴行を行った加害者が示談をするメリットは、刑事処分を回避できる点にあります。
すなわち、刑事裁判を提起するのは検察官ですが、検察官は被害者の処罰感情を重視しています。
示談が成立し、被害者が刑事処罰を望んでいないのであれば、わざわざ暴行犯を起訴する必要性が乏しくなるのです。
被害者側のメリット
裁判をせずに損害を回復できる
暴行の被害者が示談をするメリットとしては、民事裁判を起こさずに損害を回復できるという点です。
加害者に慰謝料を請求しても、加害者から拒否をされると、民事訴訟を提起しなければ、法的な強制力をもたせることはできません。
民事訴訟を起こすと、通常、判決が確定するまでに長年月を要します。
また、弁護士の費用も高額になる傾向です。
示談交渉は、間に弁護士を入れることで、裁判と比べて比較的短期間に、合意を締結して被害を回復させることが可能となります。
暴行の示談のポイント
POINT① 賠償金の相場を知る
示談交渉の前提として、まず、賠償金の相場を知ることが重要です。
電卓とお金例えば、賠償金として100万円程度が妥当なケースにおいて、10万円程度で示談しようとしても相手が応じてくれる可能性は低いでしょう。
反対に、賠償金として10万円程度が妥当なケースにおいて、100万円の示談は法外といえます。
したがって、適切な賠償金の見通しを立てることがポイントとなります。
賠償金の適切な額は、具体的なケースによって異なるため一概にはいえません。
過去の裁判例についての専門知識のほか、示談交渉についての豊富な経験が必要と考えられますので、刑事事件の専門家にご相談されることをお勧めいたします。
POINT② 加害者側は弁護士に交渉してもらう
刑事事件の示談の特徴として、被害者は加害者に対して、恐怖心や憎悪を抱いているケースが多く見受けられます。
そのため、加害者本人が示談の話をしようとしても、そもそも交渉のテーブルについてくれない可能性が高いと思われます。
仮に交渉のテーブルについてくれたとしても、感情的になってしまい、冷静な話し合いにならない可能性もあります。
そのため、特に、加害者側には代理人である弁護士が必要となります。
被害者に関しては、弁護士の要否は状況によりますが、示談金の額が適切かな否か等について、少なくともご相談されることをお勧めいたします。
POINT③ 示談書を作成する
示談は、加害者にとっても、被害者にとっても、紛争を解決し、今後安心して生活できる状態を作ることが目的です。
そのためには、法的な拘束力のある示談書の作成が必要不可欠です。
示談書には示談金の金額と支払い方法を明記し、被害届の取り下げや、今後刑事告訴をしない、といった条項を入れることがポイントとなります。
そのため、できるだけ専門家に適切な内容の示談書を作成してもらうことをお勧めいたします。
なお、当事務所では、暴行の示談書の書式をホームページ上で公開しており、無料でダウンロードが可能です。
まとめ
以上、暴行の事案における示談について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
示談交渉では、まず、具体的な事案における適切な賠償額を算出することがポイントとなります。
その上で、冷静に示談交渉をすすめるために、加害者には代理人弁護士がついたほうが望ましいでしょう。
また、適切な内容の示談書を作成することが重要です。
そのため、できるだけ刑事事件を専門とし、示談交渉の経験が豊富な弁護士にご相談されるようにしてください。
この記事が刑事事件でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。