暴行罪の慰謝料・示談金の相場は?弁護士が詳しく解説!

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  


暴行罪の慰謝料・示談金の相場は、多くの場合、10万円から30万円程度となる傾向です。

もっとも、具体的な状況によって金額は大きく異なるため注意が必要です。

このページでは、そもそも暴行罪とはどのような犯罪なのか解説した上、暴行罪の慰謝料・示談金の内容やその適正額等相場について、弁護士が詳しく解説していきます。

暴行罪でお悩みの方の参考になれば幸いです。

暴行罪とは?

暴行罪とは、相手に対し、つかみかかったり突き飛ばしたりするなどして、相手が怪我しない程度の暴力を振るった場合に成立する罪です。

刑法は、暴行罪を次のように定めています。

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

引用元:刑法|電子政府の総合窓口

以下では、この条文を読み解きながら、暴行罪の正確な意味をお伝えしたいと思います。

なお、暴行事件を起こしてしまい、弁護士への依頼を考えておられる方は、こちらもご覧ください。

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暴行について

 

暴行罪になる行為

「暴行」とは、「人の身体に対する不法な有形力の行使」であるとされます。

「殴る蹴る」のような暴力行為をイメージされるかもしれませんが、「有形力の行使」とはそれにとどまらず、物理的な力をもって働きかけることを広く指します。

たとえば、ちょっと相手を突き飛ばしたり胸ぐらをつかんだりしただけでも、相手に物理的な力が行使されているといえます。

このような典型例以外にも、水をかけたり、つばを吐きかけたりするような行為も、やはり物理的な力の行使といえるでしょう。

程度問題という側面もありますので、これらの行為が常に検挙されるわけではありませんが、刑法上は物理的な力を行使していれば「暴行」に当たると考えることになります。

なお、相手に石を投げたが当たらなかった場合や、殴りかかったが避けられたという場合にも、暴行罪は成立します。

相手自身は直接には物理的な力を受けてはいませんが、相手に対してそのような力を「行使」したことには変わりはないからです。

 

暴行罪の刑罰

暴行罪の刑罰は、「二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」とされています。

「拘留」と「科料」は、それぞれ懲役と罰金の軽微なもののことですから、罰則としては、「二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金」と考えていただければ十分です。

 

暴行と傷害の違い

刑法208条は、「人を傷害するに至らなかったとき」という要件を定めています。

これは、人に傷害が生じた場合は、より重い傷害罪(刑法204条)で処罰されるためです。

「傷害」とは、人の生理的機能を侵害することとされ、怪我だけでなく病気も含まれます

たとえば、汚水の中に突き落とした結果、怪我はないものの細菌に感染したような場合も、生理的機能が侵害されているといえ、傷害罪となります。

「障害」ではありませんので、後遺障害が残るような重大な怪我だけを指しているわけではないことに注意してください。

こちらもやはり程度問題であり、怪我があまりにも軽微なときには、傷害には至らないとして暴行罪とされる余地もあるとはいえます。

しかし実務上は、被害者が怪我を負っていれば相当軽微なものでも傷害罪で立件されている印象もあり、基本的には程度が軽微でも傷害罪になると考えておく方がよいように思います。

 

 

暴行罪の慰謝料・示談金の相場は?

暴行事件を起こしたら、慰謝料や示談金はどのくらいになるのでしょうか。

またそもそも、慰謝料と示談金はどう違うのでしょうか。

以下でこれらを解説します。

暴行の示談金(慰謝料含む)の相場

暴行罪の示談金の相場は、多くの場合10万円から30万円程度となる傾向です。

ただし、刑事事件の示談金の額は事案の性質によって変わるため注意が必要です。

暴行と一口に言っても、悪質性が低いものから高いものまで様々なケースが考えられます。

また、暴行に際して、被害者の物(洋服やアクセサリーなど)が破損した場合、示談金は高額化するでしょう。

ワンポイント:示談金の決まり方

示談金については、事案の性質のほか、当事者双方の思惑によって左右されることがあります。

例えば、本来は10万円が相場の事案でも、被害者が高額な示談金(100万円など)を要求してきたとします。

一般的な経済状態にある加害者の場合、軽微な暴行に対して100万円を超えるような解決金を要求されたとしても、なかなか支払いは難しいと思われます。

しかし、加害者が富裕層で、早く事件を解決したいと考えている場合は、この相場を超える要求に応じることもあるでしょう。

このようなことから、示談金の相場はあくまで参考程度であり、状況によって示談金の額は異なると考えておいたほうが良いでしょう。

 

慰謝料と示談金の意味・関係性

慰謝料も示談金も、被害者に対して償いの意味で支払う金銭という点では共通しています。

おおまかにいえば、最終的に支払うトータルのお金を指して「示談金」と呼び、その内訳のひとつに「慰謝料」が含まれる、といった関係にあります。

 

物的損害

暴行によって物的損害が生じた場合、これを賠償する必要があります。

たとえば、石を投げて相手には当たらなかったが、相手の車に当たって傷がついた場合の修理代や、相手を水たまりに突き飛ばして衣服が汚れた場合のクリーニング代などがこれにあたります。

 

精神的損害(慰謝料)

精神的苦痛に対する損害賠償のことを、慰謝料といいます。

暴行によって被害者は痛い思い、嫌な思いをするわけですが、物的損害の場合と異なり、金銭を支払ったとしても、これらの不快な感情が消えてなくなるわけではありません。

しかしこのような無形の損害についても、時を巻き戻してなかったことにすることができない以上、金銭の支払いによって解決するしかないのです(民法710条参照)。

 

その他の給付(和解金、解決金等)

以上の損害賠償に加え、和解金や解決金など名目は様々ですが、別途金銭を交付することがあります。

たとえば、被害者の処罰感情が厳しくなかなか示談に応じてもらえない一方、加害者の側ではいくらか多く払うことになってもいいから、どうしても示談したい。

このような事情がある場合などに、和解金・解決金等を上乗せすることで、示談をまとめることがあります。

示談は被害者と加害者の合意によって成立しますので、被害者が納得するのであれば、和解金や解決金を支払う必要はありません。

また、解決金の代わりに慰謝料を多めに見積もることで調整することもあります。

このように、示談金は、慰謝料のほかに、物的損害やその他の給付を含めた概念と言えます。

示談金の概念の図

なお、実務上は、特に上記の内訳を気にすることなく、単に「示談金」としてその額を交渉することも多くあります

 

傷害の場合は示談金が高額になる可能性も

以上は暴行罪の場合の示談金の説明ですが、これが傷害罪の場合、示談金がより高額になる可能性があります。

傷害罪が成立するということは、被害者は怪我を負っており、治療に要した費用は損害として加害者が全額賠償するのが原則です。

怪我の程度は様々ですが、治療費が高額になればなるほど、賠償金も高額になります。

同じく慰謝料についても、怪我が重ければ重いほど被害者の被った精神的苦痛も強いと考えられ、怪我の程度がひどければ数百万円、あるいは1千万円を超えることもないとはいえません

 

 

暴行罪で示談する際の3つのポイント!

暴行罪で示談する際のポイントは次のとおりです。

暴行罪で示談する際の3つのポイント

迅速な初動

示談の手続きは、スピード感をもって進めることが重要です。

示談を成立させることは、相手方との関係では紛争を終結させるためのものですが、捜査との関係では、反省を示し被害が償われていることを明らかにするという意味をもちます。

そのような事情があれば、処分を決める上で有利に考慮されることが通常です。

特に、軽微な事案が多いと考えられる暴行罪では、被害者と示談が成立していれば不起訴処分で終わることも期待できます

ですので、もし示談する意思があるのであれば、検察官が起訴の判断をくだす前に成立するよう、迅速に取りかかることが重要となってきます。

 

丁寧な交渉

示談は、被害者に納得いただいてはじめて成立するものです。

暴行を受けた被害者が加害者に対して厳しい姿勢で臨むのは当然であって、交渉の仕方を誤れば、かえって被害感情を逆なですることにもなりかねません

また、被害者の連絡先がわからないこともあるでしょうし、逮捕されていて自分では身動きがとれないというケースもあるでしょう。

交渉のプロである弁護士であれば、被害者側の感情に配慮して丁寧に交渉を進めることができます。

連絡先についても、相手方の了承が得られれば、示談の意向を伝えて捜査機関から提供してもらうことも可能です。

 

適切な内容・形式

示談を成立させる上では、示談が内容面でも形式面でも適切であることが大切です。

内容面

示談の条項で特に重要なものをあげれば、金額と被害者の宥恕(ゆうじょ)です。

示談金の相場については目安としてお示ししましたが、あくまで目安ですので、実際の事例においてどのくらいの金額が適切なのかとなると、なかなか判断が難しいかもしれません。

金額の妥当性について迷われる場合は、弁護士にご相談されるとよいでしょう。

また、宥恕(ゆうじょ)とは耳慣れない言葉ですが、簡単にいえば、「許し」のことです。

示談として有効であるためには、「加害者の謝罪を受け入れて許します」という被害者の意思が適切に表現されている必要があります

 

形式面

示談の形式面としては、示談書を適切に作成することが重要です。

法的な理屈の上では、当事者の合意があれば、示談書を作成せずとも示談は有効に成立します。

しかし紛争を終局的に解決し後日に争いの火種を残さない、また捜査機関に示談成立の事実を客観的に提示するといった観点からは、示談書の作成は必須といえます。

示談書は法律文書の一種ですので、作成は弁護士に依頼されるのがよいでしょう。

以上、暴行罪で示談する際のポイントを3つご紹介しました。

刑事事件の処理経験が豊富な弁護士に依頼することで、これらのポイントを網羅的に押さえて示談を進めることが期待できます。

暴行罪の示談の流れについて詳しくお知りになりたい場合は、こちらをご覧ください。

 

 

暴行を受けた際に被害者側が取るべき行動は?

ここまで、暴行事件を起こした場合の示談の重要性や、気をつけるべきポイントについて解説してきました。

他方、もし暴行の被害者となった場合、どのように示談を進めていけばよいでしょうか。

被害者側の場合、加害者に示談の意向があるかどうかによって、対応方針が変わってきます。

加害者に示談の意向がある場合、基本的には相手からの連絡を待つ形となります。

相互に連絡先を知らない場合、検察官などから「加害者の弁護士が示談したいそうだが、連絡先を教えてもよいか」といった確認が来ると思われますので、承諾していただければ、以後弁護士との交渉となります。

被害者側の場合、必ずしも弁護士に依頼する必要はありません

加害者の提案する示談の意味内容を理解し、納得できたということであれば、そのまま示談に応じてしまってかまいません。

逆に、弁護士を相手に自分で交渉することに不安があるとか、示談書の解釈に自信が持てずその内容で合意していいのか判断がつかないといった場合には、弁護士にご相談なさることをお勧めします。

他方、加害者側に示談の意向がない場合、被害者側からアクションを起こしていく必要があり、具体的には、民事訴訟を起こして損害賠償を請求することになります。

また、加害者が示談の意思を有しているといないとにかかわらず、いずれの場合でも、警察に被害届を提出して被害の存在を明らかにしておくとよいでしょう。

 

 

まとめ

  • 暴行とは身体に対する不法な有形力の行使であり、怪我の有無によって傷害罪と区別される。
  • 暴行罪の示談金の相場は、多くの場合10万円から30万円程度となる傾向にある。
  • 被害者側でも加害者側でも、示談の成立に向け心配があるときは、早期に弁護士に相談することが重要。

 

 


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