偽計業務妨害、威力業務妨害とは【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

業務妨害とは

業務妨害罪とは、刑法第35章の信用及び業務に対する罪に規定されている犯罪であり、偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪、電子計算破壊等業務妨害罪の3つがあります。

これらの行為の内容、法定刑、未遂の処罰の有無をまとめると下表のとおりとなります。

罪名 偽計業務妨害罪 威力業務妨害罪
行為 偽計を用いて、人の業務を妨害する行為 威力を用いて、人の業務を妨害する行為
法定刑 3年以下の懲役
又は
50万円以下の罰金
3年以下の懲役
又は
50万円以下の罰金
未遂 罰しない 罰しない
罪名 電子計算破壊等業務妨害罪
行為 電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害する行為
法定刑 3年以下の懲役
又は
100万円以下の罰金
未遂 罰する

 

以下、特にご相談が多い、偽計業務妨害と威力業務妨害について、詳しく解説します。

 

偽計業務妨害

嘘をつく男性のイメージ画像偽計業務妨害とは、他人の不知や錯誤を利用する意図を持って錯誤を生じさせる手段(偽計)を施すことによって、人の業務を妨害することをいいます。

例えば、真実は怪我人など誰もいないのに、公衆電話から119番通報をし、「〇〇駅付近で人が倒れています。」と虚偽の通報をする行為、真実は購入する気がないのに、出前のピザ屋などに他人名義で商品を大量に注文する行為などが挙げられます。

救急隊、飲食店経営者が実際に業務を妨害されたかどうかは問われません。

刑法第233条には、「・・・偽計を用いて、・・・その業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。

偽計業務妨害について詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

新型コロナ感染を装う行為

逮捕2020年6月6日、新型コロナウィルスに感染しているかのような発言をして、警察官の業務を妨げた行為について、福岡県警(糸島署)は、糸島市内に住む男性を逮捕しました。

報道によれば、糸島市の路上で交通違反の切符を交付しようとした警察官に対し、「今から病院でPCR検査を受けなくてはならない。」「6日くらい前からずっと熱がある。」などと発言したというものです。

糸島署では、念のために対応した警察官二人を隔離し、パトカーを消毒する等の対応を余儀なくされました。

このように、感染症を装って、人の業務を妨害した場合、偽計業務妨害罪の成立の可能性があります。

 

 

威力業務妨害

威力業務妨害とは、一般に人の意思を圧迫するに足る有形無形の勢力を利用して、人の業務を妨害することをいいます。

例えば、インターネット上に、「来週、〇〇駅で大量殺人事件を起こします。」と書き込む行為や、飲食店で店員を恫喝したり他の客にけんかを売ったりする行為などが挙げられます。

これも実際に業務が妨害されたかどうかは問われません。

刑法第234条には、「威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。」とあります。

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されるということです。

なお、似た犯罪として、公務執行妨害罪があります。

これは公務員に対して、暴行や脅迫を加える犯罪です。



 

 

弁護方針

偽計業務妨害、威力業務妨害を認める場合

偽計業務妨害、威力業務妨害が警察に発覚した場合、悪質性の程度にもよりますが、逮捕される可能性があります。

逮捕は最大3日間続き、勾留されるとその後最大20日間身体拘束を受けることになります。

起訴までの流れの解説

偽計業務妨害、威力業務妨害を認める場合、逮捕後、早期に釈放してもらうこと、勾留されないこと、不起訴処分を得ることが目標となります。

偽計業務妨害、威力業務妨害は、相手が私人、私企業である場合には、示談交渉が可能です。

その場合、示談が成立しているかどうかが釈放や不起訴処分を手にするために重要となります。

相手が公務員である場合には、示談交渉は不可能ですので、被疑者が真摯に反省し更生の意欲を示していることを警察官・検察官に理解してもらうことが重要です。

いずれにせよ、選任された弁護士が、迅速に弁護活動を開始し、示談交渉等を粘り強く行うことが重要になります。

 

偽計業務妨害、威力業務妨害を認めない場合

偽計業務妨害、威力業務妨害を行っていないのに逮捕されてしまった場合には、被疑者が犯人ではないことを示す証拠を早急にかつ豊富に収集し、警察官・検察官に提出し、強く抗議する必要があります。

証拠の収集は、弁護士の技能と熱意に大きく左右されますから、刑事事件に特化した弁護士を選任することが重要となります。

まずは当事務所にお気軽にご相談ください。

 

 



なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか

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