傷害事件の示談|示談金の相場や流れを弁護士が解説【示談書雛形付】
傷害事件の示談金の相場
全治1週間の傷害の場合
全治1週間までの怪我を負わせてしまった場合、怪我の程度は比較的軽度であるといえます。
後遺症が残る可能性も低いと考えられますので、この点はあまり気にされる必要はないでしょう。
全治1週間程度の軽傷であれば、民事裁判により認められる慰謝料は、おおよそ数万円程度となると考えられます。
また、治療費に関してもそれほど高額なものとはならない可能性が高く、休業補償もそもそも発生しないか、発生したとしても低額にとどまると考えられます。
そのため、トータルの示談金は、おおよそ10万円前後となる可能性が高いでしょう。
全治2週間の傷害の場合
全治2週間程度の怪我を負わせてしまった場合は、もう少し示談金が高額になる可能性が高まります。
検察官が起訴・不起訴の判断を行うに際しても、全治2週間を越えるかどうかが、怪我の重さに関する一つの目安になるようです。
全治2週間程度の怪我の場合、民事裁判により認められる慰謝料は、おおよそ10万円程度となると考えられます。
全治2週間を超えてくる場合、十分な治療を受けるために仕事を休まなければならなくなる可能性が生じます。
そうなった場合、休業損害についても示談金の算定の際に考慮しなければなりません。
トータルの示談金は、慰謝料20〜40万円前後となるでしょう。
全治1ヶ月の傷害の場合
通院1ヶ月程度の骨折を伴わない怪我の場合、民事裁判により認められる慰謝料は、おおよそ20万円程度となります。
全治1ヶ月と診断されるほどの怪我であれば、治療費は比較的高額になりますし、休業期間も長くなる場合が多いでしょう。
この場合の示談金は、治療費や休業補償なども含め、50〜100万円程度となる可能性があります。
なお、場合によっては入院が必要となる可能性もあり、その場合は慰謝料、治療費、休業損害などがさらに上がることになるでしょう。
また、後遺症が残るケースもあり、その場合は逸失利益なども算定に含めなければなりませんので、示談金はさらに高額となります。
骨折の場合
上記に加え、被害者を骨折させてしまった場合はどうなるのでしょうか。
通院1ヶ月程度の骨折を伴う怪我の場合、民事裁判により認められる慰謝料は、おおよそ30万円程度となります。
他方、治療期間は骨折を伴わない怪我と比べるとさらに長くなることが見込まれますので、治療費も高額になります。
骨折箇所や骨折の程度によっては、全く仕事に行けない期間も生じるでしょうから、休業損害も高額になる可能性がありますし、後遺症が残った場合、逸失利益も算定に含めなければならなくなることもあり得ます。
そのため、示談金の総額は、100万円を越えることも珍しくありません。
傷害事件の示談のメリット
早期に示談交渉を開始することには、以下のようなメリットがあります。
不起訴を獲得できる可能性
上述のとおり、起訴される前に示談が成立していれば、不起訴処分となる可能性が高まります。
執行猶予が付く可能性
では 、仮に起訴されるまでに示談が成立せず 、正式に刑事裁判となることが確定してしまったら 、示談交渉は無意味なものとなるのでしょうか。
結論から申し上げますと 、示談を成立させる意味が全くなくなってしまうわけではありません。
罪を犯し 、起訴されてしまった以上 、残念ながら有罪判決を回避することは難しくなったといえます。
傷害罪の法定刑は 、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。
罰金刑にとどまる場合もあれば 、実刑判決がなされる可能性もあり 、刑の幅は広いといえるでしょう。
被害者の怪我の程度が重大であれば 、場合によっては初犯であっても実刑判決が下される可能性もあります。
しかし 、示談が成立していれば 、本来なら実刑判決がなされ得る事案であっても 、執行猶予がつく可能性を高めることができます。
また 、もともと執行猶予付判決が見込まれるような事案であれば 、刑期や執行猶予の期間を短縮させることができるかもしれません。
このように 、起訴された後の示談成立も 、十分に意味はあるといえます。
もっとも 、起訴されてしまえばほぼ確実に有罪判決がなされ 、前科がつくことになってしまいます。
前科がつくことを避けるためには 、やはり起訴前に示談を成立させることが何より重要です。
逮捕・勾留される事件では 、1ヶ月以内で起訴されることになります。
在宅事件であっても 、長くとも数ヶ月程度で起訴されるケースが多いといえます。
起訴前の示談を目指すためには 、できる限り早い段階で示談交渉を開始すべきです。
傷害事件の示談の流れ
示談交渉は 、以下のような流れで進めていくことになります。
被害者の連絡先は 、捜査機関が把握していますが 、加害者に対して警察が被害者の連絡先を教えることはありません。
ですが 、弁護人を選任しておけば 、加害者には連絡先を教えないことを条件に 、弁護人限りで連絡先を教えてもらえる可能性があります。
弁護人が連絡先を把握し次第 、直ちに被害者に連絡を取り 、被害者に謝罪をした上で 、示談交渉を開始します。
示談が成立すれば 、弁護人が示談書を作成し 、被害者の署名・押印をもらい 、捜査機関に示談書を提出することになります。
傷害事件の示談書の書き方
オーソドックスな示談書の書式はこのようになりますので 、ご参照ください。
実際には 、被害者の方が「こんな条件を入れてほしい」などといった希望をお持ちのこともあります。
そうした希望を示談書に記載することにより 、法的にどのような効力が生じるか 、法的に有効な形で示談書にどう反映していくか 、という点については 、慎重に検討していく必要があります。
示談金を払えない場合
上記のとおり 、事案によっては傷害の被害者に支払う示談金が高額になる可能性があります。
一括での対応が困難な場合もあるでしょう。
そのような場合 、示談交渉の中で 、分割での支払いをさせてもらえないか 、被害者に交渉することもあり得ます。
ですが 、多くの場合 、被害者は分割での支払いに難色を示されます。
分割にしてしまうと 、定期的に事件のことを思い出す機会が生じてしまう他 、加害者が確実に示談金を支払ってくれるかどうか不安を抱えながら過ごしていくことになり 、精神的な負担が増えてしまうからです。
自分一人での示談金の用意が難しければ 、親族などに援助してもらうことも検討すべきです。
まとめ
示談が成立すれば 、不起訴・執行猶予の可能性を高めることができます。
しかし 、100パーセント不起訴になったり 、執行猶予がついたりするとは言い切れません。
同種の前科前歴が多数ある場合や 、多数人で一人に暴行を加えた・凶器を使ったなど 、犯行態様が悪質であり 、再犯防止の観点から不起訴とすることに問題がある場合 、本人の反省が認められない場合などには 、起訴され 、あるいは実刑判決が下される場合があります。
なぜ相手が怪我するほどの暴行を加えてしまったのか 、被害者が今どのような気持ちか 、どのような被害を生じさせてしまったか 、今後同様の被害者を生まないためにどのように過ごしていくべきか 、様々なことに思いをめぐらせ 、反省を深めていかなければなりません。
傷害事件を起こしてしまいお困りの方は 、刑事事件に注力する弁護士にぜひご相談ください。