国選弁護士が連絡しない、何もしない、どうすれば?【弁護士解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

『国選弁護士が連絡してくれない』

『国選弁護士が接見に来ない』

『国選弁護士を解任できないの?』

 

 

弁護士の回答

国選弁護士の対応が悪いときは率直に不満を伝えてみてはいかがでしょうか。

状況によっては私選弁護士への変更を検討してもよいでしょう。

 

国選弁護士とは

国選弁護人制度とは、刑事事件において、資力が乏しく私選弁護人を選任できない被疑者・被告人のために、国(裁判所、裁判官)が弁護士を選任し、その費用も国が原則負担するという制度のことです。

この制度によって選任された弁護士を国選弁護士といいます。

国選弁護士を選任できる、「資力が乏しい」という要件ですが、資産(現金や預貯金等)の合計額が50万円未満の場合をいいます。

しかし、この判断は、被疑者の自己申告書によって行われているので、実務上、貧困状態にあるとまで言えない被疑者であっても国選弁護士が選任されている可能性があります。

 

 

国選弁護士の問題点

刑事事件を専門としているわけではない

刑事裁判において有利な結果を獲得するために、専門性が高い弁護士をつけることはとても重要です。

しかし、国選弁護士の多くは、刑事弁護を専門とはしていません。

なぜなら、国選弁護に登録している弁護士は、専門性や経験年数にかかわらず、多くの弁護士が登録しているからです。

福岡県の場合、国選弁護制度発祥の地であり、弁護士会も国選弁護登録に力を入れています。

そのため、弁護士登録直後の若手の弁護士のほとんどが国選弁護士に登録しています。

また、年配の弁護士もいますが、刑事専門だからではなく、ボランティア的に登録していることが多いと思われます。

そもそも、福岡では、専門分野をもつ弁護士は少なく、幅広く対応しているのが多い現状です。

刑事事件を専門とする弁護士は全国的に見ても、決して多くありません。

また、国選弁護士は若手で経験が浅い弁護士も多くいることから、刑事事件を専門とする経験豊富な弁護士にあたることは確率的には低いといえるでしょう。

 

サービスの質の問題

 

国選弁護士は、貧困状態にある被疑者・被告人であっても、弁護士による刑事弁護を保障するものであり、制度として必要なものです。

しかし、国選弁護士の費用は、国が負担し、その額も私選の場合と比べて、一般に低額です。

他方、弁護士は公務員ではなく、事務所を経営するために、ある程度の採算性を気にしなければなりません。

したがって、一つの案件に対応できる時間には限度があります。

弁護士の報酬が低い国選事件には、それほど多くの時間を掛けることができないのが実情なのです。

もちろん、弁護士の中には、社会奉仕の精神から、ボランティアとして国選事件に取り組む方もいます。

しかし、まったく採算を度外視して一つの事件に多くの時間と労力を費やすのは限界があると考えられます。

そのため、国選弁護士の場合、「あまり接見に来てくれない」「家族に連絡してくれない」「弁護活動を一生懸命してくれない」「示談交渉してくれない」などの不満が出ることがあります。

 

逮捕段階でつけることができない

刑事弁護は、スピードが勝負です。起訴されると99%以上が有罪となるため、不起訴を獲得することが重要です。

そのためには、逮捕段階から迅速に弁護活動を開始する必要があります。

また、被害者がいる犯罪では、捜査段階から示談交渉をすることが重要です。

国選弁護制度は、勾留段階からが対象となります。

そのため、捜査段階では国選弁護士をつけることはできず、弁護活動の開始が著しく遅れてしまうこととなります。

 

国選弁護士の解任は自由にできない

国選弁護士の場合、その対応にいくら不満があっても、他の国選弁護士に変更することは原則として認められていません。

国選弁護士を解任できるのは、以下の5つも場合に限定されています(刑訴法38条の3)。

  1. 私選弁護人を選任した場合
  2. 利益が相反する場合
  3. 弁護士が重病になるなどやむを得ない場合
  4. 弁護士の著しい任務違反があった場合
  5. 弁護士に暴行や脅迫を加えた場合

 

根拠条文

第三十八条の三 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。
一 第三十条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなったとき。
二 被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
三 心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となったとき。
四 弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
五 弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。

引用元:刑事訴訟法|電子政府の総合窓口

 

 

国選弁護士の対応が悪いときのポイント

 

上記の国選弁護制度の問題点を踏まえて、国選弁護士の対応が悪いときのポイントについて解説いたします。

不満等を伝えてみる

弁護士は、多くの事件を抱えているのが通常です。

そのため、1つの案件に対応できる時間には限度があります。

しかし、多くの弁護士は、クライアントの声には耳を傾けてくれると思います。

現在の国選弁護士に対して不満や不信感がある場合、そのことを率直に伝えてみてはいかがでしょうか。

不満の原因の多くは、コミュニケーション不足にあります。

そのため、「接見に来てほしい」「不起訴のための戦略を提案してほしい」「どのような弁護活動を行ってくれるのか」「なぜ示談交渉してくれないのか」などを担当の国選弁護士に伝えてみましょう。

弁護士の考えなどを聞くことで、不満や不信感を解消できる可能性があります。

 

家族が弁護士を探す

初回の接見は重要であり、迅速な刑事事件に対するアドバイスが求められます。

しかし、本人が逮捕されている場合、刑事弁護士に相談したくても、直接相談に行くことができません。

このような場合、ご家族が本人に代わって弁護士に連絡して、当該弁護士に接見に行ってもらうという方法があります。

弁護士は、接見について基本的に自由にできるため、早期の弁護活動が可能となると思われます。

 

私選への変更を検討する

現在の国選弁護士との関係がうまく行かず、不信感等を伝えても改善しない場合、私選への変更について検討してもよいでしょう。

刑事処分は、本人の一生を左右する可能性があります。

信頼関係を築けない国選弁護士よりも、信頼できる私選弁護人の方が後悔は残らないと思われます。

 

 

 

まとめ

以上、国選弁護士の対応が悪い場合の対処方法等について解説しましたがいかがだったでしょうか。

刑事事件の弁護士は、容疑者の方の一生を左右するほどの重大な影響を及ぼします。

そのため、国選弁護士と私選弁護士のメリットとデメリットを比較して、悔いが残らないようにすべきです。

国選弁護士と私選弁護士との選択で迷ったら、まずは相談だけでもされることをお勧めいたします。

刑事事件に強い法律事務所で実際に法律相談をされてみて、信頼できそうであれば依頼をするとよいでしょう。

 

 


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