器物損壊で逮捕、どうなりますか?【弁護士が事例で解説】
罪名 | 器物損壊(現住建造物放火) |
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解決までの期間 | 3ヶ月 |
弁護活動の結果 | 執行猶予付き判決 |
Rさん(20代)
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
目次
ストレス発散で酒を飲みすぎ放火してしまったRさん
Rさんは、大学を卒業し社会人1年目でした。
就職先でのストレスから、お酒を飲みすぎ、ストレス発散として自宅近所のファミレスの駐輪場においてあった自転車に火をつけました。
火は大きく燃え上がったものの、ファミレス客により消し止められました。
Rさんは、その日は逮捕されなかったものの、3ヵ月後、防犯カメラの映像等から犯人として割り出され、逮捕されるに至りました。
Rさんの両親が、息子のことを心配に思い、当事務所に相談に来られました。
建造物等以外放火の可能性から執行猶予付判決を獲得
まずは、初回接見のみの依頼となり、私たちは当日すぐに、Rさんの接見に行きました。
Rさんは、事実を認めており、被害者への謝罪の意向を持っていました。
また、取調べの内容を聞き出していくと、火をつけたのがこの一件だけではなく、合計5件あること、そして捜査機関としてはその全てを起訴しようとしていることが判明しました。
私たちは、器物損壊ではなく、建造物等以外放火(刑法第110条1項)にあたる可能性があり、合計5件の起訴となると、実刑の可能性が相当認められると判断しました。
引用元:刑法|電子政府の総合窓口
両親も、今後のことを不安に思い、私たちを正式に弁護人に選任しました。
私たちは、検察官に弁護人選任届を提出し、示談交渉の意向があることを伝えました。
検察から5名の被害者の連絡先を教えてもらい、早速示談交渉に取りかかりました。
起訴される前に4名の被害者とは示談(及び告訴の取消し)を成立させることができましたが、1名、示談するつもりはないとのことで、示談不成立となり、起訴されるにいたりました。
しかしながら、私たちは、現場検証、目撃者供述等から、Rさんの行為によって、「公共の危険」が生じたとは認められず、建造物等以外放火の罪(1年以上10年以下の懲役)は、成立しないと検察官に意見書を提出し、口頭でもやり取りを行いました。
最終的には器物損壊(1年以下の懲役)としての起訴に落ち着かせました。
そして、被害者との示談交渉の経緯や、被告人(Rさん)の反省、両親が身元引受人として今後はRさんと同居して監督をすること等を裁判で示し、執行猶予付の判決を獲得することができました。
今回のポイント
Rさんは、両親のサポートを受け、自らが犯した過ちの重大さを理解するようになりました。
そして最終的には、禁酒・禁煙を決意し、現在も両親と同居し、更生へ向けて努力を続けています。
家族が一致団結し、事件としっかりと向き合ったことで、望ましい結果を生み出すことができた事案です。
器物損壊罪とは
器物損壊罪(刑法261条)とは、文書や建造物以外の他人の物を損壊し、又は傷害した場合に成立する罪です。
引用元:刑法|電子政府の総合窓口
「物」とは財物のことであり、動物や建造物以外の不動産なども含まれます。
「損壊」とは、その物の本来の効用を失わせることを指します。
これは、ただ単に物を壊すだけではなく、事実上、もしくは気持ちの上でその物を使うことができなくさせることなども含まれます。
過去の事案ですと、食器に放尿する行為や、建築のため地ならしをした土地を掘り起こし、畑地にしてしまった行為などに対し、器物損壊罪の成立が認められています。
また、器物損壊罪における「傷害」とは、通常の傷害罪とは異なり、動物を殺傷することを指します。
器物損壊で逮捕されることはない?
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となっています。
(なお、科料とは、罰金よりさらに軽い刑罰の一種であり、1000円以上1万円未満を支払うことになります。)
法定刑だけを見れば、器物損壊罪は他の犯罪と比較すると、軽い部類に含まれるといえます。
当然ながら、軽いからと言っても立派な犯罪であり、決して許される行為ではありませんが、前科などがなく、損壊した物の金銭的価値が極めて高額であるなどの事情がなければ、直ちに逮捕される可能性はさほど高いとはいえません。
しかし、上述したような事情があれば、逮捕され、身体拘束を受けた上で取調べを受ける可能性もないとはいえません。
器物損壊の逮捕後の流れ
既に見たとおり、器物損壊の疑いがかかったとしても、多くの場合は直ちに逮捕されるわけではありません。
その場合、在宅での取調べが進められることになります。
しかし、上述したような事情があれば、逮捕され、身体拘束を受けた上で取調べを受ける可能性もないとはいえません。
器物損壊の疑いをかけられ、逮捕されてしまうと、場合によっては勾留請求が認められ、逮捕されている期間も含めると、最長で23日間にわたり身体拘束を受ける可能性もありますので、注意が必要です。
取調べが進んでいく中で、捜査を担当する検察官は、被疑者を起訴するかどうか決定することになります。
前科がないような場合や、財産的被害がさほど高額ではないような場合は、正式裁判を行うケースはさほど多くないと考えられます。
有罪判決がなされるとしても、多くの場合は、略式命令による罰金刑、若しくは科料とされることが予想されます。
ですが、これらはいずれも有罪判決として、前科がつくことになってしまいます。
器物損壊で慰謝料を支払う必要がある?
これまで見てきたとおり、器物損壊は、刑事処罰の対象となる行為です。
ですが、器物損壊行為を行なってしまうと、刑事上問題となるだけではなく、民事上の損害賠償義務を負うことにもつながってしまいます。
前科がついて罰金を支払わなければならない上に、損害賠償も支払うとなると、経歴上も、財産的にも、大きな痛手を負うことになります。
これを回避するためには、早期に弁護士をつけた上、被害者との間で示談を成立させることが有効です。
損壊してしまった物の価格に相当する金額を弁償するなどして、被害者が加害者を許すとの意向を示していただき、その事実を検察官に伝えることができれば、起訴猶予となり、前科をつけずに済む可能性を高めることができます。
まとめ
弊所の刑事事件部に所属する弁護士は、日々多くの事案で示談交渉を行なっております。
そのノウハウを活かし、被害者の心情に配慮した上で示談交渉を行いますので、示談成立の可能性を高めることができます。
器物損壊行為を行なってしまい、今後どうすべきかご不安な方は、ぜひ一度弊所にご相談ください。
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