脱税に関する罪(不申告逋脱犯、過少申告逋脱犯)について
脱税とは何か
脱税とは、納税義務者が、虚偽申告その他不正な行為により、税金の支払いを免れることをいいます。
脱税犯のことを、法学界では「逋脱犯(ほ脱犯)」と呼ぶことがあります。
脱税は、納税義務を免れることによって国家の租税収入減少をもたらし、国家財源を危うくするばかりか、納税義務者間の不平等を生じさせ、納税をしっかりと行っている国民の不満を呼び起こします。
国家財源を危うくする脱税行為について、国家は厳しい姿勢で臨んでいます。
脱税に対する罰則規定について
最も一般的な脱税犯は、確定申告の際の脱税です。
所得税法第238条1項には以下のような規定があります。(法人については法人税法で同種の規定があります。)
さらに2項には、
「前項の免れた所得税の額又は同項の還付を受けた所得税の額が 1000万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、1000万円を超えその免れた所得税の額又は還付を受けた所得税の額に相当する金額以下とすることができる。」
とあります。
脱税犯の成立要件は、以下のようになります。
- ① 納税義務者であること
- ② 偽りその他不正の行為があること
- ③ 所得税等を免れたこと
- ④ 偽りその他不正の行為と脱税結果との間に因果関係があること
- ⑤ 脱税の認識(故意)があること
②③⑤の該当性が問題となることが多いですが、脱税にあたるのは、売り上げの非計上、経費の架空計上の2類型にまとめられます。
脱税に関する罪の時効は、脱税行為があったときから7年間とされていますので(刑事訴訟法第250条2項4号、所得税法第238条1項)、脱税行為から7年以上が経過した場合には刑事処罰を受けることはなくなります。
脱税のリスクについて
脱税が発覚してしまうと、上記の重い刑罰を課されうる他、追徴課税が発生してしまいます。
追徴課税は高額となるケースが多く、企業にとって大打撃となりかねません。過失によって脱税を行ってしまわぬよう、ご不安な際には事前に弁護士(税理士)に相談することをお勧めします。
脱税の類型について
脱税には、大きく分けて3つの類型があります。
虚偽過少申告脱税犯・虚偽不申告脱税犯・単純不申告脱税犯です。
前二者は、上記に記載した脱税犯として処罰されますが、単純不申告脱税犯については、②(偽りその他不正の行為があること)の要件を満たさないため、上記脱税犯は成立しないとされています。
しかしながら、②(偽りその他不正の行為があること)の要件を満たさない場合に厳しく処罰できないのは問題であるとの指摘が各方面から相次ぎ、各種税法に単純不申告脱税犯を厳しく処罰する規定が新設されるに至っています。
弁護方針
脱税を国家から疑われるに至った場合、早急に弁護士に相談をしましょう。
犯罪に当たるような脱税行為が実際にあったのかどうか、早期に適切に判断することが、会社や家族を守ることに繋がります。
脱税があったのか否かの判断によって、今後どのような行動を取っていくべきなのかが変わってくるからです。
脱税を争う場合
申告にあたって計算を間違えていたり、所得を得ていたことを知らなかったりといった場合は、脱税をする認識もありませんので、脱税ではなく、単なる申告漏れにすぎません。
このような場合には刑事罰が科されることはありませんので、意図的に脱税をしたのではないということや脱税の認識を立証するために十分な証拠がないことを検察官に指摘していくことが必要になります。
脱税を認める場合
実際に脱税行為を行っている場合には、検察官に働きかけて起訴猶予としてもらったり、仮に起訴されたとしても執行猶予付きの判決となったりするための活動を行います。
その前提として、まずは早急に申告を修正して納税を行う必要があります。
脱税に関する罪は、国税局から捜査機関に対する告発がなければ立件されることがありませんので、早急に納税を行うことによって、告発をされない可能性を高める必要があるからです。
また、この他にも脱税の額や手口、前科前歴の有無等も国税局の告発や検察官が起訴するか否かの決定をするにあたって重要視されます。
そのため、これらの考慮要素から悪質性が低く刑事処罰までは必要ではないといえないかを検討する必要もあります。
当事務所には、刑事事件に注力する弁護士や租税法問題に注力する弁護士(兼税理士)がそれぞれ在籍しています。
税金関係でお困りの方、脱税の疑いをかけられお困りの方は、まずはお気軽に当事務所にご連絡ください。
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