特別背任罪について

背任罪と特別背任罪

刑法第247条に背任罪の規定があります。

背任罪

刑法第247条
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は 50万円以下の罰金に処する。

例えば、銀行の支店長が、友人が経営する会社が倒産寸前の瀕死状態であることを知りながら、当該会社に数億円規模の融資を行った結果、案の定返済が滞り、銀行に損害が発生した場合に、当該支店長の行為が背任罪に該当することになります。

特別背任罪は、「他人のためにその事務を処理する者」のうち、特に与えられた権限が大きい者(背任をした場合に生じさせうる損害が桁違いである者)について、責任を加重するものです。

会社法第960条1項にその規定があります。

特別背任罪

会社法第960条1項
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を与える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは 1000万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科する。

  1. 発起人
  2. 設立時取締役又は設立時監査役
  3. 取締役、会計参与、監査役又は執行役
  4. (省略)
  5. (省略)
  6. 支配人
  7. 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
  8. 検査役

逮捕、勾留通常の背任罪と比べ、懲役刑の上限が2倍の長さに、罰金刑の上限が20倍になりますし、懲役刑と罰金刑の併科(併せて刑を科されること)までありうることになります。

企業に対し甚大な被害をもたらすことが多い犯罪であることから、起訴され、有罪となった場合、2〜3年程度の実刑判決を言い渡される可能性もあるなど、通常の背任罪と比べても重い刑罰になる見込みが高いといえます。

 

 

弁護方針

特別背任罪を犯してしまった場合(取締役等の方)

特別背任罪は、刑事事件ではなく民事上の債務不履行にとどまると判断される場合や、会社の内紛によるものであって事案の内容が刑事事件化するほどのものではないと判断される場合も一定数あり、発覚したとしても必ずしも起訴されるとは言い切れません。

とはいえ、特別背任罪にあたる行為をしてしまった場合、マスコミに報道されてしまうリスクは非常に高いと考えられますし、放っておくと会社から巨額の損害賠償請求訴訟を提起されてしまう可能性もあります。

有罪また、仮に起訴されてしまうと、上述のとおり実刑となってしまうリスクが高く認められます。

そのリスクを回避するためには、早期に会社に対して謝罪すると同時に、示談交渉を行い、刑事事件化する前に返済合意をすることです。

弁護士を通し、誠意を持った交渉を行うことにより、被害弁償についても支払回数などの点で有利な条件を設定することができる可能性も上がると考えられますし、法的に有効な示談書を作ることにより、別途民事訴訟を提起され、費用と時間がかかってしまうリスクを回避することにも繋がります。

会社にとっても取締役が特別背任をしたという事実はマスコミに報道されてプラスにはなりませんから、示談交渉に応じてくれることは少なくないでしょう。

並行して、捜査機関に対しては、民事上の事件として扱うべき事案であるということを主張し、起訴の必要がないとの判断を促していく必要があります。

こうした活動は、弁護士でなければなし得ないことでもありますので、早期に刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。

テレビや新聞で報道されたくない方へ、詳しくはこちらからどうぞ。

 

特別背任罪を犯されてしまった場合(会社側)

特別背任行為によって、会社は財産上の大きな損害を被っていることと思います。

会社の存立すら危ぶまれる場合もあるでしょう。

会社にとって最も重要なことは、当該取締役等の方に処罰を受けさせることではなく、可能な限りの被害回復をすることです。

秘匿他方で、被害回復を行うにあたっては、当該取締役等が賠償義務を負う証拠を確保しておく必要があります。

そのためには、どのような証拠を集めておくか、当該取締役等と被害回復についてどのように交渉を進めていくかといった点も踏まえ、専門的な見地から入念な打ち合わせを行うべきです。

そのため、警察に相談に行くよりも前に、顧問弁護士に相談することをお勧めします。

当事務所には、企業法務チーム、刑事事件チームがそれぞれ設置されています。

背任事件でお困りの方は、被害者・加害者問わず、まずはお気軽に当事務所にご連絡ください。

当事務所の相談の流れはこちらからご覧ください。

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