勾留の要件

逮捕のイメージ画像逮捕された後、検察官が身柄拘束の必要性があると判断した場合、当該被疑者につき勾留請求を行い、裁判所が勾留の要件を満たすと判断すれば、勾留決定を出すことになります。

そのため、被疑者を勾留するかどうかを最終的に決定するのは、裁判所ということになります。

勾留の要件は、法律上以下のように定められています。

 

①罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があること

秘匿のイメージイラスト身柄拘束をする以上、犯罪を行ったことを裏付ける事実、理由が必要とされています。

もっとも、勾留段階では、逮捕されて間がなく、全ての証拠がそろっていることはないので、ここで要求されている嫌疑の程度は、それほど高いものではありません。

つまり、起訴して裁判にかける際に要求される嫌疑のレベル、つまり、有罪の可能性が高いというものまでは要求されていないということです。

なお、判決を受けるまでは、有罪かどうかはもちろんわからないわけですが、現在の日本の刑事裁判における有罪率は99%近くとなっており、無罪率が極めて低いことがわかります。

 

 

②3つの要件のうちどれか一つに該当すること(刑事訴訟法第60条)

  • 定まった住所を有しないとき(住所不定)(第1号)
  • 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき(第2号)
  • 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき(第3号)

弁護士この中で主に問題となるのは、2号と3号です。

それぞれ、罪証隠滅、つまり、証拠隠滅のおそれ、逃亡のおそれが、どの程度あれば勾留が認められるのかどうかというのが判断のポイントとなります。

これは抽象的な文言になっているので、判断する人によって、判断が分かれるところです。

したがって、事案に応じて、要件を満たすかどうか、検察官の判断を弁護人としてチェックする必要があります。

2号については、例えば盗撮や児童ポルノなどの事案において、対象となるデータが保存されていたスマートフォンやパソコンを捜査機関に提出しており、一見すると証拠隠滅を行いようがない場合でも、罪証隠滅の恐れがあると判断され、勾留決定が出てしまうことが往々にしてあります。

また、3号については、事案の軽重や前科・前歴の有無、執行猶予期間中であったかどうかなど、様々な事情に影響されますが、例えば事案が比較的軽微で前科・前歴がなく、結婚し家族がいて定職にも就いているといった事情があれば、勾留請求を却下する方向の事情として考慮される可能性もあります。

他方、ひとり暮らしであったり定職に就いていなかったりなど、逃亡しやすいと考えられるような場合、勾留請求を認容すべき事情として考慮される場合もあります。

検察官が、これらの要件のどれかを充足すると判断して勾留請求を行い、裁判所もこれを妥当として勾留決定を出した場合において、要件を満たしていない可能性が認められ、裁判所の判断が不当であると思われる場合には、準抗告という不服申立てをすることができます。

 

 

③勾留の必要性

留置所のイメージイラスト身柄拘束をする必要性が認められなければ、勾留することはできません。

したがって、勾留の必要性が要件とされています。

もっとも、これまで述べた2つの要件を満たせば、勾留の必要性があると判断されるのが実情で、この要件を欠くとして、勾留が認められない例は少ないといえます。

勾留について、不服がある場合には、先ほど述べた準抗告を行うことができます。

なお、逮捕については、準抗告をすることはできません。

逮捕、勾留勾留請求が認容されれば、被疑者は最長で10日間、勾留延長がなされれば最長で20日間、身体拘束を受けることになりますが、勾留請求が却下されれば釈放されることになります。

しかし、2018年度の勾留請求却下率は5.89%であり、検察官による勾留請求がなされた場合、90%以上の確率で勾留されることになります。

他方で、この却下率は近年上昇を続けており、裁判所も身体拘束については慎重な判断を行うケースが増えてきていますので、諦めずに勾留を争うべきであるといえます。

最長20日間の身体拘束を受けてしまうと、その間は学校や職場などに行くことができず、事件のことが発覚するリスクが高まります。

勾留請求がされる前、もしくは勾留請求がされ、決定が出てからも可能な限り速やかに、弁護士から検察官及び裁判所に働きかけ、勾留の要件を満たさないことや、勾留の必要性がないことなどを主張し、一刻も早い身体拘束からの解放を目指す必要があります。

準抗告などを行う場合、勾留の要件や勾留の必要性がないことをいかに説得的に主張していくかが重要であり、迅速かつ適切な判断が求められますので、専門家である弁護士に相談すべきです。

 

 

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