酒気帯び運転で怪我を負わせたら実刑となる?【弁護士が解説】
酒酔い(酒気帯び)運転をして交通事故を起こし、歩行者に怪我を負わせてしまいました。
実刑となって刑務所に入らざるを得ないのでしょうか?
実刑となる可能性があります。
実刑を回避するには示談交渉が重要です。
実刑となる?
過失運転致傷罪の場合
ご質問のケースは、酒酔い運転で人に怪我を負わせてしまったという状況です。
したがって、酒酔い運転に加えて、過失運転致傷罪が適用される可能性があります。
過失運転致傷罪は、最長10年6月の懲役となります。
執行猶予は、懲役3年以下の判決にしか付されることはありませんから、実刑となって刑務所に収監される可能性はあるといわざるを得ないでしょう。
危険運転致傷罪の場合
運転の態様が悪質な場合、過失運転致傷罪ではなく、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
危険運転致死傷罪とは、アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて、人を死亡させたり、怪我させたりした場合に成立する犯罪です。
この場合、最長20年の懲役となります。
したがって、この場合も実刑となって刑務所に収監される可能性があります。
執行猶予がつく可能性はある?
過失運転致傷罪にしろ、危険運転致死傷罪にしろ、懲役刑の最短は1月です。
1月から3年の間の懲役刑が妥当であると裁判所に判断されれば、執行猶予の可能性が拓けてきます。
裁判所にそのように判断してもらうためには、以下の対応が重要となるでしょう。
- ① 負傷者との示談を成立させること
- ② 今後同様の被害者を出さないために免許を返納し、今後免許を取得しないことを誓約すること
特に、①の示談成立が達成できれば、執行猶予の可能性が大きく高まります。
負傷者の許しを得たのであれば、刑務所に収監するほどの重い処罰を与える必要性が減退するためです。
ですが、示談交渉は往々にして困難を極めます。
小さな過失で傷害も軽いものであれば、負傷者の処罰感情はそこまで激しいものではなく、示談交渉に応じてくれる場合も多いですが、酒酔い運転ないし酒気帯び運転であなたが交通事故を起こした場合、負傷者は、被疑者が酒酔い運転ないし酒気帯び運転という悪質な行為をしなければ怪我を負うことはなかったのにと考え、あなたに対し強い敵対意識を持ちます。
その意識はやむを得ないものでしょう。
あなたにできるのは、アルコールを摂取して運転をしたことについてしっかり反省し、被害者に対して深く謝罪の気持ちを持ち、同じことを繰り返さないための対策を考えることです。
示談交渉のポイント
交通事故の事案において、示談を成立させるための重要なポイントは以下のとおりです。
①適正な過失割合を知る
酒酔い運転自体は犯罪が成立しており、その点については加害者の方の落ち度は否めません。
しかし、交通事故では、どちらか一方的に過失があるということは少ないです。
被害者が停車中、加害者が後ろから追突した、などの極端な状況を除けば、被害者側にも一定の過失が認められる可能性があります。
被害者に過失がある場合、過失相殺によって、賠償金の額が減額されます。
したがって、過失割合を判断することが重要です。
②適正な損害額を知る
妥当な示談金を提示するためには、被害者の損害額を適切に判断する必要があります。
交通事故の場合、損害には治療費などの積極損害の他に、休業損害、慰謝料、後遺障害が発生した場合の逸失利益など、様々な損害の項目があり、これらの算出する必要があります。
③迅速かつ誠実な対応を行う
通常の交通事故は民事の問題のみを気にすればいいのですが、この事案においては、加害者の方は刑事裁判となって刑罰を受ける可能性があります。
したがって、迅速に示談交渉を行うべきです。
また、主張すべきところは主張すべきですが、被害者の方の感情を逆なでしないよう誠実な対応を心がけるべきでしょう。
まとめ
以上、酒気帯び運転で相手を怪我させた場合について、解説しましたがいかがだったでしょうか。
相手が怪我をしているので、過失運転致傷罪ないし危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。
いずれの場合も実刑となる可能性はありますが、示談交渉等を進めることで執行猶予がつく希望もあります。
しかし、あなたの力だけで示談を成立させることは不可能に近いでしょう。
刑事事件に注力する弁護士を選任し、迅速かつ適切な示談交渉を粘り強く続けてもらう必要があるでしょう。
国選弁護人は、選任時期が勾留以降ですし、示談交渉に多くの時間を割くことは期待できません。