名誉毀損罪とは?弁護士が詳しく解説!
名誉毀損とは?
名誉毀損罪が成立するのは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」ときであり、摘示した事実が真実か否かにかかわらず犯罪が成立することになっています。
法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金とされています(刑法230条1項)。
誰でも容易にインターネットにアクセスできる時代であることから、SNS等での名誉毀損事件が圧倒的に多く、平成30年上半期は、インターネット上での名誉毀損や誹謗中傷に関する警察への相談件数が5610件もありました(平成29年は年間で1万1749件)。
その一方で、検挙数は112件(平成29年は年間で223件)となっており、警察が動くものはごく一部ということが分かります(警視庁:平成30年上半期におけるサイバー空間をめぐる驚異の情勢等について)。
隣接する犯罪との違い
名誉毀損罪と隣接する犯罪としては、信用毀損罪(刑法233条前段)や侮辱罪(刑法231条)があります。
信用毀損罪は、信用つまり「経済的な側面における人の評価」を保護対象としているという点や、公然性が要件ではないという点で、名誉毀損罪と異なります。
侮辱罪は、「事実を摘示せずに」人に対する侮蔑的価値判断を表示することを処罰対象としている点で、名誉毀損罪と異なります。
「名誉」とは
名誉毀損罪で保護されている名誉は、人についての事実上の積極的評価であり、社会的評価が不当に高すぎるような虚名の場合も保護対象に含まれます。
また、自然人だけでなく、法人等の団体も「人」に含まれることになっています(大審院大正15年3月24日判決)。
法人等の団体も、社会の中で活動を行なっている以上、社会的評価を有しているからです。
そのため、前科があることを広めた場合には、名誉毀損罪が成立することになります。
そのため、不倫をしている等の名誉を害すべき噂を流した場合には、名誉毀損罪が成立します。
「公然と」とは
「公然と」とは、摘示された事実を不特定または多数人が認識しうる状態のことをいいます(最高裁昭和36年10月13日判決)。
ここで注意が必要なのは、特定少数の人に対して事実の摘示をしただけであっても、それらの人を通じて不特定または多数人へと広がっていく場合には、「公然と」に該当するとされていることです(最高裁昭和34年5月7日判決)。
例えば、特定の新聞記者1人に事実を伝えただけであっても、その新聞記者が不特定多数の人が読む新聞を書くのであれば、名誉毀損罪に該当するということです。
例外について
事実証明の特則
既に述べたように、名誉毀損罪は、摘示した事実が真実であっても成立するのが原則です。
しかし、例外として、「公共の利害に関する事実(公共性)に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ること(公益性)」であることに加え、その内容が「真実」であることが証明出来れば、名誉毀損罪で罰しないこととされています(刑法230条の2第1項)。
この規定については、立証責任が転換されており、被告人が公共性・公益性・真実性を立証しなければなりません。
そのため、公共性・公益性とは何かということが問題になります。
公共性とは、国民が民主的自治を行う上で知る必要のある事実であることを指します。
これは、一般市民の単なる好奇心とは異なるものです。
そのため、個人のプライバシーに関する事実の多くは、公共性が認められないことになります。
ただし、被害者が行なっている社会的活動の性質や影響力の程度次第では、その社会的活動に対する評価の資料となりうることを理由として、公共性が肯定されることがあります。
例えば、宗教団体の会長の私生活を取り上げたものについて公共性を認めた判例があります(最高裁昭和56年4月16日判決)。
公益性は、公共の利益を増進させることが主な動機となって事実を摘示したことを指します(東京地方裁判所昭和58年6月10日)。
公益性があるかどうかは、事実を摘示した際の表現方法や事実調査の程度が考慮されることとされています(最高裁昭和56年4月16日判決)。
公共性や公益性のみなし規定
捜査の端緒となる国民の協力を容易にするという目的から、刑事裁判前の被疑者の犯罪行為に関する事実は公共の利害に関する事実とみなされています(刑法230条の2第2項)。
また、公務員や公務員候補者に関する事実については、公共性と公益性があるものとみなされていますが(刑法230条の2第3項)、公務員の活動や資質に全く関係がない事柄であれば、この規定は適用されません(最高裁昭和28年12月15日判決)。
真実だと誤信していた場合は?
真実性の証明に失敗した場合であっても、行為者がその事実を真実であると誤信し、誤信したことについて確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないと判断されています(最高裁昭和44年6月25日判決)。
ただし、誤信していた場合全てが無罪となるわけではなく、確実な根拠がなく軽信した場合には名誉毀損罪が成立してしまうことに注意が必要です。
弁護の活動内容
名誉毀損を認める場合
名誉毀損で警察が動く事案は少ないですが、警察が動く事案は悪質なものが多く、犯行を認めていたとしても逮捕される可能性は高いと考えておかなければなりません。
逮捕は最大3日間、勾留は最大20日間ですから、有給を消化してしまった後も身体拘束が続くことになり、職場に名誉毀損行為が知れ渡るリスクや会社を解雇されるリスクがあります。
名誉毀損罪は、親告罪とされており、被害者からの告訴がなければ起訴することができない犯罪になっています。
そのため、他の犯罪と比較しても、被害者と示談を行うことが特に重要であり、告訴をしないことを盛り込んだ示談書を交わす必要があります。
早急に示談交渉を行うことで、逮捕されたとしても早期に釈放される可能性を探ることが出来ます。
被疑者は逮捕勾留され、身体を拘束されている他、直接被害者との連絡を取ることができなくなってしまうので、示談交渉は弁護士が行う必要があります。
また、被疑者とも密に連絡を取り、反省を深めてもらうことで、検察官に反省が伝わり寛大な処分を得られる可能性を高めることが出来ます。
名誉毀損を認めない場合
名誉毀損罪を否認する場合としては、SNSのアカウントが第三者によって乗っ取られていたというような場合や、名誉を毀損していないと考えられる場合、名誉を毀損する行為をしたことは認めるが公益目的であると主張する場合が考えられます。
名誉毀損事件で否認をする場合、検察官や警察官はほぼ間違いなく逮捕・勾留に踏み切ると考えられます。
その中で早期の釈放を現実のものとするために重要なことは、被疑者の言い分を基礎付ける証拠を収集し、検察官や裁判所に提出することです。
被疑者は身体拘束をされることを想定しなければならないため、そのような証拠を収集し、検察官や裁判所へ訴えかけるためには弁護士が必要です。
また、接見に赴いて取り調べ対応のアドバイスや聞き取りを行い、違法捜査が行われている疑いがある場合には、警察や検察庁に対して警告文を発する等、違法捜査を抑止します。
よくある相談Q&A
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