未成年者との示談で注意すべきことは?【弁護士が解説】
被害者が未成年の場合、高額な示談金や示談はしないなど、示談交渉が難航することも珍しくありません。
未成年者との示談には親権者の同意が必要となるなど、注意点について弁護士が詳しく解説致します。
未成年者との示談は困難が伴います
被害者が未成年である場合、示談を行う場合の窓口が被害者の両親となることがほとんどです。
多くの親は、自分の子供が被害に遭ったという事実に大変憤っており、示談交渉そのものが難航することも珍しくありません。
高額な示談金でないと納得できないと考えている方や、お金の問題ではなく加害者を許すことはできないから示談はしないと言われる方など、様々な方がいらっしゃいます。
これらの被害者の両親の気持ちは至極当然ですから、そのような場合には、弁護士が被害者や家族の話を聞き、不安なことや不満に思っていることを一つ一つ受け入れ、少しでもそれらの不安や不満を解消できるよう試みていきます。
それでも処罰感情が弱まらず、示談に至らないことも十分に考えておかなければなりませんが、交渉を進める中で少しでも示談をしてもいいと考えてもらえるように、被害者に寄り添った交渉を続けていく必要があります。
示談書を交わす際の注意点
未成年者との示談には親権者の同意が必要
被害者の両親との交渉によって示談をしてもよいと言ってもらえた場合、示談が成立した事実を明らかにするため、示談書を作成します。
示談書には、当事者双方(場合によっては代理人)が署名をしますが、被害者が未成年である場合には、注意すべき点があります。
父母の婚姻中は、その未成年の子は父母の親権に服しており、親権は父母が共同して行うことが原則となっています(民法817条3項)。
親権者は、法定代理人として子の法律行為に対する同意権を有しており(民法5条1項)、同意がない未成年者の法律行為は無効として取り消される可能性があるのです(民法5条2項)。
未成年者が単に権利を取得しまたは義務を免除されるような行為であれば同意は不要ですが(民法5条1項但書き)、示談においては、示談金の支払いを受けるだけでなく、被害届を提出しない等、被害者が義務を負う行為も含まれることが多いです。
そのため、そのような条項が含まれる示談を行う場合には、親権者の同意が必要になります。
同意は両親双方からもらう必要があります
両親が婚姻関係にある間、親権は共同行使することが原則とされていますから、両親が婚姻関係にある間は、被害者の父親ないし母親のみが単独で示談に同意することはできません。
その場合、両親がともに同意していることを示すため、基本的には共同名義で示談書に署名をしてもらうことになります。
親権者に共同名義で署名をしてもらうことによって、仮に親権者のうち一方のみが勝手に共同名義で署名をしてしまった場合であっても、その事実を相手方が知らなければ、未成年者の法律行為に対する同意としては有効として扱われます(民法825条)。
そのため、共同名義での署名を示談書にしてもらえば、基本的に後から親権者の同意がないとして示談を無効であると争われる危険性を無くすことができます。
単独名義の署名の場合、示談が無効となる可能性があります
他方、親権者の署名が単独名義の場合には、後から示談の効力について問題が生じる可能性があります。
親権は共同で行使しなければなりませんが、必ずしも共同名義で行う必要はありません。
両親がともに同意をした上で、片方の親権者のみが単独名義で同意したのであれば、親権は共同行使されていると考えられるため、未成年者の法律行為は有効と考えられています。
しかしながら、単独名義の場合による署名の場合には、共同名義で署名がされている場合のような同意の効力を認める規定がありませんから、示談書の記載内容からは両親がともに同意をしたのかどうかが分かりません。
そのため、後になって署名をしていない方の親権者から、「同意がなかった。」と言われた場合、親権者の一方が他方に無断で子の法律行為に同意を与えていたのであれば、その同意は無効となります。
そのため、単独名義の場合には、せっかくまとまったと思われた示談が後から無効とされる危険性を残すことになってしまいます。
もっとも、法律上有効でなくとも、被害者に対して被害の回復ができているという事実は、検察官が処分を決める際に考慮されます。
そのため、被害者の両親が示談することには同意しても名前を出したくないという場合、被疑者に示談が後から無効となるリスクを十分に説明した上で、それでも示談を行なっていいかを確認した上で示談書を交わします。
当事務所には刑事事件チームが設置されています。
未成年者との示談がしたいとお考えの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
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