自首を裁判官に認められる要件とは?【弁護士が解説】
ご質問について、当事務所の刑事弁護士がご説明します。
自首とは
自首とは、捜査機関に発覚する前に、犯人が自発的に自己の犯罪事実を捜査機関に申告することをいいます。
ここでポイントとなるのは、「捜査機関に発覚する前」という文言です。
すなわち、犯人が反省し、自ら進んで警察署に出頭したとしても、捜査機関が犯人が誰であるか知っていて捜査中であるような場合は、法律上の「自首」とはなりません。
また、申告する相手は、捜査機関となります。
したがって、申告の相手が、一般人はもちろん、弁護士、裁判官であっても自首とはなりません。
自首の要件とは?
捜査機関に発覚する前とは
前記のとおり、自首が成立するには、「捜査機関に発覚する前」に申告しなければなりません。
具体的にご質問で多いのは、犯罪事実はわかっているが、犯人が誰かまで捜査機関が特定できていないような場合です。
例えば、窃盗の被害者が警察に窃盗の被害を届出たが、犯人は不明といった場合です。
この場合も、「捜査機関に発覚する前」に該当します。
したがって、犯人が窃盗の事実を警察に申告すれば、自首が成立します。
次に、犯罪事実と犯人が誰かが分かっていて、犯人の「所在」が分からない場合はどうでしょう。
例えば、Aさんが窃盗したことは分かっていますが、Aさんが逃亡していて、現在、どこにいるか分からないような場合です。
この場合、「捜査機関に発覚する前」とはいえないとするのが裁判例です(最判昭24.5.14)。
したがって、手配中の逃亡犯が自首したとしても、法律上の「自首」とはなりません。
また、犯人の氏名が判明していなくても、犯人の容ぼうやその他の特徴から犯人を他から区別して特定することができる場合も、犯人が不明であるとはいえず、「捜査機関に発覚する前」とはなりません。
捜査機関に申告するとは
自首は、犯人が捜査機関に対して、自発的に犯罪事実を申告しなければなりません。
この「自発的」であるか否かを巡って問題となることがあります。
例えば、窃盗について、警察官から取り調べを受けていたAさんが、他にも余罪があるという警察官の抱いた嫌疑によって追求を受け、観念して余罪を自供したような場合です。
このような場合は「自発的」とはいえず、自首とはならないでしょう。
反対に、警察官が既に捜査対象となっている事件以外に嫌疑がないと最終的に判断し、追求がなくなった状況下において、Aさんが自ら進んで余罪について自供した場合は「自首」といえるでしょう。
この点について、参考となる判例をご紹介します。
東京高判昭62.11.4
「ある被疑事実について取調べを受けていた被疑者が、他にも余罪があるのではないかという捜査官の抱いた嫌疑によりその追及を受けた結果、余罪についての犯行を自供するにいたつた場合は、自らすすんで犯行を自供したものと言えず、この場合に自首を認めることはできないけれども、本件のように、警察官が余罪について自供を得たもの及び既に捜査対象となつている事件以外には嫌疑がないと最終的に判断し、したがつてその追及もなくなつた状況下において、自らすすんで新たな余罪についての犯行を自供するにいたつた場合は、刑法四二条一項にいう自首にあたると解するのが相当である。」
また、挙動不審者として職務質問を受けていた犯人が、種々弁解した後に自供したケースも「自首」にはあたらないとした裁判例もあります(最判昭29.7.16)。
自首を弁護士に相談するメリット
以上のように、「自首」に該当するか否かは、微妙なことがあります。
自分では「自首」に該当すると思っていても、実は「自首」とはならないケースは多くあります。
そのため、まずは、刑事事件に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。
また、当事務所の刑事事件チームは、自首に特化した自首同行サービスを行っています。
まずは当事務所までお気軽にご相談ください。