釈放・保釈してもらうにはどうすればいい?【弁護士が解説】
釈放・保釈とは?
釈放とは
釈放とは、刑事施設に収容されている受刑者・被疑者・被告人などの身柄の拘束を解くことをいいます。
警察官は、容疑者を逮捕した後、留置の必要がないと判断した場合、本来は直ちに釈放しなければなりません。
また、検察官は、逮捕後に送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと判断した場合は直ちにこれを釈放しなければなりません。
第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
引用元:刑事訴訟法|電子政府の総合窓口
保釈とは
保釈とは、一定額の保証金の納付を条件として、被告人の勾留の執行を停止し、拘禁状態から解くことをいいます。
釈放と保釈の違いとは
保釈は、起訴された被告人についてのみ認められます。
また、保釈は釈放と異なり、お金(一定額の保証金)を支払うことが必要です。
釈放も保釈も、これがなされれば、自由に会社や学校に通うことができ、今までどおりの日常生活を送ることができます。
そのため、釈放・保釈は、身柄拘束を受けている方や、そのご家族、勤務先等の関係者全員にとって、重要といえます。
釈放 | 保釈 | |
---|---|---|
違い | 時期的な限定がない(起訴前も対象) お金は不要 |
起訴後(被告人)のみ お金が必要 |
共通部分 | 実行されると自由になれる |
釈放・保釈のために重要なこと
警察は、被疑者を逮捕すると、逮捕時から48時間以内に身柄を検察庁に送らなければなりません。
検察庁が被疑者の身柄を受け取ると、勾留の要否を判断し、必要な場合は裁判所に勾留を請求します。
統計(令和5年版犯罪白書)では、逮捕されると、約94パーセントが勾留請求され、そのうち約96%が勾留されています。
引用元:犯罪白書(令和5年版)
すなわち、逮捕されると、ほとんどの方が勾留されてしまいます。
そのため、刑事弁護は、逮捕されてから検察庁に身柄が送られるまでの48時間までが勝負です。
このタイトな時間内に身柄を解放するためには、迅速な弁護活動が何よりも重要です。
釈放の方法
釈放してもらうためには4つの方法があります。
- ① 検察官に送検される前に釈放
- ② 勾留阻止による釈放
- ③ 不起訴による釈放
- ④ 略式手続きによる釈放
①検察官に送検される前の釈放
逮捕後の取り調べにおいても、犯罪を行った事実がないと判断された場合や、逮捕された犯罪の事実が極めて軽い場合、身柄が検察庁に送られずに、釈放される場合があります。
弁護士の活動
デイライト法律事務所の刑事弁護士は、捜査機関に対し、送検前に釈放を求める活動を行います。
②勾留阻止による釈放
検察庁が被疑者の身柄を受け取っても、担当検察官が勾留請求をしない場合、又は、勾留請求を行っても、裁判官が当該請求を却下した場合は勾留前に釈放されます。
勾留阻止によって釈放された場合は、その後、事件は在宅事件に切り替わり、自宅から警察署や検察庁に出頭して取り調べを受けることになります。
弁護士の活動
重大な犯罪でなく被疑者が罪を認めており、証拠隠滅や逃亡の恐れがない場合、担当検察官と面会するなどして、勾留請求しないよう求めていきます。
検察官が勾留請求を行った場合は、裁判所に勾留請求を却下してもらえるように働きかけていきます。
③不起訴による釈放
逮捕・勾留されたとしても、捜査の結果、犯罪の立証ができない場合、不起訴処分となります。
また、被害者がいる犯罪類型の場合、示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性が高くなります。
不起訴処分となれば、留置所から釈放され、逮捕される前と変わらない、日常生活を送ることが可能になります。前科もつきません。
弁護士の活動
痴漢や盗撮などの被害者がいる事件で、本人が罪を認めている場合、被害者と連絡を取って謝罪や示談の交渉を行います。
また、無実の場合は、被疑者に有利な証拠を集めるなどの弁護活動を迅速に行います。
④略式手続きによる釈放
検察官が事件を起訴する場合でも、勾留期間満期までの間に、検察官が簡易な書類上の手続により罰金または科料の裁判を求める略式請求をした場合は、罰金等を支払うことを条件に、留置場から釈放されることがあります。
この場合、前科はつきますが、通常の日常生活を送ることができます。
略式手続
検察官は、簡易裁判所の管轄に属する事件について、100万円以下の罰金又は科料に処するのが相当と考えたときは、被疑者に異議のないことを確かめた上、この略式手続を請求できます。
保釈の方法
事件が起訴された後は、弁護士を通じて保釈を請求し、これが認められれば留置場から身柄を解放されます。
保釈について、刑事訴訟法は、一定の例外を除いて、保釈を認めると規定しています(法89条。権利保釈)。
この一定の例外とは以下の場合です。
- ① 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
- ② 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
- ③ 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
- ④ 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
- ⑤ 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
- ⑥ 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
裁量保釈
ただし、上記に該当する場合でも、「被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるとき」、保釈を許すことがあります。
これを裁量保釈といいます。
第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
引用元:刑事訴訟法|電子政府の総合窓口
保釈金の相場とは?
保釈は、上記のとおり、釈放と異なってお金(保釈金)を支払う必要があります。
この具体的な金額については、多く方が気になるところです。
保釈金については、刑事訴訟法という法律に次の記載があります。
第九十三条 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。
② 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
引用元:刑事訴訟法|電子政府の総合窓口
上記のように、保釈金については、法律の条文上には「相当な額」としか記載しかありません。
ときどき、ニュースなどでは莫大な資産をもつ著名人について、「○億円が保釈金」などの情報が流れますが、特殊なケースであり、多くの場合は150万円から300万円程度が相場です。
保釈金の額は、犯罪の内容によって、幅がありますが、刑事事件に精通した弁護士であればある程度の予想をたてることが可能でしょう。
保釈金は戻ってくる?
保釈金は、逃亡を防止するための保証金です。
したがって、刑事事件が終われば、全額戻ってきます。
すなわち、無罪の場合だけでなく、有罪の判決が言い渡された場合も保釈金は返還されます。
お金がいない場合はどうなる?
保釈金は、刑事裁判が終わるまでの一時的な預け金に過ぎません。
しかし、それでも、数百万円という保釈金を用意できることが難しい場合はたくさんあります。
このような場合、日本保釈支援協会の立て替え払い制度を利用することが可能です。
ただし、自己負担金として手数料が発生します。
この制度を利用する場合は、弁護士が手続きを取ってくれるでしょう。
まとめ
以上、釈放と保釈の内容、実現のためのポイント等について、解説しましたがいかがだったでしょうか。
身柄が拘束されている場合、まずは釈放・保釈によって自由になることが刑事弁護においてとても重要です。
しかし、法律の文言とは異なり、実務上、保釈が認められるには相当な労力を必要とします。
釈放・保釈には弁護士の技量と熱意が必要不可欠ですので、刑事事件に特化した弁護士を選任することが重要となります。
当事務所の刑事事件チームには、釈放・保釈の問題に精通した弁護士が所属しており、きめ細やかな弁護活動を行っています。
まずは当事務所まで、お気軽にご相談ください。