家族が保釈を請求できる?【刑事弁護士が解説!】
「家族が逮捕されてしまった」
「保釈してほしい」
「保釈金のことが心配」
当事務所の刑事弁護チームには、このようなご相談がたくさん寄せられています。
刑事弁護はスピードが勝負です。手遅れになる前に、まずはお気軽にご相談ください。
保釈とは
保釈とは、保証金の納付や住居の指定、特定の者との接触禁止等を条件として、判決宣告までの間、勾留されていた被告人を解放する制度です。
起訴前には保釈の制度はありませんので、保釈の請求をすることができるのは、起訴された後からになります。
なお、報道等で「釈放」という用語が用いられることがありますが、こちらは、保釈に限らず、留置施設に収容されていた受刑者や被疑者などの身体拘束が解かれた場合にも用いられています。
保釈が認められた場合には、身体拘束が解かれますから、当然家に戻ることが出来ますし、会社や学校に通うなど、今までどおりの日常生活を送ることが可能となります。
そのため、保釈は、身体拘束を受けている被告人やご家族等の関係者全員にとって重要な制度といえます。
長期間の身体拘束を受けていることを弁論で主張したいような一部の例外を除いて、保釈は被告人にとってメリットしかない制度です。
保釈は誰が請求できる?
保釈は、法律上は、勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹が請求できます(刑訴法88条)。
したがって、ご家族の場合、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹であれば、一応は請求が可能です。
保釈が認められる場合
刑事訴訟法には、保釈について、次のいずれかに該当する場合を除いて認めると規定されています(89条)。
- ① 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
- ② 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
- ③ 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
- ④ 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
- ⑤ 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
- ⑥ 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
上記の保釈は、①から⑥の除外事由に該当しない限り、保釈が権利として認められているので、「権利保釈」と呼ばれています。
また、権利保釈に該当しない場合であっても、
「被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる」と規定してます(90条、裁量保釈)。
引用元:刑事訴訟法|電子政府の総合窓口
保釈の問題点
上記のとおり、法律上は家族も保釈を請求することが出来る上、簡単に認めてもらえるようにも思えます。
しかしながら、実務としては、保釈は簡単に認められるものではありません。
家族の方自身で請求することは難しい
刑事訴訟法規則296条によれば、保釈の請求は口頭でも可能とされています。
しかしながら、実務上は書面での請求が前提となっており、口頭で保釈請求を行うことはありません。
また、書面での請求の際には、単に権利保釈が認められるべきだとだけ記載するのではなく、保釈が認められるべき事情について、具体的かつ説得的に記載しなければなりません。
そのため、法律の専門家ではない家族の方が、保釈請求をすることは現実的には厳しいでしょう。
権利保釈ですら容易には認められない
条文上は、権利保釈除外事由がない場合には必ず保釈を認めなければならないとされていますが、一般人の感覚からすると、権利保釈除外事由は簡単に認められます。
たとえば、比較的軽い罪に問われている場合でも、否認していたり示談が未成立であったりすると「④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」に該当するケースがあります。
保釈金を準備できない
保釈が認められるとしても、保証金は必ず必要となってきます。
一般的には150万円から200万円となるケースが多いといわれていますが、簡単に捻出できる金額ではないはずです。
保釈保証書の発行や保証金の貸付を行っている団体を利用するという手段もありますが、これらの手段を用いても保証金を被告人本人やご家族が調達できなければ、保釈が許可されたとしても意味がありません。
保釈制度には以上のような問題点はありますが、資力以外の問題点は、弁護士に依頼することにより、乗り越えることが可能な場合があります。
保釈で悩まれている方は、家族による請求にこだわらず、一度弁護士に相談に行ってみてはいかがでしょうか。