保釈金とは?返ってくる?相場や支払えない場合の対処法は?
保釈金とは、保釈が認められる際に裁判所に対して納付する保証金のことで、正式には「保釈保証金」といいます。
逃亡することなく出廷して判決を迎えれば、保釈金は全額返ってきます。
保釈金の相場は、150万円〜300万円程度です。
このページでは、保釈金とはどのようなものなのか、またいくらぐらい納める必要があるのかといった、保釈金の意義や相場について弁護士がくわしく解説します。
保釈金とは
保釈金とは、保釈が認められる際に裁判所に対して納付する保証金のことで、正式には「保釈保証金」といいます。
以下では、保釈金について解説する前提としてまず簡単に保釈制度について触れてから、保釈金についてご説明します。
そもそも保釈とは
保釈とは、勾留中の被告人が一定の条件を満たしている場合に、身体拘束を解くことを請求できる制度のことです。
保釈制度のポイントは、次のとおりです。
- 保釈を請求できるのは起訴後に限られ、起訴前の勾留に対しては保釈請求できない(刑事訴訟法88条1項)
- 保釈を請求できるのは、被告人自身のほか、弁護人、配偶者、親子、兄弟姉妹等(同項)
- 保釈の可否を判断するにあたり、被告人の逃亡や証拠隠滅の可能性が考慮される(同法90条)
- 保釈が認められるためには保釈金の納付が必要(同法93条1項、94条1項)
保釈は、保釈金を支払えば必ず認められるというものではありません。
実務上、問題となるのは次の点です。
- 容疑者の逃亡のおそれ
- 罪証隠滅のおそれ
例えば、犯行を否認している場合、上記のおそれがあるとして、保釈が認められないケースもあります。
弁護士がついていると、保釈が認められるべきであるとして、意見書を提出するなどの活動を行っていきます。
保釈の条件についてくわしくはこちらをご覧ください。
保釈金の意義
上記のとおり、保釈が認められるのは起訴後に限られています。
起訴されているということは、後に被告人が刑事裁判にかけられることを意味します。
この状況で被告人の勾留を解くからには、裁判の期日に被告人がきっちり出廷することを確保する必要があり、そのための保証金として納付させるのが、保釈金です。
以下では、保釈金の相場や金額の決まり方についてご説明します。
保釈金の決定と納付までの流れ
保釈は、下図の流れで進んでいきます。
保釈の請求と裁判について
弁護士が保釈を請求した後、希望すると裁判官との面接があります。
この面接で、裁判官から保釈金の額について調整されることがあります。
保釈の許可・保釈金の決定について
弁護士が裁判官と面接すると、その日に保釈についての決定がなされます。
保釈を認める場合、保釈金についても金額が決められます。
保釈請求が却下された場合、不服申立てをすることが可能です。
不服申立てが認められると、保釈が許可され、保釈金も決まります。
保釈金の納付
弁護士を通じて保釈金を裁判所に納付すると、1から2時間後に保釈されます。
保釈金の相場はいくら?
保釈金の相場は、150万円から300万円程度です。
ただし、具体的な金額は個別のケースごとに諸事情を考慮した上で決定されます。
保釈金の金額はどうやって決まる?
保釈金は、被告人の刑事裁判への出廷を確保するための保証金としての性質を有します。
そのため、具体的な金額は、「その金額で被告人の出廷が確保できるのか」という観点から決められることになります。
刑事訴訟法は、保釈金は「被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない」としており、金額を決定するに当たっては次のような事情を考慮すべきと定めています。
② 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
③ (略)
引用元:刑事訴訟法|電子政府の総合窓口
条文にはさまざまな考慮要素が示されていますが、実務上特に重視されているのは、「被告人の資力」と「犯罪の性質」です。
年収が保釈金の額に影響する?
被告人の資力は、保釈金額を決定するに当たって大きなウエイトを占めている要素といえます。
なぜなら、客観的には同じ「150万円」という金額であっても、それを没収されることが被告人にとってどの程度の痛手となるかは、被告人それぞれの経済状態しだいで大きく変わってくるからです。
被告人の出頭確保という制度趣旨をまっとうするためには、被告人の資力(年収や資産)が多ければ多いほど、より多額の保釈金を納めさせる必要があるのです。
犯罪の種類が保釈金の額に影響する?
被告人の資力のほかに重要な要素となってくるのが、犯罪の性質です。
ここでいう「性質」とは、犯罪の重大さや、罪の重さと言い換えてもいいでしょう。
たとえば、罪が軽く執行猶予付きの判決が予想されるような場合、実際に服役することはひとまず免れて引き続き社会生活を送れるわけですので、保釈中にあえて逃亡を企てることは想定しがたいといえます。
逆に、犯罪が重大であり相当期間の服役が見込まれる場合は、たとえ保釈金を投げうってでも逃亡しようと考えたとしても、不思議ではありません。
このように、罪が重ければ重いほど逃亡への誘因が強くはたらくため、逃亡抑止のための保釈金はより高額に設定する必要があるのです。
保釈金の最高額と最低額
保釈金の金額について、法律上は上限・下限ともに定めがあるわけではありません。
したがって、理屈の上ではいかなる金額を定めることも可能ではあるのですが、実務上は、ある程度の相場感があるといえます。
保釈金の最低額としては、ひとまず150万円が目安になってきます。
事案によってこれより低額になる可能性もないとはいえませんが、現実には、被告人がほとんど無資力に近い場合であっても、150万円を下回ることは稀であるという感覚があります。
他方、最高額については、資産家などを想定すれば被告人の資力はいくらでも高額になり得ますので、まさに「上限なし」ということになります。
実際に、レアケースではありますが、被告人の資力しだいでは1億円を超えるような金額が定められることもあるのです。
保釈金は基本的には返ってくる!
保釈金は保釈制度の「利用料金」ではなく、逃亡抑止のための「保証金」であり、「逃亡すると没収するぞ」という威嚇・牽制のために差し入れさせるものです。
そのため、逃亡することなく出廷して判決を迎えれば、保釈金は全額返還されます。
逆にいえば、裁判所の定めた期日に正当な理由なく出頭しない場合や、裁判所の定めた条件に違反した場合などには、その全部または一部を没収されるものでもあります。
なお、保釈金は実刑判決の場合でも返還されます。
返還時期は、裁判が終了してから概ね1週間程度です。
保釈金を没収されるケース
保釈金を没収される典型的な例は、逃亡です。
消息を絶って行方をくらませることのほか、裁判期日に出頭しないとか、制限住居(裁判所が指定した保釈中の生活拠点)を許可なく離れるといった行動も、逃亡ととらえられる可能性があります。
また、逃亡以外では、裁判所が定めた保釈許可の条件(たとえば、被害者や目撃者といった事件関係者への接触禁止など)に違反した場合も、保釈金を没収されることがあります。
保釈金はその人にとって「返してもらえないと困る」額となるように設定されていますので、確実に返還を受けられるよう、保釈中の行動には細心の注意を払わなければなりません。
保釈金が払えない場合はどうしたらいい?
最終的には返還されるとはいえ、最低でも150万円の納付が求められるとなると、用意するめどが立たないという方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合、保釈金を立て替えてくれる「日本保釈支援協会」の利用を考えてみてもよいでしょう。
以下に支援協会を利用するための条件や留意点を記載しますので、利用を検討される際の参考としていただければと思います。
保釈支援協会とは
保釈支援協会とは、正式名称を「日本保釈支援協会」という一般社団法人で、保釈保証金の立て替えを行っている団体です。
支援協会を利用できる人
支援協会の立て替えを利用できるのは、事件の「関係者」とされています。
関係者とは、被告人の親族をはじめ、友人や知人も含まれます。
ただし、被告人自身は「関係者」にあたりませんので、被告人が自ら支援協会を利用することはできません。
手数料
支援協会に保釈金を立て替えてもらう場合、立替手数料を支払う必要があります。
手数料の金額は、たとえば150万円を2か月立て替えた場合には、41250円となります。
利息として考えるとそれなりの利率ともいえそうですが、起訴から判決までは短くとも2か月弱程度の期間を要しますので、その間の身体拘束が解かれることの利益を思えば、利用を検討する価値はあるといえるでしょう。
利用条件
一般の金融機関から金銭を借り入れる場合、担保や保証人の提供を求められることが多いですが、支援協会を利用するにあたっては、いずれも不要です。
利用者の資力や借り入れ等の状況についても、特に問われません。
その理由は、支援協会が保釈を支援するという公益目的の団体であることや、保釈金は最終的に返還されるため、没収さえされなければ返済不能となることが考えがたいといったところにあると思われます。
他方で、支援することの妥当性という観点から利用の可否を審査されますので、一定の場合には利用不可と判断されることがあります。
たとえば、同種の犯行を繰り返しているケースでは、保釈を支援しても被告人の更生につながらないと判断されることがあり得ます。
また、被告人がいわゆる反社会的勢力の関係者である場合なども、支援することが適切でないと判断される可能性があります。
利用方法
担当弁護士を通じて利用を申請します。
支援協会を利用することを希望される場合、その旨を弁護士に伝えて手続きを委ねるのが通常です。
まとめ
このページでは、保釈金の意義や相場について解説しました。
最後に、もう一度記事の要点を記載します。
- 保釈とは、被告人の勾留を解く制度であり、起訴後に限って請求できる。
- 保釈が認められるためには、逃亡や証拠隠滅のおそれがないといった条件をみたした上で、保証金としての保釈金を納める必要がある。
- 保釈金の相場は150万円から300万円程度であり、被告人の資力や犯罪の性質を考慮して金額が決められる。
- 保釈金は、被告人が裁判所の定めた保釈条件を遵守し、指定された期日に出廷していれば、最終的には全額が返還される。
- 被告人以外の関係者は、保釈支援協会を利用して保釈金を立て替えてもらうことができる。
保釈金の額は気になるところだと思いますが、刑事弁護において最も重要なことは、起訴前については起訴を回避することです。
刑事事件では起訴されると99%以上が有罪となります。
そのため、刑事事件でお困りの方は、刑事専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
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