逮捕されたくない方へ【弁護士が解説】
「逮捕される場合とはどのような場合ですか?」
「逮捕されるとどうなりますか?」
「逮捕を回避するにはどうすればいいですか?」
当法律事務所には、刑事事件に関して上記のようなご相談が多く寄せられています。
ここでは、逮捕の要件、逮捕の内容、回避方法について、解説いたしますので参考にされてください。
逮捕とは
逮捕とは、被疑者の身体を拘束して一定の場所に引致し、一定期間留置することをいいます。
逮捕は、人の行動の自由を奪う強制処分です。
また、逮捕は、人に対して精神的苦痛を与え、社会的信用を失墜させ、経済的損失等の打撃をも与えます。
そのため、逮捕には、法律で定めた要件が必要です。
すなわち、人を逮捕するには、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要性」がなければなりません(刑訴法199条2項)。
被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
犯罪の嫌疑自体又はその嫌疑があるといえる理由を「逮捕の理由」といいます。
捜査機関(検察や警察)の根拠のない思い込みではこの要件を満たさず、客観的な証拠に基づくものでなければなりません。
ケース・バイ・ケースで判断することとなりますが、例えば、防犯カメラに容疑者の犯行の様子が映っていたような場合はこの要件を満たすでしょう。
参考判例
「逮捕の理由とは罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由をいうが、ここに相当な理由とは捜査機関の単なる主観的嫌疑では足りず、証拠資料に裏づけられた客観的・合理的な嫌疑でなければならない。
もとより捜査段階のことであるから、有罪判決の事実認定に要求される合理的疑を超える程度の高度の証明は必要でなく、また、公訴を提起するに足りる程度の嫌疑までも要求されていないことは勿論であり、更には勾留理由として要求されている相当の嫌疑(刑訴法60条1項本文)よりも低い程度の嫌疑で足りると解せられる。
逮捕に伴う拘束期間は勾留期間に比較して短期であり、しかもつねに逮捕が勾留に先行するため、勾留に際しては証拠資料の収集の機会と可能性が逮捕状請求時より多いはずであるから勾留理由としての嫌疑のほうが、逮捕理由としてのそれよりもやや高度のものを要求されていると解するのが相当である」
【大阪高判昭和50年12月2日】
引用元:大阪高判昭和50年12月2日判タ335号232頁
逮捕の必要性
「逮捕の必要性」については、判断基準が法令に示されています。
具体的には以下の場合です。
逮捕される場合
- 逃亡するおそれがある
- 罪証を隠滅するおそれがある
- 一定の軽い罪の場合※
被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく出頭の求めに応じない場合
※三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪
第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
② 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
引用元:刑事訴訟法|電子政府の総合窓口
(明らかに逮捕の必要がない場合)
第百四十三条の三 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。
引用元:刑事訴訟法規則|裁判所
逮捕の種類
逮捕には、通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕の3種類があります。
通常逮捕は、逮捕前に、裁判官が発した逮捕状が必要となります。
前記の逮捕の要件について、仮に捜査機関のみで判断するとなると、逮捕の必要性がないのに逮捕するなどの人権侵害の可能性があります。
そこで、逮捕の要件を満たすか、裁判官に判断させることにしているのです。
緊急逮捕は、事前の逮捕状は不要ですが、一定の重大な犯罪に限定されています。また、事後的に逮捕状が必要となります。
現行犯逮捕については、犯人であることが明白であるため逮捕状は不要となります。
3つの逮捕の要件等をまとめたものを以下で示しています。
通常逮捕
「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要性」
上記のとおり。
逮捕の際、原則として逮捕状を示す。
検察事務官又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。
緊急逮捕
死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由(注1)がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき
逮捕の際、逮捕の理由と緊急逮捕であることを告げなければならない。
逮捕後、直ちに、逮捕状を求める手続が必要。
注1 充分な理由とは、通常逮捕の「相当な理由」よりも嫌疑の程度が濃厚であることをいいます。
現行犯逮捕
被疑者が現行犯人であること(注2、注3)
何人でも逮捕状なく逮捕できる。
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
注2 30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限る。
注3 以下の場合は現行犯人とみなされます(準現行犯人)。
- 犯人として追呼されているとき。
- 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
- 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
- 誰何されて逃走しようとするとき。
逮捕の注意点
通常、逮捕されると、48時間以内に検察官に身柄を装置されます。
また、検察官は、それから24時間以内に勾留を請求します。
勾留を請求されると、通常の犯罪の場合、10日(さらに延長されると合計20日)身柄が拘束され、公訴が提起されます。
起訴されてしまうと、99.9%が有罪となると言われています。
また、もし無罪を争うとなると、通常は身柄を拘束されたまま審理が進み、釈放も難しい場合が多いです。
このように、刑事事件では逮捕されると、有罪になってしまうことが多い点に注意しなければなりません。
また、身柄を拘束されることによって、甚大な精神的苦痛を感じるでしょう。
また、社会的な信用も失墜し、職を失う可能性も高いです。
ご家族の心配も計り知れません。
逮捕を回避するには
逮捕は、上記の要件を行うことができません。
捜査機関の自由裁量ではないのです。
したがって、逮捕を回避する最大のポイントは、上記の要件を満たさないようするということになります。
また、逮捕の回避が問題となるのは、通常逮捕の場合となります(現行犯や緊急逮捕は既に逮捕されているからです。)。
したがって、通常逮捕の場合の要件ごとに、逮捕を回避するポイントを解説いたします。
逮捕の理由がないこと
無実の場合であれば、逮捕の理由を裏付ける客観的・合理的な証拠は存在しないケースが多いと考えられます。
仮に、そのような証拠があれば、その信用性や証拠価値を争うことが必要となります。
犯罪自体に争いがない場合は、上記要件を争うことは難しいと考えられます。
この場合、次の「逮捕の必要性」を満たさないようにすることが重要です。
逮捕の必要性がないこと
基本的には、以下の点を捜査機関に示すことが重要となります。
具体的にはケース・バイ・ケースでの弁護活動が必要となりますが、犯罪自体に争いがない場合は、素直に犯行を認めるということが重要です。
そして、反省の態度を示すことがポイントとなるでしょう。
反省の態度を示す方法としては、謝罪文の作成などが効果的です。
なお、当事務所では、謝罪文のサンプルについて、ホームページに掲載しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。
また、被害者がいる犯罪(性犯罪、財産犯、暴力事案など)の場合、被害者との示談交渉や被害弁償が重要です。
示談交渉が成立すれば、重大な犯罪でない限り、通常は逮捕をする必要がないと考えられるからです。
また、不起訴となる可能性も高まるでしょう。
示談交渉は被害者が応じてくれなければ成立しません。
仮に、示談交渉が難しい場合、被害弁償の申し出なども検討すべきでしょう。
被害弁償の申し出をするということは、犯行を認めて被害を回復しようとしている事実を示すことから、逮捕の必要性がないと判断されやすくなると考えられます。
まとめ
以上、逮捕の内容、回避のためのポイントについて、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
逮捕は「逮捕の理由」と「必要性」がなければ行うことはができません。
逮捕の回避するためには、まずは反省していただき、そのことを示すことがポイントとなります。
また、被害者がいる場合は示談交渉を行っていくことが重要です。
逮捕を回避するために、当事務所の刑事事件専門部がサポートいたします。