自白が証拠として認められないのはどういうとき?【刑事弁護士が解説!】
「自白するかどうか迷っています」
「自白が証拠とならない場合は?」
「自白すると不利になりますか?」
当事務所の刑事弁護チームには、このようなご相談がたくさん寄せられています。
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自白とは
自白とは、自己に不利益な事実を承認することをいいます。
なお、狭義には、自白は自己の犯罪事実の全部又は主要部分を認める被告人(被疑者)の供述をいいます。
自白と似た概念に、「不利益な事実の承認」(刑訴法322条1項)や「有罪であることの自認」(刑訴法319条3項)があります。
「不利益な事実の承認」は、犯罪事実を推認させる間接事実(例えば、犯行現場に居たことを認める供述)、犯罪事実を推認する証拠の所在など、犯罪事実などの主要部分の認定に寄与する自己に不利益な事実を認める供述を言います。
「不利益な事実の承認」のうち、自白に該当しないものを「単なる不利益な事実の承認」と言います。
「有罪であることの自認」は、検察官の主張を認諾する処分行為の性格を持ちます。
上記については、細かく区別する実益はないと考えられるため、ここでは自白と総称します。
自白は、「証拠の王」と呼ばれるほど、有罪の認定において重要な役割を果たしています。
自白の問題点
捜査官が予断や偏見から、自白を得ようとして無理な取調をし、その結果虚偽の自白調書が作成されるケースは決して珍しくありません。
そのため、刑事訴訟法319条は、自白について、以下のとおり規定しています(これを「自白法則」といいます。)。
1項:強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
2項:被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
3項:前2項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。
引用元:刑事訴訟法|電子政府の窓口
自白の証拠能力が否定される場合とは?
以下、自白の証拠能力が否定された裁判例について、ご紹介します。
黙秘権侵害による自白
浦和地裁平成元.3.22(浦和女店員嬰児殺人事件)
【黙秘権、弁護人選任権の告知が不十分等による自白】
「本件における被告人の捜査官に対する供述調書及び上申書、弁解録取書、更には検証における指示説明は、被告人の当時の特殊な健康状態に対してほとんど何らの配慮をせず、黙秘権・弁護人選任権についても不十分な告知しかしないまま、追及的に、その弁解を全く聞き入れないような態度でかなりの長時間にわたり行われた取調べの結果得られたものであるばかりでなく、被告人が一旦自白したのちにおいては、警察官において、法律上不可能と考えられる再度の執行猶予の可能性を示唆するなど、右自白を維持させるのに効果のある不当な言動にも出ているので、全体として、その任意性に疑いがあり、これを採証の用に供し得ないものと考えるほかはない」
違法な余罪取調べによる自白
大阪高判昭59.4.19(神戸まつり事件)
「甲事実につき逮捕・勾留中の被疑者に対する乙事実についての取調べが、甲事実に基づく逮捕・勾留に名を借りて、その身柄拘束を利用し、乙事実について逮捕・勾留して取り調べるのと同様の効果を得ることをねらいとして行われ、それが両事実の罪質、態様の相違、法定刑の軽量、捜査の重点の置き方の違い、乙事実についての客観的な証拠の程度、甲事実についての身柄拘束の必要性の程度、両事実の関連性の有無、程度、取調官の主観的意図等に照らして、実質的に令状主義を潜脱するものであると認められるときは、たとえ甲事実についての逮捕・勾留の理由と必要性が欠けているとまではいえなくても、右取調べは違法であり、その取調べに基づく被疑者の供述調書の証拠能力は否定される」
違法不当な取り調べによる自白
福岡高判平5.3.18
【便宜供与の約束下での自白】
「他の事件を自白すれば福岡事件を送致しないという約束は、いわゆる不起訴の約束に等しいものであつて、福岡事件を起訴してもらいたくないという被告人の弱みにつけこんだもので、到底許容される捜査方法ではない。そうすると、右捜査官の約束に基づいてなされた疑いのある平成二年一〇月以降の被告人の自白は、すべて任意性に疑いがあるものとして、その証拠能力を否定すべきであり、したがつて、これに反し、これらの証拠を有罪の認定に供した原判決には訴訟手続の法令違反がある」
暴行脅迫その他強制による自白
広島高判昭47.12.14(仁保事件)
【長時間にわたる執拗な取調べによる自白】
「別件起訴勾留中の余罪についての被告人取調が、右起訴事実の審理に通常必要と考えられる期間を超えて四ケ月半にも及び、しかもその間右被告人取調が連続、集中して多数回にわたり行なわれていて、このような取調の期間、方法、程度にてらし別件起訴勾留が余罪についての被告人取調のためのみの身柄拘束と化している場合は、別件起訴勾留利用の限度を超えているものというべく、右被告人取調は令状主義の趣旨にもとる違法の疑を免れない」
手錠をしたままの自白
最判昭38.9.13
「すでに勾留されている被疑者が、捜査官から取り調べられるさいに、さらに手錠を施されたままであるときは、その心身になんらかの圧迫を受け、任意の供述は期待できないものと推定せられ、反証のない限りその供述の任意性につき一応の疑いをさしはさむべきであると解するのが相当である。」
(もっとも、本件においては、手錠を施したまま取調を行ったけれども、終始おだやかな雰囲気のうちに取調を進めたことから、被告人らの検察官に対する供述は、すべて任意になされたことの反証が立証されているとした。)
自白や取調べ等でお悩みの方は、当事務所の刑事弁護士までお気軽にご相談ください。
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