刑事事件の加害者に損害賠償請求する方法は?【弁護士が解説】
刑事事件の被害に遭いました。
加害者に損害賠償を請求したいのですが、どうすればいいのでしょうか?
加害者への損害賠償請求の方法は?
ある日突然、ご自身やご家族が犯罪に巻き込まれることになれば、大変辛い思いをされると思います。
心身が傷つくだけでなく、警察への対応等によって貴重な時間も失われてしまいます。
そのような中で少しでも被害を回復したいと思い、加害者に対して損害賠償を請求しようと思い立っても、具体的な方法が分からないという方に向けて、今回は3つの方法をご紹介します。
(1)加害者との示談交渉
(2)損害賠償命令制度の利用
(3)民事訴訟の提起
刑事被害者が被害回復をできずに泣き寝入りするということは、あってはならないことです。
実際に被害の回復ができるかどうかは、加害者の支払能力等にもよりますが、犯罪の被害に遭われた方は、ぜひこれらの方法を活用して被害回復を目指してみてはいかがでしょうか。
以下では、それぞれの方法について解説をしていきます。
(1)加害者との示談交渉
事件が警察に発覚し、被疑者として特定された後になると、加害者が弁護士を選任して、被害者に対して示談交渉を行ってくることがあります。
示談交渉は加害者が刑事処罰を軽くするために行うものというイメージが強いと思います。
刑事処罰を決めるにあたっては、行為の悪質性等の他に、被害感情や被害弁償の有無といった要素も考慮されます。
示談が成立しているということは、被害感情が和らいでおり、被害弁償がされているという評価がされることになり、結果として刑事処罰が軽くなる傾向にあるのはたしかです。
しかしながら、示談は被害者側にとってもメリットが大きいものなのです。
後述するとおり、民事訴訟によって損害賠償を請求しようとすると、相当な労力や費用、時間がかかってしまいます。
しかし、示談が成立すれば、民事訴訟を提起する場合に必要となる労力や時間を削減することができます。
また、民事訴訟では勝訴したとしても、納得しない加害者が任意に金銭を支払わない可能性があり、その場合には別途差押等の手続きを行うことが必要になりますが、示談の場合には加害者が任意に金銭を支払うので、安心できます。
示談の条件面については弁護士に相談して、事案に即した適正な金額が提示されているのか等のチェックをする必要があると思われますが、被害者にとっては最も簡易に損害の回復ができる方法といえるでしょう。
他方、示談をすることで加害者の刑事処罰が軽くなる傾向にあるので、加害者に厳重処罰を求めたいと考える方にはデメリットになってしまいます。
(2)損害賠償命令制度
損害賠償命令制度とは
損害賠償命令制度とは、刑事事件を担当した裁判所が、有罪の言い渡しをした後に、引き続き損害賠償請求についての審理も行い、加害者に損害賠償を命じることができるという制度です。
制度の対象となる犯罪
①殺人罪や傷害罪といった故意の犯罪行為によって人を死傷させた罪
②不同意わいせつや不同意性交等罪などの罪
③逮捕及び監禁の罪
④略取・誘拐・人身売買の罪
これらの犯罪の未遂犯は含まれるものの、そもそもの対象となっている犯罪類型が限られていることから、ここで挙げた犯罪以外の被害者は、別の手段で損害賠償を請求していくしかありません。
例えば、損害賠償命令制度の対象となる犯罪に過失犯が含まれていないことから、交通事故事件の多くは、損害賠償命令制度を利用することができません。
制度の利用手続き
損害賠償命令の申し立ては、刑事裁判の第1審弁論手続が終了するまでに、刑事裁判が係属している地方裁判所に対して行うこととされています。
申し立てに必要な費用も、請求額にかかわらず一律2000円となっている点も被害者に配慮されているといえます。
(3)民事訴訟
損害賠償命令制度の対象ではない犯罪の被害者となってしまった場合に、加害者から示談の申し出がないことや、示談の条件について折り合いがつかず、交渉が決裂することもあるでしょう。
そのような場合には、民事上の請求を自ら行っていく他ありません。
加害者の連絡先等を知る
まず、加害者の連絡先や住所等が分からないと交渉をしたり、民事訴訟を提起したりすることができません。
しかし、プライバシー保護の問題があるため、警察は、刑事事件の被害者に対してであっても、加害者の連絡先や住所を積極的に教えてくれることはありません。
もっとも、加害者の了承があれば連絡先等は教えてくれますし、損害賠償請求のために必要な供述や証拠の開示を求めれば一定の範囲で受けることができます。
これらの活動を弁護士が代理人として行うことで開示の範囲が広がったり、加害者の了承を得やすくなったりします。
加害者が連絡先等を教えたくないと答えた場合、加害者の住所を知るためには、加害者の刑事処分が決定するのを待つことになります。
加害者が起訴されれば、被害者は原則として裁判記録の閲覧やコピーができることになっています。
裁判記録の中には加害者の住所が記載された起訴状や犯罪の証拠がありますから、これらを利用して民事訴訟を行う準備ができます。
加害者が起訴猶予となった場合でも、被害者や被害者の代理人である弁護士に対しては事件記録の閲覧を認めるという運用がされていますから、民事訴訟の準備を行うことはできます。
ただし、民事訴訟では損害賠償を請求する被害者側に立証責任が課されているので、損害を立証するために相当な労力がかかりますし、訴訟が終わるまでには半年以上かかることも想定しておかなければなりません。
被害者の方の負担を少しでも減らすためにも、民事訴訟は専門家である弁護士に依頼して進めることが望ましいといえるでしょう。
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